2014年06月10日

◆ クシクラゲの進化と系統

 クシクラゲの神経は、他の生物の神経とは、まったく系統が異なることが判明した。これは何を意味するか? ──

 クシクラゲは、有櫛動物(ゆうしどうぶつ)とも言われる。これは、名前にはクラゲという名前が付いているし、クラゲに似た形状をしているが、クラゲとはまったく別の系統の生物である。詳しくは下記。
  → Wikipedia

kusikura.jpg
クシクラゲの一種( Wikipedia から)


 さて。有櫛動物(クシクラゲ)の遺伝子を調べたところ、有櫛動物の神経は、他の生物(動物)の神経とは、まったく系統が異なることが判明した。(5月下旬のニュース。)
 胚がある程度発達すると、いくつかの幹細胞は特定の遺伝子にスイッチを入れ、それらが神経細胞に分化する。このプロセスは、人間やほぼすべての動物の神経系において同様である。
 しかし、有櫛動物には神経形成遺伝子が欠如していることが分かった。それは、有櫛動物の胚が今はまだ誰も理解していない異なる指示に基づいて神経細胞を造ることを意味している。
 また、有櫛動物がほかの動物に見られる標準的な神経伝達物質を使わないことも明らかになった。神経伝達物質の遺伝子が、有櫛動物に欠けているかまたは活動していなかったが、一つだけ例外として、神経伝達物質のグルタミン酸は確認された。
( → ナショナルジオグラフィック ニュース

 これは何を意味するか? 記事の解説では、「有櫛動物と他の動物とは、別の系統に属する」ということになるそうだ。次のように。
 有櫛動物の神経のユニークな性質は、フロリダの研究者らをこれら海洋生物の新たな進化史の仮説へと導いた。その仮説によると、最初期の生物は神経系を一切持たなかった。これら初期生物の細胞は、環境から直接的に刺激を感知し、周りの細胞に直接信号を送ることができた。
 数百万年後、これらの信号と受容体は神経系の原料物質となった。ただ、その進化は2つの別々の系統に分かれ、1つは今日の有櫛動物、そしてもう1つはクラゲから人間に至る神経系を有するその他すべての動物になったというものだ。
 もし仮に、2系統の平行進化を辿ったとすると、その分岐はかなり前に起こっただろう。現在の有櫛動物によく似た化石は5億5千万年前にさかのぼり、複雑な生命体としては最古の形跡である。
 しかし、正確にいつどのように有櫛動物がほかの動物の系統から分岐したかは、依然として論争の的だ。動物の進化系統樹を描くため、モロズ氏と研究チームは異なる種のDNAの類似性を分析した。それによると、有櫛動物は系統樹の根元でほかの動物から分かれ、独自の系統に属している。)

 この仮説によれば、同時並行的に、二通りの方法で神経が発達したことになる。では、本当にそうか? 

 ──

 私としては、その仮説に否定的である。なるほど、そういうことが起こる可能性はある。可能性だけならば。
 だが、同時期に二通りで似た進化があったとは信じがたい。「ちょうど同じ時期に、同じような進化が同時発生した」というのは、あまりにも御都合主義なのである。
 つまり、数理的に考えて、そのような偶然がちょうどうまく起こるとは思えないのだ。

 これはちょうど、次のことに似ている。
 「ホモエレクトスの一部(ハイデルベルク人)から、同時並行的に、ネアンデルタール人とホモサピエンスが分岐した、という仮説がある。しかし、よく似た種になるそっくりな進化が、同時発生的に起こるはずがない」
 「では、正しくは? 一つの進化が誕生したあとで、そこから新たに、少し違うものが側系で誕生したのだろう」
 「具体的には、ホモエレクトスの一部(ハイデルベルク人)から、原ネアンデルタール人が誕生したとで、そこからホモサピエンスが側系で誕生したのだろう」


 図で示せば下記の通り。


 《 誤 》
                  ネアンデルタール人 
     ハイデルベルク人  
                  ホモ・サピエンス


 《 正 》

   原ネアンデルタール人 ━┳━ ネアンデルタール人
               ┗━ ホモ・サピエンス


 この件は、前にも述べた通り。
  → ネアンデルタール人の絶滅

 ──

 さて。すぐ上の図のことと同様のことがクシクラゲの場合にも起こったのだ、と考えるといい。つまり、こうだ。


 《 誤 》
                  有櫛動物
   祖先種 ━━━━━━  
                  他の動物


 《 正 》

   祖先種(原有櫛動物) ━┳━ 有櫛動物
               ┗━ 他の動物


 後者の図(正しい方)は、次のことを意味する。
 「もともとあったのは、有櫛動物の祖先種(= 原有櫛動物)である。それは、有櫛動物によく似たものだ。それは何億年もの間にほとんど進化しないまま、直系の子孫である(現代の)有櫛動物が生じた。つまり、(現代の)有櫛動物は、何億年も前の祖先種の名残(= 生きた化石)のようなものである」
 「一方、祖先種(原有櫛動物)から、大規模な進化が起こって、祖先種とは大幅に異なる新種が出現した。このとき、大幅な進化と同時に、非常に多様な進化が起こった。その子孫が、今日のほとんどの動物(= 有櫛動物以外)である」


