2014年03月22日

◆ STAP細胞の捏造はなかった?

 STAP細胞の証拠となる画像は捏造だった……という見解が広がっているが、これは正しくない。実は捏造ではなかった、と判明した例がある。(全体の一部だが。) ──

 普通の捏造事件ならば、何から何まで捏造であり、指摘された捏造が真実だったというふうに逆転したことはない。
 しかるに、STAP細胞事件では、この逆転が起こった。

 (1) 画像の切り貼り

 画像の切り貼りという捏造が話題になった。これについて、私は以前、次のような可能性を示した。
 画像の切り貼りは、捏造とは言えない。たぶん、同種の似た画像があって、きれいなものに差し替えよう、と思ったのだろう。「そういうことはしてはいけない」という思いが働かなかったようだ。これも初心者のミスだろう。「画像をきれいに整えるぐらい、やったっていいわ。どうせどっちも同じことをやった実験写真なんだし。悪いことは何もないわ」と思ったとしても、不思議ではない。(初心者にはありがちかも。)
 なお、仮に捏造するとしたら、画像の切り貼りなんかはしなかったはずだ。ゼロから嘘写真を作り上げただろう。
 現実にはそうではなくて、二枚の写真を切り貼りして合成したようだ。これは、その二枚の写真がいずれも真実であったからこそ、そういう操作をしてしまったのだろう。
 だから、画像の切り貼りがあったということは、「捏造があったこと」を示すというよりは、「捏造がなかったこと」を示す、と見た方がいい。
 ま、厳密な意味では、「画像の捏造があった」とは言えるが、「実験の捏造があった」とは言えない。その意味では、これまでの捏造事件とは、全くレベルが異なる。「きれいに見えるように画像をいじった」という程度のことにすぎない。
( ※ やっていいことではないのだが、初心者だとそれに気づかなかったのだろう。)
( → STAP細胞は捏造か? ノー。

 ここでは、「捏造ではあるとしても、真の捏造ではない」という推測の話をした。
 その後、この推測がまさしくどんぴしゃりだったことが判明した。
 この写真は切り貼り加工がされているという指摘が早くから出ていました。3月14日発表の理研の調査委員会の中間報告によると、筆頭著者は切り貼りを認めたそうです。真ん中のT細胞のレーンは切り貼りだったのです。
 切り貼りされたのは比較参照のために置かれているT細胞のレーンです。中間報告では、切り貼りが行われる前の写真も公開されました。
 調査委員長の石井俊輔先生は「なぜ、これをそのまま使わなかったのか」と仰っていましたが、私もまったく同感です。T細胞の線が薄いので見えにくいから、もっとはっきりしたものを切り貼りしたというのが理由だったそうです。
( → 科学コミュニケーターブログ

 ここでは、画像の切り貼りはあった。
 ただし、「偽物を見せて、真実だと見せかけた」のではない。一つの本物を、別の本物に、置き換えただけだ。
 比喩的に言えば、身分証明書に貼る顔写真を、「写りが悪いから」といって、本来の顔写真から別の顔写真に取り替えたようなものだ。ここでは、別人の顔写真に取り替えたわけではなく、あくまで本人の別の写真に変えただけだ。その意味で、(実質的には)捏造ではない。
 
 かくて、「画像が加工されたから偽物だ!」という捏造説は否定された。たしかに画像が加工されたのだが、捏造はなかったのである。
( ※ 本人は、「やってはいけない認識はなかった」と説明したそうだ。→ 報知・読売新聞


 (2) Oct4 発光の動画

 Oct4 発光の動画がある。





 これについて、私は前に次のように述べた。
 もし実験が捏造であったとすれば、この動画もまた捏造であったことになる。
 しかし、このような動画を捏造するには、高い技術力を必要とする。少なくとも私には不可能だ。
 一方、静止画の画像は、あまりにもお粗末な技術力である。
 で、上記の二つは、矛盾する。
  ・ 動画を捏造する高度な技術力
  ・ 静止画ではバレバレになる稚拙な技術力
 両方が同時に成立するはずがない。
 一方、静止画では、明らかに加工の痕跡がある。
 とすれば、論理的には、結論は一つでしかない。こうだ。
 「動画は捏造されていない」
( → STAP細胞の動画は捏造か?

