2014年02月10日

◆ EV用の電池の再利用

 電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池を、あとで太陽光発電の蓄電池として再利用しよう、という事業がある。しかし…… ──

 電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池を、あとで太陽光発電の蓄電池として再利用しよう、という事業がある。
 住友商事は、電気自動車(EV)用として使い終わったリチウムイオン電池を再利用した、大型の蓄電池システムを開発した。
 容量は400キロ・ワット時と、50軒の家庭が1日に使う電気をまかなうことができるという。主に、天候によって発電量が左右される太陽光発電の補助システムとして活用することを想定し、3年後の商業化を目指す。
 約10万キロ・メートル走った日産自動車のEV「リーフ」16台から回収したリチウムイオン電池を使った。このシステムを使って2月から、大阪市此花区の埋め立て地に設置されたメガソーラー(大規模太陽光発電所)の出力を安定させる実験を始めている。
( → 2014年2月10日 読売新聞
 日産自動車のリーフ16台分の蓄電池を再利用したシステムが、大阪市の夢洲(ゆめしま)で2月初めに稼働した(図1)。環境省による「再生可能エネルギー導入のための蓄電池制御等実証モデル事業」の認定を受けて、住友商事が設置したものである。電気自動車の蓄電池を再利用した大型システムの実用化は世界で初めての試みだ。
( → スマートジャパン
 住友商事は電気自動車(EV)の使用済み電池を使った大型蓄電システムを開発した。主に電力会社に販売し、再生可能エネルギーで発電した電力を変電所で一時的に蓄電するために使ってもらう。EVの使用済みリチウムイオン電池を使った大型蓄電システムは世界初。EVの廃車が出始める2017年度にも本格展開する。
 開発したシステムは、日産自動車のEV「リーフ」16台から回収したリチウムイオン電池を組み合わせる。電池容量は一般家庭40日分の電力使用量に相当する約400キロワット時。今後廃車のリーフが増えれば電池容量を10万キロワット時規模まで増やしていく考え。リーフ4千台分の電池を使う計算だ。
 新品のリチウムイオン電池のコストは現在1キロワット時で数十万円程度となる。住友商事は使用済み電池を使うことで20年にも1キロワット時あたり2万円台にする計画だ。使用済み電池を使っても、新しい電池と同等の性能を確保できるようにして顧客に提供するという。
 日産自動車のリーフの累積販売台数は10万台。17年ごろから廃車するリーフが増え始める。20年ごろには年間数万台規模になるとされ蓄電池の再利用が課題だった。

( → [2014/2/7 日本経済新聞 電子版

 要するに、使用済みのリチウム電池を再利用すると、使わなくなった電池を再利用できるし、太陽光発電の発電量の変動を吸収できる。一石二鳥でうまい話……というわけ。
 しかし、本当にそうか? 

 ──

 仮にこれがうまい話であるならば、採算ベースに乗るはずなので、勝手にやればいい。しかし、「採算ベースに乗らないので国の補助金がほしい」というのでは、実際にはちっとも「うまい話」ではなかったことになる。
 うまくもない話を、うまい話だと見せかけて、他人の金を奪うとしたら、それは、詐欺である。どうやら今回も、環境と再生エネの名目で、詐欺師が跋扈(ばっこ)することになりそうだ。

 ──

 もう少し科学的に考えてみよう。
 太陽光発電というのはきわめて高コストだが、リチウムイオン電池というのはそれに輪をかけて高コストだ。そのことは電気自動車が馬鹿高値であることからも明らかだろう。

 一方、ガソリン式の小型発電機は、激安だ。だから私は前に、「非常用電源には、蓄電池よりは小型発電機を」と述べた。
  → 家庭用の蓄電池

 家庭用でなく都市レベルでの発電ならば、小型発電機と言わず火力発電を使えばいい。これならば多大な発電量の変動に応じることができるし、コストは激安だ。
  → 太陽光に蓄電池は不要

 というわけで、太陽光発電の変動を吸収するためであれば、火力発電所などの発電装置が低コストで済む。リチウムイオン蓄電池なんて、信じられないほど高コストなので、狂気的だ。
 ただ、新品のリチウムイオン蓄電池は超高額だとしても、中古のリチウムイオン蓄電池ならば馬鹿高値と言うほどでもない。だから中古のリチウムイオン蓄電池を使おう……というのが、今回の案だ。では、それは良い案か? 