 こう考えれば、すべては整合的に理解できる。

 ──

 すぐ上に述べたことは、遺伝子を見ても、裏付けられる。それは、次のことだ。
 「有櫛動物と他の動物は、それぞれ別の方向に進化したのだとすれば、それぞれ別の遺伝子をたくさん備えているはずだ。しかし実際には、そうではない。有櫛動物の方だけに、多くの遺伝子が欠けているのだ。換言すれば、他の動物は、有櫛動物にはないたくさんの遺伝子が追加されている」


 このことは、先の引用文にも書いてある。再掲しよう。
 胚がある程度発達すると、いくつかの幹細胞は特定の遺伝子にスイッチを入れ、それらが神経細胞に分化する。このプロセスは、人間やほぼすべての動物の神経系において同様である。
 しかし、有櫛動物には神経形成遺伝子が欠如していることが分かった。それは、有櫛動物の胚が今はまだ誰も理解していない異なる指示に基づいて神経細胞を造ることを意味している。
 また、有櫛動物がほかの動物に見られる標準的な神経伝達物質を使わないことも明らかになった。神経伝達物質の遺伝子が、有櫛動物に欠けているかまたは活動していなかったが、一つだけ例外として、神経伝達物質のグルタミン酸は確認された。
( → ナショナルジオグラフィック ニュース

 有櫛動物と他の動物は、それぞれ別の方向に進化した(同じように進化した)のではない。有櫛動物の方はほとんど進化しないで、他の動物の方は大幅に進化したのだ。そのことが、「有櫛動物は多くの遺伝子が欠けている」ということからわかる。
 
 しかも、この「欠けている」ということは、あとになって生じたものではない。仮に、あとになって生じたとしたら、遺伝子の欠陥によって滅びてしまったはずだ。
 では、どうだったか? 有櫛動物は、生物として、何一つ欠けたところはないのだ。それはそれで、きちんとした生物として存続できる。
 一方、他の動物では、新たな遺伝子が大幅に追加された。それはつまり、大幅に進化したということだ。

 その意味で、おおまかに見れば、
    有櫛動物 → 他の動物

 という順の進化があったことを意味する。
 ただし、ここでは、「種の交替」は起こっていない。つまり、「旧種が滅びること」は起こっていない。かわりに「種の追加」が起こっている。つまり、旧種と新種がともに存続する。

 「種の交替」でなく「種の追加」があるというのは、通常の進化と同様である。たとえば、次のように。
  ・ ネアンデルタール人 → ホモ・サピエンス 
  ・ 魚類 → 両生類 
  ・ 両生類 → 爬虫類

 これらの進化では、いずれも、「種の交替」でなく「種の追加」があった。つまり、旧種と新種は同時に並存する。(ただし、長く並存したあとで、旧種の側だけが滅亡することもある。ネアンデルタール人がそうだ。)
 この件については、前にも論じた。
  → 進化論の初歩:進化の意味

 ──

 私の解釈は、すでに述べた。
 問題は、事実だ。事実を知るには、化石を見ればいい。では、化石はあるのか?
 そこで、有櫛動物の祖先種である「原有櫛動物」というものがあるとして、その化石を見たい。そのような化石はあるのか? ある。それは、下記だ。
  → エディアカラ生物群( Wikipedia )
 この記事から、一部抜粋しよう。
 エディアカラ生物群は、約6億 - 5億5千万年前の先カンブリア時代の生物の化石と推定されている。
 多くの動物とされる生物化石が出るが、いずれも殻や骨格がなく、柔組織だけで出来ている。本来、硬い骨格をもたない生物は、化石として保存されることが稀であるが、エディアカラ生物群ではこのような生物が数多く見られる。これは泥流などによって、海底に生息していた生物が一瞬にして土砂中に封じ込められたためと考えられている。
 この生物群には、クラゲ状の「ネミアナ」、楕円形をしたパンケーキ状の「ディッキンソニア」をはじめ、直径数十cmにもおよぶ多種多様な軟体性の生物が見られ、地球最古の多細胞生物ではないかと考えられている。
 
