2014年07月27日

◆ STAP(NHK・科学雑誌)

 STAPについての話題を二つ。NHK の番組と、科学雑誌「ニュートン」の記事。 ──

 (1) NHK の番組


 事前に大きく宣伝されていたわりには、たいした情報はなかった。誇大表示。この誇大な前宣伝そのものが「不正」と言ってもいいくらいの、ほとんど羊頭狗肉。
 だいたいは、既存の情報を改めて再掲しただけで、新規の情報はほとんどない。(一部にはあるが、たいした情報ではない。)
 全体として言えるのは、「 STAP 細胞とされたものは ES 細胞にすぎなかった」ということ。実験のどこかで、検体が ES細胞にすり替わった、と推定できる。ここまではいい。

 とすれば、その後は、次の二つの可能性だ。
  ・ コンタミがあった。
  ・ 意図的な捏造があった。

 では、そのどちらが正しいか? ここが一番肝心の点なのだが、番組はこの点について一切触れない。
 話は一挙に、「笹井さんは論文執筆の天才だ」というふうに飛ぶ。ま、それはそうでしょ。しかし、「論部執筆の天才だ」ということは、「嘘つきだ」ということを意味しない。
 また、「笹井さんがチェック不足だった」という指摘は妥当だが、それは単に「不十分」ということを意味するだけだ。(悪意の不正があったことを意味しない。むしろ「うっかり」や「注意不足」があったことを意味する。)

 ところが、番組はこのあと一挙に結論に飛ぶ。
 「これは不正だ」
 と決めつけて、「論文の不正を防ぐにはどうすればいいか?」というふうに話が飛躍する。
 何だこれは? 「不正だ」という理由を一切示さずに、「不正だ」と決めつけた上で、「不正を防ぐには」という話をする。
 それはおかしいでしょう。そこまでの話は、「うっかり」「注意不足」が理由だったと推定されているのだから、「うっかり」「注意不足」をチェックするための制度の必要性に、話は移るべきだ。なのに、話は「不正の阻止」という方向に飛ぶ。
 もう、これは論理の通らない、支離滅裂である。「被告は犯人だ」という証拠も示さないまま「有罪だ」と断罪するような、非論理的な結論。STAP細胞事件もびっくりのような、不正な捏造番組だと言える。ありもしない「不正」を「あった」と捏造する番組。
 呆れてものが言えない、とはこのことだ。

 ──

 仕方がないので、私が簡単に整理しておこう。
 この番組の内容からわかることは、「うっかり」や「ずさんさ」や「チェック不足」や「能力不足」だ。そのせいで、馬鹿げた実験ミスがまかり通った。本来ならば通るはずのないデタラメな論文が、笹井さんの見事な論文能力のせいで、立派な論文に見えてしまった。つまり、「ゴミが黄金に見えた」。そして、それに Nature も引っかかってしまった。
 要するに、ここにあったのは、ただのミスだったのである。ただし、小さなミスではなく、巨大なミスだった。そのせいで大騒動となってしまった。
 そこが本質だ。

 とすれば、対策もわかる。それは、「ミスを防ぐこと」だ。一方、「不正を防ぐこと」は、何ら対策となっていない。今回の事件は、不正(捏造)をしようとして生じたものではないからだ。

 比喩的に言おう。
 日本では原発事故が起こった。このような原発事故を防ぐには、どうすればいいか? もちろん、さまざまなミスをなくせばいい。「安全だ」と思い込んで対策をサボったりしたことを改めるとか、それまでのチェック不足を反省するとか、さまざまなミスを一つ一つつぶしていくことが必要だ。そうしてこそ、原発事故の再来を防げる。
 一方、これを「不正だ」とか「邪悪な意図的なものだ」と見なしたら、どうか? その場合には、「原発へのテロをなくすためにテロ対策をしろ」ということになる。たとえば、警備員を増やすとか、警備員を重武装させるとか、原発基地のまわりに戦闘機を飛ばすとか、原発の周囲にお城の堀のような水濠を作るとか。……こういうふうにしてテロ対策をすることになる。では、そういうテロ対策を十分にしておけば、先の原発を防げたか? もちろん、否である。テロ対策を原発事故の予防のためにやるのは勘違いだ。

