前々項では、安倍首相の対応を皮肉った。(天ぷらを食べている場合じゃない、と。)
これを読んで、「政治ネタを書くな」と憤慨した人もいるようだ。お気を悪くしたとしたら、お詫びします。とはいえ、私の意図は、安倍首相の悪口を言うことじゃない。一国の首相の危機管理意識だ。
地震であれ、大雪であれ、国家の一大事においては、首相の危機管理意識は大切だ。そのことを訴えたい、というのが、私の趣旨だ。
( ※ 悪口を言いたいんじゃないんだからね! 「嘘つけ! 性格の悪さはお見通しだぞ!」と言われそうだが。 (^^); )
( ※ でも、やたらと安倍さんの悪口を言っているわけじゃない。災害ネタと軍事ネタぐらいに限られています。)
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話を戻す。テーマは「危機管理意識の大切さ」だ。
どうしてか? というのは、前々項(雪害は防げたか?)でも述べたように、この雪害に対してはある程度、事前対策が可能だったからだ。
そもそも、今回の雪害は、突発的に起こったわけではなかった。前からある程度、予測されたいた。
(1) 黒潮の蛇行
今年は黒潮が蛇行しているせいで降雪の可能性が高く、大雪になることもありそうだ、という予測がなされていた。(複数の人)
黒潮が直進したときは、南岸低気圧のコースは本州の太平洋岸沿いに集中したが、大蛇行のときは、東海沖で岸から大きく離れ、沖合に分散する傾向があった。また大蛇行の期間に南岸低気圧は58回現れ、このうち東京で雪が降ったのは12回だったが、直進の期間にあった25回ではゼロだった。
( → 黒潮大蛇行の冬、東京に雪多く 鹿児島大など分析 )
今冬は黒潮の大蛇行が続いています。日本列島上空に強い寒気が居座り、1月から2月にかけて台風並みの爆弾低気圧が襲来すれば、東京に記録的な大雪が降ることは十分考えられます。
( → 「黒潮大蛇行のため東京に記録的大雪降る可能性あり」と識者 )
(2) 偏西風の蛇行
偏西風の蛇行のせいで、世界的に異常気象が起こっている、という指摘があった。最近でもまた報じられている。
気象庁によると、偏西風は北半球の上空を蛇行しており、流れが北に寄った地域では南からの暖気が入る。北極上空にもこの暖気が入り込んでいる。一方、南に曲がった地域では、北極から押し出された寒気が下りてきて寒くなっている。
日本列島は今月、太平洋側を中心に2度にわたって記録的な大雪に見舞われ、積雪は都心で 27センチ、甲府市で観測史上最高の 114センチに。
偏西風の影響で寒気が入っていたところに、本州南岸沿いを進んだ「南岸低気圧」が接近して大雪になった。
( → 2014年2月18日 読売新聞 )
上の記事には図があるので、その図をよく見てほしい。世界規模で変動があることがわかる。中国北部や米国では寒気が厳しいとわかる。特に米国の寒さは厳しくて、前に何度か報道された。
米国を襲っている寒波は7日も猛威を振るい、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によれば、ここ数日間の全米の死者数は20人となった。
中西部デトロイトでは7日、零下18度を記録。ニューヨーク市のセントラルパークでも、同日としては1896年以降、最低となる零下16度を記録した。南部アトランタでも7日としては過去最低の同14度まで気温が下がった。
( → 産経 2014.1.8 )
動画にもある。
米国だけでなく、世界規模で異常気象があったとも説明されている。
ここで説明されているように、世界規模の気象異常があったのだが、マスコミの報道は少なかった。それでも、少しは報道されていたし、ネットでもいくらか情報があった。
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以上の (1)(2) のことからして、今冬に日本でも大雪になる可能性は十分にあった、とわかる。決して青天の霹靂ではなかった。少なくとも、十分な情報力と思考力を持つ人ならば、その可能性を理解していていいはずだった。そして、その可能性を理解しておけば、あらかじめ警報を発したり、対策を促したりすることもできたはずだ。
とすれば、安倍首相は、政府の長として、そのようなことをしておいてもいいはずだったのだ。
だが、このことは、安倍首相という無能な人に要求するべきことではあるまい。猿は木を登ることはできるが、猿は空を飛ぶことはできないからだ。
どちらかと言えば、これは、私にとって痛恨事となる。米国の異常気象を見たときに、「日本はたぶん大丈夫だろう」なんて楽観しないで、「日本もひどい目に遭うかも」と悲観的に考えておくべきだった。そしてまた、それ故の対策が必要だと考えて、警告を発しておくべきだった。……今となって思い返すと、痛恨の極みだ。せっかく「災害」カテゴリなんかを用意して、日頃から注意しているくせに、まったくなってないね。ダメダメですね。平身低頭、お詫びしなくては。まったく申し訳なく思います。ごめんなさい。
( ※ 利口ぶっていて、知性があると思っても、肝心のときにその知性を発揮できないようじゃ、何の意味もない。自惚れを自戒するべき。「この馬鹿たれ!」と自分を罵るべき。まったくだ。)