 これらの生物が、現在の生物の分類に対してどのような位置付けにあるのかは良く分かっていない。最古の多細胞動物と考えられている。発見者であるスプリッグを含むオーストラリアの研究者は、それらを現在見られる動物群の最も古い祖先と見なして分類した。他方で進化の形成過程の中で途絶えてしまった側枝であり、それ以降の生物とは全く関係が無いかもしれないという見方もある。
 2000年代後半には、エディアカラ生物群に属するいくつかの生物は、従来カンブリア紀に入ってから突然出現したと考えられていた動物群の直接の祖先であるとされるようになってきている。
 バージェス動物群に見られるアノマロカリスやオパビニアなどの大型捕食動物の出現とともに、カンブリア爆発の際には堅い外骨格をまとった動物が多く見られるようになった。エディアカラ生物群は、新たに出現した捕食動物に食い尽くされて絶滅したとも言われている。

 ここで示されていること(エディアカラ生物群)は、私が先に述べたことと整合的である。
  ・ 約6億 - 5億5千万年前の先カンブリア時代の生物
  ・ 殻や骨格がなく、柔組織だけで出来ている。
  ・ カンブリア爆発の動物群の直接の祖先である


 このような生物群(エディアカラ生物群)があったのだ。それは、その当時に存在した動物のすべてであり、かなり広い範囲の生物があった。そのことが、化石的に示されているのだ。こうして、私が先に述べたことは化石的にも裏付けられる。

 では、エディアカラ生物群と有櫛動物の関係は?
 エディアカラ生物群は、かなり広い範囲の生物群だった。そして、そのうちの一部に、クラゲ状のものがあった。これこそが、有櫛動物の直接の祖先である。

 一方、他のものもあった。エディアカラ生物群は、かなり広い範囲の生物群だったが、そのうちの一部に大進化が生じたのだ。そして、そこから、固い殻や骨格を持つ生物が出現した。そのうちの一部が、下記のものだ。
  → バージェス動物群

 これは、カンブリア爆発の直後のものだ。その範囲はかなり広いだ。
 そのうちの大部分は、滅びてしまった。
 しかるに、そのうちの一部が、のちに今日の動物へと進化した。つまり、まずはピカイアやナメクジウオのような原始的な脊索動物が出現した。そこからさらに、原始的な魚類である板皮類(ばんぴるい)が出現した。これは、骨格はなく、骨板に覆われた魚類である。そこからさらに、硬骨魚類と軟骨魚類が出現した。
  → 魚類の進化
( ※ 硬骨魚類と軟骨魚類は、まったく別の系統である。形が似ているのは、収斂進化であるようだ。)

 ──

 以上のようにして、話はすべて説明が付く。つまり、進化は次の順で発生したことになる。


   原有櫛動物 ━┳━━━━━━━━━ 有櫛動物
          ┗━┳━━━━━━━ 脊索動物
            ┗━┳━ 板皮類(絶滅)
              ┣━━━━━ 軟骨魚類
              ┗━┳━━━ 硬骨魚類
                ┗━┳━ 両生類
                  ┗━ 爬虫類


 
 この図からは、次のことが言える。
 「有櫛動物は、あらゆる動物のなかで最も原始的なものである。これまで最も原始的と見なされてきた脊索動物よりも、もっと原始的である。他の動物とは別系統と言えるぐらい大きく異なっている」

 なお、その理由は、前にも述べた通り。こうだ。
 「有櫛動物がそれほどにも大きな差をもつのは、性が不完全であるからだ。他の動物は、性が完全であり、大きな進化をなし遂げた。それらはいずれもカンブリア爆発以後の生物だ。一方、有櫛動物は違う。カンブリア爆発以前の生物だ。(その意味で、生きた化石とも言える。)」

 《 オマケ 》
 ついでだが、海綿動物のように神経のない動物は、別系統である。それらは、上の原有櫛動物よりも前の時点で、分岐している。(したがってこの図の範囲外にある。)
 


 [ 付記1 ]
 ついでに、カンブリア爆発の話をしておこう。
 
 カンブリア爆発とは、カンブリア紀に起こった、進化の大爆発のことである。このとき、多種多様な種が出現し、かつ、大規模な進化が起こった。つまり、進化の広さも深さも、非常に大きかった。

 カンブリア爆発が起こった時期は、5億数千万年前である。
 カンブリア爆発(カンブリアばくはつ、Cambrian Explosion)とは、古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる、動物の「門(ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象である。カンブリア大爆発と呼ばれる事もある。
( → Wikipedia

