2014年06月12日

◆ 防潮堤が破壊されたわけ

 津波を受けたとき、巨大なコンクリートの防潮堤がすっかり破壊されたのは、なぜだろうか? その理由は…… ──

 田老地区では、津波を受けたとき、巨大なコンクリートの防潮堤がすっかり破壊された。では、それはなぜだろうか? 津波というものは、ものすごい急流というわけでもないのに、どうしてそれほどの破壊力を持つのか?
 そのわけが長らく疑問だったが、調べてみたら、判明した。

 ──

 まず、津波というものは、時速 300キロぐらいの超高速になることもある。(物理学で波の勉強をするときに教わるはずだ。)
 ただしこれは、「波の速度」であって、「水の移動する速度」ではない。水そのものは、ほぼ上下に移動するだけだ。ただし、その上下に移動する頂点の位置(山の位置)が、時速 300キロぐらいの高速になるのだ。
 このことは、人の波(ウェーブ)で理解するといい。





 ここでは、人の波(ウェーブ)が次々と横に移動する。ただし人は横には移動しない。人はその場で、上下動する(立って座る)だけだ。ただし、その上下動するタイミングが、横に移動する。
 津波が高速で移動するというのも、それと同様である。水そのものが超高速に水平移動するわけではない。

 ──

 ではなぜ、津波を受けて防潮堤の巨大コンクリートは破壊されたのか? 実を言うと、巨大コンクリートは、津波の直撃を受けて破壊されたわけではない。換言すれば、高速な衝撃波を受けて破壊されたわけではない。では、どうして破壊されたか?
 そのことは、実際に破壊された跡の残骸を見るとわかる。次のページに、残骸の写真がいっぱい掲載されている。原形を留めないほど、完全にボロボロになった箇所も多い。
  → 宮古市田老の津波災害

 このうち、特に重要なのは、次の二つの写真だ。画像と説明を、ともに引用しよう。
   taro11.jpg

近づいてみると、隙間が確認されます。このことから、津波の力や水没した時の浮力などにより、防潮堤を造っているブロックが浮き上がったとこがことが分かります。

   taro12.jpg

ブロックの重ね合わせ部分に隙間が開いています。写真のように浮き上がりの少ないブロックは倒壊を免れましたが、大きく浮き上がったブロックは倒壊してしまったものと考えられます。
( → 宮古市田老の津波災害

 ここから、次のことがわかる。(推定を含む。)
 「防潮堤には、ブロックの間の隙間があった。その隙間に水が入って、隙間よりも上のブロック部分に浮力を与えた。そのせいでブロックが動きやすくなった。そこに津波の力が加わって、ブロックが揺さぶられて、はずれてしまった。はずれたあとは、ブロックは津波の満ち引きにつれて転がされた。あちこち転がされるうちに、ブロック同士がぶつかったりして、それらはすっかり壊れてしまった」

 簡単に言えば、巨大なコンクリートのブロックをぶちこわしたのは、水そのものではない。水はコンクリートをあれこれと動かしただけだ。ただし、水によって動かされたコンクリートは、コンクリート同士でぶつかったり、水によって地面で引きずられたりするうちに、すっかり壊れてしまった。

 ──

 以上のことから、教訓を得る。こうだ。
 「防潮堤を作るのであれば、けっして隙間ができないようにするべきだ。隙間ができれば、そこに水が入って、防潮堤の全体が崩壊しかねない」


 では、この教訓は守られているか? 次のページを見るといい。最新のハイテク防潮堤というものが紹介されている。
  → 宮城県気仙沼港でハイブリッド防潮堤

 この図を見ればわかるように、防潮堤は、薄っぺらなものであり、しかも、上・中・下という3部分からなる組み合わせ構造である。つまり、一体化していない。これでは、それぞれの部分(パーツ)の隙間から水が入って、すべてが崩壊する危険がある。

 このハイテク防潮堤を作っているのは、JFEエンジニアリング。名前を見ればわかるように、日本でも有名な大企業であるJFEホールディングスの系列会社である。超一流企業だと言えよう。
 このような企業が作る防潮堤でさえ、先の太郎の防潮堤の教訓が生かされていないのだ。ゆゆしきことだと言えよう。

 ──

 一方で、次のような技術もある。
  → 堤防補強工法 (特願2005-194168号)

 これは、コクリートの各部分を貫くように、上下に交換の柱を通してから、コンクリートを引き締めるもの。このことで、各ブロックが上下に離れることを防ぐ……という趣旨であるようだ。
 これはこれで悪くない。既存の防潮堤の補強には役立つだろう。だが、やはり、全体を1パーツにする方が大切だろう。つまり、もともと隙間ができないようにするべきだ。

