2013年12月16日

◆ 中国の月面探査の意味

 中国は探査機を月面に着陸させた。では、中国が宇宙開発で日本をしのいだ。そのことは日本にとって、良いことか悪いことか? 実は意外にも…… ──

 中国が宇宙開発で日本をしのぐことは、日本が宇宙開発で敗北したことを意味する。では、それは日本にとって、良いことか悪いことか? 敗北は悪いことに思える。しかし、実はとても良いことだ。
 そのわけを示す。

 これが軍事競争であれば、敗北は悪いことだろう。特に戦争で敗北するのであれば、悪いことに決まっている。
 一方、スポーツであれば、勝っても負けても、どうってことはない。ただの遊びみたいなものであるから、勝ち負けにはたいして意味はない。
 では、宇宙開発ではどうか? 

 ──

 まず、今回の敗北で明らかになったことを示す。
  月探査は、米ソの計画が1970年代に終了した後、空白期が続いた。21世紀に入り、世界が月に再び注目する中で先行したのは、日本の探査機「かぐや」だった。
 中国の「嫦娥1号」より1カ月早い07年9月に打ち上げられ、月の高度約100キロを周回して詳細な地表データを収集した。その後、後継機の「セレーネ2」を、中国を意識して13年ごろにも高い精度で月に着陸させ、探査車を走らせる構想だった。
 だが、米オバマ政権が月から火星探査などに注力する方針に転換したのを受け、宇宙開発で米国とのつながりが深い日本でも、月探査の位置づけは不透明になった。月内部を調べる計画もあったが、装置の開発が遅れた影響などで実現していない。
( → 朝日新聞・朝刊 2013年12月16日

 ここから明らかになるのは、次のことだ。
 「中国が日本を追い越したのは、両国が全力で競争したあとでの結果ではない。日本が勝手に宇宙開発の競争の土俵から降りてしまったからだ」


 比喩的に言えば、ウサギとカメである。日本は最初のころはどんどん宇宙開発を進めていたウサギだったのに、途中で一休みして昼寝してしまった。そのあと、カメがどんどん歩いてウサギを追い越してしまったのだ。

 ではなぜ、日本は宇宙開発が低迷していたか? 金が皆無だったわけではない。しかし金のほとんどは、米国の主導する宇宙ステーション ISS の維持のために使われた。そこでの成果はごくわずかでしかなかったが、そのために予算の大部分を使った。そのせいで、はやぶさなどに使う費用は大幅に削減された。(はやぶさがあれほど満身創痍だったのは、宇宙開発予算が削減されて、ギリギリの装備しかなかったからだ。かわいそうだったね。)

 以上からわかることは、こうだ。
 「日本の宇宙開発は、予算の総額がもともと小さかったところへ、予算の大部分が米国の宇宙開発の援助のために使われることになった。独自の宇宙開発はほとんどなされなかった。日本はあくまで米国の属国としての扱いでしかなかった」


 これは不思議だろうか? いや、不思議ではない。「米国の属国となる」というのは、日本の方針だからだ。というか、自民党の方針だからだ。
 たとえば安倍首相は「集団的自衛権」ということを盛んに唱える。では、「集団的自衛権」は「自衛権」とどう違うのか? 日本を守るという意味では何も違いはない。ただし米国のために奉仕するという点でのみ異なる。米国への奉仕は、
  ・ 集団的自衛権では …… あり
  ・ 自衛権では …………… なし

 となる。つまり、安倍首相があれほどにも「集団的自衛権」にこだわるのは、米国の飼い犬となってご主人様の身を守ることのためなのだ。(わが身を犠牲にして、ご主人様を守る。これぞ忠犬の鑑であろう。)

sippo.jpg その他、あれもこれも、安倍首相は米国のために、飼い犬として尻尾を盛んに振る。こういうふうに「米国の飼い犬としてふるまうこと」が日本の方針であった。
 そして、そのことが、宇宙開発でもなされた。日本の宇宙開発は、日本のためになされたのではなく、米国のためになされたのだ。日本人の税金は、米国人のために使われたのだ。つまり日本は、米国の属国として、年貢を納めてきたのである。

 ──

 以上のことが日本の宇宙開発の本質だ。そして、そのことは、これまでは特に問題視されなかった。なぜなら日本のライバルは出現しなかったからである。子犬のような日本のそばに、獰猛なドーベルマンは現れなかった。
 ところが今回、獰猛なドーベルマンが現れた。こいつはご主人様のために奉仕するのではなく、自分の利益のために生きようとする。隙あれば子犬を食い殺そうと狙っている。そのことに、子犬は初めて気づいたのだ。今まで隣家にいるドーベルマンに、気づきもしなかったのに。
 それが今回の探査機の意味である。

 ──

 では、どうすればいい? 
 日本は独自に宇宙開発を推進すればいい。宇宙開発だけではない。科学技術でも、教育でも、日本は独自に大幅に水準を高めるべきだ。


 競争は、宇宙開発だけではない。教育もそうだ。たとえば、次のグラフがある。
  → OECD の学力調査
 日本は欧米諸国よりは良いとはいえ、中国(上海)に比べると、大幅に劣っている。日本は教育面でも、中国に負けているのである。

