初期化の有無についてはどうか? 「他の血球に由来する STAP細胞に初期化はなかったとしても、 造血幹細胞に由来する STAP細胞に初期化はあった」と言えそうだ。(前項の仮説の下で。) ──
「STAP細胞に初期化はなかった」という話題があった。
→ STAP細胞は実験ミスか?
この項目のリンク先に示されているように、「リンパ球に由来する STAP細胞には TCR再構成がなかった」という指摘があった。このことをもって、「STAP細胞には初期化はなかった」と結論された。
──
一方、前項では、「 STAP細胞は造血幹細胞(および他の血球)らしい」という仮説を提出した。
→ STAP細胞は造血幹細胞か?
この仮説に従えば、STAP細胞は二種類の混合物であり、次のように分類される。
・ 他の血球に由来する …… TCR再構成 あり
・ 造血幹細胞に由来する …… TCR再構成 なし
他の血球に由来するものは、STAP細胞である。これは、TCR再構成が「あり」なので、分化したことになる。ただしそれが初期化された証拠はない。
造血幹細胞に由来するものは、STAP幹細胞である。これは、TCR再構成が「なし」なので、血球に分化したことはない。それでも、(キメラマウスなどができたとすれば)初期化されたことになる。
──
以上を整理すれば、次のように結論できる。
(1) 他の血球に由来する STAP細胞が初期化された証拠はないらしい。(否定の証拠もないらしいが。)
(2) 造血幹細胞に由来する STAP細胞が初期化されたらしい証拠はある。理由はキメラマウスの存在だ。キメラマウスや胚画像が正しければ、STAP細胞は初期化されたことになる。この意味で、「初期化」はまさしく成立したことになる! (前項の4番目に該当する。)
ここで注意。TCR再構成の関係では、次のように言える。
「 TCR再構成がなかったということは、分化がなかったということを意味しない。TCR再構成は、造血幹細胞から血球への分化がなかったことを意味するだけだ。受精卵から造血幹細胞までの分化がなかった( or あった)ことを意味しない」
図で示すと、分化には、次の二段階がある。
受精卵 ──→ 造血幹細胞 ──→ 血球
1次分化 2次分化
(TCR再構成)
TCR構成で調べるのは、2次分化だけである。TCR再構成が見られないと、2次分化はなかったことになる。
一方、TCR構成の結果に関係なく、1次分化は起こっている。つまり、造血幹細胞はすでに分化した細胞である。これが多能性をもつとすれば(キメラマウスを作れるとすれば)、1次分化のあとで初期化が起こったことになる。これは大きな発見だ。
( ※ 1次分化したあとの細胞は初期化しない、というのがこれまでの常識だったからだ。)
【 後日記 】
《 STAP細胞(STAP幹細胞)の正体は、コンタミされた ES細胞だと判明したので、以下は正しくありません。以下は取り消します。 》
以上の説が正しいとすれば、次の評価が得られる。
「STAP細胞というものはまさしく存在する。それはいったん分化した造血幹細胞が初期化したものである。STAP細胞の論文は、基本的には正しかったと言える。」
「ただし、それを実証する過程では、勘違いがあった。既存の幹細胞以外のものが初期化すると見なしたが、それは正しいとは言いがたい」(間違っているかどうかは現段階では不明。)
「酸などの刺激によって細胞( or 幹細胞)が初期化する、という認識は、たぶん正しくない。初期化する原理は、今のところ不明。ただし、実験プロトコルのどこかに、初期化する原理がひそんでいる」
( ※ 物理学で言えば、「実験結果を説明する理論が誕生していない」という状態。)
実を言うと、「実験結果を説明する理論が誕生していない」というのは、別に問題ではない。実験と理論とは別だからだ。実験を説明する理論ができていないからといって、実験結果が否定されるわけではない。
物理学で言えば、マイケルソン・モーレーが「光速度一定」という実験結果を出したとき、相対性理論を提出することはなかったが、だからといって、マイケルソン・モーレーの実験が無意味になるわけではない。実験と理論とは違うのだ。そもそも、iPS細胞だって、まだ理論的には解明されていない。
──
ともあれ、最終的には、実験プロトコルによってできたものが多能性をもつかどうかだ。つまり、緑色の胎盤や、キメラマウスなどを、形成するかどうかだ。その意味では、最終判断は、再現性待ちである。
ただ、再現性ができた場合には、本項で述べた説明でほぼ整合的に説明できる。簡単に言えば、こうだ。
「造血幹細胞は、実験プロトコルの仕方によって、初期化されて、多能性をもつ」
この意味で、「 STAP幹細胞は存在する」と言える。ただし、「体内のどの細胞も STAP細胞になる」という件は、不明であある。
( ※ 論文自体には、「体内のどの細胞も STAP細胞になる」というふうに書かれているし、「幅広い多能性をもつ」とも書かれている。これがどこまで成立するかは不明。)
[ 付記1 ]
本項で大事なことは、次のことだ。
