2014年04月13日

◆ 電王戦で継ぎ盤(盤駒)は?

 コンピュータとの将棋で、継ぎ盤(盤駒)の使用は是か非か? ──

 森下九段が「継ぎ盤(盤駒)の使用」を提案している。
  → 森下九段、対コンピュータ戦の盤駒の使用を改めて主張
  → 電王戦、継ぎ盤使用提案についての反応
  → 【ネタ】コンピューターとはこういう継ぎ盤を使って戦ったら

 コンピュータを相手にするときに限り継ぎ盤を使う、というのは、実は私も昨年から考えていたことだ。しかし、「プロがそんなことをするのはカッコ悪いな」と思っていた。「プロにとってはそんなのは必要ない」とも思っていた。
 しかし、森下九段というプロがそれを望んでいる。ならば、それを実行していいと思う。
 というのは、コンピュータは継ぎ盤を使っているのも同然だからだ。一方だけが継ぎ盤を使っていいというのは不公平だろう。プライドもへったくれもありはしない。不公平さを除く方が優先だ。
 人間同士なら? 片方が継ぎ盤を使っているわけじゃないから、現状のまま変更は必要あるまい。そもそも、継ぎ盤を使いながらでは、道具が必要となって、面倒だ。また、伝統的なゲームのルールが根本的に変わるのは、好ましくない。
 一方、コンピュータが相手になるときは、相手ばかりが継ぎ盤を使っているのだから、不公平だ。人間側にも使用を認めるべきだろう。

 実を言うと、この問題には、根本的な問題がひそんでいる。こうだ。
 「プロは駒の動きを20手ぐらい読むこともできる。しかし、駒の動きを読むことができても、そのときの盤面の評価をすることは難しい」
 たとえば、前項 の 60手目の状況で、そのあとで角が取られてしまうことまでは、人間でも十分に読み取れる。しかし、78手目の時点で、自陣の右辺を制圧されてしまっている(自陣の半分が崩壊してしまっている)という状況の意味を理解するには、その状況を全体として眺めることが必要だ。ここでは、78手目の盤面全体を見ることで、全体状況を把握することが大切だ。そのことで、全体的な評価(戦略的な評価)ができる。その意味で、継ぎ盤を使うことの意義は、十分にある。

 実を言うと、このことは、前項 の「戦術よりも戦略が大切」ということと密接に関係する。
 人間が戦術ばかりを見て、戦略を見ないのは、人間が継ぎ盤を使わないからだ、と言えるのだ。人間が継ぎ盤を使えば、20手先までの駒の進行を読むだけでなく、20手先における盤面の意味をも理解できる。換言すれば、人間が継ぎ盤を使えば、戦術だけでなく戦略を得ることができる。
 とすれば、人間が継ぎ盤を使うことは、たしかに意義があることなのだ。
 ゆえに、私としては、「人間が継ぎ盤を使うこと」を提案したい。というか、森下提案を支持したい。条件としては、継ぎの二つだ。
  ・ 使いたい人だけが使う
  ・ コンピュータを相手にするときのみ、使うことを許可する。
 


 [ 付記1 ]
 継ぎ盤の使用を認めたとしても、プロが「やたらとせわしく継ぎ盤を動かす」ということはないだろう。そういうふうに駒を動かすのは、テレビの解説では見られるが、それは、素人向けにわかりやすく見せるためだ。
 一方、プロならば、先の方まで読み通せるので、いちいち動かすことは少ないはずだ。いったん先の方まで読んだ上で、その場面を確認するために継ぎ盤を使うだけだろう。だから、5分間にいっぺんぐらいしか使わないと思う。
 「カッコ悪い」ということはないはずだ。



 [ 付記2 ]
 「プロならば頭のなかで駒を動かせるので、いちいち盤面を見る必要はない」(☆)
 と思っているアマが多いだろうが、それは間違いだ。プロだって盤面が必要だ。その証拠に、プロの対局を見るといい。どのプロだって、盤面をじっと睨んでいる。
 もし上記のこと(☆)が正しいとしたら、プロは盤面を見ないで、目を閉じているはずだ。しかし、そんなことはない。どのプロだって、盤面をじっと睨んでいる。これはつまり、「盤面がある方がいい」ということの証拠だ。
( ※ トイレに行くときは、盤面を見ないで頭のなかで考えるだけだが、それでは少し能率が低下してしまうはずだ。だから通常は、盤面を見る。)




     

  ポータブル 将棋        ポケッタブル パワー将棋

posted by 管理人 at 07:00 | Comment(2) |  将棋 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
盤面を用意したところで恥を上塗りするだけだろう。
今回棋士側は渡辺前竜王がいみじくも述べたように、コンピュータに想定外の手を指され負けたのである。とすると盤面があろうがなかろうが大差はない。終盤の頓死防止には役立つぐらいだ。
むしろ第二回において、手に汗握る名局を指し、その後の解説でも格調高い文章で人を惹きつける船江恒平の評こそ信頼に値する。彼がいうにはコンピュータは非常に攻撃力が高い。斬り合いが大好きである。斬り合っては不利で受けの強い棋士の方が勝機があるだろう、とのことである。受けの強い棋士といえば、昔は大山、今は森内が絶対の存在だ。後は丸山、中村修も面白い、、既に大きく譲歩してもらっているのだから、後はどうやって華々しく散るかを見せてもらいたい
Posted by gunts at 2014年04月15日 23:19
> 彼がいうにはコンピュータは非常に攻撃力が高い。斬り合いが大好きである。斬り合っては不利で受けの強い棋士の方が勝機があるだろう、とのことである。

 それは私が去年詳しく説明したこと、そのまんまです。また、今年も少し言及したことです。

> 盤面があろうがなかろうが大差はない。

 本項は「使いたい人だけが使う」という趣旨です。そう書いた通り。
 森下さんは、船江さんよりもずっと弱いんだから、使いたければ使わせて上げましょう。
 船江さんみたいに強い人ばかりではないので。
 
> 今回棋士側は……想定外の手を指され負けたのである

 そういうこともあったけど、1回か2回です。他は別の理由です。
 
> 後はどうやって華々しく散るかを見せてもらいたい

 汚くても勝ってほしいと思って見ている人がほとんどですよ。きれいに負けてほしいと思っている人はほとんどいないでしょう。
 
 ま、とりあえずは、昨年と今年の私の感想でも読んでください。

 → http://urx.nu/7OQ7
Posted by 管理人 at 2014年04月15日 23:39
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