2014年03月31日

◆ 沖ノ鳥島 事故の謎

 沖ノ鳥島で転覆事故があった。その謎を探る。 ──

 沖ノ鳥島で転覆事故があった。情報は限られており、どういう事情だったかはろくに判明していない。そこで、とりあえずはすでに知られた情報から、真相を推測してみる。
( ※ 情報量があまりにも少ないので、当たっているかどうかはわからない。とりあえずは、何を知るべきかのよすがとするように、可能性のある真相を探ってみる。)

 ──

 まず、基本情報としては、次の記事がある。
  → 朝日新聞 2014-03-31
  → 東京新聞 2014-03-31
  → 読売新聞 2014-03-31
 
 ネット上の情報はたいしたことがないが、紙の新聞では読売新聞にかなり詳しい記事がある。今回はここを主な情報源として探ろう。


 (1) 波

 波が想定以上に大きかった可能性がある。読売の記事によると、二つの情報がある。
 国土交通省関東地方整備局は「沖ノ鳥島は他の離島よりはるかに遠く、波の高さなど海域の条件も厳しい」
( → 読売・夕刊 2014/03/31 )
 同整備局は……安全性については「事前の実験でも、通常の気象条件下なら転覆する可能性はないという結論だった」と弁明した。
( → 読売・夕刊 2014/03/31 )

 言っていることがほとんど矛盾している。
  ・ 波の高さなど海域の条件も厳しい
  ・ 事前の実験では大丈夫

 実際には波の高さなどは厳しいのに、事前の実験では甘い条件で実験して、「大丈夫だ」と思っていた。そうしたら、現実には大きな波が押し寄せて、転覆してしまった……というふうに読めなくもない。
 少なくとも、かなり甘く見ていた、とは言えそうだ。
 ついでに言うと、外洋では、ときどきものすごく大きな波が押し寄せる。1/f 揺らぎとしても知られている。小さくて小刻みな波が多いが、大きな波もときたま押し寄せる。稀にものすごく大きな波が押し寄せる。……外洋というのはそういうものなのだ。
 その意味では、今回のような不安定な構造物は、転覆するのも当然だとも言える。

 実際にそうであったかどうかは判明していないが、そうである可能性は十分にある。この場合は、波を甘く見たことが、事故の原因であったことになる。


 (2) 接触

 人為的なミスが原因だった可能性もある。
 今回の事故は、船で桟橋を引いている、という最中に起こった。とすると、人為的な原因であった可能性がとても高い。
 朝日の図では、引っ張った方向と逆方向に倒れている。しかし読売の写真では、引っ張った方向と同じ方向に倒れているようだ。
 そもそも、この桟橋は、台船の上に設置されていた。その後、台船に注水して、台船が下降する(沈む)。その後、桟橋だけが海に浮く。その海に浮いた桟橋を引き船で引っ張る……という計画だった。
 ここで、台船が十分に沈まないうちに引き船が引っ張ったら、どうなるか? 桟橋の底面は、まだ台船と接触しており、摩擦がある。一方、引き船は、どんどん引っ張る。とすれば、桟橋は引き船に引っ張られて、その方向に倒れるのが当然だ。


  引き船   ロープ   桟橋
   ● ←────────
              台船


  桟橋の底面は、台船の一部と接触している。そこに摩擦が働く。
  桟橋がロープに引っ張られると、桟橋はそちらに傾く。


 実際にそうなったかどうかは判明していないが、そうである可能性は十分にある。この場合は、作業手順のミスが、事故の直接原因であったことになる。


 (3) ボート

 台船の上には、人が乗っていた。その理由は? 
 作業員が桟橋に乗っていた理由について、同整備局は「引き船とつなぐロープをかけるためだった」と説明。
( → 読売・夕刊 2014/03/31 )

 これは理屈になっていない。ロープをかけるために桟橋に乗るのはいい。しかし、ロープをかけ終わったら、桟橋から退出するのが当然だ。そのために、退出するための船が必要だ。最低限、ボートが必要だ。
 では、なぜそうしなかったか? たぶん、こうだ。
 「小型ボートは外洋では不安定だから、駄目」
 「大型の船はコストがかかるから、駄目」
 「桟橋ならば、安定しているし、コストがかからないから、ベストだ」
 で、その際、こう思った。
 「桟橋の危険性? そんなの関係ねぇ。おっぱっぴー」
 つまりは、危険性の無視。ここが根本理由であった、と思える。私としては、ここを今回の事故の本質と見なしたい。

 実際にそうだったかどうかは判明していないが、そうである可能性は十分にある。この場合は、安全意識の欠落が、事故の直接原因であったことになる。


 (4) 防護柵

 台船の上には、人が乗っていた。この人たちはなぜ死んだか?
 転覆で海に放り出された作業員人は全員、救命胴衣を付けていた。乗っていた桟橋の外周には、高さ約 1.5メートルの転落防止柵もあったが、桟橋が逆さまに成り、効果はなかったと見られる。
( → 読売・夕刊 2014/03/31 )

