STAP細胞の話は片付いたつもりだったが、番外編という形で、少し付け足してみる。これは名探偵の推理みたいなものだ。当然、ただの推理・推測であって、科学的な議論の対象とはならない。
以下は、暇つぶしふうなものなので、読みたい人は流し読みしてください。頭を使って考える必要はありません。
──
プロファイリングというのは、犯罪捜査で使われる。推理小説でもときどきそのような捜査方法が描写される。特に、次の二つの小説が有名だ。
羊たちの沈黙(新潮文庫)
これらの小説では、殺人犯の人物像が推定され、それによって犯人がどこにいるかという推測がなされる。そして最終的には、犯人の居場所を突き止めて、逮捕する。
──
このような方法を、STAP細胞の事件に適用してみる。
「小保方さんの人物像はどういうものか?」
これを考えてから、次の問題を考える。
「小保方さんが ES細胞のすり替えをしたことはあるだろうか?」
実は、この話は、前にもしたことがある。再読してほしい。
→ STAP細胞は捏造か?(その2)
ここで述べたように、小保方さんの人物像は「間抜け」という感じであって、「頭の切れるペテン師」ではない。
また、最近になって、早稲田の「コピペ文化」という話も出た。早稲田の学生は論文やレポートで、コピペばかりしているそうだ。
→ 早稲田大学の理工系におけるコピペ文化について
以上からまとめると、次のように言える。
「小保方さんは、やたらとコピペばかりする人である.しかも、それがバレるということに気づかないほどの間抜けである」
──
一方、ES細胞のすり替えをするとしたら、次のようなことが必要だ。
・ ES細胞をよその研究室から盗む (計画的な泥棒だ)
・ STAP細胞のシャーレを ES細胞のシャーレにすり替える
・ すり替えをしたあとで、平気の平左で、しらばっくれる。
(若山さんをだます。)
これらをどう評価するか? プロファイリング的には、こうだ。
・ 泥棒をするのは、根っからの悪人である。(犯罪者性格)
・ シャーレをすり替えるのは、軽度の悪質さである。
・ 若山さんをだますのは、高度なペテン師である。
このうち、2番目(シャーレのすり替え)は、簡単だ。このことを理由に、「小保方さんは ES細胞にすり替えたのだ」と主張する人が多い。なるほど、この点だけならば、それを肯定してもいい。
しかし、1番目( ES細胞を盗む)と、3番目(若山さんをだます)は、容易なことではない。特に、3番目は決定的だ。ここでは、高度に知性的な演技(ペテン師的な演技)が必要となるが、それは、「コピペをする間抜け」とはまったく人物像が異なるからだ。
──
こうして、「小保方さんが ES細胞のすり替えをした」という説は否定される。なるほど、「シャーレのすり替え」だけならば可能だろう。しかし、「ES細胞を盗むこと」と「若山さんをだます演技力」は、小保方さんの人物像に反するのである。それは「矛盾」と言ってもいい。
──
また、別のこともある。
TCR 再構成の問題について、論文では「 TCR再構成があった」と書いたあとで、プロトコルでは「 STAP幹細胞では TCR再構成がなかった」と修正した。
これが有意義であるためには、「造血幹細胞などが混入していた」という説が成立することが必要だ。しかし、小保方さんが「なかった」という修正をした時点では、その説はまだ知られていなかった。(私がその説を世間に知らせたのは、事後である。)
とすれば、「 STAP幹細胞では TCR再構成がなかった」という修正が有効であるためには、「造血幹細胞などが混入していた」という説が成立することを知っているほど、小保方さんは優秀であったことになる。つまり、世間の専門家が「この修正によって論文は破綻した!」と批判しているときに、それよりも圧倒的に先を進む高度な知性があったことになる。
しかし、これは明らかに人物像に矛盾する。コピペぐらいしかできない知性の持主が、専門分野でたいていの専門家をしのぐほどの知性を持っていたというのは、明らかに矛盾する。
とすれば、プロトコルでは「 STAP幹細胞では TCR再構成がなかった」と修正したときには、その説を知らないまま、単に正直に発表した、としか思えない。そして、そうだとすれば、STAP幹細胞はまさしく存在したことになる。(存在しなければ TCR再構成の調査をすることもできないからだ。)
( ※ STAP幹細胞そのものではなくて ES細胞を測定しただけだ、という誤認の可能性はある。ただしそれは、誤認ではあっても捏造ではない。)
──
結局、あれこれと考えると、小保方さんが何らかの誤認や実験ミスをしたことは大いに考えられるのだが、悪意ある捏造(ES細胞のすり替え)をしたということは、とても考えにくい。
それゆえ、「ES細胞のすり替え」という説は、とうてい支持しがたいのである。……プロファイリング的には。
【 追記 】
小保方さんが ES細胞の捏造(すり替え)をしていないだろう……と思わせる根拠がもう一つある。次のことだ。