 STAP細胞事件を「不正だ」「故意の犯罪的行為だ」と見なすことは、そういう勘違いをすることになる。だから、いくら不正を阻止する努力をしても、何の対策にもならない。そのような対策は、故意の不正を阻止することはできても、注意不足ゆえのミスや失敗を阻止することはできないからだ。
 NHK はこの点を根本的に勘違いしている。かくてこの番組自体が「捏造」ふうの番組になってしまった。ひどいね。
( ※ ま、小保方さんに暴力行為を働くような番組なんだから、それも当然かな。科学的に調べるより、パパラッチをやっているだけだ。)


 (2) 科学雑誌「ニュートン」


 科学雑誌「ニュートンの九月号(26日発売)が、STAP細胞を特集している。


Newton 2014年 09月号


 さすがにしっかりした内容だ。1200円はちょっと高額だが、金を払って買う価値はあると言える。NHK のクソ番組とは雲泥の差だ。
 詳しい話がいろいろと書いてあるが、特に重要なのは、次の点だ。
 「遠藤高穂研究員などの調べによると、STAP 細胞とされたものは、論文とともに公開された遺伝子データからして、ES細胞であるらしい。そのことは、複数の検査で判明した。ES細胞が9割で、TS細胞が1割ぐらいの混合物だったらしい」
 ( ※ この表現は、ちょっと簡略化しすぎた表現なので、正確さに欠ける。詳しくは「ニュートン」を読んでほしい。)

 このことから、次のことがわかる。
 「小保方さんは、STAP細胞のデータとして、ES細胞(など)のデータを示した」
 つまり、虚偽のデータを正直に示しているのである。仮に、捏造をしたのであれば、「STAP細胞のデータです」と言いながら ES細胞のデータを出すはずがない。STAP細胞であるはずの捏造されたデータを出すはずだ。
 現実には、捏造したデータのかわりに、ES細胞のデータを出した。ということは、ここでは次の二つを示している。
  ・ STAP細胞というものは存在しないと自分自身で証明している。
  ・ 「STAP細胞というものは存在しないと自分自身で証明している」ということに気づいていない。(馬鹿丸出し)

 ここからわかることは、こうだ。
 「この実験は、捏造された実験ではなくて、あくまで実験ミスという形の実験である」
 このことがはっきりと証明された、と言えるだろう。科学雑誌「ニュートン」には、そういう真実を示す証拠を、きちんと示しているわけだ。
( ※ 結論部は、名探偵の説明が必要なので、ニュートンにはなくて、本項にあるだけだが。)



 [ 付記 ]
 ダメダメだらけの NHK の番組だが、有益な情報もあった。

 (1) 理研 CDB は、神戸のポートアイランドにあるが、ここは、理研 CDB を中心とするバイオ研究拠点となっているそうだ。これは、前に私が述べたことに重なる。
  → 日本版 NIH とバイオクラスター
 この項目では、「日本版 NIH を中心として、バイオクラスター(バイオ研究の特別地域)をつくれ」と提案した。ただ、それと同様のものは、すでに神戸のポートアイランドにあるわけだ。(ものすごく大規模というわけではないようだが。)

 (2) この神戸のポートアイランドにあるバイオクラスター(ふうのもの)は、理研 CDB が中心となっているが、そこを統率しているのが笹井さんらしい。というのは、マネジメントの能力がものすごく高くて、ただの研究者には収まらないスーパーマンであるからだ。彼は、研究者として一流であるだけでなく、論文執筆にもすごい才能があるし、組織のマネジメントにもすごい才能がある。傑出した人材であるようだ。まわりの人が、「彼こそは天才的」と言うのも、むべなるかな。

 ──

 で、そういう事情があるのであれば、ここで「笹井さんは不正に関与した」と嘘情報を垂れ流して、日本のバイオ研究拠点を弱体化させることは、日本のバイオ研究にとって非常に困った結果をもたらすだろう。
 換言すれば、今、「STAPは不正だ」と大騒ぎしている人々は、日本のバイオ研究へのテロ活動をしているようなものだ、とわかる。
 NHK 自体もその輪に加わっているんですけどね。