 一見、良い案のように見えるが、これもまた詐欺的である。「高値で売ると見せかけて、9割引にして、お得ですよと思わせて、それでもやはり高値で売りつける」という商売だ。
 たとえば、大根1本 100円であるところを、こういうふうに売りつける。
 「この大根は素晴らしいので、1本 5000円もします。しかし奥さん、タイムサービスで9割引です。たったの 500円で買えます。超お買い得ですよ!」 
 たとえ9割引でも、元値が馬鹿高値であれば、9割引も意味がない。そういうことだ。
 リチウムイオン蓄電池もまた同じ。元値が馬鹿高値なのだから、中古で9割引になっても、まだ高い。とうてい火力発電には対抗できない。だから、これを事業化しても、とうてい採算ベースには乗らない。なのに事業化の実験をするというのは、国の補助金を当てにしているからだ。
 で、採算に乗らないものを事業化するために、国の金をむしり取ろうというのだから、これはまさしく詐欺的な事業だ。特に、「すごく効率的ですよ。無駄がないですよ」なんて語るところは、嘘八百の詐欺師のやり口だ。

 ──

 では、どうすればいいか? 
 太陽光発電の変動の吸収ならば、もちろん、火力発電を使えばいい。それで何も問題はない。(炭酸ガスの排出なんかは、たいして気にしなくていい。よその分野でやってもらえば言い。)
 使用済みのリチウムイオン電池は、どうするか? そのまま廃棄するのではもったいない。かといって、分解してから再利用するのでは、コストがかかりすぎる。もったいない。

 私の提案は、こうだ。
 「リチウムイオン蓄電池は、馬鹿高値なのだから、それをそのまま中古として利用すればいい」


 簡単に言えば、こうだ。
 「中古のリチウムイオン蓄電池を使った EV を新車として販売すればいい」


 EVの新車はすべてが新品である必要がある……という従来の固定観念を破壊すればいいのだ。
 EV はやたらと高値である。その価格の半分以上はリチウムイオン蓄電池の価格だ。リチウムイオン蓄電池の価格は、劇的にどんどん安くなると思われていたが、たいして安くならない。だったら、中古のリチウムイオン蓄電池を搭載した新車を販売すればいいのだ。
 たとえば、日産リーフの車両部分の価格が 180万円で、リチウムイオン蓄電池が 220万円だとしたら、中古のリチウムイオン蓄電池を 20万円で販売する。これと車両部分の価格 180万円との合計で 200万円で済む。ここに国の補助金を 30万円ぐらい加えれば、170万円で販売できる。激安。しかも、ガソリン税はまったくかからないから、維持費も激安で済む。

 どうです。うまいでしょう? これこそが賢明な方法だ。
 詐欺師みたいなことを考えず、物事の道理に従えば、自然にうまい方法にたどり着くのである。
( ※ 国の補助金をかすめ取ろう、なんていうあこぎなことばかりを考えていると、かえって下らない落とし穴に はまり込む。)

 ──

 なお、たった一つ問題点があるとしたら、それは、リチウムイオン蓄電池の寿命だ。日産リーフのリチウムイオン蓄電池の寿命は、かなり短い。特に、タクシーとして使う場合には、急速充電という劣化がひどい方式を使うせいで、寿命がひどく短くなる。
  → EV 電池の劣化(実証)

 しかしこの点は、解決策がある。日産のリチウムイオン蓄電池を使うかわりに、次のリチウムイオン蓄電池を使えばいいのだ。
  → SCiB 電池

 これならば、寿命はすごく長いので、自動車が寿命になったあとでも、まだまだ使える。つまり、リチウムイオン蓄電池を(新車用に)再利用できる。

 SCiB 電池は、日産のリチウムイオン蓄電池よりも、かなりコストが高い。とはいえ、数割高いだけで、2倍にはならない。その一方で、寿命は何倍にもなるようだ。
 とすれば、SCiB 電池を何度も再利用することで、1回あたりのコストは数分の1にまで下がることになる。
 このように、「リチウムイオン蓄電池を新車用に再利用する」ということが、ベストであろう。
 その一方、「リチウムイオン蓄電池を太陽光発電の補完用に使う」というのは、あまりにもひどい。それはコストがひどくかかるがゆえに、とうてい採算には乗らない。せいぜい、国の金を奪うための、詐欺の用途に役立つだけだ。
 



    
posted by 管理人 at 20:22| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この件について学術的な研究がある。以下、引用。

 ──

 ● 「供給過剰の風力エネルギーを二次電池で貯めるのは不合理」スタンフォード大が報告

 系統接続された再生可能エネルギーによる電力供給が電力需要を上回る場合の対応として、供給過剰分のエネルギーを蓄電設備に貯蔵して後で使うケースと、発電を停止して出力抑制するケースがあるが、特に風力発電では出力抑制によって過剰分を切り捨ててしまったほうが合理的である。

 → http://sustainablejapan.net/?p=4519
Posted by 管理人 at 2014年02月22日 17:39
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