2013年11月17日

◆ 糖尿病とダイエット

 「糖尿病にならないためにダイエットしよう」という厚労省の啓発がある。これを否定する見解が、はてなブックマークで人気だ。 ──

 「糖尿病にならないためにダイエットしよう」という厚労省の啓発がある。
  → 糖尿病の予防法は?|厚生労働省

 また、ほぼ同趣旨だが、相関関係についての言及もある。
 糖尿病と肥満には強い相関関係があります。
 現代人は、過食や運動不足で肥満になりがちです。肥満になると、耐糖能(グルコースを処理する能力が低下)障害などの、軽い糖尿病状態になる人が増えますが、初期のうちに肥満を解消すれば容易に正常な状態に戻ることが可能です。
 しかし、そのまま肥満を放置し続けると、糖尿病になってしまう可能性が高くなります。
 このような、明らかに肥満が原因で発症する糖尿病は「肥満糖尿病」と呼ばれています。
( → 糖尿病の克服に深くかかわっている肥満改善方法とは?
 低いBMIと低い糖尿病有病率の相関はインドとバングラデシュでもっとも強く見られ、中国・台湾・韓国・シンガポールを中間として、日本では最も弱く見られました。
 これについては、民族間の遺伝的相違の他に、インドやバングラデシュといった低所得国では低いBMIと低いカロリー消費がより強く結びついているため、という説明が可能かもしれません。
 また、日本に関しては、日本では糖尿病患者に対する生活習慣の指導が行き届いており、多くの患者がデータ採取時点ではすでに減量したあとであった、という解釈が可能かもしれません。
( → アジア人におけるBMIと糖尿病の関連 | 国立がん研究センター

 というわけで、いろいろと留保するべき点もあるようだが、一般的には、「肥満で糖尿病は起こりやすい」という傾向がある。
( ※ 「肥満で必ず糖尿病が起こる」というわけではない。注意。)

 ──

 ところが、上記の説(標準的な説)を否定するように見える見解がある。
 「節制していれば糖尿病にならないし、人工透析だって必要がない。本人の心がけの問題である」という川嶋朗医師の主張は医学的には間違っている。
( → 生活習慣病の自己責任論について

 ま、ここで言っていることは、必ずしも間違いとは言えない。特に、次のように解釈した場合には、次のことは間違いだ。
 「節制していれば糖尿病に絶対ならないし、人工透析だって必要が全然ない。本人の心がけの問題である」
 ここでは、「完全否定」がある。このように「完全否定」で解釈した場合には、上記の引用部の「川嶋朗医師の主張」は間違いだ、と言えるだろう。

 しかし原文を読んだ限りでは、そのような「完全否定」だとは受け取れない。むしろ、次のような部分否定だと受け取れる。
 「節制していれば糖尿病にあまりならないし、人工透析だって必要があまりない。本人の心がけの問題である」
 ここでは、「まったくない」というよりは、「なりにくい」ぐらいの意味だろう。そう受け取るのが妥当だ。(発言者が医師であることからしても、「絶対にならない」というふうに発言したとは考えられない。)
 しかるに、上の引用者は、「絶対にならない」というふうに解釈している。これは、誤読だろう。誤読した上で、ありもしない発言を想定して、その架空の発言(「絶対にない」)を批判しているわけだ。言っている本人は、そんな趣旨で発言したわけではないのだろうが。

 ──

 ただ、誤読したというぐらいのことは、別に罪はない。国語力が低い人はしばしばいるものだし、誤読した上で批判したとしても、単に文章全体が無意味になるだけだ。特に有害で間違った主張をしているわけではない。「無意味な文章」というのは、批判するに値しない。(藁人形論法というのはすべてそうだ。論じるに値しない。)

 問題は、ここから生じた誤解だ。
 「糖尿病というものは、ダイエットとは関係なく、先天的に起こるものだ。だから、ダイエットの努力なんか、必要ない」


 これは誤解だ。先の「藁人形論法」の主張は、あくまで誤解に基づく無意味な批判にすぎなかったが、上記のような誤解は、明らかに間違った見解であり、有害である。
 しかるに、このような間違った見解が、はてなブックマークではわんさとあふれている。
  → 上記記事の はてなブックマーク

