2014年05月04日

◆ 新国立競技場の命運は?

 新国立競技場をもし建設するとしても、オリンピック後にただちに解体するべきだ。 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2014-05-03 です。)


 新国立競技場は、巨額の費用がかかるにもかかわらず、政府は建設を強行するつもりだ。
 ま、どうしても強行するつもりなら、仕方ない。しかし、その後の予定もきちんと立てておくべきだ。
 では、どうするか? 東京オリンピックの後は、ただちに解体するべきだ。

 「建ててすぐに解体するなんて、馬鹿げている」
 という反発が来そうだが、実は、解体するのが最も合理的である。なぜなら、新国立競技場は、使い道がないまま、莫大な維持費がかかるからだ。これ以上、無駄な赤字の垂れ流しを防ぐためには、ただちに解体することがベストなのである。
( ※ ケインズの言う「穴を掘って埋める」のと同様である。資源を無駄遣いするだけ、もっと悪いが。)

 実は、解体しないで、そのまま維持している例は、他国に先例がある。そこでは、使い道のない施設に巨額の維持費が必要となって、「解体しろ」という声が上がっている。それが最も合理的だからだ。
 《 W杯、熱狂のち苦境? スタジアム維持に巨額費用 》
 開幕が来月に迫るサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、早くもW杯後のスタジアム利用について懸念が広がっている。4年前の開催地、南アフリカでも、W杯用に建てられた一部のスタジアムは巨額の維持費による赤字に苦しみ、「負の遺産」と化している。
 収容人数4万4千人で総工費は約6億レアル(約275億円)。市中心部からほど近い場所に、近代的なデザインの巨大な姿を現している。
 地元では無用の長物を意味する「エレファンチ・ブランコ(白い象)」という言葉で、早くも批判の的だ。維持費が月50万レアル(約2290万円)もかかるためだ。
 マナウスでは試合数は年間15〜20程度。試合の収益だけでは、スタジアムの維持費を捻出できない。

 2010年にアフリカで初めてW杯が開催された南アフリカ。南西部ケープタウンの青い海と垂直に切り立った「テーブルマウンテン」を望む一等地には、巨大なスタジアムがそびえ立つ。W杯では観客であふれたこのスタジアムは、閑散とし、「ホワイト・エレファント」の汚名を着せられている。
 約45億南アフリカランド(約450億円)を投じて建設され、5万5千人が収容できる。だが、W杯後は地元サッカーチームが試合を行っても、客席は1割前後しか埋まらない。年間6800万ランド(約6億8千万円)の維持費に対し、収入は同1700万ランド。赤字は税金で埋めている。
 南アの著名な市民活動家のテリー・クロフォード・ブラウン氏は「ケープタウンには既にたくさんのスタジアムがあったのに造ってしまった。即座に解体すべきだ」と話す。
( → 朝日新聞 2014年5月2日

 というわけで、莫大な赤字の垂れ流しを防ぐには、(オリンピックの終了直後に)新国立競技場を解体するのがベストなのである。
 そして、そのあとは、当面は草原にでもしておくといい。なぜなら、一句が思い浮かぶからだ。

   夏草や 兵どもが 夢の跡
  
 この一句を刻んだ 石碑 でも建てておけば、きわめてシュールである。これなら、費用はゼロ同然で、芸術ができる。


kusahara.jpg

画像出典:千葉ニュータウン21住区 保全会




 【 補説 】
 政府は「赤字の垂れ流しにならない」と言って、将来の収益計画を公表している。だが、それは「黒字にすること」を先に決めた、ただのつじつま合わせである。机上の数値であり、実現は不可能だ。このことは、すでに識者に批判されている。

 鈴木氏が最も問題視するのが、コンサートなどを年十二日行う点だ。
 JSCの収支見通しは、こうしたイベントを収益の柱とし、ほかにサッカー二十日、ラグビー五日、陸上十一日の利用を見込む。管理費などを差し引き年四億円の黒字になる試算だ。
 コンサートは「一度やると数千万円の収入になる」(スタジアム関係者)が、鈴木氏は「確かにドル箱だが、芝への影響が大きく、十二日も行えば肝心のスポーツで使えなくなる」と実現性に疑問を呈する。
 芝への悪影響を避けるため多くの施設はコンサートを年数回に限定。一二年度実績で味スタは三日、埼玉スタジアム(さいたま市)はゼロだった。
 スポーツの利用も「八万のスタンドを満員にできる試合がどれだけあるか。世界陸上でも難しい」と、見通しの甘さを指摘する。
 実際、大規模な公共スポーツ施設で黒字運営の例はほとんどない。埼玉スタジアムや日産スタジアム(横浜市)でも一二年度にそれぞれ二億五千二百万円、四億三千六百万円の指定管理料を自治体から負担してもらって収支を保っている。
( → 東京新聞:新国立競技場 収支計画黒字ありき

 以上では、収益性の見通しが立たないことが指摘されている。だが、もっと大事な点がある。次のことだ。
 「スポーツやコンサートなどの需要の総量は決まっている。新国立競技場ができたからといって、需要の総量が増えるわけではない。とすれば、新国立競技場に金が流れ込んだ分、他の競技場では、金が減る。新国立競技場に10億円の収入が入れば、他の競技場で10億円の減収が生じる」
 結局、新国立競技場で「維持費の6億円を差し引いて4億円の黒字だ」と喜んでいても、他の競技場では「10億円の減収」が新たに発生する。
 とすれば、これらの全体を見ると、「4億円の黒字」と「10億円の減収」を相殺して、6億円の赤字が新たに発生するだけだ。(この6億円の赤字は、新国立競技場の維持費の分である。それが新たに追加発生する費用だ。)

