放射性廃棄物の保管は何万年もかかると言われている。それをもって「原発は駄目だ」と批判する人が多い。しかし、原発を稼働させようが稼働させまいが、既存の廃棄物はたくさんある。それをどうするか? 現在は中間施設に保管しているが、それは数十年のことだ。数万年先まで考えると、どうするべきか?
通常、「地下貯蔵する」というふうに考えられている。それが標準的だ。では、どこで、どうやって?
それを研究するための研究施設が、北海道の幌延にある。これについて、本項では、簡単に説明しておこう。
( ※ 私の見解ではなく、情報の紹介のみ。)
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場所は、北海道の幌延だ。
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ここに、右図のような地下坑道がある。( → 出典:幌延深地層研究センター )
縦に深度 350メートルのエレベーターがあり、そこから横に坑道が伸びている。幹から枝が分かれるように。
このようにして地下に貯蔵するわけだ。
なお、この研究施設についての情報は、下記でいろいろと得られる。
→ 幌延深地層研究センター - Wikipedia
→ 幌延深地層研究センター(ホーム)
→ 幌延深地層研究センター 地下施設
→ 幌延深地層研究センター [研究について]
→ 幌延深地層研究センターを見にゆく 1/4
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ただし、注意。この施設は、現時点では、調査のためのものだ。ここに大量の放射性廃棄物を貯蔵するわけではない。ここはあくまで、研究施設だ。
では、本格的な研究施設は?
地図を見ればわかるように、ここは、北海道の極北の地であるとはいえ、集落(小学校など)から3キロ弱しか離れていない。あまりにも人家に近すぎる。ここを最終処分場とするのは無理だろう。
では、最終処分場はどこにすればいいか? これについては、これまでにも言及したことがある。
→ 核廃棄物の捨て場:宇宙
→ 原発の最終処分場は 歯舞に
つまり、「宇宙」「歯舞」という二つの候補地がある。
そのどちらも、現時点では利用はできない。「宇宙」の場合は、宇宙エレベーターがまだできていないからだ。「歯舞」の場合は、北方領土が返還されていないからだ。
だからいずれも、現時点では、実現の可能性はない。とはいえ、最終処分場は、このあとずっと先に決める場所だ。このあと数十年間は、中間処分場の場所だけを決めておけばいい。その候補地は、福島原発の跡地だ。ニュースにも出た。
《 福島第1原発:周辺15平方キロを国有化 中間貯蔵施設に 》
東京電力福島第1原発事故に伴う除染で発生した汚染廃棄物などを長期保管する中間貯蔵施設を建設するため、政府が第1原発周辺の土地約15平方キロを購入して国有化を進める方針を固めた。
( → 毎日新聞 2013年11月23日 )
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というわけで、放射性廃棄物の処理については、すでにいろいろと考察されている。「核のゴミの捨て場所もない」というように騒ぐ必要はないのだ。
[ 付記 ]
対比的なのが、小泉元首相の見解だ。これを紹介した朝日の社説について、前に論じた。
(小泉元首相の)主張はシンプルだ。放射性廃棄物の最終処分場をつくることができない、だから原発は動かせない。この一点に尽きる。
これについて、私はこう講評した。
「まったく、シンプルな主張だ。小学生並みの単細胞とも言える」
詳しくは
→ 小泉の原発ゼロ論
小泉元首相は、「政府は放射性廃棄物の最終処分場をつくっていた」という事実を忘れてしまったようだ。忘れたのなら、せめて Wikipedia でも読めばいいのに。
2001年3月、当時の核燃料サイクル開発機構(現・日本原子力研究開発機構)は北海道と幌延町に深地層研究計画を説明、同年4月に幌延深地層研究センターが開所した。ヘリコプターによる調査や地上調査ののち、同年10月よりボーリング調査を開始。2002年5月に深地層研究が発電用施設周辺施設整備法第2条施設に加えられた。幌延町北進地区と、同町上幌延地区の候補地のうち、ガスの湧出や道路事情などを考慮し、同年7月に北進地区が選定された[17]。2003年3月に用地を取得。2005年4月に地上施設、同11月に地下施設とPR施設を着工した。2007年6月にはPR施設「ゆめ地創館」がオープンした。
( → Wikipedia )
小泉首相(当時)の在任期間が 2001〜2006年だから、上記がすっかりかぶっている。幌延の施設は、ちょうど彼が首相として在任中に建設されていたのだ。なのに、すっかり忘れてしまったんだね。……いや、もともと覚えていないのかも。
郵政でも自民党でも、彼はぶっ壊すことばかり考えていて、建設することを考えない。原発についても同様。
壊し屋・小沢は、政党をぶっ壊すことばかり考えているが、壊し屋・小泉は、郵政や原発ぶっ壊すことばかり考えている。
【 関連情報 】
本日 2013-11-24 の読売・朝刊に、この研究施設についての詳しい情報がある。
本項を書いたのは、それに触発されてのこと。
なお、ネットには、次の情報がある。
→ 北海道新聞 2013-11-24
放射性廃棄物、釧路の地下に収納するのはどう?というアイディアを以前出しました。
やはり反対意見が多かったみたいですが、福島よりも、海底の方が、いろいろな意味で安全ではないかと思います。
幌延は田舎とはいえ、あんな地盤の軟弱なところに廃棄物埋蔵施設を、わざわざ建設する必要もないでしょう。
そこで、今度は九州は大村湾近くの『池島』を愚考する次第です。
理由は単純で、ある程度の大型船でも入港できること、つい最近まで稼動していた炭鉱なので、少し手を入れれば使えること、現地は古い炭鉱設備と僅かな作業員以外、人も何もない(猫くらい)ので、たぶん受け入れに当たって大きな反対が生じにくい、ということ等です。
元島民からは『故郷を壊すな!』という声もあるでしょうが、施設は地下なので地上はそのままですし、むしろ作業員が段違いに増えるため、廃棄された住宅や学校は復活し、島はまた栄えることになります。
前世紀初頭、音速は超えられない壁でした。放射性廃棄物も、今はまだ厄介な存在です。
しかし、きちんと保管さえしておけば、そう遠くない将来、無害化・安定化、ひょっとしたら再資源化すらできる技術が、確立するのではないかと、愚考する次第です。
炭鉱は、むしろ低レベルの廃棄物やゴミに向いています。焼却灰など。この件は、下記で論じました。
→ http://openblog.meblog.biz/article/8105464.html