2013年10月17日

◆ 伊豆大島の台風災害

 大型台風の到来で、伊豆大島で多数の犠牲者が出た。このような犠牲者を出さずに済むには、どうすればいいか? ──

 大型台風の到来で、伊豆大島で多数の犠牲者が出た。死者数十名(行方不明者を含む)。特に、土砂崩れの犠牲者が多い。 このような事故を防ぐには、どうすればいいか? 二つの点から考察しよう。
 

 1. 避難


 今回の事例では、あらかじめ避難することが可能だった。「10年に1度の超大型台風が来る」と事前に大きく警告されていたからだ。当然、次の災害は予想されていた。
  ・ 土砂崩れ(土石流)
  ・ 河川の氾濫・洪水
  ・ 風雨による直接の被害

 このうち、土砂崩れや洪水については、起こる場所が限定されているのだから、危険な地域については、あらかじめ避難が可能だったはずだ。
 伊豆大島の大島町の町長は、「豪雨になった真夜中に避難するとかえって危険だったから避難命令を発しなかった」と言うが、論点はそこじゃない。豪雨が判明したあとでなく、豪雨になる前に、避難命令(もしくは警告)を発しなかったことだ。この点を問われたら、町長は口を閉じて貝になってしまった。自分でも愚かさがわかっているようだ。

 この点については、気象庁にも問題があったようだ。「特別警報を発するのは、県レベルの広域に限られる。今回は小さな島だったから、雨量が大きいのは予想されても、特別警報を発しなかった」ということだ。
  → 伊豆大島で特別警報発表されず…「広がりなく」
  → 伊豆大島の雨量、史上最多 特別警報なぜ出なかった
 だが、問題は、特別警報の有無じゃない。ただの警報のレベルであっても、危険性を警告して、土砂崩れ・洪水の予想される地域においては「事前の避難」を呼びかけるべきだった。
 そして、それを呼びかけていれば、自治体が避難施設を用意したりして、避難態勢を取れたはずだ。
 今回は、そうではなかった。自治体は、被害が発生するまでは、避難施設を用意しなかった。被害が生じたあとで、避難施設を用意したが、そこに死者が逃げ込むことはなかった。死者は土砂に埋もれていたからである。(まったく、何やっているんだか。「馬が逃げたあとで厩の扉を閉める」というありさまだ。毎度のことだけど。)

 一方、私はどうだったかというと、(今回の話とは別に)「さっさと避難しろ」と述べたことがある。「被害防止のために、莫大な金をかけて大工事をするか? いや、その必要はない。三十六計 逃げるにしかず」という方針。
  → 豪雨と温暖化
 一部抜粋すると、下記だ。
 「集中豪雨の対策として、地球気候の改造や、山岳地形の改造などの、大規模な対策は必要ない。危険が迫ったら危険地帯の人々が逃げ出す、という対策を取るだけでいい」

 上記の話は、集中豪雨をテーマとした話だったが、台風でも話は同様だ。さっさと避難するべきだったのだ。そうすれば、今回のような被害は避けられただろう。


 2. 移転


 より根源的な対策がある。それは、「危険地帯に住んでいる人々が、台風が来るたびに避難する」のではなくて、「危険地帯に住むのをやめる」ということだ。
( ※ 津波で言えば、「津波が来るたびに高台に避難するのではなく、津波で水没するような地域に住むことをやめる」ということに相当する。これが根源的だろう。)
 
 このことを理解するには、写真を見るといい。
 まずは、現地の土砂崩れの写真を掲載する。

yomiuri-izu.jpg

(出典:読売新聞


 この写真で、左中央の「逆台形の地域」と、右中央やや上の「白い二つの四角形」に着目してほしい。

 次に、Google Earth の写真を示す。上の二つの箇所は、下の写真の右側で、 207 という数字の上方と、 208 という数字の上方に、それぞれ見つかるだろう。


izuooshma1.jpeg

クリックして拡大


 どちらの写真でも、二つの箇所を示したが、この二つの箇所に挟まれた領域(その上のあたりから、その下のあたりまで)が、土砂崩れで埋没した箇所だ。
 ※ Google Earth の写真の緑が消えて、読売の写真の灰色になっているので、そうとわかる。
 ※ 次の図も参照。 → 産経の解説図

 さて。Google Earth の写真を見ると、次のことがわかる。
 「大島町では、海際の平坦な地域だけでなく、山の麓のあたりまで人家が密集している」


 つまり、土石流が襲いそうな危険な地域に、あえて人々が住んでいるのである。本来ならば人が住むべきではない危険な地域に、あえて人々が住んでいるのである。

 では、なぜか? 他には安全な土地がないからだ。離島であって、平地があまりないので、余っているのは、そのくらいの土地しかないからだ。

 ここで疑問が浮かぶ。
 「だったら、そんな危険な島には住まないで、都会に住めばいいではないか」
 これが常識的な発想であろう。
 このことは、換言すれば、こうなる。
 「離島では、人口密度が高すぎるので、人口密度を下げるべきだ。そのために、離島から本土に引っ越すために、国は援助するべきだ」
 これが本来の「あるべき政策」である。安全のためには。