 なお、日本が近年上昇しているのは、ゆとり教育を排してきたからだが、今後は違う。今後は、「英語を英語で教える」とか、「大学の面接入試」などをやるから、「ゆとり教育の再来」となって、日本の学力水準はふたたび低下することになる。
 つまり、現状でも中国に負けているのに、今後はさらにどんどん差を付けられていくことになる。(中国は「大学の面接入試」とは逆に、ものすごい学力競争があるからだ。)

 ──

 以上のことから、次のように結論できる。
 中国は宇宙開発で日本をしのいだ。そのことは、中国の優秀さを示すのではなく、日本の愚かな自滅政策を示す。政府が米国の飼い犬として尻尾を振り続けたり、「ゆとり教育」「面接重視」などで学力低下を推進したりしている。そういう愚かな自滅政策がなされていることを、中国ははっきりと教えてくれているのである。
 比喩的に言えば、カメがウサギを追い越すときに、「ウサギさん、追い越しますよ」と教えてくれるようなものだ。これは実にありがたいことだ。このことで、ウサギは自分の愚かさに気づくことができる。そして、気づきさえすれば、あとはふたたび全力で走ることができる。



 [ 余談 ]
sippo.jpg では、カメが教えてくれても、ウサギが居眠りしたままだったら? あるいは、相も変わらず、ご主人様におもねるばかりで、自分の意思で走ろうとはしないとしたら?
 そこまで馬鹿なら、仕方ないですね。自滅するしかないね。ま、それが安倍首相の方針だしね。
 安倍首相にとって大切なのは、宇宙開発でも学力向上でもない。「秘密保護法案」だ。なぜ? 米国に「秘密を守れ」と言われたあとで、尻尾を振るためだ。

 


 【 関連項目 】

 安倍首相の悪行。日本を弱体化することばかり。
  → 秘密保護法案で日本は弱体化する
  → 面接入試の難点:その根源 の [ 付記2 ]
posted by 管理人 at 18:39| Comment(3) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
月より南極調査の方が、コストパフォーマンスはずっと良いと思います。
 中国は、国民の健康に不可欠な公害防止技術開発など全然せず、日本の技術をタダでもらおうする。
新幹線技術も日本からタダ取りしたようなもの。一方、威嚇や派手に見えることには注力しますね。
 はやぶさの成功は奇跡に近い確率で、それを可能にしたのは、叡智のあるリーダー川口淳一郎氏と
日本的な職人気質を持ったエンジニア諸氏の存在が大きいようですね。
 教育と研究が重要という、管理人さんのご指摘は、その通りだと思います。
 川口淳一郎氏は、教育・研究について、興味深い提言をされています。
○減点法を止めて、加点法にしよう。
○職人的な親方徒弟制のすすめ。
○ヒラメをつくらない方法を工夫しよう。
○失敗を隠すな。
○運を拾えるように努めよ。
○教育の時代から研究の時代へ。変人も育てよう。
Posted by 思いやり at 2013年12月16日 23:20
お邪魔します。
 中国は有人宇宙飛行も行いましたが、それはロシアの全面バックアップによるものだと聞いた事があります。
 それと有限な国家のリソース(人、モノ、金及び時間)をどれにどれだけ割り当てるかという問題もあると思います(宇宙開発含む)。
 それから必ずしも自国に固執せず、複数の選択肢を持つという選択もあると思います。日本人初の宇宙飛行士は毛利氏ではなく秋山氏で、今宇宙ステーションに人を運んでいるのはロシアのロケットです。
 最後に宇宙開発自体が米ソの競争等で多少歪な形になっているのではとも思ったりします。一気に月にまで到達はしましたが、その後はさっぱりです。本来は「気軽に人工衛星を上げたり、かすめるような形でも宇宙に行き、それを徐々に発達させる。」形になるべきであったのかなと。その意味でイプシロンロケットに期待しています。かつて人類最初の人工衛星や有人宇宙旅行を実現した旧ソ連は大事故もあり月到達はなりませんでした。高速鉄道事故をあのように処理した中国もいずれ行き詰るのではと思っています。
Posted by ブロガー(志望) at 2014年01月27日 22:56
> 中国もいずれ行き詰るのでは

 私も前はそう思っていましたが、いつのまにか、中国はGDPで日本の2倍になり、自動車販売では何倍にもなってる。IT機器(コンピュータやスマホ)の生産では世界トップになっている。
 さらに恐ろしいのは、人口だ。総人口では日本の10倍。このうち凡人の方は無視できても、超秀才が日本の 10倍もいることになる。これらの超秀才が技術開発に突き進んだら、猛烈なことになる。
 日本の家電メーカーはすでに惨敗して撤退寸前。ソニーは利益減で、格付けが大幅に引き下げられた。(ニュース。)
 行き詰まりつつあるのは、日本の方です。甘く見ていると、すべてを失いかねない。
Posted by 管理人 at 2014年01月27日 23:13
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