2014年04月12日

◆ 将棋電王戦第5局(2014)

 将棋 電王戦 第5局。 屋敷伸之九段 v.s. Ponanza の対局は、後者の勝ち。 ──

 棋譜はこちら。
   → http://hantosidegodan.seesaa.net/article/394493259.html

 ──

 今回の対局は衝撃的だ。これまでで最大の衝撃だとも思える。

 (1) 序盤は「横歩取り」で、うまく先手が狙い通りにやった。
 (2) 後手(コンピュータ)は、その狙いに嵌まって、△6二王という手を取った。人間側は「しめた! 嵌めたぞ!」と大喜び。
 (3) ところが、一向に形勢は良くならない。
 (4) 大熱戦のまま、終盤に入る。ここで、観戦するコンピュータたちと人間たちとは、判断が分裂する。
  ・ コンピュータたちは、「コンピュータが優勢」
  ・ 人間たちは、「人間が優勢」
 (5) 私が見たところでは、人間の側は 駒得をしている 大駒を入手しているが、王の逃げる範囲が狭い。コンピュータの側は、 駒損をしているが、 王の逃げる範囲が広くて、なかなかつかまりそうにない。先手が 駒得を生かして 豊富な持ち駒を生かして後手の王を詰める前に、先手の王が詰んでしまいそうだ。(逃げ場所がないので。)
 (6) そのまま白熱した戦いが続く。見ている人はツイッターで「目が離せない白熱した高い」と大熱中している。
 (7) コンピュータたちが「後手の方がかなり得点が上ですよ」と言い始める。
 (8) コンピュータの一部が「先手は詰み」と宣言する。(点数差が莫大。)
 (9) やがて、先手が投了。

 ──

 ふう。白熱。
 戦況分析は……難しすぎる。

 私がざっと見た感想は、上に述べた通り。つまり、こうだ。
 「先手は駒得をしているが、後手は自王が詰まないようにしている」
 
 これ、毎度毎度、同じことの繰り返しみたいだ。とはいえ、一つ、大きな違いがある。先手が屋敷九段という猛者であることだ。私の印象では、特殊な戦法のスペシャルであった、昨年の三浦弘行九段よりも強い。というか、コンピュータ向きである。それなのに、負けてしまった! この衝撃。

 きちんとうまくやって、望み通りのコースを通ったのに、負けてしまうなんて。もう、人間には勝ち目がないのか。
 
 私が思うに、やはり、人間の側の戦略が良くないのだと思う。人間の側は戦術ばかりを見ているが、コンピュータの側は戦略を見ている。そういう差が感じられる。
 つまり、駒得ばかりを狙うより、いかにして敵王を詰めるかを考えて、敵王の逃げ道をふさがなくては。
 この件は、昨年にも述べた通り。
 ちょっとだけ有利になると見えるので、どんどんそちらの道を進んでいくと、最終的には行き止まりとなり、にっちもさっちも行かなくなる。そのあげく、敵王を詰めることができなくなって、敵王を逃して、あげく、大量の駒損のせいで、こちらが討ち取られる。
 それと同様だ。「攻撃優先」という戦略のもとで、どんどん駒得のポイントを稼いでいるつもりでいたら、最終的には、こちらにできた小さな隙を突かれて、一挙に詰まされてしまう。つまり、「守備を整備せずに攻撃優先」という現代将棋の将棋観そのものが間違っている、とコンピュータは教える。
( → 電王戦の感想(2013年)

 結論は昨年と同じになりそうだ。

 ──

 [ 付記1 ]
 横歩取りの △6二王については、前々回の第3局で解説した。
  → 将棋電王戦第3局(2014)
 そこで述べたように、「(一部の)人間は△6二王を悪手と見なしがちだが、コンピュータは悪手と見なさない」という事実があった。そのどちらが正しいか、ということについては、「コンピュータの方が正しい」という結論が出てしまったようだ。
 ただ、人間の側でも、「△6二王は悪手ではない」と断定するプロもいた。
  → 船江恒平五段による解説
 だから、人間の側が間違っていたと、一概に言えるわけでもないようだ。

