2014年01月13日

◆ 釜石の防潮堤の欺瞞

 三陸沖の津波で被害が生じたあと、各地で防潮堤の建設が進んでいる。その一例で、釜石の例。欺瞞があったと判明した。 ──

 三陸沖の津波で被害が生じたあと、各地で防潮堤の建設が進んでいるが、私はこれに批判的だった。(何度も何度も書いてきた。口が酸っぱくなるほど。)
 最近では、防潮堤の建設に反対する地元の人も多くなっている。そこで、いくらか情報を紹介しよう。朝日の記事を転載する。(やや古い話。2013年12月31日)

 《 公共事業、住民置き去り 防波堤再建の説明不十分 岩手・釜石湾 》
 岩手県釜石湾で国が再建を進める「釜石湾口防波堤」。東日本大震災で釜石湾内の津波被害を抑えた可能性は高いものの、跳ね返った波で隣の両石湾の被害を大きくしたのでは――。両石の住民が求めていた検証を、岩手県は実施していたのに隠蔽していた。国に都合が悪い情報は意図的に「秘密」にされ、住民無視で巨大公共工事が進む。
 国土交通省は釜石湾口防波堤の再建を2011年8月に決めた。「市街地に津波が到達するのを6分遅らせ、浸水域を減らした」と、市役所や製鉄所がある中心部や港を守る機能を回復させることを主眼にしている。
 岩手県も、震災直後から沿岸の防災対策や新たな街づくりの検討を始め、津波の被害予測をコンサルタント会社に依頼した。釜石湾だけでなく、両石湾を含む県内すべての沿岸の被害を想定した。
 11年10月に県が公表したシミュレーションには、両石湾の被害予測もあった。それによれば、県が沿岸に防潮堤を整備すれば、両石漁港海岸の津波の浸水面積は15ヘクタールに減らせるが、整備しなければ16ヘクタールになるという結果だった。
 ただ、これらは釜石湾口防波堤が「ある」のが前提だ。「ない」場合を想定した検証はしていないと説明しているが、その資料を朝日新聞は入手した。
 「釜石湾の湾口防波堤有無の検討」と題する資料では、湾口防波堤がなければ、県の防潮堤だけで、両石漁港海岸の浸水面積は14ヘクタールに減るとなっている。犠牲者が出た近くの2カ所の集落でも、県の防潮堤だけの方が浸水面積は小さくなる。湾口防波堤に当たって跳ね返る「反射波」がなくなる分、両石湾岸の集落の被害は減るという結果だ。(以下略。)

 ■「災害復旧」検証二の次
 被災地の住民に十分な説明がないまま、再建が進むのは釜石湾口防波堤だけではない。岩手、宮城県などが手がける総額1兆円の防潮堤事業でも「堤防が高すぎる」と各地で住民の声が出ているのに、軽視されている。
 公共事業を進めるにあたって、住民への説明や合意形成というのは大きな要素だが、いま被災地ではこれが後回しにされているのが実情だ。 (中略) 被災地で計画されている防潮堤も、地域によっては、高さが5メートルから15メートルになる。にもかかわらず、地域住民の合意をどうするかについて明確なルールがない。 (中略)
 被災地で復興事業を手がけるあるゼネコン幹部も、こう漏らす。「震災前のものとは全然違うものを大量に造るのに、こんな簡単な手続きで進めて良いのか。疑問に感じる」(座小田英史)

 § キーワード
 <釜石湾口防波堤>
 国の直轄事業で、岩手県釜石湾の入り口に造られた巨大防波堤。1978年に建設が始まり、2008年度に完成した。総事業費は約1200億円。水深は最大63メートルで「世界最大水深の防波堤」として10年にギネス世界記録に登録された。東日本大震災では市街地への津波の到着を6分遅らせたとされるが、8割が倒壊した。復旧に国は490億円を投じる計画だ。
 東日本大震災の被災地で自治体が整備を急ぐ巨大な防潮堤事業。だが、住民からはコンクリート一辺倒ではなく、環境や観光に配慮した復興が必要だという声が上がり始めた。
( → 朝日新聞 2013年12月31日

