2014年07月13日

◆ 集団的自衛権とタカ・ハト・ゲーム

 集団的自衛権に タカ・ハト・ゲーム を適用すると、どうなるか? ──

 タカ・ハト・ゲームについては、前に説明した。
  → タカ・ハト・ゲームとは

 双方がともに「ハト」ならば、平和は保たれる。(双方がともに少数の利益。)
 一方が「タカ」で、他方が「ハト」ならば、タカの方が圧倒的に利益を得て、ハトの方が圧倒的に利益を奪われる。(タカの一人勝ち。)
 双方が(利己的になって)ともに「タカ」になると、双方が激しく傷ついて、双方が大損する。

 ここでは、いわゆる「利己主義」は成立しないことがわかる。「全員が利己的になれば最善になる」というのが、市場原理論者や進化論学者の主張だが、実際には、「全員が利己的になれば最悪になる」ということもあるのだ、ということを、タカ・ハト・ゲームは教える。

 では、うまい解決策はないか? ある。それは「ブルジョワ戦略」というものだ。次の通り。
  ・ 自分の領域の中では「タカ」になる。
  ・ 自分の領域の外では「ハト」になる。

 これによって、状況は安定的になる。(進化論的に安定的な戦略。)
 実際、動物は、その戦略を取る。鳥がさえずるのも、自分の領域を教えるためだし、犬や虎やライオンがションベンなどで臭いを付けるのも、自分の領域を主張するためだ。(他の個体が侵入してきたら、全力で排除する。たとえ自分が死ぬことになっても。)

 ──

 さて。これを「集団的自衛権」に当てはめると、どうなるか? 
 まず、普通の「個別自衛権」ならば、まさしく上記の「ブルジョワ戦略」そのものである。この場合には、状況は安定的になる。
 一方、誰かが他者の領域に進出して、「ここはおれの領域だ」と主張すると、戦争または紛争になりがちだ。具体的な例としては、次のものがある。
  ・ クウェートに侵攻したイラク
  ・ クリミア半島を組み込んだロシア
  ・ 南シナ海領域の島々を組み込もうとする中国

 いずれも戦争または紛争になりがちだ。これは、「ブルジョワ戦略」をはみ出したことによる。(一種の侵略主義であり、「タカ」主義である。)

 ここで、「集団的自衛権」を考慮すると、まさしく「ブルジョワ戦略をはみ出したこと」に相当する、とわかるだろう。
 安倍首相は、「(ペルシア湾入口の)ホルムズ海峡で機雷除去」なんてことを言っているが、それが成立するなら、次のことも成立しそうだ。
  ・ クウェートを侵攻したイラクへの武力行使
  ・ 満州を脅かした中国(清朝)への武力行使

 これらは成立しそうだ。次の「武力行使の新3要件」を満たすからだ。
(1)わが国に対する武力攻撃が発生した場合、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、
(2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、
(3)必要最小限度の実力を行使する
( → 公明新聞

 これらの条件を明らかに満たしている。ゆえに、
  ・ クウェートを攻撃したイラクへの武力行使
  ・ 満州に敵対した中国への武力行使

 は、いずれも認められることになる。
( ※ ただし後者は、「盧溝橋事件」というのが、捏造だった。本当は正しくないのだが、嘘をついて、捏造して、攻撃を正当化できたことになる。)

 ま、少なくとも「クウェートを攻撃したイラクへの武力行使」は、認められることになる。それが、安倍首相の方針だ。
 
 とはいえ、先に述べたように、これは「ブルジョワ戦略」を逸脱している。このような方針が成立するなら、日本は世界のどこでも戦争が可能となる。
 特に、中国が南シナ海の島々を侵略したときに、日本は中国への武力行使に踏み切ることになる。
 しかし、そんなに喧嘩早くていいんですかね? 

