まずは記事の引用。
《 観光客「ビッグデータ」収集、新スポット発掘に 》
観光庁は、携帯電話などの全地球測位システム(GPS)を活用して観光客のビッグデータを収集・分析し、新たな観光ルート・スポットの発掘に生かす研究を始める。
具体的には、携帯電話会社が利用者の承諾を得た上で、5分ごとの行動履歴をサーバーに収集。個人情報を除いた約70万人のデータを地図情報サービス会社や民間シンクタンクなどに提供し、
〈1〉観光客の出発地域
〈2〉利用した鉄道や道路の経路
〈3〉滞在時間
〈4〉宿泊の有無
――などをデータベース化。分析したうえで自治体やツアー会社などに情報提供する。
( → 2013年10月14日 読売新聞 )
これにはいくつかの問題がある。
(1) 個人情報
誰でも思いつくように、個人情報の問題がある。「利用者の承諾を得た上で」という名目だが、個人に何もメリットがない以上、承諾する人がいるわけがない。それなのに「利用者の承諾を得た上で」というとしたら、相手の理解を得ないまま、こっそり「同意します」というボタンを押させてしまうつもりなのだろう。……そう思っていたら、早速、高木浩光氏が見つけていた。下記にある。
→ 同意した覚えありますか?「ドコモ地図ナビ」による行動履歴の第三者提供
該当箇所を転載すると、こうだ。
「ドコモ地図ナビ」の「利用規約」より。スクロールバーを見ればわかるように、長大な利用規約の後ろから4分の1あたりにこう書かれている。 pic.twitter.com/fsM2muPLjs
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) October 14, 2013
仮にこれが読売の記事 http://t.co/ISmM9TD3kB に言う「携帯電話会社が利用者の承諾を得た上で」のことを言っているのだとすると、そんなものは到底許されない。こんなもので有効がな同意があるとは到底言えない。
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) October 14, 2013
ひどいものだ。ほとんど詐欺的である。国がこんな詐欺的なことを率先してやらせて、どうする。次のような詐欺師が出てくるかもしれない。
「同意します、というボタンの前に、『お金をいくら取られても構いません』という文章を入れておいて、同意しますというボタンを押させた上で、勝手に大金を奪い取る」
こういうのは、公序良俗に反するから、通常は無効となる。しかし、国が率先してやっているとしたら、詐欺師がこう弁明する。
「国だって同じようなことをしているじゃないか。きちんと同意を得ないで、勝手に個人情報を盗んでいるじゃないか」
こう言われたら、どうする。
まったく、呆れた方針だ。
(2) 効果
そもそも、根源的な問題がある。「こんな調査をやって、いったい何の役に立つか」ということだ。
国の言い分は、こうだろう。
「いろいろと調査をすれば、その調査をした地域で、観光客にとって利便性が増す。ゆえに、その地域では観光振興になる」
なるほど、それはいくらか真実だろう。だが、よく考えてみるといい。ある地域で観光客が増えれば、その分、他の地域では観光客が減るのだ。これでは、その調査をやった地域では利益になるが、他の地域では不利益になる。
今回の例で言えば、富士山周辺で観光客が増えれば、その分、箱根や熱海などでは観光客が減る。これでは何にもならない。というか、国内に格差を作り出すことで、かえって有害である。(比喩的に言えば、自動車産業で特定の一社だけにてこ入れして販売台数を増やさせ、その分、他の会社の販売台数を減らすようなものだ。)
国がやるべきことは、「日本全体の観光客を増やすこと」である。そのためには、たとえば、「日本旅館で英語対応力を増やすための補助」などは有益だろう。一方、「特定の地域だけで振興策を採る」というのは、「その特定地域では観光客が増えるが、他の地域では観光客が減る」というふうになるから、ほとんど効果がないのだ。
観光庁はこのことを理解できていない。「富士山周辺で観光客を増やせば、その分、観光客が増える」と思い込んでいる。頭が小学生並みである。いや、もっと悪い。小学生ならば、「パイを切って、自分が分け前を多く取れば、他の人の分け前は減る」とわかるはずだ。しかし、観光庁はそれを理解できない。「パイを切って、自分が分け前を多く取っても、他の人の分け前は変わらないから、全体の分け前が増える」と思い込んでいる。算数さえできないレベルだ。白痴的。
(3) 自己負担なら
では、どうすればいいか? 何もしないのが正解か? いや、そうとも言えない。正しくは、こうだ。
「効果があると思った地域が、自己負担でやればいい」
つまり、特定地域だけが利益を得て、他の地域にとっては不利益になるのであれば、その特定地域が費用を自己負担すればいいのだ。
これは、あらゆる商売において、当然のことである。ある会社だけに利益のあるような方法は、その会社が自分で費用を負担すればいい。当然だ。
(4) 観光庁の錯覚
ところが、観光庁は、そのことを理解できない。特定地域だけが利益を得て、他の地域にとっては不利益になることを、自己負担の代わりに、国の費用で実現させようとしている。気違いじみた政策を取ろうとしている。
では、なぜか? 「パイを切って、自分が分け前を多く取っても、他の人の分け前は変わらないから、全体の分け前が増える」というような、馬鹿げた考え方を、どうして取るのか?