 例として、いくつか引用しよう。
  そもそも「生活習慣病」というネーミングが欺瞞的でミスリーディング。糖代謝機構の脆弱さは遺伝的要因が大きいし、ストレス要因も大きい。たまたま仕事でストレスがかかって糖尿病になったらそれは「生活習慣」病?
  ──
 ちょっと「自己管理」しただけで色んな健康が維持できる人ってラッキーだよね。健康自己責任論を言う人はそういう人なんだろうね。
  ──
 自己管理なんてそもそもが幻想だよ。
  ──
 またこの手の自己責任論をしたり顔で語る医療従事者がなんと多いことか

 このような見解は、前出の記事本文を読めば、当然の結果かもしれない。記事本文は、そういう見解を導き出しやすい方向性で書いてあるからだ。
 実際、「先天的な糖尿病患者」という人々については、まったく正しいと言える。

 しかし、「先天的な糖尿病患者」に限らない一般的な人々について言えば、上記のようなことは、まったくの間違いだ。
 では、正しくは? もちろん、冒頭でも述べたように、厚労省の見解がある。それが正しい。
 その見解は、「糖尿病と肥満とには因果関係がかなりある」ということだ。つまり、「肥満であると糖尿病になりやすい」ということだ。
 これが事実だ。「肥満と糖尿病は関係ない」ということはない。
 
 はてなという集団では、やたらと「トンデモマニア」がはびこっているせいか、トンデモマニアが誤読した上で「これはトンデモだ」と唱えると、すぐにそれに追従したがる人が多い。そのせいで、厚労省の見解も、世界標準の見解も、あっさり否定されてしまう。恐ろしいことだ。

 そこで私がはっきりと警告しておく。
 「糖尿病と肥満とには因果関係がかなりある」
 という厚労省の見解は正しい。つまり、
 「肥満を避けるように痩せることで、糖尿病になりにくくなる」
 ということは事実である。つまり、
 「糖尿病になりたくなければ、ダイエットしろ」
 という見解は正しい。当然ながら、
 「生活習慣病なんてものは、ない」
 ということはない。一部において先天的な糖尿病患者がいることも事実だが、糖尿病患者のうちのかなり多くの部分は、生活習慣を変えること(ダイエットすること)によって、予防可能なのである。
 逆に言えば、暴飲暴食をして運動不足でいれば、糖尿病のリスクは著しく高まる。
 なのに、先天的要因ばかりを過度に重視して、生活習慣を無視する、という態度は、きわめて危険だ。それは標準的な医学見解に反する。

 はてなにおいて、いくらデタラメな情報が跋扈(ばっこ)しようと、そういうデタラメ情報に惑わされてはいけない。



 [ 付記1 ]
 糖尿病というのは、恐ろしい病気だ。いろいろと大変な症状が出る。例示すると:
 腎臓障害(人工透析)、視力喪失、インポ、心筋梗塞、脳梗塞(そのせいで半身不随)。
 もちろん、これだけじゃない。他にもある。

 [ 付記2 ]
 親戚に糖尿病の人がいたら、自分にもその可能性がいくらかある、と思った方がいい。近親者であるほど、その可能性が高まる。(つまり、先天的な要因も大きい。)
 ま、デブじゃなくても、糖尿病になることは多い。
 だが、それでもとにかく、肥満を避けて、運動をした方がいい。それは事実。
 運動をしないで、はてブでわめいてばかりいるのは、最悪だ。
 
 [ 付記3 ]
 メタボを避けるといっても、具体的にはどのくらいの体重が好ましいか? それは「 BMI 値 が 22」という値で示されている。これをわかりやすく表にすると、次の通り。

   身長cm  体重kg
   160   56.3
   165   59.9
   170   63.6
   175   67.4


 うむ。私は昔からずっと、ほぼこの値だな。上下 1.5kg の変動に収まっている。(ただし最盛期に比べると、筋肉が減って、ぜい肉が増えている。体重だけではわからないな。 (^^); )
 
 なお、グラフを見たければ、次のグラフを参照。
  → BMI指数 ,BMI早見表

 自分の身長と体重から、逆に BMI値を知ることもできる。自( BMI値が 25 を越えると、メタボ気味)

 細かな数値まで知りたければ、下記で。
  → BMIを計算してみよう!
   ※ 数値を入力する手間がかかる。
posted by 管理人 at 23:50| Comment(4) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に <STRONG>[ 付記3 ]</STRONG> を加筆しました。
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Posted by 管理人 at 2013年11月18日 21:43
はじめまして

