大型の台風が来そうだ。時々刻々のニュースは、テレビやネットで得られる。
一時間に50ミリ以上の非常に激しい雨(滝のように降る、水しぶきで視界が悪くなるほど)が予想されます。きょうからあすにかけて、九州、中国、四国、近畿では多い所で300ミリ前後の雨が降るでしょう。雨は26日(土)にかけても続き、総雨量は500ミリ前後に達する恐れもあります。
( → 日本気象協会 tenki.jp 2013-10-24 19:00 )
NHK の記事もある。
→ 大雨と暴風 警戒必要な時間帯
→ 台風27号 西日本で非常に激しい雨
→ 台風27号北上 土砂災害警戒
一方、下世話な新聞などは、伊豆大島のことばかり報道している。
→ 大島「共産党町長」進退浮上 台風接近中に女性のいる店で飲酒 (zakzak)
→ 伊豆大島に響けフルート 全国吹奏楽コンに不明夫妻の孫 (朝日新聞)
次の台風が大被害を起こしそうだというのに、こんなことを報じているときじゃないだろ、と言いたくなる。すでに起こった被害の報道よりは、これから起こる被害の予防に努めるべきだろう。
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では、何をどう報じるべきか?
(1) 事前の避難
一番大切なのは、「事前の避難の重要性」だ。台風は、大雨が降ってから避難するべきではなく、大雨が降る前に避難するべきだ。つまり、予防というものは手遅れになる前にやるべきなのだ。この件は、すでに述べた通り。
→ 豪雨対策は事前に取れ
→ 伊豆大島の台風災害
→ 豪雨災害と気象温暖化
具体的には、避難のための避難所の設置が大切だ。その情報が得られていればいいが、周知されていないかもしれない。そこで次の情報を示しておこう。
→ Yahoo! 避難所マップ
ちょっと使いにくくて、ダブルクリックで一発というわけには行かない。スケールを上下に動かして、少しずつ拡大していくと、該当の地域における避難所が少しずつ現れてくる。十分に地図を拡大しないと、該当地域はよく見えない。
ともあれ、これによって、該当地域の避難所が見つかる。(登録されたものに限るが。)
(2) 被害の種類
被害の種類も明示しておいた方がいいだろう。
伊豆の災害のあとでは、山の土砂崩ればかりに目が行きそうだが、台風の被害は同じタイプになるとは限らない。たとえば、橋が崩れたり、道路でスリップしたり、屋根から落ちたり、という被害も考えられる。
さらに、特に危険性の高いのは、豪雨や洪水だ。先月も三重で、洪水に飲み込まれて母子が流されて死んでしまった、という事故があった。
この事例では、台風がこの母子に襲いかかったのではない。この母子が勝手に台風に向かっていったのだ。詳しく言うと、名古屋在住で、大阪の USJ というテーマパークに遊びに出掛けたら、途中の三重で台風に巻き込まれ、豪雨で増水した川に巻き込まれて死んでしまった、という事例。
→ Google 検索
この母子の油断を指摘する声もネットにあふれているが、同じような油断は世間のあちこちで見られる。油断しているという点では、日本中の多くの地域がそうなのだ。特に、マスコミがひどい。私が本項や別項で何度か警告した通り。
もっとあちこちで注意しておくべきだろう。特に、事前の避難が大切だ。
(3) ダムの事前放流
洪水の対策として重要なのは、ダムの事前放流だ。
一般に、台風のような自然災害に対して、人間のなすことのできる対処がきわめて限られている。巨大な自然の力に対して、人間の力はあまりに微力だ。ただし例外的に、人間が巨大な力を発揮できる場合がある。それが、ダムだ。巨大な降水量に対して、巨大な貯水という形で、対抗できる。
ところが、この「持てる力」を、十分に発揮できないでいることが多い。というのは、巨大な貯水能力があっても、もともとダムの貯水量を 100%にしておくため、たくさんの降雨を貯め込むことができなくなるのだ。
このことは、前に何度か言及した。
→ 桂川 氾濫 とダム制御
→ 豪雨時のダムの事前放流
→ サイバネティックスとダム制御
で、現状はどうかというと、事前放流をしている気配はさっぱりない。大型台風が来そうだというのに、貯水量を減らすどころか増やしている(余裕を減らしている)ダムが多い。あるいは、貯水量は 100%のまま張りついているダムが多い。
→ 早明浦ダム リアルタイム情報
→ 矢木沢ダム リアルタイム情報
→ 下久保ダム 最新情報 (放流量はゼロを維持)
こんなことだと、下流域では、洪水や氾濫といった被害が生じそうだ。悪くすると、床上浸水ぐらいでは済まず、死者が出るかもしれない。
なのに、そういう危険性を指摘するのは私ぐらいだ。マスコミは、どうでもいいような下世話な話ばかりに熱中していて、人命や大災害については、「起こってから報道すればいいのさ」という姿勢しかない。そこには「予防」という概念はない。
なぜ? たぶん、「大事故になるほど、記事がいっぱい売れるのさ」と思っているのだろう。世間の大災害を利用して金儲けしよう、という魂胆。悪魔みたい。
私の役目は「思考の盲点」を指摘することであって、賛否両論があるところで自分の意見を押しつけることではありません。
それでも私の意見を求められるなら、「メリットもデメリットもあるので、単純には決められない」です。
「止めて正解だった」というのは、「メリットの方が大きい」ということであって、デメリットの存在を消すまでには至らないので、私としては「こうしろ」というふうに決めつけるまでには行きません。
ちなみに、「弁当を大安売りするハメになった」というデパート ※ は、大損をしているので、「ふざけるな。この莫大な損失をどうしてくれる」という気分でしょう。
※ http://miyearnzzlabo.com/archives/20918
なお、運休が必要だったかどうかと言えば、必要がなかったことははっきりしています。その証拠に、特急や新幹線は運休せずに、運行しています。(一部運休はあったが。)
→ http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040011_T11C14A0000000/
とりわけ豪雨が厳しいところだけ運休することにすれば、それ以外の大部分の箇所は運行できたことははっきりしています。
本件は、必要以上に過剰な安全策をとるかどうかということです。ま、結果的に被害者が出なかったから、それで良し、という発想もわかるが。