 これと先の話を比べると、次のように言える。
  ・ エディアカラ生物群 …… カンブリア爆発の
  ・ バージェス動物群 ……… カンブリア爆発のやや後


 [ 付記2 ]
 なぜ、カンブリア爆発があったか? それについては、「この時期に性が誕生したからだ」というのが、私の見解である。前に述べた通り。
 一部抜粋しよう。
 「性があると、遺伝子の組み合わせに、莫大な多様性が発生する」
 たとえば、3種類の遺伝子対で、2の3乗の組み合わせが生じる。1万の遺伝子対なら、2の 10000乗の組み合わせが生じる。こうして、多様な組み合わせが生じる。
 そして、いったん多様な組み合わせが生じたなら、そのなかでは、多様なものの競争が起こるので、進化の速度もまた急激になる。遺伝子の組み合わせに、無性生殖ならば突然変異を待つので、気の遠くなるほどの時間が掛かったのだが、有性生殖ならば一回生殖をするだけでいい。人間ならば次世代の生殖までに20年ぐらい掛かるが、ミジンコぐらいの有性動物ならばごく短期間で次世代の生殖が起こる。かくて、急激に進化が起こる。かくて、進化の爆発が起こる。
( → 眼の誕生

 つまり、次の順で進化が起こったはずだ。
  ・ エディアカラ生物群が存在した。
  ・ やがてそのなかの一部で、性が誕生した。
  ・ 有性生殖によって、遺伝子の多様な組み合わせが生じた。
  ・ そのせいで急激な進化が起こった。
  ・ カンブリア爆発が生じた。
  ・ 多様な生物種の一部が、バージェス動物群。
  ・ 多様な生物種の一部から、魚類などに至る生物群。

 これで筋は通るだろう。

 [ 付記3 ]
 上の話で筋は通る。だが、二つの疑問が残る。
 「エディアカラ生物群ではいまだ性が誕生していなかったのならば、その直系の子孫である有櫛動物もまた性をもたないことになるが、本当にそうか?」
 「エディアカラ生物群が性をもたなかったのだとすれば、その後にいきなり性が出現したというのは、ご都合主義にすぎないのでは?」

 この二つの疑問があるだろう。では、どう答えるか?
 実は、この二つの疑問には、同時に答えることができる。次の事実による。
 「有櫛動物(クシクラゲ)は、不完全な有性生物である。つまり、雌雄同体である」


 有櫛動物は、たしかに有性生物ではあるのだが、不完全な有性生物なのである。たしかに性はあるのだが、雌雄同体であり、自家生殖する。
 そして、自家生殖をしている限りは、他の個体との「遺伝子の交換」はないのだから、その点では無性生殖と同様だ。
 ただ、常に自家生殖をするのではなく、たまには他の個体との有性生殖もなす。そういう意味では、無性生殖と有性生殖との中間的な存在だとも言える。

 [ 付記4 ]
 一般に、自家生殖をする動物は、あまり移動しない。そのせいで、他の個体と出会うことも少ない。つまり、運動能力の低さと、自家生殖することとは、密接な関連がある。(運動能力が低ければ、他の個体と出会うことも少ないので、自家生殖が必要となる。)
 一方、運動能力が高まれば、他の個体と出会うことが多いので、自家生殖は不必要となる。ここで初めて、真の有性生殖が出現したことになる。
 そして、運動能力の高さには、「目の誕生」や「左右対称の肉体」が必要だ。こうして、ピカイアやナメクジウオのような動物が出現すると同時に、完全な性をもつ動物が出現したことになる。



 【 関連サイト 】

 (1)
 → 新説:動物の共通祖先はクシクラゲ?(National Geographic News)

 本項とは別の根拠で、「最初の動物はクシクラゲだ」と結論している。ただ、海綿動物との関係では、疑わしい点もある。

 (2)
 →  動物進化の起源は海綿動物?(National Geographic News)

 こちらは、海綿動物の方が早い、と結論している。こちらの方が、本項とは整合的かもしれない。
( ※ 実は、本項は、海綿動物の位置については、特に論じていない。海綿動物との関係については、何とも言えない。海綿動物は神経がないので、海綿動物の方が早いと思える。ただ、(1) によれば、海綿動物よりも有櫛動物の方が早いらしい。とはいえ、それは疑わしいが。)