私にはあなたのほうが誤読しているように見えます。
あなたがNATROM氏の読解として提示した
「節制していれば糖尿病に絶対ならないし、人工透析だって必要が全然ない。本人の心がけの問題である」
は曲解です。NATROM氏の批判は、2型糖尿病患者に生活習慣との相関があることを認めたうえで、それでも節制ではコントロールしきれない患者が存在する事実に立脚しているので、「絶対」とか「全然」がなくても成立します。

一方、あなたのNATROM氏への批判は、NATROM氏の記事が2型糖尿病患者と生活習慣との間の相関がないように誤読させるものだという(あなたの主張)点に立脚していますが、NATROM氏自身がその相関に言及していますから、的外れです。また、NATROM氏は社会リスクなど多様な論点から論じており、生活習慣が原因の場合でも簡単に論じることができないということも書いています。しかし、あなたはこの点を無視しています。

ブックマークも見てみましたが、ほとんどはあなたが書いた、

『肥満で糖尿病は起こりやすい」という傾向がある』が『「肥満で必ず糖尿病が起こる」というわけではない』

という点を承知の上でコメントしていると思います。私には、あなただけがずっこけているように見えます。

初めてなのにきついことを書いてごめんなさい。ちょっと勘違いがひどいと思ったものですからコメントしました。
Posted by Baru at 2013年11月19日 23:02
> 節制ではコントロールしきれない患者が存在する事実

 若干の反例の呈示で否定できるのは全称命題だけであり、おおまかな「傾向」を否定することはできません。

> 「絶対」とか「全然」がなくても成立します。

 自分の主張が成立するか否かじゃなくて、(他人の説を否定するための)論証になっていないということ。間違っているということではなくて、批判として無効だということ。

> NATROM 氏自身がその相関に言及していますから、的外れです。

 NATROM 氏の言っていることがどうのこうのじゃなくて、NATROM 氏の言っていることのせいで間違った見解をもつ人がわんさと生じている、ということが問題。NATROM 氏に医学知識がないと論じているわけじゃないですよ。
 NATROM 氏はやたらと「こいつは医学知識がない」というふうに喧嘩を売りつけていますが、私にはそういう趣味はありません。勘違いしないでください。
 私の論点は「NATROM 氏は医学知識がないトンデモだ!」と攻撃することではありません。「この話を読んだせいで、糖尿病は生活習慣病ではないと誤解する人が増えている」という、はてな村の誤解の是正です。

 あなたが本項の趣旨を否定したいのであれば、NATROM氏の論考を擁護するのではなくて、「糖尿病は生活習慣病ではない」というはてな村の見解を是認する証拠を出すべきです。そうすれば、私への反論となります。
 一方、NATROM氏を擁護しても、無意味です。私はもともと NATROM氏を攻撃していないんだから。
 
 自分がやたらと他人に対して攻撃的だと、他人もまた自分に対して攻撃的だと考えがちですが、それは錯覚ですよ。
 本項の目的は、誤解して寿命を縮める はてな村の人々の生命を救うことです。誰かの悪口を言って、「あいつはトンデモだ」と けなして、溜飲を下げることじゃありません。
 田中将大ふうにいえば、「ダルさんじゃあるまいし」かな。

 ──

 なお、

> 〜という点を承知の上でコメントしていると思います。

 というのは、あなたの解釈でしょう。その点では、見解の差というしかないですね。私としては「〜」のことを「知らない」というよりは「軽視している」というふうにしか読めませんけど。
 「甘く見るな」と言いたいですね。命を救うために。
Posted by 管理人 at 2013年11月20日 01:02
NATROM 氏の論考が正しいかどうかは、私の話の主題ではないのだが、ここで評価しておけば、次のようになる。

 NATROM 氏の論考は、基本的には妥当でない。といのは、川嶋氏の主張を全否定している(ほとんどトンデモ扱いしている)が、川嶋氏の主張は基本的には正しいからだ。そのことは次項で解説した通り。
 ただ、川嶋氏の最後には、経済学の素人ゆえの愚劣な提案がある。この提案はひどすぎる。とはいえ、この提案は、オマケにすぎない。オマケのひどさをもって、川嶋氏の主張の核心部を否定することはできない。
 なのに、NATROM氏は、「医療費の削減に反対」という医者の利権意識のせいで、川嶋氏の論考をほとんど全否定してしまっている。そういう論調だ。それは妥当ではない。
 川嶋氏の主張の基本骨格(余計な医療費は削減せよ)は正しい、と認めるべきだ。その上で、「オマケの提案だけは正しくない」と批判すればいい。
 なのに、全否定するのは、論調としては妥当でない。
Posted by 管理人 at 2013年11月20日 01:31
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