 この点では、次のような防潮堤が好ましい。
  → 封入式防潮堤のご提案

 これは、普通の土盛り式の防潮堤(コンクリートで被覆するもの)だが、内部に災害廃棄物を入れる。こうして、災害廃棄物の処理と、防潮堤の建設を、同時になし遂げるものだ。(災害廃棄物とは、ガレキのこと。)
 この方式が好ましい、ということは、すでに提案済みだ。下記のようなもの。


teibou2.gif
クリックして拡大


( ※ これは、私も前に述べたし、他にも提案した人がいるし、復興会議の報告書でも提案された。本サイトでは、「ガレキの処分」という項目で説明した。)

 ──

 ともあれ、防潮堤が壊れる原理がわかれば、それへの対策も可能だ。
 一方、その対策もしないで、やたらと防潮堤ばかりを建設しても、ふたたび同じように津波によって破壊されるだろう。それは愚かしい。その際、どうなるかを考えると、田老地区のかわりに陸前高田市の例も見るといいだろう。ここでも、堤防はすっかり破壊され尽くした。下記に画像たくさんある。
  → 陸前高田市の防波堤?・防潮堤?の無様な姿です!  2
  → 陸前高田市の防波堤?・防潮堤?の無様な姿です!  6

 こういう画像を見れば、愚かな行為に反省することもできるだろう。



 [ 付記1 ]
 ついでだが、上記で紹介した 宮古市田老の津波災害 というサイトでは、旧防潮堤についても紹介している。
 旧防潮堤は、内陸部にある(海に向かって)凸状の防潮堤だが、これは、破壊されずに、原形を留めて残っている。説明文を引用しよう。
   taro13.jpg
 旧防潮堤と新防潮堤の接合部付近です。写真の左側が旧市街地ですが、一部のコンクリート造りの建物を除き全壊しました。倒壊した建物やがれきは、調査時の7月30日にはほぼ片付けられていました。旧防潮堤はがれきによると思われる表面の引っかき傷は在りますが、ほぼ原形をとどめています。
( → 宮古市田老の津波災害

 写真を見ればわかるように、この防潮堤はコンクリート一体型であるようだ。また、サイズはかなり小さめだ。高さは5メートルもないだろう。巨大防潮堤というほどではない。
 当然、津波が来たときには、津波はこの防潮堤を乗り越えて、その内部にまで浸水したそうだ。それでも、この防潮堤のおかげで津波は勢いを失ったので、この防潮堤の外側に比べれば、被害はかなり少なく済んだようだ。
 旧防潮堤にほとんど被害が無いように見えますが、新防潮堤は原形をとどめていません。
 旧市街地は壊滅的な被害を受けていますが、家屋はがれき化しないで形を保っているものも多く見られます。田老第一中学校の校庭に流された家屋も多くあります。
 新市街地にあった住宅はほとんど津波で流されてしまいました。これは新防潮堤が津波により破壊されたことによるものと考えられます。
 防潮堤が津波被害を防ぐことが出来なかったため「役立たず」のような意見もあるようですが、旧防潮堤は津波で破壊されることが無かったため、がれきが堤内にとどまり海への流出を防いだことは一定の機能を果たしたのではないかとも見ることが出来ます。
( → 宮古市田老の津波災害

 この意味で、外側の新防潮堤はほとんど無意味だったが、内側の旧防潮堤は(小さくても)それなりに役割を果たしたことになる。あたりをすっかり水没させるほどの巨大な津波に対してさえ、小さめの防潮堤がかなり有効であったわけだ。……その防潮堤が内陸にあった、ということゆえに。

 [ 付記2 ]
 上のことからすると、内陸防潮堤はかなり有効だが、田老地区を再び守るには、やや力不足だろう。田老地区のようなリアス式海岸の地域では、基本的には、平野部には人が住まない方がいい。人が居住する場所は、高台に限った方がいい。
 ただし、水産設備などの経済的な設備は、平野部に置いてもいいだろう。そこには居住しない、という前提で。

( ※ なぜなら、そこに人がいても、経済活動中であるならば、津波警報を受けて逃げ出すことが可能だからだ。一方、居住地域では、夜間には逃げ出せないこともある。だから、居住地域は、危険なところに置くべきではない。)



 【 関連項目 】

 田老地区の防潮堤については、3日前にも述べたばかりだ。下記。
  → 田老地区の防潮堤と津波
posted by 管理人 at 21:41| Comment(5) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>水そのものは、ほぼ上下に移動するだけだ。ただし、その上下に移動する頂点の位置(山の位置)が、
>時速 300キロぐらいの高速になるのだ。