 こうして、「動画は捏造されていない」という結論を得た。つまり、「 Oct4 発光の実験は捏造ではなく真実である」ということだ。

 このことは、実際、裏付けられたと言えるだろう。Oct4 発光が確認されたからだ。下記の通り。
 → STAP細胞の Oct4 発光を確認

 こうして、動画もまた捏造ではないことが、ほぼ確認されたことになる。
    ( ※ さらに言えば、機械の解説(英語)をまともに読めない小保方さんが、動画ソフト(英語)を操作できるはずがない。ゆえに、動画は他人が撮影したものだ。当然、そこには捏造はなかったはずだ。そう推定される。)
 ──

 以上の二点において、「完全なる捏造」という説ははっきりと否定された。
 少なくとも TCR再構成 と Oct4発光については、真実の報告がなされた、と考えていいだろう。
 このようなことは、普通の捏造事件とは、まったく異なる。過去の ES細胞・iPS細胞・超伝導といった捏造事件では、すべてが捏造であったからだ。一方、今回の STAP細胞事件では、非常に重要な部分が捏造ではないと判明している。(多能性があったかどうかは未確認だが、 TCR再構成 と Oct4発光については実際になされた実験であるようだ。)

 この意味で、「 STAP細胞というのは完全な捏造である」という捏造説の見解は、もはや破綻した、と言えるだろう。
 STAP細胞が実在するかどうかは判明していないが、「すべて捏造だ」という捏造説が間違いであったことだけは、すでに判明しているわけだ。

( ※ ただし、TCR 再構成については、「データがおかしい」という指摘もある。この人はここから、「データは捏造だ! STAP細胞は存在しない!」と主張している。だが、写真があるのだから、まったくの捏造だとは思えない。……常識的に考えば、「捏造」ではなく「実験対象の取り違えという実験ミスがあった」と考えるべきだろう。コンタミみたいなものだ。そう考える方が妥当性が高い。「まったくの虚構」というのは不自然すぎる。もし「まったくの虚構」ならば、写真すら存在していないことになるからだ。)


 (3) テラトーマの画像

 テラトーマの画像についてはどうか? これは、まだ断言できないが、捏造であることが疑わしくなっている。

 私は先に、次のように述べた。(3月10日)
 「テラトーマができたという画像が虚偽であるということは、テラトーマができたということを否定するが、テラトーマができないと証明したわけではない」

 つまり、次の可能性がある。
 「テラトーマ自体はできているのだが、それを証明する画像だけが捏造された」

 つまり、「証拠は偽物だが、証拠が語る内容自体は真実である」という場合がある。
( → STAP細胞の画像の捏造はあったか?

 ここで述べた推測が当たっていたようだ。テラトーマの画像について、次の記事がある。
 論文の中で最も重要な画像の一つが、博士論文の画像と同じだったのは、故意なのか過失なのか。
 調査委員会によると、小保方さんは2月20日、間違った画像を掲載したとして修正を調査委に申し出て、正しいとする画像を提出。保存していた画像の名前を同じにしていたために取り違えたと話したという。
( → 朝日新聞アピタル

 私の解釈は 3月10日。画像を訂正したのは2月20日。前後関係からして、私の解釈を読んだはずがない。とすれば、この申告は隠蔽工作ではなくて、自発的に修正を申告していたことになる。ならば、別に正しい画像があった、という申告は信じることができそうだ。

 ただ、問題もある。この新しい画像を、理研が隠していたことだ。 (いまだに公開しない) 
 細胞の万能性を示し、研究の核心部分の1つとなる3枚の写真は、小保方さんの博士論文から流用された疑いが指摘され、理化学研究所は論文の信憑性にも関わる重要な問題と受け止めて調査しています。
 NHKが関係者に取材したところ、およそ1か月前には、小保方さんと、研究チームの中心メンバーで研究所の副センター長がこの問題を把握していたことが分かりました。
さらに外部の有識者も入った調査委員会のメンバーには、この問題が単なる画像の取り違いと伝えられ、流用の疑いもある重要な問題だとは説明されていなかったということです。
( → NHK 3月13日