 つまり、欺瞞があった。防潮堤の効果には大いなる疑問符が付いているのに、それを隠して工事を強引に進めた。再掲しよう。
 国に都合が悪い情報は意図的に「秘密」にされ、住民無視で巨大公共工事が進む。

 こういうふうになっていた。
 また、堤防の高さにも住民の合意がないまま、やたらと巨大な堤防を構築しようとする。まるで「巨額の工事をすること自体が目的です」「税金の浪費自体が目的です」というふうに。(まるで……ではなくて、本当にそれが真実であろう、推察されるが。土建業の賄賂。)
 
 防潮堤の建設には、これほどにも問題が山積みなのだ。単なる巨額の浪費があるだけだ、とも言える。

 ──

 防潮堤の建設には反対する旨、私はこれまで何度も述べてきたから、ここでは繰り返さない。知りたければ、下記を見て欲しい。
  → サイト内検索

 ただ、本項で新たに付け加えるとしたら、次のことだ。
 「大地震による大津波は、来るとしても、数十年ないし百年ぐらい後のことだ。とすれば、防潮堤の建設は、今すぐ大急ぎで実施する必要はない。たとえ建設するにしても、十年後に建設開始すれば足りる。それより、今すぐ急ぐべきことは、生活再建だ。なのに、この段階で莫大な金を投入して防潮堤建設にばかり突き進むのは、順序が逆だ」

 なお、上のことは、「十年後に建設せよ」という趣旨ではない。十年後までにじっくり考えればいい。考えれば、「防潮堤の建設はもともと不要だった」と気づくはずだ。つまり、こうだ。
 「海岸部に巨大な防潮堤は必要ない。海岸部に必要なのは、津波を和らげるための、土手と防災林だけだ。あとは、内陸部に、内陸堤防を作ればいいだけだ。内陸堤防の外側の沿岸地域は、守る必要はないのである。守る必要もないもののために、巨額の金を投入するのは、愚の骨頂」

 このことは、私は何度も述べてきたが、最近では、被災地の人々も理解しつつあるようだ。安倍首相夫人も、その方向に進みつつあるようだ。
 
 急いで走るよりは、走る前に考える方がいい。やみくもに走っても、猪突猛進で頓死するだけだ。頭は考えるためにある。まずは頭を使うべきだろう。
( ※ と言っても、自民党には、頭がないのかもしれないな。頭のない巨人。……こんなことなら、安倍首相の代わりに、安倍首相の奥さんが首相になれば良かった。旦那の方は、首相よりは、専業主夫の方が向いている。それなら、靖国でも何でも、いくらでも参拝できるし。  (^^); )
( ※ だけど、多くの首相経験者は、首相を辞めたあとでは、靖国に参拝しなくなるんですよね。  (^^)v )
 


 【 後日記 】 (2014/09/12)
 「朝日の報道は一部誤報だったらしい」という情報が寄せられた。
 コメント欄( 2014年09月11日)を参照。

   ※ 事の真偽については、私は判断する立場にはありません。
posted by 管理人 at 21:17| Comment(11) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
管理人さんと同じことをずっと考えていましたので思わずコメントさせて頂きました。巨大予算を無駄遣いする政治・行政がほんとうに悲しくなります。なんとかする手立てはないものでしょうか。
Posted by 匿名希望 at 2014年01月21日 17:56
同感です。湾口堤防、防潮堤は全て過去の防災施設。3.11を経てその不正工事、無効果が証明されました。=天罰済み。
Posted by コーケやん at 2014年03月13日 17:08
ご担当様
お忙しい中恐れ入ります。
EXCEL対応の「防災計画にも有効な生物多様性植物データ」を無償送信させていただきたく思います。
つきましては、送信先メールアドレスをお教えください。

<!--
都市計画家 野沢 俊哉 51
0765-83-2884 939-0744 富山県下新川郡朝日町平柳246
-->
Posted by 野沢 俊哉 at 2014年03月22日 18:39
ここに個人データを書いてはいけません。
 データを公開したい場合には、ネット上に公開した上で、その URL を本項のコメント欄に書けば、それでOK。