 では、現実は? それとは正反対の方針が取られている。
 「離島では、もっと人口密度を高めるべきだ。そのために、本土から離島に引っ越すために、国は援助するべきだ」
 これはいわば、「津波の襲いかかる危険な地域に人々を招くために、国が援助する」というのと同様だ。狂気的。こういう狂気の政策が取られている。その政策の正式名称は「離島振興」である。そのための法律は、下記だ。
  → 離島振興法

 こうして、国は大金を投入して、国民を危険な場所にあえて住むように促す。狂気なのは、離島に住む人々ではなくて、あえて人々に金を払って、人々を死地に赴かせる政府なのである。殺人政府!

 こういう狂気は、特別なことか? いや、そうではない。前にもあったね。ほら、あれ。あれだよ。 思い出した? 下記に薄く示しておく。(範囲指定すると、よく見える。)
  → 原発振興法(略称)

 こういうふうにして、巨大な危険のある地域に、多数の人々を招き寄せた。そのせいで、とんでもない事故が起こって、とんでもない被害に遭う多数の人々が発生したのである。



 [ 付記 ]
 かくて、政府がやっていることは、昔からずっと同じだ。「国民を危険にさらして、大工事をすること」
 伊豆大島の場合には、莫大な砂防ダムを造って、公共事業費をたっぷりと投入した。ところが今回は、砂防ダムよりもはるか上流側で土石流が発生したので、砂防ダムは効果がなかった。また、砂防ダムがいくらか役立った地域もあるが、土石流は砂防ダムをあっさり乗り越えてしまった。(砂防ダムなんているものは、土石流に比べると、焼け石に水みたいな効果しかないのだから、当然だが。……この件は、三宅島の噴火の際(2004年)に、述べたことがある。 → 泉の波立ち

 ではなぜ、政府はこういう馬鹿げたことをやるか? もちろん、公共事業をやって、自民党に政治献金を入れるためだ。件発被害も、台風の被害も、たいていは自民党の公共事業の推進(政治献金の推進)のためなのである。
 ひとことで言えば、賄賂。それが原因。
posted by 管理人 at 21:35 | Comment(2) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
伊豆大島の三原山は1986年に噴火し、溶岩流が元町まで迫り、後藤田正晴氏が指揮して、全島避難となりました。
27年前です。直近に全島を火山灰が覆ったのだから、大雨になれば土石流が起きやすいこと、起きるとすれば尾根沿い
ではなく谷沿いであること、近づいてくる大型台風が直撃コースなので、何が起きるかは、高い確率で予見できます。

 昔、居酒屋で憤慨している客がいました。「気象庁は、雨台風というたのに!」。もう少し聴いていると、彼の知人が
台風接近中に屋根に登って点検しているとき、強風にあおられて落下して大怪我をしたとのこと。台風だから強風が吹く
のは前提で、雨台風とは降水が標準台風より多いという予測でしょう。風は吹かず、雨だけ降ると思ったようです。

 日本の教育は、いい国作ろう(1192)鎌倉幕府のように、AとBをセットにして覚えれば一丁あがり。そういうセットを多
くすることに血道を上げています。理屈を追求するよりも有効な個別対応セットを覚えよです。統治しやすい愚民政策と
いえるかも知れませんが、指導者になる人まで同じような教育を受けているので、大局観から適切な方向性を示すことが
できる大人が減っています。暗記するセット数を半分にしていいから、論理性を高めたり、事実から帰納する訓練をした
り、仮説と論証を重ねる経験をさせるのがよいのではないでしょうか。
Posted by 思いやり at 2013年10月17日 23:04
おっしゃること、いちいちうなずきながら拝読しました。

今、ニュースでは、伊豆大島から避難して来た人たちの船が
晴海埠頭に着いたもようを放送しています。
都立広尾病院や、赤十字の職員たちが、埠頭まで手厚くお出迎え。
は?と思うのは自分だけですか?

自ら望んで、伊豆大島という自然災害いっぱいの危険地域に
住んでいながら、何かあれば、国のお金で移動して、都内でも
有数の「良い病院」で「静養」できるわけですか?
それって、おかしくないですか?
誰もそんなふうに思わないんですかね?

この期に及んで、まだ「島を離れたくない」と言って残ってる
人たち、何があっても自己責任でしょう。
その人たちが被害にあえば、警察消防自衛隊が大量に投入され、
雨風の中、夜を徹しての重労働を課せられるわけです。
本当にお疲れさまなことです。
それに、ニュース見てると、東京や横浜のハイパーレスキューが
次々に投入されてるようですが、本土で災害が起こったら
どーすんだ?と思います。
Posted by はち at 2013年10月24日 14:15
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