 テラトーマの画像が転用された画像だと話題になったのは 3月9日 だ。
 一方、小保方さんが理研に申告したのは、2月20日だ。この時点ではまだテラトーマの画像転用は話題になっていなかっただから、このとき理研が自発的に公開していれば、大騒ぎにはならなかったはずだ。なのに、理研は隠した。だからこそ、あとでバレたとき、大騒ぎになった。
 結局、小保方さんよりも理研の方が問題だったことになる。小保方さんが隠していたのではなく、理研が隠していたから、こういう大騒ぎになった。

 ただしその後、調査委員会の中間報告(PDF)では、テラトーマの「正しい画像」というものが公開された。

teratoma.jpg
クリックして拡大



 これを見ると、「間違えるのも仕方ないかな」というぐらい、よく似ている。[ cf. 疑惑の画像は、下の ()]
 ともあれ、「正しい画像」があることで、「テラトーマの画像はもともと存在しない」と主張する根拠は、大幅に弱まった。(画像の掲載ミスである可能性が出てきた。)
 ここでも、捏造説の根拠は、いくらか弱まったことになる。

  【 訂正 】
  下記の文章は間違いなので、取り消します。

 理研は今もその「正しい画像」を隠している。そのせいで、小保方さんが(テラトーマの画像で)捏造したかどうかが不明確である。まったく、理研には困ったものだ。


 また、別の点がある。次の判定基準だ。
 「画像を捏造したならば、元の画像とは大きく異なるように加工してある(捏造してある)はずだが、画像を間違えて使ったならば、せいぜい色彩調整があるぐらいのはずだ」
 この判定基準で「捏造か間違いか」を調べると、どうやらただの間違いらしく見える。
  → 比較画像    (

 もう一つ、重要な点がある。「テラトーマの画像を捏造する必要性がない」ということだ。
 仮にキメラマウスが ES細胞によって作られたものだとしたら、ES細胞を入手しているはずだから、ES細胞からテラトーマを作れたはずだ。だから、「 ES細胞から作ったテラトーマの画像」を示すだけで済む。
  → ES細胞によるテラトーマの画像
 だから、「 ES細胞から作ったテラトーマの画像を使う方が、捏造としては一貫している。わざわざ過去の画像を使ってすぐバレるような危険を冒さずに済むからだ。

 以上からして、「テラトーマの画像はもともと存在しない」という主張は、否定される可能性が十分にある。(もっとも、その主張が正しいという可能性も、まだ残っているが。)


 (4) キメラマウス

 キメラマウスについては、調査中である。詳しくは下記。
  → STAP細胞の見通し

 つまり、これについては今のところ真偽不明である。調査待ち。

 __


 結局、これまでの捏造説の根拠を見る限り、「 STAP細胞が捏造であった」という明白な根拠は、何一つない。
 特に、「 STAP細胞と ES細胞はそっくりだった」という分析については、その分析自体が捏造であったらしいと疑われている。
  → STAP細胞は存在する? の (2)

 この意味で、「 STAP細胞は捏造だった」とは、まったく言えないわけだ。STAP細胞の真偽については、現状では、何とも言えない状況にある。
( ※ 一方、バカンティ・プロトコルの公開は、STAP細胞に肯定的な推測をする根拠となりそうだ。いくらかは。)




 [ 付記 ]
 だったら私が先に解明したと称したのは、何を解明したのか? ……という疑問が来るだろう。そこで解説しておく。
 私が先に解明したのは、「 STAP細胞は捏造だった」ということではなくて、「論文は捏造だった」ということだ。
 特に、次の点だ。
  ・ 胎盤の発光する緑色画像は捏造だった。
  ・ 実験機器の説明が捏造だった。

 この二点をもって、「論文は捏造だった」と判定した。
 特に、次のように判定した。
 「この捏造は、虚偽を真実に見せかけたものではなくて、虚偽を虚偽に見せかけたものである。そのせいで、この論文が捏造であることを証明してしまっている」
 
