2014年02月16日

◆ 東横線の衝突事故の謎

 大雪のさなかで東急東横線の衝突事故があった。会社側は説明をしたが、この説明は筋が通らない。 ──

 会社側の説明を受けて、マスコミは記事にしたが、その説明は筋が通らない。どこがおかしいかを指摘する。

 当初の状況報告はこうだった。
 東京急行電鉄(東急)東横線元住吉駅で2月15日未明に発生した列車衝突事故について、同社は15日午前、発生の状況や現在の運転状況を発表した。
 同社発表によると、事故が起きたのは午前0時30分ごろ。東横線元住吉駅の下り2番ホームで、過走(オーバーラン)して停車していた渋谷発元町・中華街行き各駅停車(8両編成)に、後続の各駅停車(8両編成)が衝突し、16人が軽傷を負った。負傷者は全員治療を終え帰宅したという。
( → レスポンス

 その後、原因を調査して、次の説明をした。
 同社によると、まず先行電車が元住吉駅で約30メートルオーバーランして停止。後続電車は駅の約600メートル手前で時速約80キロで走行中、運輸司令所長から直ちに停止するよう命令を受け、すぐ非常ブレーキをかけたが時速30〜40キロで追突したという。
 同社は車輪にブレーキをかけるパッドに雪が固着し、摩擦力が伝わらなかったのが原因とみている。
 東横線では大雪の降り始めた14日、事故の先行電車とは別にオーバーランが10件あり、うち2件は元住吉駅で起きていた。同日、雪を考慮した徐行運転は指示していなかったという。
( → 日経 2014/2/15

 東急電鉄によると、15日午前0時29分ごろ、先行列車から運転司令所に、オーバーランしたと連絡があった。司令所は約20秒後、安全確保のため無線で後続列車に停止を指示。運転士が無線で「なかなか速度が落ちない」と伝えた直後、衝突した。
 後続列車は時速約80キロで走行中で、元住吉駅の手前約600メートルで運転士が非常ブレーキをかけた。晴れた日では約200メートルで止まるが、雪が車輪とブレーキの間に挟まるなどして摩擦力が減り、十分減速しなかった可能性がある。
( → 時事通信

 これを受けて、「ああ、そうか」と納得する人が多いようだが、鉄オタならば「変だな」と思うはずだ。
 次のことがおかしい。
 「時刻は深夜(午前0時台)であり、ダイヤは密集していない。各停同士ならば、最低でも5分間の間隔があるはずだし、たぶん7分ぐらいの間隔があったはずだ。なのに、先行車がオーバーランをして後戻りしたぐらいで、後続車が衝突するはずがない」

             5分間以上の間隔
  ━━━ ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■ ━━━━


 オーバーランをして 20秒後に連絡が来て、すぐに後続車に停止を命じた。なのに、600メートルの距離でブレーキが間に合わなかった。
 これは、あまりにもおかしい。600メートルならば、時速36キロで1分間の距離である。つまり、先行車と後続車の時間間隔は1分間しかなかったことになる。これは、「時間間隔が5分間以上あった」という仮定と矛盾する。

 もちろん、オーバーランをして戻ったことで、1分間ぐらいのタイムロスは生じただろう。その分を差し引くと、5分間でなく4分間の時間間隔があったことになる。
 だが、そうだとしても、「600メートル = 1分間の距離」という説明とは整合しない。

 東急の説明には、矛盾がある。どこかがおかしい。では、真相は? 

 ──

 まず考えられるのは、「後続車はポイント切り替えで通過線(複線のうちの停車側とは別の方)を通るはずだった」ということだ。
 しかしこれは、冒頭に引用した記事から、ありえそうにない。どちらも各停だからだ。
 とすると、最も疑わしいのは、次のことだ。
 「オーバーランがひどすぎて、停止してからバックして戻るのに4分間以上の時間がかかった。しかも、運転士の連絡が遅れた」