 要するに、次の通りだ。
 左手にあった 10億円を、右手に移すと、右手では 10億円増えた。これを見て、「10億円増えた。儲かった」と喜んだ阿呆がいる。彼は大喜びして、移すためのコストを6億円払った。それでも、「差し引きして4億円も増えた」と大喜び。
 彼はこのとき、左手で 10億円が消えたことに気づかない。気づかないまま、「右手で4億円増えた」と大喜び。
 馬鹿丸出しである。

         10      4 
        ●  →   ●
       ┗━━┛   ┗━━┛
            ↓
           
            6


 では、この問題を、どう解決すればいいか?
 簡単だ。コストとしての6億円を払わなければいい。そのためには、コスト(施設維持費)をなくすために、新国立競技場を解体してしまえばいいのだ。




 [ 付記1 ]
 「維持費の6億円というのはどこから出てきた数字だ?」
 という疑問が生じるだろう。そこで根拠を示す。
 冒頭の記事によると、次の数値が出ている。
  ・ 総工費は約6億レアル(約275億円)

  ・ 維持費が月50万レアル(約2290万円)
 月50万レアルならば、年600万レアルであり、これは総工費6億の1%である。つまり、年間維持費は総工費の1%。
 新国立競技場は、総工費が2000億円程度と見込まれるので、維持費はその1%で、年間 20億円程度。これが常識的な数値であろう。
 つまり、実際には、6億円ではなくて、20億円というのが、妥当な数値である。(維持費として。)
 ただ、本項では、大甘に甘く見て、6億円に減らしておいた。実際には、10億〜20億円程度の維持費がかかるだろう。とすれば、年4億円という黒字の見通しは、あっさりと吹っ飛ぶ。
 はっきり言って、年4億円という黒字の見通しは、ただの捏造の数値である。現実には、そんな見通しは成立しない。すべてがうまく行ったとしても、初年度から大幅赤字だろう。それに加えて、他の競技場の赤字が年 10億円も加算される。
 どう見ても、さっさと解体するのがベストである。
 
 [ 付記2 ]
 次の反論が来るかもしれない。
 「解体には費用がかかるぞ。解体費はどうするんだ?」
 それはご心配なく。解体してしまえば、更地になる。更地になれば、あとは都心の一等地として利用できる。その利用量だけで、巨額の収入になる。
 そもそも、何の使い道もない無駄な施設を解体して、有意義な施設に作り直せば、それだけで効率は大幅にアップするのだ。特に、都心の一等地であれば、なおさらだ。

 解体と聞くと、単なる破壊活動だと思えて、「すごい無駄」と感じられるかもしれない。しかし、「無用のものを破壊して、役立つものを作る」という「スクラップ・アンド・ビルド」だと思えば、無駄ではないとわかる。
 経済学で言う比較効用説みたいなものだ。たとえば、王貞治選手がすごく優秀な投手だとしても、彼の打者としての能力がはるかに上であるとすれば、彼の投手としての能力はつぶしてしまった方がいいのだ。「もったいないからつぶすのをやめよう」と思えば、それは、彼の打者としての才能を開花させるのを阻害する。それではかえって無駄なのである。
 新国立競技場も同様だ。そこが都心の一等地であれば、たいして役に立たない新国立競技場など、つぶしてしまった方がいいのだ。
 
( ※ ただし、サッカー専用球場にするならば、話は別だ。サッカー専用球場ならば、いろいろと役立つ。この件は、前に述べた通り。下記。)



 【 関連項目 】

  → 新国立競技場の問題点と代案
 
 なお、「すぐに解体するぐらいだったら最初から作らない方がマシだ」という当り前の方針を取るならば、次の項目を参照。
  → 新国立競技場を無料で

 下記も参照。
  → 新国立競技場の解決案
posted by 管理人 at 17:24| Comment(4) |  東京五輪・豊洲 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ならば、新国立競技場とか作らずに現状の国立競技場でオリンピックを開催すればいいのに。そもそもオリンピックだけ開催して解体なんて建築費の無駄としか考えられないし。
Posted by 通りすがり at 2014年05月06日 23:02
まあ、オリンピック後に新国立競技場を解体した後に、東日本大震災や福島原発事故の避難者のための住宅団地にするなら意義あるけどね。
Posted by 通りすがり at 2014年05月06日 23:13
> ならば、新国立競技場とか作らずに

 すぐ上の「最初から作らない方がマシだ」の箇所を参照。
Posted by 管理人 at 2014年05月06日 23:14
はずかしながら、最近になってこの問題について知りました。
いくつか記事を読みましたが、管理人さんの記事が私には最も説得力がありました。
中でも「無料で」のパターンが一番いいのではと思いました。
このような提案をこのサイト以外でも発信されたりとかはなさってますか?
素晴らしい案だと思うので、もっともっと多くの方に知ってほしいと思うほどです。
また、先日建築家の伊藤氏によって改修案が発表されたそうですが、どう思われましたか?
Posted by るな at 2014年05月15日 15:46
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