2014年04月14日

◆ STAP細胞の真相は Oct4 発現の偽陽性

 STAP細胞の真相の一つは、 Oct4 発現の偽陽性だ。つまり、陽性ではないのに「陽性だ」と示されることだ。それは「捏造」とは異なる。 ──

 STAP細胞の確認の方法として、Oct4発現がある。これについて、「 Oct4発現は本当にあったのか? 自家蛍光ではないのか? 小保方さんは自家蛍光を誤認しただけではないのか?」という疑いがあった。「理研は自家蛍光を誤認したのではないか?」という疑いもあった。
 それに対する回答がとうとう得られたようだ。

 根拠の一つは、理研の声明だ。
 理化学研究所の広報担当者は14日、STAP細胞の論文共著者以外にも部分的な再現に成功した研究者がいることを明らかにした。論文の発表前後に理研内で1人ずつが試し、万能性を持つ細胞に特徴的な遺伝子が働く様子まで確認したという。
 研究者は違う人で、2人の研究者が途中までの再現に成功したことを認める一方、「氏名などは公表できない」と話した。
( → 毎日新聞 2014年04月14日

 もう一つは、香港の実験だ。前に下記項目で紹介した。
  → STAP細胞の再現実験(香港)
 この項目の最後に追記しておいたが、次のように言える。
 「 Oct4発現は確認したが、発現の程度は通常時の8倍程度に過ぎない。ES細胞ならば数百倍も発現するので、8倍程度では発現しているとは見なせない」

oct4.png
出典:Wiredロケットニュース

 
 このこと(STAP細胞の存在に否定的)は、香港の教授の見解だ。
 だが、これまでの諸点を知って、新たに考え直すと、次の結論が得られる。
 「 小保方プロトコルやバカンティプロトコルなど、様々な手順では、いずれも Oct4発現 を確認できる。それは、数百倍というレベルではなく、8倍ぐらいのレベルであり、多能性の確認にはとうてい及ばない。それでも、自家蛍光とは明らかに異なり、まさしく Oct4発現 を確認できる」


 要するに、次のことは否定される。
  ・ 小保方さんが確認したのは自家蛍光だった。
  ・ 小保方さんは確認してもいないことを語った嘘つきだ。


 では、真相は何か? こうだ。
 「 Oct4発現は、8倍ぐらいのレベルで存在した。つまり、多能性マーカーはまさしく発現した。ただしそれは、多能性の存在を意味しない」


 その本質は、こうだ。
 「多能性マーカーの発現は、多能性の存在を意味しない。そこにあったのは、事実の証明ではなくて、誤認であった」

 
 結局、ここにあったのは、「誤認」という形の実験ミスだったのである。そして、その理由は、小保方さんが嘘をついたことではなくて、多能性マーカーが不正確に「陽性」の反応を出すことだった。一言でいえば、多能性マーカーが「偽陽性」を出すことだった。これによって実験の誤認が生じたのである。

 思えば、小保方さんやバカンティ教授が「瀕死の細胞が多能性をもつ」という発想を抱いた理由は、この偽陽性だった。実際には陽性ではないのに、多様性マーカーは「陽性」を示す。そのせいで、誤認が起こった。
 かくて、実験は実験ミスとなった。論文は無意味になった。そして、ここまでは、どうってことのない普通の「失敗実験」にすぎなかった。
 ところが、ここに、小保方さんの「ずさんさ」が加わった。過去のコピペという前歴も加わった。そのせいで、「すべては捏造だ!」という疑惑が生じた。そのあげく、日本中で捏造狂想曲が奏でられた。 
 しかし、捏造などはなかったのだ。あったのは、「偽陽性による勘違い」だったのだ。そしてまた、STAP幹細胞についてあったのは、「 ES細胞のコンタミ」だったのだ。( → 前出

 結局、今回の事件は、次の二つが骨格だ。
  ・ 多能性マーカーにおける偽陽性(による誤認)
  ・ ES細胞のコンタミによる実験ミス(による誤認)

 こうして、二つの誤認が起こって、「 STAP細胞が存在する」「 STAP幹細胞が存在する」という二つの虚偽が主張された。
 それらはたしかに虚偽だった。それらを見た人々は批判した。「捏造だ! とんでもない悪党のしわざだ!」
 しかし、そうではなかったのだ。本当は、上の二つの誤認があっただけだったのだ。
 そして、この二つこそが、STAP細胞事件の真相なのである。