そのわけを教えよう。それは、観光庁が、ITというものをまともに理解できていないからだ。「ビッグデータが はやっているのか。じゃ、おれも」と思って、わけがわからないうちに、「とにかくビッグデータを使って、政策に生かそう。おれって頭いい」と思い込んでいるわけだ。
ここまで聞くと、よく似た例を思い出すだろう。
「ツイッターが はやっているのか。じゃ、おれも。とにかくツイッターを使って、政策に生かそう。おれって頭いい」
「 facebook が はやっているのか。じゃ、おれも。とにかく facebook を使って、政策に生かそう。おれって頭いい」
こういうふうに思い込んで、「日本ツイッター学会」「日本 facebook 学会」を勝手に作って、その(自称)会長になった市長がいましたね。
→ 武雄市長が痛い件
その本質は、「ITのことをろくにわからないまま、はやりのITに飛びついたこと」である。
観光庁も、それと同じだ。
本項のタイトルは、「観光庁が痛い件」でもよかったな。 (^^);
[ 付記1 ]
実は、国全体では、この方針は逆効果になる恐れがある。つまり、日本への観光客全体を減らす効果がある。理由は?
「知らないうちに個人データを抜き取られるなんて、日本は怖い。怖いから、日本に行くのはやめよう」
と思う外国人観光客が増えそうだからだ。
そうなったら、彼らは、「じゃ、かわりに韓国か中国へ行こう」と思うようになるだろう。
その意味で、今回の観光庁の方針は、「韓国・中国への支援」なのである。「日本をイヤな気持ち悪い国にして、日本への観光客を減らしてやれ」というわけ。
観光庁は、痛い。
[ 付記2 ]
個人としては、どう対策するべきか?