 一般に、戦争というものは、「小さな紛争が雪だるま式に急拡大する」(エスカレーション)という形で発生する。
 そのよい例が、第一次世界大戦だ。最初は「サラエボによる暗殺事件」が起こっただけだった。これはただのテロであり、これが世界規模の世界大戦になるとは誰も思わなかった。ところが、関係諸国が、疑心暗鬼にとらわれた末に、「攻撃される前に攻撃する」という形で、急激に戦争が雪だるま式に拡大していった。……これが第一次世界対戦の理由だ、と今日では判明している。そこにあったのは、「攻撃をするに必要な理由があったから攻撃した」のではなくて、疑心暗鬼にとらわれて、「必要もないのに怯えて先に攻撃しようとした」ということが理由となった。
 簡単に言えば、「ブルジョワ戦略の枠組みをはみ出した」ことが、世界的な規模の大戦争をもたらした。

 そして、安倍首相がやろうとしていることは、まさしくその道なのである。彼は、「ブルジョワ戦略」の枠組みをはみ出して、「自国にとって危険だと感じたならば、戦争が起こる前に意図的に武力行使に踏み切る」と主張しているのだ。
(1)わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、
(2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、
(3)必要最小限度の実力を行使する


 ここでは(1) の「他国に対する武力攻撃が発生し」という点が重要だ。これによって、ブルジョワ戦略の枠組みをはみ出して、戦線が急激に拡大可能となる。
 (2)(3) は、あまり意味がない。これは、実際の危険度に依存するのではなくて、自国の「恐怖心」に依存するからだ。自分が「怖い」と思うだけで、どんどん攻撃力を発揮できる。……そして、それによって戦争が急拡大したのが、第一次世界大戦だったのである。
 恐怖が戦争をもたらした……それが第一次世界大戦の核心だった。臆病であればあるほど、余裕がなくなり、先制攻撃に踏み切りたがる。あるいは、殴られる前に殴りたがる。

 安倍首相が集団的自衛権に踏み切るのは、彼があまりにも臆病であるからだ。そのせいで、自分が殴られもしないうちに、「殴られそうだ」と思って、武力行使をしたがる。
 しかし、戦争を防ぐには、そういう臆病心を抑制することが必要なのだ。「怖い」と思っても、その恐怖心に耐えて、我慢することが必要なのだ。そして、実際に反撃するのは、自分の領域がまさしく侵害された場合に限る── これがブルジョワ戦略だ。

 何も戦わずに逃げてばかりいる「ハト」戦略では、侵略されるだろう。
 うまく戦って侵略しようとする「タカ」戦略では、必然的に戦争が起こり、双方が傷つくだろう。(第二次世界大戦。)
 だからこそ、大切なのは、「自分の領域が侵害されたときのみに反撃する」という「ブルジョワ」戦略なのである。つまり、「個別自衛権」という方針なのである。
 そして、それを逸脱して、「ブルジョワ」戦略を捨てて、「タカ」戦略に近い方針を取れば、必然的に戦争に近づく。たとえば、「クェートに進出したイラクを武力攻撃する」という方針を取れば、「南シナ海に進出した中国を武力攻撃する」という方針を取らざるをえなくなる。つまり、自国が侵略されたわけでもないのに、中国との戦争に踏み切ることになる。……しかし、そういうふうに喧嘩早い行動を取れば、世界大戦に近づくのである。

 臆病心が戦争を引き起こす……そのことを、臆病な首相は、よく理解してほしいものだ。



 [ 余談 ]
 ボクシングや空手の達人は、ヤクザにいくら侮辱されても、危険を感じても、決して自分からは攻撃しない。まさしく相手が自分を攻撃してきたときのみ、反撃する。なぜか? 達人は決して臆病風には吹かれないからだ。彼らは素人の攻撃を見切っている。ゆえに、小さな攻撃を見ても、あわてて反撃するようなことはしないのだ。あくまで、自分自身に降りかかった攻撃を払おうとするだけなのである。
 そして、それは、臆病者には決してできないことだ。



 [ オマケ ]
 例題。
 次の問題に答えよ。
 「ロシアがウクライナに武力を行使して、クリミア半島を自国領に編入した。さらに、ウクライナ向けの天然ガスを削減したことで、EU のエネルギー事情は劇的に悪化した。……以上の条件で、EU は集団的自衛権を発揮して、ロシアに武力行使をすることは妥当だろうか?」
 
 実は、これは次のことにそっくりだ。
 「ホルムズ海峡が封鎖されて、日本のエネルギー事情が悪化したので、日本は集団的自衛権を発揮して、武力行使する」
 とすれば、安倍首相の理屈を、欧州に適用することで、欧州はロシアに武力行使をすることが妥当だ、となりそうだ。
 さあ。両者を比較して、どう考えますか? 