( ※ 今回の騒動は、たった一つだけ、真実を明かした。それは、「多能性マーカーは偽陽性を呈することがある」ということだ。これによって、以後の実験ミスを防ぐことができるだろう。……これはこれで、一つの貢献だ。あまりにも小さな貢献ではあるが。大山鳴動ネズミ一匹かな。)

 ──
 
 【 追記1 】
 上の二つの「誤認」は、きちんと区別してほしい。
 「偽陽性」という概念で説明されるのは、「 Oct4発現」の箇所だけである。
 一方、それ以後のこと(多能性の証明に関わること)は、すべて、ES細胞の「コンタミ」で説明される。たとえば、テラトーマとかキメラマウスとかだ。
 この二つは、別々のことなので、混同しないようにしてほしい。

 【 追記2 】
 「偽陽性とは何か?」という質問に答えよう。
 一応、推定は付く。次のことだ。
 「瀕死の細胞は、死ぬ前に DNA がほぐれて、Oct4 遺伝子が活性化する。そのせいで Oct4 陽性となる」
 これは、いくらか正しそうだが、十分ではない。「 sox2 は陽性にならず、Nanog は少し陽性になる」という事実があるからだ。(上の図を参照。)
 偽陽性が何であるかは、はっきりとは判明していない。まずは「偽陽性」という現象を理解すべきだ。そのあとで、その原因を調べることが研究課題となる。
 一方、「偽陽性」という現象を認知しないまま、「捏造だ、捏造だ」と大騒ぎしている状態では、現象についての原因はわからないままだ。捏造騒動は、真実に近づくどころか、真実から遠ざかる道なのである。つまり、科学とは正反対の道。

 【 追記3 】
 笹井さんの会見が 16日にあるそうだ。ならばこのとき、「 STAP細胞が存在すると確信する理由」を質問してほしいものだ。特に、次の点だ。
 「 STAP細胞が存在するというのは、Oct4発現の偽陽性を誤認したものではないのか?」
 この点を質問することが非常に重要だろう。
 ただし、質問者は注意してほしい。これは笹井さんを批判するものではない。むしろ「捏造説」を回避して、「誤認」という逃げ道を用意するものだ。
 ここで、誤認は、特に悪いことではない。というのは、「偽陽性」は未知の現象だからだ。未知の現象を正しく理解できなかったというのは、何ら咎められることではない。質問者は、意地悪にならずに、紳士的に質問してほしいものだ。
 



 本項の話題は、以上でおしまいです。
 以下は、ついでに言及しますが、別の話題です。


 【 補説 】

 小保方さんが新たな説明文書を出した。これについて2点、言及しておく。

 (1) 200回の成功

 「 STAP細胞の作製いに 200回も成功した」
 という小保方さんの会見発言に対して、
 「そんなことはありえない」
 という批判が来たが、私は、「毎日1回ずつ実験できる」と解説して、批判を否定した。
  → 捏造の論議は無駄
 私がここで述べた通りのことを、小保方さんは新たに反論文書で説明した。つまり、私の言ったことが正しく、批判者の言ったことは間違いだったわけだ。
 小保方さんの説明を丸ごと引用すると、下記の通り。
 200回以上成功したと述べた点について
 私は、STAP細胞作成の実験を、毎日のように行い、しかも1日に複数回行うこともありました。STAP細胞の作成手順は、@マウスから細胞を取り出して、Aいろいろなストレスを与え(酸や物理的刺激など)、B1週間程度培養します。この作業のうち、@Aの作業は、それ自体にそれほどの時間はかからず、毎日のように行って並行して培養をしていました。培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認してSTAP細胞が作成できたことを確認していました。このようにして作成されたSTAP細胞の幹細胞性については、培養系での分化実験、テラトーマ実験やキメラマウスへの寄与の実験などにより複数回再現性を確認しています。
 STAP細胞の研究が開始されたのは5年ほど前のことですが、2011年4月には、論文に中心となる方法として記載した酸を用いてSTAP細胞ができることを確認していました。その後、2011年6月から9月頃には、リンパ球のみならず皮膚や筋肉や肺や脳や脂肪などいろいろな細胞について、酸性溶液を含む様々なストレス条件を用いてSTAP細胞の作成を試みました。この間だけで100回以上は作成していました。
 そして、2011年9月以降は、脾臓(ひぞう)由来のリンパ球細胞(CD45+)を酸性溶液で刺激を与えて、STAP細胞を作成する実験を繰り返していました。このSTAP細胞を用いて、遺伝子の解析や分化実験やテラトーマの実験などを行うので、たくさんのSTAP細胞が必要になります。この方法で作ったものだけでも100回以上は、STAP細胞を作成しています。また、今回発表した論文には合わせて80種類以上の図表が掲載されており、それぞれに複数回の予備実験が必要であったことから、STAP細胞は日々培養され解析されていました。このことから、会見の場で200回と述べました。
( → 朝日新聞 2014年4月14日