 なお、私は上のデータは別にほしくありません。
Posted by 管理人 at 2014年03月22日 18:45
この朝日新聞の記事ですが、岩手県のほうは、コンサルが独自にそういう資料を作っていて、それを知ったのはこの朝日新聞の報道のあとだとして、県として実施したシミュレーションではないので、隠蔽には当たらないとしている。行政としては珍しく、明確に「反論」をしているのだ。しかしながら、朝日新聞側は、こうした反論にはこたえずに、確かな取材に基づいているので、訂正はしないとしているそうだ(http://gohoo.org/alerts/140116/等参照)。

慰安婦、吉田調書の件もあったことだし、この記事も結局は誤報だったのでは?

記事のソースに自信があるなら、反論に対する抗弁をすべき。
書きっぱなしは卑怯者のなすことと言わざるをえない。
そうでないなら、速やかに訂正・謝罪したほう良いと思います。
Posted by 匿名希望 at 2014年09月11日 22:13
朝日が誤報したかどうかは、私の関与することではないので、朝日に言って下さい。
 私としては、「新聞報道は事実だ」という仮定の上で論理を建てているので、新聞報道の真偽にまでいちいち関与はしません。

 あと、隠蔽かどうかは、本項の主題ではない。「巨額の無駄遣いはしてはいけない」が本旨。肝心なのは、お金の話。倫理の方じゃない。
Posted by 管理人 at 2014年09月11日 22:41
さきほどコメした者。

論点をすり替えられたようなので、補足を。
「巨額の無駄遣いはしてはいけない」は同感。その趣旨は否定する意図はない。

ただし、タイトルにある「釜石防潮堤の欺瞞」については異議。
ブログ全体の趣旨としては「巨額の無駄遣いはしてはいけない」の流れかもしれないが、タイトルで「釜石防潮堤の欺瞞」として記事を掲げ、その根拠として朝日の記事(国が進める湾口防波堤の整備に関し、岩手県が事実を隠蔽し、住民を欺いたとする内容)を挙げているのだから、岩手県が事実を隠蔽して住民を欺いたのか否かは、主題そのものではないのか。

昨今の朝日の誤報問題をながめていたら、このブログを見つけ、またマスコミ誤報検証・報道被害救済を目的としている日本報道検証機構のサイトで、名指しされた岩手県が反論しているとする記事が存在していることも発見。
したがって、朝日の報道だけをもって「釜石防潮堤の欺瞞」と断言している論調に違和感を覚えたので、老婆心ながら書き込んだ次第(朝日を非難する内容と受け取られたのは、小生の文章力の足りなさゆえ。ご勘弁を。)。

なお、誠に残念なことに、貴君は、「「新聞報道は事実だ」という仮定の上で論理を建てている」、「新聞報道の真偽にまでいちいち関与はしません」という見解をお持ちということなので、書き込みは大きなお世話だったようだ。もっとも、本職の新聞記者のように、高い倫理観が求められ、かつ記載記事に責任を負わされているのではないのだから、それはそれで結構。したがって、修正は無用だし、こちらもこれ以上議論はしない所存。以上。
Posted by 匿名希望 at 2014年09月12日 03:22
まあ、ご指摘の件は、参考情報としては役立ちますね。読者にとっては有益でしょう。情報の提供、ありがとうございました。

 本ブログに対して、「間違いを修正しろ」とうるさく粘着してくる精神異常者がときどきいるので、私も神経質になりすぎていたのかもしれません。この点はお詫びします。
Posted by 管理人 at 2014年09月12日 06:23
> コンサルが独自にそういう資料を作っていて、それを知ったのはこの朝日新聞の報道のあとだとして、