 3.11のとき、仙台空港から写された、恐るべき津波の動画が忘れられない記憶になりました。
広大な海水が、破壊された家々を浮かべ川のように遡上していく映像でした。

 津波は海水の現実の流れを発生させます。それを理論イメージと結びつけて理解する人は少ないです。
海の波動は確かに振動です。波長が短いときは、海面近くの海水は円運動、下層ほど振幅が小さくなる。
波長が長くなると、長波近似されます。鉛直振幅に比べ水平振幅が遥かに大きくなります。直観的には、
水平方向の往復運動に近い。水深が3kmの海域で発生した長波(津波)の水平振幅は、10倍として、
30kmになります。その場合は、周期の半分の期間、30km区間で、一方向の流れが発生します。

 新北上川を遡上した津波の流速は、最大時で6.7m/sであったと観測されています。例えば、高さ10mの
海水が6m/sで、垂直に立てた「受けて立つ横綱型」防潮堤に向かってきた場合を想定すると、ひとたまり
もないでしょう。旧防潮堤は、幅広い台形で緩やか斜面なので「受け流す型」。壊れる可能性は低いです。

 管理人さんが言われるように、内陸部に「受け流す型」の防潮堤を作るのが人間側の知恵だと思います。
Posted by 思いやり at 2014年06月13日 21:34
田老地区のストリートビューを見るとわかるが、港湾から1キロメートルほど奥の山間の盆地には、平地がっぷりとあって、田んぼや畑になっている。つまり、平地はたっぷりと余っている。
 だから、防潮堤を作って港湾のそばに済むよりは、1キロほど内陸部に住むことにすればいいのだ。そこには津波は来ないのだから。

 「ここより下に家を建てるな」
 という石碑が犠牲者をなくした、という例があった。
  → http://openblog.meblog.biz/article/4531295.html

 この例にならって、防潮堤のかわりに石碑を建てるのがベストかもしれない。それなら費用は 30万円ぐらいで済む。防潮堤に比べて、格安だ。しかも、犠牲者をゼロにすることができる。

( ※ 1キロが遠くて面倒なら、500メートルでもいい。)
Posted by 管理人 at 2014年06月13日 22:16
管理人さまも言及していましたが、
海沿いの仙台空港が水没したにも
関わらず、少し内陸寄りの国道4
号線が無事だったことを思いだし
ました。
Posted by 反財務省 at 2014年06月13日 22:28
石碑の教訓を守らなかった方々が犠牲になったわけで、守らん奴等が悪い。と言われても高台に住む所は無い。金もないのであればここに住むしかないと私なら開き直りそうです。
国が海岸から1km(というか今回水没した地区)を買い取って居住不可地区にし、太陽電池でも並べといたらどうでしょう。
防潮堤の工事費より安いし、流される迄は発電もするし、流されたら新しい太陽電池を設置すれば良いし、流されたゴミもそんなに健康や環境に被害を与えないものなので、いいんじゃないかな?と思います。
Posted by 京都の人 at 2014年06月15日 08:45
太陽電池を並べる金があったら、その金で、高台に仮設住宅を建てることが可能です。1軒500万円ぐらい。
 高台に土地がないのは、農業地域に指定されていて、家を建てることができないから。だから、農地転用許可を出すだけでいい。紙切れ一枚で済む問題。
 これで、高台に大量の土地ができる。その土地は、元の地主のものにして、安価で貸出をすればいい。
 平地に住んでいた人は、月1万円ぐらいの土地賃貸料を払って、国の建てた住居に住めばいい。場所はたっぷり余っている。(上記のストリートビュー)

 費用は? 防潮堤を建設する費用を使えば、たっぷり余って、お釣りがいっぱい来る。防潮堤の中にガレキを埋めれば、ガレキ処理費用も浮く。莫大な金(1世帯数百万円)が余るので、余った金は、移転した人にプレゼントすればいい。

 逆に言えば、それだけの金を無駄にしたあげく、大量の死者を出すというのが、防潮堤建設。

 なお、太陽電池をつくるのは、やりたければやってもいいけれど、その分、上記のプレゼントをする金はなくなります。やるなら、移転した人にやってもらえばいい。たとえば、「500万円上げます。その金で太陽電池を建てたければ、建てていいですよ」と。勝手にすれば。
(私だったらやらないけどね。太陽電池がすべて津波か台風で水没する可能性があるし。リスクが高すぎる。)
Posted by 管理人 at 2014年06月15日 09:01
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