 ──

 上の(1) については、下記の記述がある。
 有櫛動物は長年にわたって分類学者を悩ませてきた。クラゲ類との類似性のために、かつて刺胞動物(クラゲを含む門)の姉妹群として系統樹のなかに位置づけられていた。また、有櫛動物が光を検知し、獲物を知覚し、筋を動かす神経系を持っているのに対して、海綿動物と平板動物と呼ばれる平らな多細胞の小塊には神経系がない。それに基づいて多くの研究者が、海綿動物と平板動物が分岐した後の他の動物の共通祖先から有櫛動物を分岐させていた。ところがいま、有櫛動物が多くの共通遺伝子を欠くことを示すデータを引っさげて、一部の科学者たちはそれが最初の動物に最も近縁な現生動物であると強く主張している。
 今回のテマリクラゲの一種のゲノムデータは、他の有櫛動物からの遺伝子発現データとともに、この理論を支持するとモロスらのチームは主張している。たとえば、他の動物では遺伝子発現を調節するマイクロRNAが、このテマリクラゲのゲノムにはまったく姿が見えない。
 モロスによると、最大の驚きは多くの神経系の標準要素がなかったことだ。知られているほぼすべての神経系は同じ10個の主要神経伝達物質を使っている。だがテマリクラゲはたった1個か2個しか用いていないように見える。まだこの種で見つかっていない、特別なタンパク質ホルモンなどの分子を使ってこの生物の神経系が完成されていると、モロスは推測している。
( → 転載サイト

 これと整合的な仮説は、次のことしかあるまい。
 「有櫛動物、海綿動物、平板動物の三者に共通するような共通祖先は、今日では残っていない。上記の三つの部門は、6億数千万年前から今日まで残ってきたが、その共通祖先となる生物の部門は、とっくに滅びてしまった。ゆえに、上記の三者に共通するような共通祖先は、存在しない。つまり、この三者はいずれも、どれが最も古いとも言えない。つまり、いずれも同程度に古い。つまり、この三者は、6億数千万年前にはすでに別々の系統のものとなっており、どれが古いかを比較してもナンセンスである」

 私の予想では、7億年以上も前の生物は、今日の生物には「生きた化石」を見出すことはできず、地中の化石にしか痕跡を伺うことはできない。ただし、骨がないので、そのような化石を見出すことは困難だろう。しかも、個体は小さいので、なおさらだ。
 骨がないのに化石が見つかったエディアカラ生物群は、かなり運が良かったと言うしかない。そういう例外的な現象が7億年前にもあったと思うのは、楽観的すぎる期待だ。
 7億年以上も前の生物については、「何もわからない」ということになりそうだ。ただ、古細菌は残っているし、そのくらいの理解はできるので、それで我慢するしかない。



 【 関連書籍 】



ワンダフル・ライフ ― バージェス頁岩と生物進化の物語 (文庫)


 バージェス動物群に語った、進化論の名著。有名な本です。
posted by 管理人 at 23:58| Comment(3) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 関連サイト 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2014年06月11日 06:37
面白い話題提供深謝。
お話は「門」の発生ということかと思います。門はカンブリア紀以前に発生し、その後門の発生は確認されていないと理解しています。何故、門は数億年にわたって新たな追加がないのか?考え方としては、生命の発生から何らかの理由によって多様な門が一時的に発生し、その後淘汰され、後は一方的に、まるで宇宙の創世以降のように、単に多様化していったと考える方が合理的ではないでしょうか。有櫛動物と脊索動物以外にも門はいくつかあるわけですし・・・
Posted by 時の旅人 at 2014年06月12日 12:39
> 何故、門は数億年にわたって新たな追加がないのか?

 門というのは人間が勝手に作った分類項目だから、そう見えるだけです。
 仮に新たな門があるとしたら、神経のある動物以降ではなくて、無脊椎動物のなかでいくつかの門が出現していたはずですが、人間はそれを門とは捕らえず、その下の下位項目に分類してしまったため、新たな門が発生していないように見えるだけです。
 実際には、新たな門が出現していた、というような認識も可能でしょう。その場合には、無脊椎動物の門よりも下の下位項目を、一段ずつレベルアップすれば済みます。(おおまかに)
 あるいは、両生類以降の脊椎動物を、新たな門にして分類することも可能でしょう。
 分類なんて、人間が勝手に決めた分類法だから、いくらでも変更が可能です。今日の分類法は、たまたまそれが多数派になっていると言うだけです。
 現実には、生物にはきれいな分類ができるわけではありません。かなり連続的です。
 そのせいで、「鳥類は恐竜だ」というような主張も生じている。ま、そういう見方ができる余地はある。分類学は、きっちりと割り切れるようなものじゃない。そういうこと。

> お話は「門」の発生ということかと思います。

 そういう見方もできますね。見方はいろいろ可能です。
 ただ、基本的には、「カンブリア爆発よりも前の進化はどうだったか?」というのが、直接的なテーマです。
Posted by 管理人 at 2014年06月13日 19:12
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