 【 追記 】
 NHK の番組でも、一つ、興味深いことがあった。それは、竹市センター長がいまだに STAP細胞について肯定的であることだ。番組ではインタビューに答えて、
 「 99%はダメでも、1%はある可能性があるのなら、その可能性を検証してみるべきだ」
 と主張していた。これが再現実験の意図だという。

 呆れた。いまだに STAP細胞の可能性を信じているとはね。可能性は1%ではなくて限りなく0%に近いはずだ。そして、そのことをわかっている相沢さんは、「0%であると確定するために再現実験をする」という趣旨で述べている。前出記事を再掲しよう。
 「ないというには本人が参加して、どうしても再現できませんでしたねというまでやることが最善」。理研発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸市)の相沢慎一・実験総括責任者は2日の会見で、「論文を撤回するのに検証実験をする意味があるのか」との問いにこう答えた。
( → 朝日新聞

 これは、前出項目 で掲載したことだ。ここで示しているように、「ない」と確定するために、小保方さんの参加が必要がある。(小保方さんがやってもできなければ「ない」と確定できる。「ないことを証明する」という悪魔の証明が、実質的に可能となる。)
 これが再現実験の目的なのだが、竹市センター長はそれを逆の方向でとらえている。…… 呆れた話だが、NHK の番組は、その呆れた話を明白に示したという点では、功績がある。
 そもそも、竹市センター長は、STAP細胞の研究の推進の当事者だ。この人が検証実験に関与するというのは、裁判で言えば、被告が裁判長になるようなものだ。ここに本質的な問題がある。
 この本質的な問題を、NHK の番組が指摘すれば良かったのだが、そうはしなかった。画竜点睛を欠くというか、肝心の点を抜かした間抜け or ピンぼけというか。……
 
 なお、理研 CDB は職員に対して箝口令を敷いて、「無駄口を利くと、秘密守秘義務違反で解雇するぞ」と言って、職員を脅迫しているそうだ。ふむ。いかにも後ろめたいことを隠そうとする体質だな。……この点の指摘は NHK も良かった。
( ※ この番組は、科学的な認識はひどかったが、組織腐敗の指摘は良かった。文系丸出しという感じかな。)
posted by 管理人 at 22:31| Comment(4) |  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
テロ活動・・・。某国のエラい教授も捏造で失脚したので、マスコミを通じて意趣返しとして狙いを定められたのなら嫌ですね。
Posted by 京都の人 at 2014年07月27日 23:51
通りすがりですが、TS+ESの混合はミスでは有りえません。コンピュータ関連だそうですから、google先生に聞いてみる事をお勧めします。
Posted by 通りすがりの高齢者 at 2014年07月28日 00:15
> TS+ESの混合はミスでは有りえません

 その件はすでに言及済みです。下記。
 → http://openblog.meblog.biz/article/22770670.html

 「ミスではあり得ない」ではなくて、「ミスだとは考えにくい」と遠藤さんが言っているだけです。
 そこでいう「ミス」とは、「単純なミス」のことです。
 一方、私は「単純なミス」ではなくて、「大規模なミス」つまり「笹井さんの指示した方向への意図的なミス」を唱えています。
 → 上記
 → http://openblog.meblog.biz/article/22813112.html (重要)
 → http://openblog.meblog.biz/article/22831351.html
 → http://openblog.meblog.biz/article/22960084.html

 TS+ESの混合は、「単純なミス」ではなくて、「意図的なミス」なのです。ここで、「意図的なミス」と「意図的な捏造」との区別ができない人が多いので、「意図的ならば捏造に決まっている」と思い込んでしまうのです。
 詳しくは上記各項をお読みください。
Posted by 管理人 at 2014年07月28日 00:52
本サイトの話を読まないでコメントする人が多くなりそうなので、コメント欄を閉じます。

 本項を読んで、何か疑問に感じたら、左の検索窓で、サイト内検索するといいでしょう。
 あるいは、すぐ前のコメントで示したリンクの項目を読むといいでしょう。
Posted by 管理人 at 2014年07月28日 00:53
  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

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