 普通の捏造は、「これは真実ですよ」と見せかける。ところが STAP細胞の論文は、「これは虚偽ですよ」と見せかけようとしている。……ここに決定的な特質がある。(この件は、先に述べた通り。)
 こうして、奇妙な捏造があるということから、事件全体の構図を見出すことができた。それが先の「解明」という話だ。
  → STAP細胞事件の解明2

 ただ、これによって「論文は捏造だ」と判明したとしても、「 STAP細胞は捏造だ」と判明したわけではない。……そのことは、下記項目で詳しく説明した。
  → STAP細胞は存在する? (前々項)

 要するに、「この論文はものすごくずさんだ」「 STAP細胞が存在しているとはこの論文で証明できない」ということは判明したのだが、「 STAP細胞は存在しない」とまでは判明していないわけだ。
 白黒で言うなら「白ではない」というふうには判明したのだが、「黒である」というふうには判明していないわけだ。
 一方、粗雑な論理の人々は、「白ではないから黒に決まっている」と即断する。その論理のデタラメさを、私は何度も指摘してきたわけだ。

 比喩。
 「彼女は僕を嫌っていない! だから彼女は僕を愛しているんだ!」
 捏造説の論理は、この程度のものです。



 [ 付記 ]

 本項は主として、既知の情報の整理だけです。
 既知の情報というと、前にいつ述べたか? 下記です。
   → STAP細胞の謎を推理する (3月11日)
 この項目の5番目の章で、画像の捏造について述べています。



 【 注記 】

 コメントは本項に関係のある話に限定してください。さもないと、削除します。

 本項に関係のない話は、下記に書き込んでください。
  → STAP細胞 掲示板

( ※ 本項の話題は、三つの画像だけです。)
( ※ 「小保方さんが捏造したか否か」という一般的な話題は、本項には収まりきらないので、本項には書かないでください。本項で扱うのはあくまで、三つの画像だけです。……二つの静止画と、一つの動画。)
 
posted by 管理人 at 19:16| Comment(6) |  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
理研の中間報告の発表スライド資料の中に、テラトーマの図の正しい(とされる)ものを公開していますよ(15枚目)。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20130314_1/document-5.pdf

その上で、理研はこの画像について調査継続中ですと発表しています。
Posted by とも at 2014年03月22日 23:52
テラトーマの画像で、「正しい画像」とされるものを記載しました。

 また、この画像を「理研は公開しないで隠している」という記述は、間違いだと判明したので、取り消しました。

 ※ とも さんのご指摘に感謝します。
Posted by 管理人 at 2014年03月23日 09:01
こうなると、何が正解と言うより「犯罪心理学」の世界だね。
Posted by 科研 at 2014年03月26日 17:44
ES細胞のすり替え捏造がほぼ確定した。
そこに至までの状況を推定。
@本人はSTAP細胞が存在すると信じている
Aネーチャー論文やパテントなど作成作業で修正要求があった。
Bはじめは小さな嘘をついて実験データを捏造。
C小さな嘘の捏造は、運良く(運悪く?)通ってしまった。
D更なる訂正要求が来た。
E徐々に嘘を嘘でリカバリーして行き、引っ込みが付かない状態。
F何時しか自分の嘘に慣れてしまい自分自身で嘘が本当と錯覚するようになる。
Gこの間、理研のチェック機構は全く機能しない。
HES細胞のすり替えなども当たり前になり、いつか「本当にSTAP細胞」を作れば何とかなると自分を納得、あるいは本当にそう思うようになる。
I結果、大騒ぎ!!
Posted by μ太郎 at 2014年03月26日 18:05
↑ その話はもう何百回も同じことが書かれましたから、いちいち書かなくてもいいです。
Posted by 管理人 at 2014年03月26日 19:08
信じていたらすり替えはしないと思います
STAP細胞ができると信じているのですからES細胞にすり替える必要はないでしょう
正しくES細胞を使わず成功させればいいのです
ES細胞を使うのは本人がSTAP細胞を疑っているからです
信じられないからES細胞にすり替えるのです
よって信じてるからすり替えるというのは筋が通らないと思います
Posted by 注視 at 2014年03月28日 05:46
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