 (2) Oct4発現と万能性

 小保方さんの「 STAP細胞の作製成功」というのは、多能性マーカーの発現(Oct4発現)のことであって、万能性の確認のことではない。ま、当り前だが。(すぐ上の引用文でも、幹細胞の樹立は複数回しか成功していない、とされている。これはたぶんコンタミだろう。)
 ともあれ、「成功」とは、万能性の確認のことではない。この件は、NHKでも報道された。
  → 「作製実験毎日のように実施」 NHK
 一方、毎日新聞では、「部分的な再現成功」と報道された。
  → STAP細胞:部分的な再現成功の研究者 理研が認める
 これを見たはてブ民が、頭に血をのぼらせて怒り狂っている。「部分的な再現成功とは何事か! Oct4発現が確認されただけであり、万能性が確認されたわけじゃない。万能性のある STAP細胞の作製に成功したわけじゃない!」 
  → はてなブックマーク - 毎日新聞
 しかしこれは、はてな民の誤読である。新聞記事では「再現に成功した」と書いてあるだけだ。その意味は「万能性細胞の再現実験に成功した」という意味ではなくて、「小保方さんの言う通りの実験の再現に成功した」という意味だ。つまり、「Oct4発現までは再現実験に成功した」という意味だ。きちんと読めばわかる。
 なのに、「 Oct4発現までは再現実験に成功した」という記事を読んで、「万能性細胞の再現実験に成功したというふうに読める! 間違いだ!」といきり立っている。馬鹿馬鹿しい。勝手に誤読して、勝手に怒り狂っているだけだ。
 そんなに怒り狂う必要はない。むしろ、正確に表現し直す解説を加えるだけでいい。
 「 Oct4発現までは再現実験に成功したが、万能性まで再現実験に成功したわけではない」
 と。そして、そのことは、小保方さんの解説文書に含まれていた。再掲しよう。
 培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認して、STAP細胞が作成できたことを確認していました。)

 元々そう書いてあるのだから、誤解の余地もない。記事は短すぎるので、情報不足の点はあるが、いちいち怒り狂うほどのことはない。記事が短すぎて情報不足であるなら、詳しい記事を読めばいいだけのことだ。
 はてな民は、「捏造説」に凝り固まっているせいで、事実をまっすぐ見ることができない状態になっている。目が曇っている。目に偏向フィルターがかかっている。ひどいね。
 では、正しくは? こうだ。
 毎日新聞の記事が語ったことは、「小保方さんが会見で語ったことは嘘ではない」ということ。つまり、「小保方さんは嘘つきではない」ということだ。それだけだ。
 なのに、勝手に万能性の存在のことだと思って、「万能性が存在するかのように書いている毎日新聞はけしからん!」と怒り狂っている。そんなに怒り狂う前に、自分の誤読を反省するべきだろう。他人を批判するよりは、自分の読解力の低さを反省する方がいいだろう。
 


【 後日記 】 
 偽陽性については、おおよそ確認されつつあるようだ。
  複数の関係者によると、弱酸性の溶液にマウスの細胞を浸すとSTAP細胞ができるはずが、万能性の目印となる遺伝子の働きはとても弱く、万能細胞の代表であるiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)にはるかに及ばないという。
( → 日経 2014/08/27
posted by 管理人 at 20:35|  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
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