( ※ 正解はありません。ご自分でお考えください。)
( ※ なお、自国領の外での機雷除去は、国際法では武力行使と見なされます。自衛とは見なされません。自国領での機雷除去ならば、自衛と見なされるが。)
 


 【 追記 】
 正解はありません、と上で書いたけど、私なりの正解を示しておこう。
 当然ながら、ホルムズ海峡が封鎖されたことぐらいでは、「集団的自衛権」を行使するべきではない。つまり、自動的に武力行使に踏み切るべきではない。
 しかし、だからといって、武力行使をしたがる粗暴な国を放置すればいい、ということにはならない。また、中国が南シナ海で侵略活動をすることを放置するべきでもない。
 では、どうするべきか? 正解は、こうだろう。
 「国連の決議を経た上での武力制裁」

 たとえば、フセイン・イラクがホルムズ海峡を封鎖したら、国連決議を経た上で、国連の活動として機雷除去をすればいい。ここでは、「集団的自衛権」の形を取らず、「国連活動への参加」という形で機雷除去をすることになる。……このような形であれば、許容範囲だろう。
 逆に言えば、国連の決議も得ずに、いきなり「集団的自衛権」を行使するようなことがあれば、ウクライナでも欧州が勝手に武力行使していいことになる。また、大昔のセルビア事件の後でも、同様に武力行使していいことになる。だが、そんな理屈が通れば、たちまち大きな戦争へと導かれる。
 安倍首相がどうしても自衛隊を使ってドンパチやりたいのであれば、「国連活動への参加を拡大する」という形を取るべきだろう。これならば、ただちに憲法9条に抵触するとは言えなくなる。
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 「国連活動への参加」は、これには抵触するまい。だから、「国連活動への参加」ならば、許容される。一方、「集団的自衛権の行使」は、無理筋であろう。
( ※ 法学者はみんな「集団的自衛権は違憲だ」と言っている。安倍首相が勝手に脱法活動をしているだけだ。脱法ドラッグでもやったせいだろう。ラリっている。)
( ※ 安倍首相がドンパチやりたいのであれば、艦これ か、ガルパン でもやる方がいい。それなら無害だ。現実世界で戦争ごっこをやりたがるなんて、現実と虚構とを混同している。)
posted by 管理人 at 11:27| Comment(8) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に [ オマケ ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2014年07月13日 22:03
<危険は存在する、しかし恐怖は自分次第だ>映画『アフター・アース』からの引用ですが、この映画に登場する怪物は人間が恐怖する時に発する臭いに引きつけられて現れます。臆病すぎて恐怖ばかりするならばそれが結果的に戦争を引き起こす事にもなるでしょう。この怪物はそういうもののメタファーかもです。
<ブルジョワ戦略>とはよい教えを請いました。ハト的人間なので早速生活に適用させて頂きます。

第一次安倍政権幕引き以降、この方は精神の均衡を崩し続けているのではないだろうか?と思っておりました。(若干過去形)
「機雷の除去」とは何の事を意味するのか?
日本への石油を絶つ為には海上交通路に機雷を撒いて封鎖するのが効果的であり、日本の電力を奪えば兵器を使用することなく恐ろしい事が可能かもです。
備蓄している石油で賄える電力は約一ヶ月程度だそう。原発による電力供給であればその数倍。安倍総理の懸念と対策はそこらへんにあるという観方もあり。