 つまり、ひどいオーバーランのあとで、先行車の運転士の連絡がすごく遅れたことだ。ひどいオーバーランのさなかで、頭がパニックになってしまって、連絡することができなかった。
 このとき、先行車はあまりにもオーバーランをしたので、ATC で駅の次の区間(駅間区間)に入ってしまっていた。だから後続車は、ATC の制御を受けずに、どんどん近づいていった。その後、先行車は逆行して、一つの ATC 区間のなかに二つの列車が入った。ここで ATC は働いたが、ブレーキがまともに機能しなかった。
 そう推定できる。



 [ 付記 ]
 なお、「ブレーキがまともに機能しなかった」ことについては、記事では次のように報道された。(前記)
 「雪が車輪とブレーキの間に挟まるなどして摩擦力が減り、十分減速しなかった可能性がある」
 しかし、「雪が車輪とブレーキの間に挟まる」というのは、ありえないですね。油圧ブレーキの圧迫力は強力だから、雪なんかは軽く押しつぶせる。自転車のハンド式ブレーキですら、雪なんかはつぶせるぐらいだ。
 だから、「雪が車輪とブレーキの間に挟まる」というのは理由にはなり得ない。せいぜい、「溶けた水のせいでブレーキの利きが悪くなっていた」ことだろう。そして、その理由は、ブレーキのパッドの部分ではなくて、レールで生じたはずだ。
 次の記事を参照。
 《 東名40キロ立往生 なぜ起きたのか 》
 渋滞の最初のきっかけは、14日午後9時前、静岡県裾野市の上り線、裾野インターチェンジ付近の緩やかな坂道で、雪で滑った車が進めなくなったこととみられています。
この付近を含めた静岡県東部は標高が高く、高速道路が走っている周辺も大雪が降っていて、スリップや立往生する車が複数あったとみられています。
( → NHK 2014-02-15

 ここでは、「緩やかな坂道で、雪で滑った」とある。ゴムタイヤをしている自動車でさえスリップするのだ。レール上の電車ではなおさらスリップしやすいだろう。
 電車の「ブレーキがまともに機能しなかった」ことの理由は、ブレーキパッドではなく、レールと車輪のスリップであったと思える。
( ※ そもそもブレーキは全車輪でブレーキがかかるのだから、一つか二つぐらいの車輪でブレーキパッドの利きが悪くても、全体に影響するはずがない。全体に影響するとしたら、レールと車輪のスリップだとしか考えられない。)
( ※ さらに言えば、非常ブレーキをかけたことが、いっそう状況を悪化させた。車輪がロック状態になって、スケートのようにすべってしまったはずからだ。どうせなら ABS みたいに、手動でブレーキを断続的に弱くしたり強くしたりすれば良かったかも。かもね。)
( ※ 根本的には、大雪のさなかで電車の本数が少なくなっているのに、高速運転をした会社が悪い。どうせなら速度を落として徐行させるべきだった。……だけど、東横線は地下鉄と直通になってから、ダイヤの乱れに弱くなっている。直通の影響が、こんなところにも出ているな。)
 


 【 関連サイト 】

 現場にいた人の証言ツイート。「怪我人20人」というマスコミの報道が嘘だと指摘している。



posted by 管理人 at 09:37| Comment(7) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このブログネタ的に面白い。東急ユーザーです。5分間間隔開いてるって、どこからきたんですかね。全く違うんですが。電車のダイヤが乱れてたんでかなり電車が詰まってたので、間違ってないと思うのですが。でも事故はよくたないですが。
Posted by たくたく at 2014年02月20日 15:52
「雪が車輪とブレーキの間に挟まるなどして摩擦力が減り、十分減速しなかった可能性がある」と上記に会社側のコメントが載っていますが、車両には運転士が扱える『耐雪ブレーキ』というスイッチがあります。これをONにしておけば車輪とブレーキパッドの間に雪が挟まることを防いでくれます。運輸指令所が走行中の全列車に対して大雪になる前に予め耐雪ブレーキスイッチONにする指示を無線で出していればブレーキが効かなくなるというような最悪の事態を防げたのではないかと考えます。私なら耐雪ブレーキを使用します。
Posted by モーターマン at 2014年02月20日 19:37
ブレーキパッドと車輪の間に挟まった氷や雪は油圧の力で砕けるとありますが、その電車のブレーキは空圧ブレーキでは?
あと、レールと車輪の間に挟まった氷や雪がスリップの原因ではとありますが、何トンもある車両がレールの上の雪に乗り上げるとも考えにくいのですが。
秋田新幹線の脱線事故は、車両の腹が雪の上に乗り上げたのが原因です。
Posted by たんたかたん at 2014年02月25日 23:43
> 何トンもある車両がレールの上の雪に乗り上げる