・ 最近はすごく憔悴していると伝えられる。
・ 早大の博士号を返上しようと申し出た。
・ STAP細胞については否定しない。( → 朝日新聞 )
仮に ES細胞の捏造(すり替え)をしているのであれば、もはや「捏造をしました」と告白しているはずだ。画像の切り貼りや転載については告白しているし、博士論文のコピペについても認めている。これだけたくさん認めているのだから、ES細胞の捏造も「やりました」と認めていいはずだ。今さら一つぐらい嘘を隠してもほとんど意味はない。それより、嘘が発覚したときの反発が怖い。
ちなみに iPS細胞の捏造犯だって、捏造がバレたら、「やりました」とあっさり認めた。それは、捏造がバレたとしても、解雇ぐらいで済むからだ。懲役刑になるわけでもないし、世間から大攻撃を受けるわけでもない。単に軽蔑されるだけだ。それというのも、あっさり「やりました」と認めたからだ。
なのに小保方さんが、ここで嘘に嘘を重ねたら、どうなるか。「あれだけ嘘をついて、お詫びをしたあとで、またしても嘘をついていないという嘘をついたのか!」……こういうふうに、世間の怒りは沸騰する。そうなったら、もはや日本にはいられなくなる。それどころか、世界から追放される。
つまり、嘘がバレたあとは、嘘を告白した方がいい。実際、画像の切り貼りについては、あっさり認めた。なのに、今さら少しだけ嘘を続けるというのは、心理的にも論理的にもまったく筋が通らない。特に、憔悴していることから、素直に「嘘でした」と告白する方が、ずっと楽になれる。
彼女が日本中から攻撃されながらも、なおも「 STAP細胞は真実です」という態度を変えないのは、少なくとも本人の心の中では「 STAP細胞は真実だ」と信じられているからだ。つまり、「 ES細胞のすり替え」なんてことはまったくやっていないからだ。
かくて、「犯罪者の心理」に着目する限り、「 ES細胞のすり替え」ということはありえそうにない。それほど狡猾で悪質な犯罪をするということは、(コピペぐらいしかできないような)間抜けな人物にはもともと無理なことなのである。
[ 補足 ]
もう一つ理由がある。
ペテン師ならば、「バレないように嘘をつく」というのが最重要となるはずだ。「すぐにバレるように嘘をつく」ということを狙うペテン師などはいない。嘘をついたなら、バレないようにするはずだ。
ところが小保方さんのやったことは、どれもこれも嘘がすぐにバレるようなことだ。画像の切り貼りはあっさりバレる。過去の画像の転用もあっさりバレる。論文のコピペもあっさりバレる。どれもこれも「すぐにバレる」ようなことばかりだ。
これは「バレないように嘘をつく」というペテン師の人物像に矛盾する。あまりにもずさんな(間抜けな)コピペだらけであるがゆえに、「バレないように嘘をつく」というペテン師の人物像には矛盾する。それゆえ、彼女が「 ES細胞のすり替えを上手になし遂げたペテン師である」という推論は、成立しがたいのである。
( ※ それよりは、「画像の切り貼りを悪いとは認識していなかった」という告白の方がずっと信頼性が高い。「間抜けなコピペ屋」で解決が付くときに、「しかも高度に狡猾である」という人物像を持ち込んで、矛盾を起こす必要はないのだ。)
【 補説 】
では、真相は? 三つの可能性がある。
(1) 真実である
「STAP細胞はともかく STAP幹細胞は真実だった」
という可能性は十分にある。その裏付けの一つはこれだ。
→ 乳酸菌による多能性細胞
一部引用すると、こうだ。
ヒトの皮膚細胞の表面を覆うタンパク質を酵素で除去し、細胞に乳酸菌を取り込ませて培養。その結果、胚性幹細胞(ES細胞)に似た細胞の塊ができた。
このようなことが他の人からも報告されているのだから、これと同様のことが現実に起こった、というのは不思議でも何でもない。
STAP細胞の話を聞いたとき、「こんな常識はずれのことがあるはずがない」と思った人が多いようだが、実は、常識はずれのことは上記でも報告されているのである。
しかも、「皮膚細胞の表面を覆うタンパク質を酵素で除去し」というのは、STAP細胞の場合によく似ている。
→ STAP細胞の原理 3
ここでは、STAP細胞になるのは、「外形部分を損傷した細胞」である。このことは、上記の「乳酸菌による多能性細胞」における「皮膚細胞の表面を覆うタンパク質を酵素で除去」というのにそっくりだ。
つまり、そっくりの原理によって初期化するという報告が、独立して二つの方面からなされた。とすれば、これらが虚偽である可能性はかなり低い。「偶然の一致」とはとても思えない。ゆえに、そこには何らかの真実がある可能性が高いのだ。つまり、「外形部分を損傷した細胞が初期化される」という現象は、実際に起こっている可能性が高いのだ。こうして、
「STAP細胞はともかく STAP幹細胞は真実だった」
ということは、十分に考えられる。
(2) 捏造である
STAP細胞のすべてが捏造であった、という可能性はどうか?