「ハト」がハトの心のまま、ルール無用の悪党どもに対処するには、ハト同志の連携も有効。憲法解釈を変更してでもやれる事は全てやる。そういう事なのかもしれません。
その手にした矛と盾は矛盾した危うい道なのであります。
<確かに日本は世界のどこにでも戦争が可能となった、しかし平和は自分次第だ>
偽りの権化の原発には私も反対。けれど即刻廃炉を望んでいるのは邪な陰謀を持つ者も同じなのではないか? 戦争など論外です。ハトは鳩のままの生を全うしたい。世界の悪意に対処するには智恵あるハトであらねばならない。どうか正気な総理でありますように。
Posted by 割烹義太郎 at 2014年07月13日 22:43
第三国が日本だけを対象にした(ホルムズ封鎖)機雷なんてまけるわけがないわけで国際的問題に発展するだろう。
その場合、世界的なエネルギー問題が発生するので日本だけの問題ではない。
日本が国際的に孤立してるわけじやないんだから。
アベノバカスですか?
Posted by 韓朝シナ人は大嫌いだ! at 2014年07月14日 06:16
アメリカだけの犠牲で、日本は守れないとアベノバカスが言うのであれば、日本は個別的自衛力を拡充強化しなければならない。
核の傘なんか無効であるとアベノバカス自らがおっしゃるわけだから、日本独自で核ミサイルを保有し、核の抑止力を持つべきである。
それは、過去に核攻撃を受けた日本の権利であると同時に、犠牲者の御霊に酬いるための義務でもあるのだ。けそれこそが、原子力研究の平和利用として、日本が国際的にとるべき唯一の策である。
なのにアベノバカスは、防衛費はGDP 比0.8%の軍縮予算をとり続け、抑止力を低めているではないか!
集団的自衛権で抑止力が維持できないのは、アベノバカス自らがフリップでメディアで言っていたのに、アメリカは攻撃を受けるから頼りにならないと!
アベノバカスですか?
Posted by 韓朝シナ人は大嫌いだ! at 2014年07月14日 10:56
<国連の決議を経た上での武力制裁>=まさに正論だと思います。常識的な視座から云えば、そのような選択をすべきでありました。たとえ国連が機能していなくても。
<無理筋><違憲>に全く異論はありません。臆病なのかも知れませんが正直な処、正気とは思えません。ただはっきりと狂っていれば即退場となるのでしょうけれど。
人物像や目的は違いますが、ドイツの独裁者と<役廻りとして>並ぶのではないでしょうか。彼の役廻りは破壊や淘汰だったと思いますが。あえて正論の道を行かない役廻り。

日本の集団的自衛権とは、アジア連携安全保障=平和の<盾>として機能する可能性もあるが、同時に人類淘汰の<矛>としての矛盾した危うい仕掛けかと。政府が約束を違えて抑止力の範疇を越え、徴兵や闘争の道を選ぶなら<たちまち大きな戦争へと導かれ>結果世界は望まれぬ結末を迎えるしかなく。
ドイツの独裁者の暴走を許したのはまた国民の総意でもあったように、第九条の心を日本人が本当に生きられるのかが救いなのかもと。憲法に書かれてあるだけではダメなのです。
平和である為に必要なのはまず心の中から対立を無くすこと。しかるに戦争反対を叫びながら意見・立場・人種、諸々の違いにどこでも標的を探して対立し闘争する「タカ」型人間が多ければ、どうしたって世界は戦渦に飲まれて行かざる得ない。そんな時代。まずは自分の心から闘争を離れるべきと思う今日この頃ではあります。
Posted by 割烹義太郎 at 2014年07月14日 21:58
本当かどうか分かりませんが、集団自衛権設立の背景にはアメリカの意向や日本だけ兵隊を出さないことに対する諸外国からの圧力もあると聞きます。

しかし、個人的にはそんなの馬耳東風で聞き流し、兵は出さないが、金なら出すよといけしゃあしゃあと主張し続けるべきと考えます。

過去の事にこだわってもしょうがないのですが、先の大戦で、連合国側に数十万人の非戦闘員を殺されたのですから、いまさら、アメリカやイギリスの兵士が中近東で数千人死のうがどうということはないというのがまともな国際感覚の考えではないかと思うのですがいかがでしょうか。
Posted by NY at 2014年08月12日 04:26
諸外国への圧力になると思う。
うちもやりますから、かねと口だけじゃ無いですよ。
キチンと世界平和に、現状維持のために貢献しているでしょ。だから、うちがやばい時はちゃんとやってね。
最近、侵犯する奴、返さない奴、ドサクサに乗っ取った奴が居るんです。話し合いが長い長い奴よりも面倒なんで、旧枢軸国とはいえ、その前は理事国やし、G7やし、やることやるから連合国の一員でヨロシクね。でしょ。
Posted by 京都の人 at 2014年08月12日 05:22
京都の人さんへ

字をちゃんと読みましょう。
字、読めてますか?
Posted by NY at 2014年08月12日 14:58
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