記事を引用しよう。
米Microsoftは20日、Webブラウザーから無料でOfficeの主要機能を利用できる「Office Online」を新ドメイン「Office.com」サイトで公開した。Microsoftアカウントがあれば誰でも無料で利用できる。
Office Onlineはブラウザー内でOfficeの多くの機能を利用できる。
( → INTERNET Watch )
これを読むと、MS Office の文書がそのままブラウザで使えて、制限されるのは一部の機能だけ……というふうに見える。しかし、そうではない。
正しくは、下記の通り。(私の調べた範囲で述べる。絶対に正しいという保証はない。)
──
文書形式は、Word 用の文書形式( *.doc *.docx )だと思えるが、そうではない。次の3種類が混在する。
(1) *.doc *.docx そのもの
(2) *.doc *.docx を「見るだけ」の形式
(3) 一般的な HTML 形式 ( Office Online で使う)
説明しよう。
(1)
*.doc *.docx そのものの文書を使うことができる。あらかじめ OneDrive ( SkyDrive )に文書をアップロードしておくことが前提だ。
これを使うには、パソコンに MS Office 2013 があることが必要だ。パソコンに入っている Office 2013 によって、OneDrive に入っている Office 文書を使う。
何のことはない。Web 上の Office文書をダウンロードしてパソコンで使うだけだ。これは、機能はほぼ完璧だが、単にネット上に文書を保管しているのと変わりはない。ブラウザで使うことの意味がない。単にダウンロードして使う方法と同じだろう。
なお、当然ながら、この方式を使うには、MS Office 2013 を購入しておくことが必要だ。その意味で、MS の販促サービスだとも言える。
(2)
*.doc *.docx を「見るだけ」の形式もある。これは、「見ること」に限定すれば、かなり高機能である。縦書き文書も、ルビも、きちんと表示される。書式もかなり正確だ。「ほほう、ブラウザでこんなこともできるのか」と感心する。
しかし、これも機能に限界がある。縦書き文書では、フォントが縦書きでなく横書きのフォントを使い、それを90度回転させる、という仕組みらしい。そのせいで、次のような記号は、90度回転した形で見えてしまう。
§ ━
というわけで、再現は不完全だ。どうせ見るだけならば、「 Word Viewer 」のような無料の Viewer ソフトを使う方が完全なので、好ましい。(お手軽さでは負けるが。)
→ Microsoft Office Word Viewer
→ Word Viewer (マイクロソフト公式)
(3)
上の (2) では、ブラウザ上でかなり正確に表示されるとはいえ、「見るだけ」に限定されており、「編集」はできない。
では、「編集」はどうするか? 「Word Online というようなソフトを使うことで、かなり編集ができる」……というのがマイクロソフトの触れ込みだが、それはろくにできない。
ここを誤解しがちなので、注意しよう。
ここで使えるソフトは、「ネット上の Word 」なんかではない。決して。
では何かというと、ただの「高度な HTML ワープロ」であるにすぎない。たいていのブログサービスでは「書式を操作するワープロ画面」というのが用意されているが、それらとほとんど変わらない。
「高度な HTML ワープロ」であるから、HTML のさまざまな書式タグは使える。しかしながら、MS-Word 独自の書式は使えない。ルビも完全に消失する。
・ OneDrive にある文書を Word Online で開くと、ルビ が消失する。
・ パソコンの MS-Word で開いた MS-Word 文書のルビを、Word Online にコピペすると、ルビが消失する。
ルビだけではない。( MS-Word 独自の)さまざまな特殊書式が消失する。場合によっては、サイズも変更される。(小さなサイズが標準サイズに変更されることがある。)
ただ、色については、消失することはないようだ。ま、HTML では、色については十分な機能があるから、色が消えるはずがないのは当然だが。
──
ともあれ、Web 上で使える MS-Office というのは、正確な言い方ではない。そこで使える機能や情報には、限界がある。
特に、下手をすると、ファイルを上書きしてしまって、元の文書が消失することもあるから、注意しよう。
私としては、このサービスはあまり実用にならないと感じる。使えるとしたら、次の意味だろう。
(1) もともと Office 2013 をもっている場合には、以下の (2)(3) の操作をしたあとで、Office 2013 に速やかに移行できる。
(2) 単なる簡易ビューアとしてなら、そこそこ有益に使える。(縦書きのときなどでは限界はあるが。)
(3) Word 文書とは無関係に、単なる HTMLワープロの文書として、簡易ワープロによるメモ書きに使える。
この3点において使える。いずれも機能限定だが、ブラウザ上で使える。そういうメリットはある。
──
ただし、私としては、普通のやり方の方をお薦めする。
・ 見るだけなら、Word Viewer を使う。
・ 編集するなら、普通にダウンロードしてから、MS Office で編集する。
これは、当り前の方法だ。そして、この当り前の方法の方が、ずっと使いやすい。わざわざブラウザを経由して使っても、まともに編集もできないようでは、使う意味がほとんどない。
どうしてもこの Web アプリを使うのであれば、あくまで (3) の「簡易ワープロとして使う」ということに限定した方がいい。これなら、メモ書きや下書き文書ぐらいには使える。
[ 付記 ]
ただ、この程度のこと(簡易的な利用)であれば、iPhone や iPad などから、ワープロ・アプリを使う方が、マシかもしれない。
下記に「iPad で 無料ワープロ」という話がある。
→ iPad でワープロを使う(無料)
→ ブラウザをワープロにする
[ 注釈 ]
本項で述べたことは、MS-Word 文書に限られた話だ。
一方、Excel のスプレッドシートでは、話はかなり異なる。
・ 表形式では、特殊書式は使われない。
・ 表のデータを操作できるのは便利である。
この意味で、ブラウザから文書を使えることの意義は、かなりありそうだ。MS-Word 文書の場合とは、かなり事情が違うだろう。
( ※ つまり、使う意義がなりありそうだ、ということ。ろくに調べていないので、断言はできないが。)
使えるかな、と思ったのは
(1)別の場所の人と共同で編集作業をする
(2)Officeがインストールされてない出先PCなどで編集、印刷する
といった用途でしょうか。まあ、クラウドで使う意味ってもともとそういうものですから。
もう一つ、
(3)Officeを持ってない人がどうしても.doc .docx形式の文書を作って送る必要に迫られた
があるかも。例えばiPadなどですね。Pagesから書き出す.doc形式の互換性はあまり高くないですから、こうすることで相手にも一応「Officeで作りました」と言える。使いやすくはありませんが。
ただ、非常にセコイなと思ったのが、純正のOfficeを持ってないと.doc .docx形式でのダウンロードができないこと。King Officeのように高い互換性のソフトを持っていても使えないんですね。おいおい、要するにあの馬鹿高い純正Officeを売りたいだけなのかと。
結局、Windowsでしかできないことがどんどん減っていて、使いやすいタブレットを出せていないMSとしては、もはやOfficeのファイル形式くらいしか売り物がない。機器でもOSでも儲けられないから、純正Officeにしがみついて収益を上げる方針なのかな、と思います。
しかし、Officeフォーマットの天下がいつまで続くかは疑問がありますね。見るだけのフォーマットとしてはpdfの方がよほど汎用性が高いですし、Office以外にも魅力があるタブレットを出せない限りMSの縮小均衡は続くような気がします。
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