「嘘つきは殺人よりも軽い」というのが通常の法体系である。しかるに「嘘つきは悪だ」と見なしたあげく、「嘘つきを懲らしめるために嘘つきを死なせろ」と主張する人も多い。
これは、異端尋問・魔女裁判のときにはよく見られる。
以下ではたとえ話を示す。
──
昔々、ある国に、ルルという女の子がいた。ルルは幼いときから元気で頭がいいということで知られていた。
あるとき、ルルが夜道を歩いていた。ふと見ると、何かが空中で光っているのを発見した。それは緑色の大きな球で、火の玉のようだった。
ルルは思った。「火の玉だ! 幽霊だ!」。怖くなったが、ルルは勇気と好奇心のある女の子なので、早速そばに近寄った。すると、さっきの大きな火の玉は消えて、小さな緑色の光だけが明滅していた。よく見ると、それは虫だった。ルルは小さな女の子なので、それが何という虫かは知らなかった。とにかく、その虫はお尻のあたりで、小さな光を発していた。

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ルルはそれをつかまえた。そして証拠として、袋に入れておいた。
翌日、ルルはその話を友達にした。しかし友達はそれを信じなかった。「だったらその虫を見せてよ」
ルルは友達を家に連れて帰ってから、袋を開いた。「ほら、これよ」
しかし虫はすでに死んでいた。暗いところで見ても、虫は何の光も発しなかった。
友達は非難した。「ルルの嘘つき! みんなに言いふらしてやる!」
その友達は、ジャイ子という名前だった。ジャイ子はあちこちで吹聴した。「ルルは嘘をついている。火の玉を見たとか、幽霊を見たとか、嘘を言っている!」
それを大人が聞きつけた。「何だと? ルルは、悪魔を見たと言っているのか? 悪魔がいると主張するのは、神の教えにそむく! 異端尋問会を開こう」
こうして異端尋問会が開かれた。
「おまえは悪魔が存在すると主張したそうだな?」
「違います。私は火の玉を見ただけです」
「だったら火の玉が存在するという証拠を見せろ」
「この虫です」
「この虫は証拠にならん! どうしてもこれが証拠だというのなら、この虫が大きな光の玉だということを再現しろ!」
そこでルルは必死になって再現しようとしたが、決して再現はできなかった。
異端尋問会は判定した。「おまえは嘘をついた。嘘つきの罪は重い。悪魔がいると唱えたおまえは魔女だ。このあとは魔女裁判に委ねよう」
ルルは、魔女裁判にかけられた。
魔女裁判の裁判官は問い詰めた。「被告人は嘘をついたな? 嘘をついたと認めろ」
ルルは否定した。「私は嘘なんかついていません。本当に緑の光を見たんです。なのに、見ていないと嘘をつくことはできません! 捏造はできません!」
裁判長は批判した。「火の玉などは存在しないと判明しているのに、まだそんな嘘をつくのか。白状しろ!」
ルルは必死に訴えた。「私は本当に見たんです。嘘なんか言っていません!」
裁判長は見渡した。「ならば、死刑にするべきかどうか、民衆に尋ねよう」
裁判所の外では、民衆は声をそろえて唱えた。「嘘つきは死刑にしろ、嘘つきは死刑にしろ!」
こういう世間の声に押されて、裁判長は判決した。「こいつは魔女だ! 判決は死刑!」
そこへ。ヒゲもじゃの名探偵が登場した。
「ルルが魔女だという証拠はあるんですか?」
「不要だ」と裁判長は言った。「魔女だという証拠なんか、必要ない。嘘をついたという証拠はたっぷりあるんだからな!」
「でもね」名探偵は肩をすくめた。「本当に嘘を付いたんですか? ただの見間違いじゃないんですか? 愚かさゆえのミスじゃないですか?」
「ただのミスではない。緑の光を見たとあれほど強く訴えたことには、故意と悪意がある。嘘をついたことは明白だ! だいいち、たとえミスだとしても、科学的な証拠もなしにそんなことを主張したことは、断じて許されない。ゆえに、死刑が当然だ」
「では、死刑にするべきだということに、科学的な根拠はあるんですか?」
「被告人は、自分が魔女ではないという証明ができなかった。だから魔女なのだ」
「それは変な理屈ですね。だったら他の人はどうなんです?」
