理研 CDB (理研全体ではない)の解体を、改革委は提言した。いかにもドラスティックな提言だが、これは妥当だろうか?
世間では「妥当だ」という見解が多い。たとえば、朝日の社説がそうだ。
発生・再生科学総合研究センター(CDB)には、不正を誘発する構造的な欠陥がある。理研本体にも不正を防ぐ認識が不足している。そう強く批判した。
おおむね妥当な内容である。
( → 朝日・社説 2014-06-14 ,別リンク)
しかし、この社説には、同意できない。社説のいうような意味で、妥当なわけがない。
「不正を誘発する構造的な欠陥」というが、捏造を組織が誘発したというのだろうか? しかし、提言で述べているように、小保方さんのやったことはあまりにも「ずさん」だ。一方、捏造をするには「緻密な狡猾さ」が必要だ。両方は矛盾する。
では、理研はどちらを誘発したというのか?
仮にずさんさを誘発したのであれば、捏造を誘発したことにはならない。
仮に捏造を誘発したのであれば、緻密な狡猾さを誘発したのであるから、「ずさんさ」を指摘したことと矛盾する。
要するに、提言は矛盾だらけだ。妥当どころではあるまい。
( ※ このような話は、前項で述べた。)
──
話を戻す。
改革委は理研 CDB の解体を提言した。この措置は妥当だろうか?
改革委が厳しい提言をしたのは、「捏造があった」という前提の上で、「組織が捏造を誘発した」と考えたからだ。しかし、その論理は矛盾だらけだ。その論理は成立しない。
実際にあったのは、「緻密な捏造」ではなくて、「ずさんな実験」だった。そして、組織の責任は、「捏造の誘発」ではなくて、「ずさんな実験の放置」という点にあった。
とすれば、理研という組織には、「解体」という重大な責任を伴うことはないのだ。
なるほど、私は前項で「ずさんな実験」については、それを放置した理研に「全面的な責任がある」と認定した。それはその通り。
しかしそれは、「駐車違反を放置したことに全責任がある」という程度のことだ。とうてい「死刑」ないし「解体」というような処分を下すほどのことではない。
その意味で、改革委は、事件の規模を誤認している。
──
さて。話がここで終わっては詰まらない。以上のことは、すでに前項で記していることだからだ。
物事の本質を考えよう。今回の事件が大々的に話題になったのは、なぜなのか? アルツハイマーの不正(J-ADONI)や、ノバルティスの不正は、はるかにひどい悪質な捏造なのに、ろくに話題になっていない。( → 別項 )
なのにどうして、未熟な初心者のずさんさが本質であるような小さな事件(せいぜい論文の不正掲載程度の事件)に、世間が大騒ぎをするのか?
そのわけを考えるといい。
↓
↓
考えましょう。どうしてだと思いますか?
↓
↓
そのわけを言おう。(簡単なことだが。)
たかが学術世界のちょっとした話題( Nature に掲載されて良かったね、という程度の話題)にすぎなかったのが、本件の基本だ。なのに、それが世間で大々的に話題になったのは、なぜか?
次のことが理由だ。
「ものすごい画期的な大発見だ、と理研が大々的に PR したこと」
これこそが、本件が大事件となったことの核心だ。
・ 理研が大々的な記者会見を開いた。(iPS以上の大発見だ、と。)
・ かっぽう着などのウケ狙いの宣伝をした。
・ 小保方さんが若くてきれいな女性だった。
この三点が、事件が大事件となった理由だ。
このうち、最後の点(小保方さんが若くてきれいな女性だった)のは、嘘ではないから、仕方がない。これに乗ったマスコミがダボハゼだっただけのことだ。やむを得ない。
しかし、前者の二点は違う。理研の意図的なものだった。
・ 大々的な発表と記者会見は、笹井さんの指導でなされた。
・ かっぽう着の演出も同様。これは作為の虚偽だった。
特に、後者が問題だ。実際には、かっぽう着で実験するなんて、実験には不適切だし、そんなことはしていなかった、と判明している。なのに、急いで店に行ってかっぽう着を買っておきながら、「祖母からもらったかっぽう着」などと、嘘の告白をした。
これは完全な捏造である!
その意味で、私は、この点をもって「 STAP細胞事件の核心は完全な捏造であった」というふうに断じたい。
ただし、捏造されたのは、実験ではなくて、「祖母からもらったかっぽう着」という告白である。この告白が捏造だったのだ!
──
で、理研は解体されてしかるべきか? 「捏造に加担したから」という理由で解体されるべきか?
「ノー」というのが、私の回答だ。
第1に、捏造の内容は、実験や論文ではなくて、「祖母からもらったかっぽう着」という告白だけだった。これは、学術行為とは関係がなく、ただの宣伝のことにすぎない。このくらいのことで解体処分になるなら、テレビのコマーシャルを作る会社のほとんどは解体処分にされるべきだ。馬鹿馬鹿しい。
第2に、理研は(告白の)捏造に加担したのではない。(告白の)捏造の主犯は笹井さんだったのだ。理研という組織も、関係がない。単に笹井さんがウケ狙いで、かっぽう着の話を持ち出しただけだ。
第3に、小保方さんもまた (告白の)捏造にほとんど責任がない。単に上司の命令に従って、嘘の告白をしただけだ。おぼちゃんが、おばあちゃんと言っただけだ。
以上のいずれの点でも、「理研が解体されるべきだ」という結論にはならない。
ただし、責任がまったくないというわけでもないから、理研については、「反省しろ」という戒告処分ぐらいはあってもいいだろう。その程度のことだ。(駐車違反に罰金刑が下る程度のことだ。)
というわけで、「解体処分は不要」という結論になる。
[ 付記 ]
ただし、解体処分が必要な組織もある。
・ 全責任を小保方さんに負わせようとした調査委
・ デタラメな論理で理研を解体させようとした改革委
この両者は、解体されるべきだ。どちらも「自分たちは正しい」という思い込みで、とんでもなく暴走した提言をしているからだ。組織として存在するに値しない。むしろ、あればあるだけ、有害だ。
このような組織は、解体するべきだ。
結論。
理研 CDB は解体する必要がないが、調査委と改革委は解体するべきだ。
>が不足している。そう強く批判した。おおむね妥当な内容である。
乱暴かつ大雑把な意見です。組織は無生物で、動かしている人間の問題でしょう。
科学界で不正をする人はズル系の人です。STAP細胞の件では笹井氏です。天下り系の人が彼とタイアップして、虫の
良い戦略を立てて実行したと推測します。科学技術分野では、管理職には人格が正直系で洞察力のある人を充てるの
が正解です。
研究員を任期制にして、成果成果と追い詰めると、確実に成果が出る(実はどうでも良い)研究や、上司の覚えが
めでたいようにイエスマンになる方向へ走ります。上司に逆らい、(成果の保障のない)本質的な研究へ向かったら、
追い出される確率が高まるでしょう。
理研の改革をいうなら、1)性格がズル系の人を管理職につけない。2)任期の期間を3倍にする。3)20%は
自分が本当に追いかけたいテーマを研究できる、時間と少しの資金を与える。科学の本質は自由な精神です。それを
窒息させる組織運営こそが問題です。「発生・再生科学総合研究センターは解体すればいい」は乱暴かつ的外れです。