 [ 付記2 ]
 60手目の △1六香が、「人間には理解できない不思議な手だ」と評価された。「これでコンピュータが勝ったら、コンピュータは実に強い」という評価。
  → ponanza、△1六香という人外の手を放つ

 ところが、そこから 12手進むと、先手は角を取られてしまった。のみならず、80手目までに、先手陣の右辺は敵に食い散らかされてしまった。自陣の半分を奪われた形。一方、敵陣は完璧に手つかず。仮に先手が後手陣の最弱である左辺を食い散らかそうと、敵王はいくらでも右辺(1,2,3筋)に逃げることができるから、詰みそうにない。
 つまり、この時点で、形勢には大差が付いてしまっている。この時点で、もはや「勝負あった」という感じだ。
 つまり、△1六香が勝因だったことになる。人間が「悪手」と見なした△1六香が、勝負を決めた好手だったことになる。
 人間の側の思考力がコンピュータに負けた、ということのようだ。げげげ。
 
 でもね。△1六香は、素人ならば簡単に思いつく手です。これが悪手だというのが、私にはわからないね。私が後手だったら、たぶん△1六香を打つと思う。わかりやすい手だもんね。
 △1六香が悪手だというプロの感覚の方がわかりません。


 ニコ生に出た後は将棋会館に行って検討していました。△16香や△79銀など、人間には浮かばない手がいくつか出ました。これが最善だったかどうかは今は分かりませんが、とんでもないものを見た、という気分です。
( → 渡辺明ブログ

 渡辺明二冠(棋王・王将)が、上記のような見解を出している。コンピュータの意図がわからないらしい。
 でもね。渡辺明二冠は、竜王戦のトーナメントで負けて、1組から2組に降級してしまったばかりなんだよね。彼が「△16香は人間は絶対考えないですからね」と言ったって、私は「アマならばそれをすぐに考えますよ」と答えますけど。
 プロって、「大駒を追いかけ回す」っていうのを、カッコ悪いと思っているんだろうか? なんか、プロの感覚って、ときどき変なのが混じっている。



 【 関連項目 】

 → 電王戦で継ぎ盤(盤駒)は?
 
 コンピュータとの将棋で、継ぎ盤(盤駒)の使用は是か非か?
 本項(電王戦第5局)と密接に関連する話題。
posted by 管理人 at 23:11| Comment(7) |  将棋 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
[ 付記1 ][ 付記2 ]を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2014年04月13日 00:16
読み応えのあるブログでした。

ありがとうございます。
Posted by ひろ at 2014年04月13日 01:20
屋敷プロは駒得してません。逆に駒損してます。
56手目時点で金桂桂香と飛の4枚換えですし、
80手目時点では純粋に金銀損です。
本局は、駒の働きで勝る先手対駒得の後手という構図でした。
対局後の質疑応答によると、ponannzaの評価値は102手目までほぼ互角(マイナス100点ぐらい)。
次の▲8一成香がまずく、△8三歩とされて一気に先手がダメになったそうです。
Posted by yuu at 2014年04月13日 14:11
先手は駒得?

52手目までの駒割りは、飛車1枚と金桂香の交換で、先手は駒損です。

56手目さらに桂損し、その後、角銀と桂香を取り合い、79手目までの駒割りは、飛車1枚と角金銀の交換で、致命的差となりました。
Posted by kazu at 2014年04月13日 14:22
駒得についての記述を修正しました。
Posted by 管理人 at 2014年04月13日 14:31
先手の敗着は▲8一成香だということですが、ここで▲8五王だと、入玉できます。ただ、そのあと後手の入玉を防ぐ手もないようで、双方入玉で持将棋になってしまうようです。
Posted by 管理人 at 2014年04月13日 21:42
△1六香は佐藤九段が解説で「見えると不幸になる手」と言ってましたね。他に読む必要がある手を探すべきという意味かと。

渡辺二冠「これがもしいい手だったらcomは相当強いという事になります。」というのは、他に有効な手を読み切って指しているなら相当強い、ということかな。
Posted by at 2014年04月15日 19:26
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