「 TCR再構成がなかったということから、分化した細胞が初期化されたことは否定された」という見解がある。しかし、その見解は、妥当ではない。TCR再構成がなかったということは、2次分化がなかったということを示すだけであり、1次分化がなかったことを示すわけではない。TCR再構成の有無で騒いでいる見解は、見当違いである。それは、1次分化と2次分化を混同した認識である。
( ※ 1次分化と2次分化というのは、本項における独自用語です。)
[ 付記2 ]
勘違いしやすい点があるので、解説しておく。
「造血幹細胞からできた万能性細胞」は、STAP細胞であり、STAP幹細胞ではない。
小保方さんの定義によれば、STAP幹細胞とは、STAP細胞を特殊処理して増殖性をもたせたものである。
一方、本項で述べた造血幹細胞からできたものは、由来が幹細胞ではあるが、出来上がったものは(特殊処理してないので)増殖能をもたない。つまり、STAP幹細胞ではなくて、STAP細胞である。
私もちょっとよく理解できていなかった。ここで整理して記しておく。
2014年03月09日
過去ログ
ともあれ、最終的な判断は、再現性待ちです。
挽回があるとすれば、
この論文を取り下げ、新たに新解釈で書き直したものを
(弱小学術雑誌でなく)ネイチャーに再投稿して受理された場合。
実験と解釈は別だ、という原則を理解しましょう。
> この論文を取り下げ、
それだったら、再現実験を成功した人の方が先に受理されるから、STAP幹細胞の発見者は再現実験を最初に成功した人になりますね。再現者が投稿したあとで、二番煎じで小保方さんが投稿しても、後追いになるので、拒絶されます。歴史上は、再現者が発見したとして公認されることになります。
つまり、歴史の捏造。「歴史を捏造せよ」ということになりますね。
> 論文自体には、「体内のどの細胞も STAP細胞になる」というふうに書かれているし、「幅広い全能性をもつ」とも書かれている。
──
本項は、論文が正しいかどうかではなくて、論文とは別の仮説で物事を説明しようとしています。
「論文がすべて正しい」という説はすでに否定されています。私はその説を取ってはいません。論文とは別の説を取っています。
本項を「論文支持説」と勘違いしないで下さい。
タイムスタンプは 下記 ↓
著者らは、STAP細胞を内部細胞塊に移植してキメラマウスおよび胎盤を作成したことをもってSTAP細胞が全能性を獲得している証拠であると主張しています。加えて、SMARTerを用いたRNA-seq解析結果が公表されています(http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/fig_tab/nature12969_SF6.html)が、この結果によればSTAP細胞のRNA配列はES細胞と全く同じといってさしつかえありません。これらは、管理人さんの結論である「(1) STAP細胞が初期化された証拠はない」と矛盾します。この整合性はどうお考えでしょうか?
(1) 他の血球に由来する
(2) 造血幹細胞に由来する
元の記述は不正確でしたね。ご指摘ありがとうございました。
旧: 「STAP細胞に初期化はなかったとしても、STAP幹細胞に初期化はあった」と言えそうだ。
新: 「他の血球に由来する STAP細胞に初期化はなかったとしても、 造血幹細胞に由来する STAP細胞に初期化はあった」と言えそうだ。
そうすれば誰でも信じる。
そもそも割烹着を来て実験とか何とかミーハーな話題が先行している。
どうも胡散臭い。
多能性を有している細胞を選別しただけなら、それはSTAPとは言わないの。
多能性細胞の選別によってキメラと胎盤が作製できていたなら初期化の根拠にはならないのでは?
表現を変えた方がいいと思うけど。
造血幹細胞て「幹細胞」って表現をしている時点でもはや多能性をもっている事を示しているから、初期化うんぬんは意味をなさない。
この場合、普通の細胞が刺激で「多能性を獲得した」か、元々あった多能性細胞が「選別されたのか」が重要なんだと思う。
造血幹細胞は多能性がありません。小保方さんの処理工程を経て、多能性をもつようになりました。
前項の引用部で、詳しく説明してあります。
ただ、処理の原理が「酸」ないし「刺激」であるかどうかは不明です。原理は未解明です。解明したら、特許を取れる。
totipotency (全能性)
胎盤を含むすべての細胞に分化できる能力。受精卵、STAP細胞(小保方論文が正しかったとして)など
pluripotency (多能性、万能性)
三胚葉のどの細胞にも分化できる能力。ES細胞、iPS細胞など
multipotency (多能性)
複数の種類の細胞に分化できる能力。体性幹細胞など
問題は、pluripotency と multipotency の両方に「多能性」という訳語があてられていること。
これらの区別を明確にしたい場合は、pluripotency は「万能性」と訳したほうがよい。
( 本項を書く前に読んだ Wikipedia に「全能性」と書いてあったんで、つい引きずられてしまいました。)
しかし、キメラの作製がこれを強く示唆いるとはまだ断言できない。
元々、リンパ球の中にpluripotencyな細胞が存在して、それが選別されてキメラができた可能性も否定できないのでは?
