2014年05月01日

◆ STAP細胞事件の再発を防ぐには?

 STAP細胞の事件を反省して、事件の再発を防ごう、という試みがある。しかし、見当違いだ。 ──

 STAP細胞の事件を反省して、事件の再発を防ごう、という試みがある。
 《 理研:倫理研修に半数が不参加 管理職550人に義務付け 》
 新たな万能細胞「STAP細胞」論文に不正があったとされる問題で揺れる理化学研究所で、研究室のリーダーら管理職全員に義務付けられた研究不正防止などの研修に、論文筆者の小保方(おぼかた)晴子氏(30)を含め半数以上が参加していなかったことが分かった。
 理研では2004年に論文のデータ改ざん問題が起き、研究不正防止の体制強化のため05年4月に「監査・コンプライアンス(法令順守)室」を新設。同年12月には不正の定義などを明記した「研究不正行為への対応方針」を公表し、翌年に文部科学省がまとめた指針のひな型になった。
 同室が研究者の倫理向上のために始めたのが、研究不正を題材にした外部講師による年1〜2回の講演会。しかし全職員約3400人のうち100人程度しか集まらず、09年度で終了した。
 それに代わって11年度から約550人の管理職の参加を義務化した研修が始まり、ハラスメント防止や労務管理などとともに、研究室内での不正防止対策も講義に盛り込んだ。しかし毎年4月の研修会の出席者は11年88人、12年59人、13年37人。パソコンで希望の時間に聴ける「eラーニング」の受講者を加えても、今年4月時点で研修を終えた管理職は46%にとどまる。13年3月に研究ユニットリーダーに採用された小保方氏も、この研修に参加していなかった。
( → 毎日新聞 2014年04月29日

 こういう記事を読んで、「これからは研修をきちんとすればいいのだ」と思う人が多いだろうし、理研も研修制度を改善するつもりなのだろう。しかし、見当違いだ。

 そもそも、今回の事件は、画像の不正より、再現性ができないゴミ実験であったことが根本理由だ。
  → 《 お知らせ 》(笹井さんの会見) 【 追記5 】
 この実験では、再現性をきちんと確認すればよかった。そうすれば、実験ミスにすぎない論文が投稿されることもなかった。
 一方、「不正をしない」という方針をいくら貫いたところで、「実験ミス」を根絶することはできない。実際、学会誌には実験ミスによる論文が多数掲載されている。これまでに「論文の取り下げ」をした論文はたくさんあるが、そのかなりの部分が「実験ミスが理由」と判明している。これほどにも多数の実験ミスがあるのだ。そして、それを解消するには、記事にあるような研修をいくらやっても無駄だ。それは「意図的な不正」をなくすことはできるかもしれないが、「うっかりによるミス」をなくすことはできないからだ。つまり、記事にあるような研修をいくらやっても、それは STAP細胞事件の再発を防ぐためには何の役にも立たないわけだ。
 ひるがえって、「再現性を確認する」という方針ならば、絶大な効果を発揮する。

 ──

 では、「再現性を確認する」という方針のためには、どうすればいいか? 
 ここで私は、二つの制度改革を提言する。いずれも実験ノートに関するものだ。
  ・ 抜き打ちチェック(実験ノートを)
  ・ ネット公開(実験ノートを)

 以下で順に述べよう。

 (1) 抜き打ちチェック(実験ノートを)

 組織に属している研究者に対して、「研究状況のチェック」という形で、実験ノートを抜き打ちチェックするべきだ。
 これに対しては「情報の漏洩」を心配する人がいるだろうから、チェックするのは専門の検査員に任せて、守秘事務を課すればいい。また、その人は、専門知識がない方がいい。単に実験ノートがきちんと取れているかという形式的なチェックをするだけで良く、中身の理解は不要だ。
 できれば、分野外の人がいい。
  ・ 生物系のチェックをするのは、物理系の人
  ・ 物理系のチェックをするのは、生物系の人

 こういうふうならば、内容は理解できないはずだから、情報漏洩の心配もないだろう。
 なお、「いつ他人が見ても内容がわかるように、きちんと明らかに書いておく」という方針を立てている研究室もある。それを見習うべきだろう。

 (2) ネット公開(実験ノートを)

 すぐ上の述べたことを、ネット上で実行するといい。つまり、論文の実験ノートを、自主的にネット上で公開するといい。(ただし論文の公開に限る。この点では、公開にチェックする (1) とは異なる。)
  ・ 紙の実験ノートならば、スキャンして PDF にする。
  ・ 電子式の実験ノートならば、そのまま公開する。

