STAP細胞を作成するプロトコルで Oct4-GFP 発光(= Oct4発光)があったとき、それを自家蛍光と区別したい。そのためには、どうすればいいか?
方法を三つ示す。
まず、原理は次のことだ。
・ Oct4-GFP …… 緑色の蛍光のみ
・ 自家蛍光 ……… 多様な色の光。特に赤色を含む。
この違いを検出すればいい。では、具体的にはどうするか?
(1) 赤色フィルター
対象の細胞を赤色フィルターで見るといい。
ここで、赤色の発光が見えたら、それは自家蛍光である。こうして「自家蛍光であること」が判明する。
( ※ STAP細胞の再現実験の当初では、この方法で自家蛍光であることが確認された。緑色に見えても、赤色を含むので、自家蛍光であると判明した。)
Jeanne Loring
Yoshiyuki: autofluorescence has a very broad emission spectrum- look in the red channel and see if you see the same signal as in the green.
Yoshiyuki
Jeanne: Thank you for your advise.
Unfortunately, because I can detect Red channel, this signal is autofluorescence. I will retry. Thanks
( → www.ipscell.com )
なお、この方法は、「自家蛍光であること」(Oct4-GFP 発光でないこと)を確認できるが、「Oct4-GFP 発光であること」を確認することはできない。
(2) GFP なしマウス
Oct4-GFP を組み込んだマウスを使うのが STAP細胞の実験だ。
ここで、対比群として、Oct4-GFP を組み込んでいないマウスを使って、同じ実験をする。最終的に、両者の結果を比較する。
GFPなしマウスの細胞に比べて、GFPありマウスの方が、はっきりと大きな発光量をもつのであれば、そちらは Oct4-GFP の発光があったと確認できる。
この方法は、下記で提案された。
→ STAP再現実験をより明解にするための1つの提案
なお、この方法は手間が2倍になるので、ちょっと面倒だとも言える。
(最初からこの方法を取るのは大変なので、まずはさまざまな条件でテストして、再現がうまくできる条件を見つけておくといい。そのあとで、再現する対象を二通りでチェックすればいい。)
──
以上を見たあとで、次の方法を考えた。
(3) 赤色フィルターによる除去
いったん発光している細胞の全体を記録する。(A)
その後、赤色フィルターで発光している細胞を検出する。(B)
両者を比較して、前者から後者を除去する。
例
A ● ● ● ● ●
B ● ●
この二つを比較する。
2,4番目は、赤色光があるので、自家蛍光。
残りの1,3,5番目は、自家蛍光でないので、GFP 蛍光。
こうやって、(1) の方法を援用して、 GFP 蛍光を確認できる。
( ※ 当り前とも言える。……別に、私の独創性を主張するつもりはない。単に知識の紹介として、ここで紹介しておくだけです。関係者のお役に立てば幸いです。)
[ 付記1 ]
番外として、次の方法もある。
「ウェスタンブロッティングという方法で、Oct4 をタンパク質レベルで検出する」
これは、特別な機器を必要とするので、簡単ではない。専門施設でやるしかない。
ただ、この方法を使ったところ、小保方プロトコルのあとで Oct4 をタンパク質レベルで確認したという報告があった。
→ STAP細胞の Oct4 発光を確認
[ 付記2 ]
実は、ハイテク機器を使う方法がある。
→ SONY スペクトル型セルアナライザー
12色の光を使って調べる、という機器。
これを使うと、自家蛍光を除去することができるそうだ。
お値段は、400万円 ……じゃなくて、その 10倍です。 (^^);
http://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/PNE/2_article.pdf
赤色フィルターで撮影するとき、自動撮影をすると、エラーが起こることがある。ほとんど光がない状態で、ものすごい長時間露光することで、本質的には存在していない赤い光を検知してしまうことがある。そのせいで、 GFP だけの状態なのに「自家蛍光だ」と誤認することがある。
というより、(3)のように評価しないと(1)は何の意味もありません。
(1)=(3)です。
当たり前過ぎてわざわざ触れていないなだけで、(1)で上げられたお二方も当然GFPも同時に確認しているはずですよ。
つまりGFP(+)かつ赤色(‐)の細胞が一つも見つけられなかったということでしょう。
わざわざ独創性を主張するつもりはないと但し書きされていますが、まさにその通り。