あと、今回の場合、本当に単細胞だけでキメラ作製ができていたのかも気になる。Multipotencyやplupotencyな複数種類の細胞が、何らかの相乗効果を及ぼして単独では得られない能力を獲得した結果、胎盤が作製できている可能性とかはないのかな。そうだとすると、それはそれですごい発見だけど。若山さんが、細胞を1つ1つバラバラにして注入したら全然キメラが作製できなかったってのが気になるんだよね。
Stap scの方についてはですけどね。
しなかった証拠もないでしょうけど、やはり常識を破る主張の方が証拠提出をもとめられるのが普通ではないですかね。
別項コメントでも記されていますが、そのことは以前から示唆されていて、否定的に評価されています。
特に、酸にひたさない場合には駄目なので、まず無理ですね。小保方さんは「これがある」と示したのに、「他のものもあるかもしれない」じゃ、駄目です。他のものがあるならあると明示しなくちゃ。
また、他のものがあろうとあるまいと、「これがある」と明示したことは大切です。今までは「ない」と思われてきたんだから。
> 1次分化を経たという証拠も今はないのでは?
1次分化があったというのは、受精卵が体細胞になったことです。造血幹細胞は、体細胞ですから、定義自体に1次分化が含まれています。だいたい、見た目からして球形の細胞で、受精卵の細胞とは違うでしょ。そもそも、分化しない細胞が個体内に残っていたら、細胞生物学がひっくり返ります。
酸で浸すことによって、余計な細胞が除去されて
特定の細胞が増殖しやすい環境が得られたという可能性も考えられる。例えば、muse細胞はトリプシンに浸漬させることで増殖性が向上する。
>小保方さんは「これがある」と示したのに、「他のものもあるかもしれない」じゃ、駄目です。他のものがあるならあると明示しなくちゃ。
小保方さんが示したのは、Opt4を発現して増殖する細胞が存在するってことだけ。著者達は、この細胞を、2次分化した細胞が刺激で初期化されたSTAP幹細胞と考えていたが、これがTCRの結果から否定的になった。そうなるともはや、この細胞は正体不明でしかない。これを造血幹細胞だというのは、管理人さんのただの推測でしかない。
私の言うpluripotencyな細胞とは、例えば、muse細胞を想定して欲しい。現状知られているmuse細胞の一部は3胚葉にも分化可能なので万能細胞に類する。muse細胞は、刺激で初期化されたというより、刺激によりそれを含む複合組織から単離されたと解釈されている。
また、著者達のいう万能性幹細胞が、本当に単細胞の状態で、キメラの胎盤を作製する全能性を有するのかも疑問。
リンパ球に見えるもの(つまりさまざまな血球)のどれかだ、ということは判明しています。少なくとも ES細胞でないことは確実。
ま、どれであろうと、もうすぐ判明するから、たいして気にするほどのことじゃない。
犯罪捜査で言えば、容疑者は10人のうちのいずれかだ、と判明している段階。まったく不明の状況とは大きく異なる。条件を絞れば、やがては判明する。
> 私の言うpluripotencyな細胞とは、例えば、muse細胞を想定して欲しい。
それじゃ、何もわからないのと同じです。
一方、今回の実験では、「血球のなかのどれか」と絞れている。そのなかの最有力候補は造血幹細胞です。それ以外にはありえない。( muse細胞みたいな体細胞ではありえない。)
> 単細胞の状態で
単細胞の状態では駄目だ、と次項の <STRONG>[ 付記3 ]</STRONG> で示しています。
ん?でも色々な組織の体細胞からもSTAPは誘導できるんじゃなかったのですか?
じゃあ管理人さんは、この細胞の正体を、造血幹細胞が1次分化から初期化したもの、私はmuse細胞が選別されたものって考えているってことでいいね。
>単細胞の状態では駄目だ、と次項の [ 付記3 ] で示しています。
若山さん達が試した限りそうだったのかもしれないが、条件の問題なのか、手法によっては単細胞でも胎盤まで分化する可能性があるのか興味があるってだけですよ。
マウスES細胞の実験中のコンタミによると考えれば、NGSデータとも合致します。
何十回も実験して、数回か1回の成功は、それを意味しています。
数株同時平行でに培養していると、とり違い、コンタミは起こりえます。
人間がやることですから。
問題は、そのコンタミが、故意か過失かです。
ですから、生まれたキメラマウスのサンプルを第三者機関に出して解析してもらうことです。
それが出せないというなら故意と疑われても仕方ありません。
その件は本日の項目で詳しく論じています。
→ http://openblog.meblog.biz/article/21510039.html