 こういうふうにして、電子ノートを公開すればいい。

 ──

 以上の (1)(2) の方法を示した。このような方法を取れば、再現性は確保されるので、今回の事件の再発を予防できるはずだ。

 (1) 実験の最中に実験ノートを確認すれば、その再現性がデタラメであったことが確認できるので、もともと論文を提出することにはならなかったはずだ。
( ※ 実際には、笹井さんは実験ノートをろくに確認していなかった。一部をざっと見ただけ。ちょっと目を通したという程度。 → 会見全文

 (2) 実験の後で詳細な実験ノートを公開すれば、実験プロトコルの再現が容易であったはずで、再現性のチェックが容易にできたはずだ。
( ※ 実際には、小保方さんの実験ノートはいい加減すぎたので、再現実験は困難だった。詳細な実験ノートがもともと存在しない状況だったので、詳細な実験ノートを公開できなかった。ここで、「詳細な実験ノートは存在しません」と告白しておけば、誰もその実験を信用しないから、もともと事件にはならなかったはずだ。また、「詳細な実験ノートは存在しません」という論文が Nature に掲載されることもなかったはずだ。)

 ──

 まとめ。

 事件の再発を防ぐために、不正をしないための研修などをしても、無駄である。
 むしろ、再現性を確保する制度を確立するべきだ。具体的には、次の二点。
  ・ 抜き打ちチェック(実験ノートを)
  ・ ネット公開(実験ノートを)

 この二点によって、再現性が確立できる( or 再現性が確立できない論文は拒否される)ので、事件の再発を防止できる。
 


 【 追記 】
 再現性を確認する手順で、一番肝心のことを書き忘れた。次のことだ。
 「本人以外、複数の共同実験者が自分で実験して、再現性を客観的に確認すること」
 これが大事。今回も、若山さんや笹井さん(およびその他)が、これを自分で実験して確認するべきだった。
 なのに、「自分では実験もしないで、論文に名前だけ出そう」という卑しい根性が、物事の根源かもね。
posted by 管理人 at 21:41| Comment(7) |  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日経サイエンスを読んでください。
図書館とか立ち読みで構いません。

丹羽氏と若山氏のインタビューが載ってますが、
二人とも再現実験をその目で見たと言ってます。

百聞は一見に如かず。二人が特にノートを特に確認しなかったのは、目の前で再現実験が成功したからでしょう。
ノートの記載が不明だったとしても、再現実験を
目の前で成功されたら、信用する。

石器ねつ造と同じ感じがしてきました。
Posted by それでは防止できない at 2014年05月02日 09:01
> 二人とも再現実験をその目で見たと言ってます。

 それは再現実験とは言えません。手品を見た人が、「私は手品を再現しました」と言うのと同じ。

 再現実験というのは、他人がやるのを見ることではなくて、自分の手で実現することです。用語をきちんと理解しましょう。
Posted by 管理人 at 2014年05月02日 09:40
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2014年05月02日 13:13
科学者は、甘ったれた「性善説」を捨てろということ。

分業だか共同研究だか知らないが、他人を信用するな。他人は常に研究不正の容疑者だと疑え。

そして組織としての研究機関は、性悪説に立ち、研究発表に当たっての内規の厳格化、違反者に対する厳罰化を強力に推し進めること。できれば文科省による上からの締め上げが望ましい。
Posted by 結論は at 2014年05月02日 14:57
> 違反者に対する厳罰化を強力に推し進める

 別に厳罰化なんか必要ないと思いますけど。人が死ぬわけじゃないし。それだったら駐車違反やスピード違反の厳罰化の方がずっと大切です。人が死ぬこともあるし。

 また、グローバル化の時代に、日本だけ or 日本人だけの厳罰化は、意味がない。下手をすれば研究者が日本から逃げてしまいます。
Posted by 管理人 at 2014年05月02日 15:23
交通罰則の手ぬるさは嘆かわしいばかり。本題から逸れるので、深くは触れませんが・・・。

厳罰化により日本から逃げ出す研究者がいたとすれば、それはやましいところがあるということ。第2、第3のスタッフ細胞事件は、日本国外で起こして貰えば良いのです。それにより国益が失われるのでは?というのは、原発を再稼働したくて仕方無い、東電の論理と同じですね。
Posted by 仰る通りです at 2014年05月02日 15:55
やましいから国外へ逃げ出すんじゃないと思います。
ちょっとしたミスで厳罰に処された研究者は、それ以後この国では研究開発に従事する事はできません。
この国に留まるのであれば、そんなリスクを負うより研究開発以外の職種を選び、研究開発を続けたいのなら海外へ行く。となります。
世界中のどこよりも些細なミスに対して厳罰化した結果、論文のミスは消えるでしょうが、この国の殆どの研究開発従事者は処断され、記録整理に長けた科学者だけとなるでしょう。
Posted by 京都の人 at 2014年05月03日 00:45
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