 転落防止柵は、普通は転落防止のために役立つ。しかし、いったん転覆したあとでは、どうなったか? 元は 凵 のような感じだったのが、その逆になる。( Π のような感じ。)
 しかも、このとき、人は海中に没している。海中で、海から水面に逃れようとしても、まわりにある柵のせいで、海面に浮上できない。海面に浮上するためには、いったん下方にもぐる必要がある。しかし、パニック状態で、空気もろくに吸っていないとなると、それはまず無理だ。当然、水をがぶがぶ飲んで、溺死することになる。
 これが大量の死者が発生した理由であろう。安全を保つためにある防護柵が、逆に、死者を大量に発生させる効果を持ったことになる。
 これは、フェイルセーフとは逆の構造があったことになる。事故が起こったなら、被害を最小化する構造ではなくて、被害を最大化する構造があったことになる。

 これは、誰が悪いとも言えない。ただ、こういうことがあるからこそ、(3) が重要となる。つまり、非常に危険な桟橋には、人が乗っていてはいけないのだ。絶対に。


 (5) 設計ミス

 別の記事を読んだが、設計ミスの可能性もありそうだ。
 柱が突き出た状態で現場まで運ぶ今回の工法は同整備局の考案。国交省の大規模工事では沖ノ鳥島の 荷さばき施設 の建設で初めて用いられた新しい技術だ。「不安定ではないのか」との質問に、担当者は「安全計算をし、問題ないということで据え付けている」と述べるにとどまった。
( → 共同通信 2014-04-01

 上記リンクの図を見ればわかるように、いかにも重心が高い構造である。ちょっと傾いただけで、容易にひっくり返る。これは波がほとんどない内海でしか使えない工法だと思える。こんなのを外洋で実行して、しかもそこに人を乗せる、というのだから、呆れるしかないね。
 最初から最後まで、滅茶苦茶という感じだ。理研・神戸どころじゃない、とんでもないずさんさ、という感じがする。

 ──

 以上が、私の推測だ。ただ、実際にそうであったかどうかは判明していない。本項は、「そうであった可能性がある」というポイントを列挙しておいた。仮説のようなものである。これに基づいて事故の検証をすることで、真相が判明するだろう。



 [ 付記 ]
 ちなみに、事故の原因を解明しないで、ほったらかしにしている例がある。下記だ。
  → 東横線の衝突事故の謎 (2月16日)

 あれから1カ月以上たっているのに、真相解明の報道はなされていない。
 


 【 追記 】
 引き船が引っ張ったらすぐに傾いて倒れてしまった、という報道がある。
  → 記事
  → 

 重心が高すぎた、という報道もある。
  → 毎日新聞
posted by 管理人 at 23:58| Comment(4) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(5) 設計ミス
 を加筆しました。 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2014年04月01日 00:46
沖ノ鳥島での事故の記事を見ていく過程でこのブログにきました。
 私自身の意見を少し話させていただきます。
 
 本作業は半潜水台船を沈下させて、デッキ上に搭載してある桟橋ブロックを浮上させて曳き出す作業です。
 この横転した桟橋ブロックの安定計算を新聞に記載されているデータから行ったところ、計算上は安定でした。
 しかしながら気になる記事があります。
 浮上させたときに桟橋ブロックは傾斜しており、それをなおして水平に戻して曳き出しを開始したということです。
 通常の船には水密隔壁というものがあって、船内の自由水の動きに制限を与えます。
 傾斜していた浮体が水平に戻った・・・ということは、水密隔壁がないと推測されます。
 この場合、ブロックの中に海水が浸入すると、見掛け重心が上がって、こうなると安定だった、浮体は不安定になり、横転してしまう可能性が出てきます。
 実際に横転した浮体には凹損があり、ここから海水が浸入したとなれば、上記のようなことになります。
 後になりましたが、写真から判断して波高はそれほどひどいとは思えません。
 ただ外洋ですので、波よりうねりがこの作業では影響が大きいと思われます。
 このうねりによってブロックの底部が台船のデッキと衝突したと予想されます。
 
 これは自分の予想ですので、今後の事故原因の解明を待っていたいと思っています。
Posted by たかしま at 2014年05月08日 17:44
転覆した船体は現在、曳航されて6月初旬に鹿児島湾にきます。そこで脚を撤去して陸揚げします。
Posted by いずみこう at 2014年05月27日 08:10
一般に、浮体式海洋構造物の安定性については、GM値(メタセンターと重心の垂直距離)が重要である。沖の鳥島の事故の場合、このGM値が1mに満たない極めて動的に不安定な状態であったと推察できる。それは、新聞記事の情報では、浮体の固有運動周期が100秒程度になり、長周期ロール現象が発生していたということで推察できる。このような小さいGM値だと、もはや準静的な計算である動的安定性の計算(GZ曲線内の面積から安定性を判断する)では限界がある。基本的には時刻歴の浮体の運動シミュレーションでもしてみれば原因ははっきりできる。このような不安定現象を回避するには、GM値を大きくする必要がある。すなわち、浮体を台船から引き出す時に、周りに多くのブイを固定して浮力を大きくさせ、メタセンターを高くしておき、構造物を設置する場所で浮体が水面に出る段階でブイを取り外せば安全に工事ができる。
Posted by 中島俊夫 at 2014年09月18日 05:34
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