 スケートがすべるのは、スケートと氷の間にミクロン単位の水の膜ができるからです。乗り上げる必要はありません。
 雨の道路ですべるのも同様。タイヤが水に浮くからすべるわけじゃありません。水の膜ができるからです。
Posted by 管理人 at 2014年02月25日 23:51
そもそも、短距離で停車発車を繰り返す各駅停車の突然の急激なブレーキ力の低下に疑問を感じます。

長時間停車しない中長距離優等列車や貨物列車(北海道の例など)が制輪子に雪を噛むならまだしも。

指令が非常ブレーキの指示というのも不信ですね。
その前に、ATCの信号的に停止を現示しろよと思うのですが。
Posted by 品鶴 at 2014年02月26日 18:00
この件で、ようやく調査報告が出た。(半年近くも立っている。)

 ──

 東急東横線の……追突事故で、東急電鉄は11日、レールに塗られた潤滑油が一因で、非常ブレーキが利かなかった可能性があると発表した。事故当時は記録的な大雪で、油がレール脇に積もった雪に混ざり、車輪に押し当てられるブレーキパッドに付着したという。
 同社は車輪との摩擦が強くなる急カーブなどで、車輪がレールに乗り上げて脱線するのを防ぐため、一部の列車につけた自動装置で、レール上部の内側の角に潤滑油を塗っている。しかし事故当時は大雪のため、レールの油が雪に混じり、その雪が車輪に巻き込まれていったとみられる。
 さらにブレーキパッドに付着していたゴミも、ブレーキの能力を低下させた一因と判断した。追突した列車のブレーキパッド付近に、油分を含んだゴミなどが確認されたという。

 http://j.mp/1qSk4lH
 朝日新聞 2014-07-12
Posted by 管理人 at 2014年07月12日 13:18
正式な調査報告書が出た。以下、朝日の記事から。

 ──

 国の運輸安全委員会は28日、ブレーキの力を車輪に伝えるブレーキパッドに付いた油やチリが雪と混ざり、ブレーキの利きが弱まったとする調査報告書を公表した。
 安全委の調査では、追突した車両のブレーキパッドに、レールとの潤滑油やチリが付着していた。再現実験などから、地面に積もった雪が混ざり、ブレーキパッドを車輪に押し当てる力が弱まったと結論づけた。

 ──

 当初の推測では「雪が挟まった」ということだったので、私は「雪なんかは簡単に押しつぶされる空、それは変だ」と判断した。
 実際には、雪だけでなく、潤滑油とチリもあったわけだ。
 チリは、固いので、ブレーキパッドで押しつぶされなくする効果がある。チリとチリの隙間に雪や油が入れば、ブレーキ効果は低下する。
 潤滑油は、高温では潤滑効果があるが、低温では固まって糊(のり)のようになり、チリを固着させる効果がある。
 こうして、「雪+チリ+潤滑油」という三種のものの相乗効果で、ブレーキが利かなくなったわけだ。
 それにしても、再現実験を含めても1年3カ月というのは長すぎる。もっと早く報告を出せないものか。特に、前年の7月12日はほぼ解明されていたのだから、昨年11月には報告を出しておくべきだった。そうすれば、ひろく広報されただろうに。
 朝日の記事には、

> 東急は事故後、ブレーキパッドを3カ月に1度清掃することを徹底し、雪の際の細かな運転基準を定めた。

 という話があるが、東急だけがやっても駄目だろうが。日本中でやる必要がある。運輸安全委員会は、わかっているんだろうか?
Posted by 管理人 at 2015年05月28日 19:19
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