これは簡単で、すでに決着が付いている。「すべてが捏造だったということはない」と。なぜなら、Oct4 発光が確認されているからだ。
では、キメラマウスと STAP幹細胞は? これらについては、「実験すべき課題だ」とすでに示した。ただし、キメラマウスについては、「すり替えはありえそうにない」と本項でプロファイリングによって示した。
ただし、である。よく考えると、たった一つ、例外がある。それは、こうだ。
「理研そのものが組織的に捏造をしていた」
このようなことは、「まずありえない」として棄却してきたが、論理的に考えるなら、ありえなくもない。特に、こうだ。
「笹井さんが首謀して、すべての捏造を主導した」
この場合には、捏造説も現実味を帯びる。以下の通り。
・ 小保方さんは捏造の意味を知らないで、実験をしただけ。
・ 実験のデータの捏造も、命令されてやっただけ。
・ ES細胞へのすり替えも、意味がわからないままやっただけ。
・ 若山さんがだまされたのは、小保方さんもだまされていたから。
・ 論文の執筆は、笹井さんが書いたので、嘘だらけ。
・ 犯罪をする能力からして、それができるのは笹井さんだけ。
以上の理由によって、「笹井さんが首謀して捏造した」ということは、論理的には考えられる。つまり、「主犯は笹井で、従犯(実行犯)は小保方」というシナリオである。この場合には、すべての難点が解消して、捏造は現実味を帯びる。
ただし、である。これには決定的な難点がある。それは、動機だ。これは、捏造を狙っているのだから、まさしく捏造はできるが、同時に、捏造であるとバレることもわかっていることになる。
つまり、これが成立する場合、「笹井さんは捏造をしたあと、捏造がバレて、公職を追われる」ということが予定されていたことになる。つまり、自爆だ。
しかし、自爆だなんて、いくらか何でも、動機としてはありえない。あまりにも馬鹿げている。
それゆえ、「主犯は笹井で、従犯(実行犯)は小保方」というシナリオは、荒唐無稽というしかない。
(3) 誤認である
すべては無能ゆえの誤認だった、という可能性もある。
・ 小保方さんはコピペしかできない間抜けだった。
・ 他の人も多かれ少なかれ、同様の間抜けばかりだった。
・ 笹井さんはデータミスに気づかないほどの間抜けだった。
・ 各人は STAP細胞の再現性の弱さを知らない間抜けだった。
・ TCR再構成などの意味もろくに知らない人ばかりだった。
・ 死滅細胞と Oct4発光の区別もできない人ばかりだった。
・ STAP細胞はできていないのに、できたと勘違いした。(誤認)
・ ES細胞への混同も、自分で知らないうちにやっていた。
・ ただしどういうわけか、STAP幹細胞だけはできてしまった。
この可能性は、いくらかある。デタラメばかりやっていたのだが、実験の根性だけは本物だったので、デタラメな試行錯誤をとことんやっているうちに、うまく万能の幹細胞ができてしまった。これは、「虚仮(こけ)の一念、岩をも通す」というものだろう。
この可能性は、なくはないが、あまりにも喜劇的だ。
もしこれが真実だったら、世間のすべての人々は運命にもてあそばれた阿呆だということになるな。……あなたも私も。
[ 付記 ]
冒頭にも述べた通り、本項はすべて、推理です。証拠は一つもありません。ただの思考があるだけです。
したがって、科学的に議論をするようなことではありません。読者は、「ああそうか」と思うもいいし、「いや、そんなことはないぞ」と思うのもいいが、これについて議論をすることは無駄です。事実についての話題ではないからです。
本項はあくまで読み流してください。読者の意見は不要なので、コメント欄は閉じておきます。
( ※ どうしても書きたければ、STAP細胞 掲示板で書いてください。)