「うるさい。問題は正義を果たすことだ。正義を果たすのを邪魔すると、おまえも死刑にするぞ!」
死刑の判決を聞いたあとで、民衆は狂喜乱舞した。「ルルは死刑だ、ルルは死刑だ。万歳! 正義は果たされた! 魔女をやっつけた!」
──
それから 100年後の 2114年に、人々は 100年前の新聞を読んで、溜息を漏らした。
「そうか。100年も前の人間は、非科学的だったんだな。2014年と言えば、コンピュータの時代だが、その時代でも、異端尋問や魔女裁判がなされて、犠牲者が出たのか。狂気の時代だな。ま、とにかく、これを書き留めておこう」
そう思った彼は、早速文書を書きはじめた。
「昔々、ある国に、ルルという女の子がいた。ルルは幼いときから……」
[ 付記 ]
今の日本では、嘘つきは殺人よりも重い罪である。だからこそ、日本中で多くの人々が非難する。
では、STAP 事件よりも軽い罪は、何か? それは、脱法ハーブ(危険ドラッグ)である。
これによって人々を廃人にして死なせて、その裏で自分はがっぽり儲ける。……こういう連中は、まったく野放しである。逮捕されることもないし、人々から非難されることもない。なぜなら、嘘つきではなくて、人殺しだから。人殺しは、嘘つきよりも軽い罪なのである。だから、人々から非難されることもない。
【 関連書籍 】
嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)
《 読者批評 》
日本のバイオ研究の構造的な問題点を浮き彫りにする本。正直、読んでいて吐き気がするほど希望のない状況と感じた。
要約するに、昨今、好奇心に基づく基礎研究よりもすぐに医療や食料問題に役立つ応用研究を、という風潮があまりに強い。そのため現場の研究者には猛烈なプレッシャーがかかっており、予算獲得のために論文を有名な雑誌に出さねば……
(中略)
この病んだ構造はいつまでも変わらない。・・・というお話。
下らないことに大騒ぎする狂人ばかりがいるから、こういう狂気的な騒動も起こるのかもね。
騒動の理由は、中心にいる人物ではなく、中心のまわりにいる大勢だった……という意外な真相。
【 関連項目 】
→ STAP細胞事件の背景
日本の学術論文の件数が極端に低迷している、という話。
真実よりも処分を求めているんだから、当然のことか。日本の研究者が「あいつを処分しろ」と騒いでいる間に、外国の研究者は自分の研究をしている。求めるものが根本的に違っている。差が付くのは当然ですね。
一見狂気としか見えない過剰な反応にも、集団維持の意義など
隠れた理由が存在する可能性もある。
狂気を批判するだけでは進歩はない。
単なる批判では無いと思う。
7/22に若山氏側と理研の不正解析が明るみとなってそれまでの解析結果はすべて白紙になっているわけでしょ。
横浜理研の遠藤kaho氏にしろ、DNAではなく状況によって発現量が大幅に異なるmRNAで解析しており、日経サイエンス号外記事に載せた【129・B6】とNCBIサイトのNGSデータ【B6・129】の解析結果が逆になっており、その矛盾をネットで指摘された遠藤氏は慌ててNCBIの方を削除するという隠蔽工作をやっているわけです。
しかもその隠蔽した方の解析結果は遠藤氏が出したほぼ同時期に東大東工大の研究グループも出しているわけですが、その代表者名は隠蔽されたままです。
同時期というのも都合が良すぎるタイミングですし代表者名が隠蔽されているのもおかしい。
それと遠藤氏の主張する【生きて産まれてこないトリソミー】は、モザイク型トリソミーとの識別が困難で、生きて産まれてくることも多いとの見解が出されています。
いずれにせよSTAP細胞の存在を否定するこれまでのデータはすべて白紙状態です。
★ところで不正解析が発覚した若山氏側や理研が証拠物件であるスタップ幹細胞を保管して好き勝手にいじくり回している状況はデタラメすぎますね。
容疑者に証拠物件を保管させる話など聞いたことがない。
不正解析が発覚した以上、若山氏側と理研から証拠物件のSTAP幹細胞を取り上げ若山氏ら容疑者を徹底的に調べるべきです。
若山氏らに実験ノート・生データ・実サンプルを提出させ公表するべきでしょう。