 これをまともに信じるのは、素朴すぎる。
 仮に私が県の担当者だったら、次のように言う。
 「こんな都合の悪いデータを受け取れるか。このデータは受け取れない。ゆえに、このデータは提供されなかったことにする。あとで何か言われたとしても、私(県)は何も知らなかったことにするからな。いいな。わかったな。それが厭だというのなら、発注を取り消して、料金を支払わない」
 こうやってしらばっくれます。当り前でしょ。「公共事業が必要だ」というためのデータを発注したのに、「公共事業は不必要だ」というデータを出されたら、何のために調査を命じたのかわからなくなる。「余計な調査をした」ということで、政治家や県知事に吊し上げられて、職階を失う可能性がある。
 官僚にとって大切なのは、自分の職階を守ることです。降格処分になってまで県民の利益を守ることじゃない。県知事や政治家が「公共事業で大量の金を使いたい」という目的を持つのであれば、それに従うのが官僚の仕事です。お間違えなく。
 官僚に向かって「税金の節約をせよ」なんて期待するのは、魚に「空を飛べ」と願うようなもの。ありえない。
 官僚の仕事は税金の浪費です。そのためには資料の捏造さえも許される。その捏造を巧妙に合法的にやる(例。しらばっくれる)ことが上手な人が、出世します。これを理解できない人は、いつまでもヒラです。

> コンサルが独自にそういう資料を作っていて、それを知ったのはこの朝日新聞の報道のあとだとして、

 コンサルが独自にそういう資料を作っている、なんてことはあり得ない。県が頼んだ仕事なのだから、その仕事の範囲で資料を作ったのに決まっている。当り前でしょ。(そういう資料を作るのが商売だ。)
 で、そのうち、「県に都合の悪い部分だけを見せなかった」ということは、あり得ない。見せた上で、「これは都合が悪いので、なかったことにしましょう」と言ったのだろう。「必要ならばこのまま提供しますが、提供するとまずいですよね? だったら、最初からこの資料は作らなかったことにしておきます。ま、ご心配なく。あとでバレても、ちゃんと口裏を合わせて、知らんぷりしますから。ご安心ください。ところで、口をふさいでいるので、次の発注もよろしく」
 こういう馴れ合いの上手な担当者ほど、売上げに寄与したとして、出世します。
 官僚と共謀して、相手の弱みを握りながら、県から仕事をいっぱいもらうことこそ、優秀な会社員の条件です。

 なお、このような資料を本当に業者が渡さなかったとしたら、それこそ問題だ。一番必要な部分を業者が隠蔽したことになるからだ。
 本当にそうであれば、「まともな仕事をしないで、欺瞞した仕事をした」という理由で、業者に対して損害賠償を求める裁判を起こし、以後は発注禁止にするべきだろう。それでこそ、県の言い分は通る。
 しかし、もし裁判になれば、業者の側が県との癒着を証言する。そうなったら、スキャンダルだ。本当のことがバレてしまう。それは最悪だ。だから県は、業者を訴えることはないだろう。それすなわち、実際には癒着があったことになる。
Posted by 管理人 at 2014年09月12日 06:49
岩手県のHPの(コンサルタント提供資料)両石湾における釜石湾口防波堤の影響検討 (PDFファイル 475.8KB)http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/019/346/consultant_data_wankobohatei.pdf

この資料(防波堤が存在する場合のシミュレーションと無い場合のシミュレーションの比較)をつくれと建設コンサルタントに委託していなくても、この資料の基になるシミュレーション(防波堤が存在する場合のシミュレーション)は県が委託しています。

したがって、この件の朝日新聞の報道は妥当つまり、県が隠していたと判断されてもやむを得ないものと、思います。
比較するシミュレーションを県が委託はしていなかったとしても、建設コンサルタントがシミュレーションしたデータ(比較したデータ)を県がもっていたのに発表しなかったのですから。
朝日新聞の発表より前に、県がこのデータを持っていたかどうかはわかりませんが、他のデータと一緒に建設コンサルタントから県に報告されたものと想像できます。

また、「朝日新聞がまたまた誤報したのか」と思いましたが、今回の件は誤報とはいえないようです。
朝日新聞には、誤報でない(誤報ではないと考えられる)記事もありますね。(皮肉です)
Posted by ishi at 2014年09月12日 09:01
2014年09月11日 匿名希望さんの参照
http://gohoo.org/ 
日本報道検証機構 マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト

いろいろ載っていて、おもしろいですね。
Posted by ishi at 2014年09月12日 09:26
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