思えば、(大地震については予想して警告しておいたとはいえ)3・11の 津波災害や原発事故を警告できなかった。おまけに、今回の大雪だ。いずれも空振りだが、三回続いて、空振り三振だ。情けない。駄目ですねえ。
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さてさて。
私の駄目なところは別として。
このような異常気象の原因は、何だろうか? それが本題だ。
上記の (1)(2) では、「黒潮の蛇行」「偏西風の蛇行」を原因としたが、これらは、異常気象の原因とは言えるが、真の原因とは言いがたい。
真の原因は、「黒潮の蛇行」「偏西風の蛇行」をもたらした原因である。それは何か? ……実は、よくわかっていない。(読売の記事[紙の新聞]にも、そう書いてある。ネット版はダイジェスト記事だが。)
このような異常気象の本当の原因は、何だろうか? 識者はわかっていないようだが、次の仮説もある。
「異常気象の理由は、地球の温暖化だ。炭酸ガスの濃度が高まったから、地球の温暖化が進んで、異常気象が起こるようになった」
これはもっともらしい理屈だが、論理になっていない。「温暖化」が「異常気象」に結びつく過程が不明だからだ。
そこで、私としては、次の仮説を提出したい。
「このような出来事は、異常気象というよりは、気象変動の拡大である。つまり、気象の変動の振幅(統計的な揺らぎの震幅)が大きくなったのだ。気象というものは、統計的にバラツキがあるものだが、そのバラツキが大きくなった。暑さはいっそう暑くなり、寒さはいっそう寒くなく、というようなバラツキが大きくなった。
当然、夏に涼しくなったり、冬に温かくなったりすることも、限定的には発生するようになった。ただし、それはかえって好都合な状況なので、異常気象と認識されないだけだ。現実には、そのように両方向で、気象のバラツキが発生していた。
では、このようにバラツキを大きくするものは、何か? 私見では、それは、緑地の減少(地球の砂漠化)である」
この件については、前にも論じた。
→ 陸地温暖化説 (緑地減少説)
→ 陸地温暖化への対策
→ 太陽と雲 (気温・温暖化)
以上では、温暖化の原因として、地球における「緑地減少」(森林消失・砂漠化)を指摘した。
ただ、「緑地減少」(森林消失・砂漠化)は、平均気温の上昇をもたらすだけでなく、地球全体の気候変動を拡大しているのだ。気象の振幅の拡大という形で。(それが今回の異常気象の原因だ。)
なお、地球における「緑地減少」(森林消失・砂漠化)が進んでいるということは、下記でも説明した。
→ 開墾による森林消失
→ 地球環境の変化(緑地減少)を画像で見る
→ ナイル流域の開発
→ Panoramio(世界各地の写真) (コンゴの熱帯雨林開発)
ここで明らかなように、南米のアマゾンや、アフリカのナイル流域やコンゴなどで、森林消失や緑地減少が起こっている。
このような地球全体における環境破壊(緑地減少)が、異常気象の真の原因なのだ。……私はそう思う。
[ 付記 ]
ここでは、次の対比が成立する、と考えている。
・ 気象の変動を大きくするもの …… 陸地。乾燥地。
・ 気象の変動を少なくするもの。…… 海。森林。
その理由については、下記項目を参照。「保水力」という用語に注意。
→ 気候変動と温暖化
「異常気象の根本原因は、緑地の減少(≒ 砂漠化)である。これはつまり、気候変動を抑制する森林部が減少し、気候変動を拡大する砂漠部が増大した、ということだ。このことは必然的に異常気象をもたらす」
森林には保水力がある。そのことによって、雨水を蓄え、一定の水分蒸発を維持し続ける。そのことで、気候の変動を抑制する。
砂漠(砂地とは限らず乾燥地を含む)は、植物がないので、保水力がない。雨が降っても、そのあとすぐに乾燥してしまうので、水分蒸発はすぐになくなる。そのことで、雨の日と晴れの日との、気温変動も湿度変動も大きくなる。こうして変動が大きくなるので、地球全体で気候の安定性をなくしてしまう。
また、下記項目も参照。
→ 温暖化の原因は炭酸ガスでなく緑地減少
→ 太陽と雲 (気温・温暖化)
【 関連サイト 】
偏西風の蛇行については、上記の読売の記事に基礎的な情報がある。(リンク先を参照。)
一方、もうちょっと詳しい情報は、下記にある。
→ 偏西風蛇行により異常気象になっていると…(知恵袋)
つまり、「偏西風」というよりは「ジェット気流」という方が正しい。また、「蛇行する」というよりは、「蛇行が停滞する」(ブロッキング現象)という方が正しい。
また、画像は、上記の読売のサイトにあるが、下記でも似た画像を得られる。
→ 偏西風の蛇行 - Google 画像検索
「地震対策などで原発事故の安全対策をするように、という一般論は述べていたが、津波で原発事故が起こるだろうという予想はしていなかった。そいつは私の手落ちだった」
これ、書こうと思っていたんだけど、メモしていなかったから、書き忘れてしまった。指摘されて、思い出しました。
さらに同じ内陸性気候地帯でも、緑が多い地区、あるいは大きな湖のほとりなどと、そのようなモノが無い場所とを比較すると、一日あるいは短期間の寒暖差や降水量のバラツキが小さくなる事を統計的に説明できそうです。