本文中にあるリンクでは、高木浩光氏の言及のところで、「このアプリはドコモのアプリらしい」とされている。
なるほど。それだったら、ドコモの「ドコモ地図ナビ」というアプリらしい。説明ページによると、iモードや、スマホで作動するようだ。
とすれば、「ドコモのガラケーやスマホを使わないようにする」というのが、正しい方策だろう。今後も、知らないうちにいつ地雷を踏むかわかったものじゃないしね。
これからはドコモと契約するのはやめましょう。すでにドコモと契約している人は、解約しましょう。それが一番です。
※ 「iPhoneならば大丈夫」ということはない。説明ページを
見ればわかるように、iPhoneも Android も、ともに危険。
[ 付記3 ]
「ドコモや観光庁を信じる」という人もいるだろう。だが、世の常で、こういう個人情報はいつかは漏れる。故意に漏らすのではなくて、ハッカーが忍び込むからだ。2ちゃんねるの個人情報が漏れたのと同じ。
で、漏れたとしても、被害弁済などはありえない。Yahoo かどこかが情報漏れを起こしたときには、「500円上げるから勘弁ね」でおしまいだった。
漏れた個人情報の使い方の例。
・ ストーカーが、逃げた彼女の情報を知ってから殺す。
・ 妻が、夫の不倫情報を知って、相手の女を殺す。
・ 部下が、上司の不祥事を知って、大金をゆする。
・ 上司が、美人部下の秘密を知って、セクハラ強要。
こうやって観光庁は、犯罪を推奨するんですね。日本を犯罪国家にしたがっているわけだ。正義の味方は、月光仮面。犯罪者の味方は、観光庁。……あ、ドコモも。
さっさとドコモを捨てましょうね。身の安全のために。
【 関連サイト 】
個人の位置情報を勝手に扱おうとしている会社のサイト。
→ http://hd.lis-data.com/draffic/
文中では、「利用者から許諾を得て取得した位置情報」と書いているが、許可した覚えのある人はほとんどいないはずだ。詐欺的。
(1)
「「iPhone 5c」パケ詰まり率はドコモがワースト」
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/15/news090.html
(2)
許可したつもりはないのに、意識せずに承認してしまったので、被害に遭う人が続出、という例。
→ http://ggsoku.com/2013/10/plays-trap/
まさに合成の誤謬ですね。日本中にテーマパークが林立したときも、各自が「自分の所にだけ客が来る」と狸の
皮算用したのでしょう(合理的に考えれば、ありえませんが)。いくつか行ったけれど再訪したいと思ったところ
は皆無でした。大赤字で次々と閉鎖されていったのも当然です。
この話は、長野県の小布施が実施した観光客の動向調査と類似しています(その拡大版?)。小布施は観光事業
の拡大を期待して調査を依頼したはずです。調査結果は、ある意味、予想通りでした。
1)客は、温泉地に宿泊しついでに人気の小布施に立ち寄る。みやげ物を買って、あわただしく立ち去る。
2)滞在時間と消費金額は比例しない。小布施で使う額を決めていて、欲しいものを買えば打ち止め。
3)小布施の町並みが気に入って、リピータになった層もある。この層は泊りがけで小布施滞在を楽しむ。
小布施が町全体で修景事業をやらなかったら、先祖が葛飾北斎など文化人を厚遇しなかったら、栗菓子という付加
価値商品も生まれず、北斎の美術品も存在せず、PRしても誰も来ない平凡な地方の町だった。小布施はゼロサムの
ゲームではなく、本物の魅力で新しい需要を生み出した点が評価できます。
人が遠方から何度もやってくるには理由がある。その理由を解析し、観光地を再生することが観光庁の役割ですね。
小布施は観光客を増やすことを目標とせず、住民と客を心から満足させることを目標にした町づくりを続けることが、
小布施らしさを保つのではないでしょうか。
茨城に袋田の滝があります。それなりに立派な滝ですが二度と行こうと思わない。滝と滝に寄生したみやげ物店と
飲食店があるだけ。地元の観光協会は何を考えているのでしょうね。滝から流れ出る川べりに桜や紅葉の並木、
菜の花を埋め尽くし、地元の本格的な蕎麦など本物の味(月待ちの滝で食べたそばは絶品。あれほど美味しい蕎麦
を食べたことはない)を鍛えるなど、おもてなしの心をもって環境を整えて行けば、リピーターは増えるし、来た人は
「来て良かった」と感謝するのに・・・
後楽園の遊園地よりディズニーランドの方がはるかに魅力的です。本当のことを言えば、四万十川で釣りをする方
が、ディズニーランよりはるかに満足します。
おそらく、観光とは短時間でとりあえずの満足を得ること。バカンスは本物の楽しみをじっくり味わうこと。
日本は、観光庁は、何を目指しているのでしょうか?
体験型・・・スキーも流行らなくなったし、釣りは大漁祈願。そして虐殺。血なまぐさいのは嫌なのでスマホの中でおしまい。
これが日本じゃないですか?
まねごとではなく、本物にじかに触れる。それに浸る。そこで生きるという感じですかね。
四万十川で釣りをしていた頃は、食べる分だけ釣っていました。命をいただたわけです。
人間は、他の生物の命をいただくことでしか生きれません。そこは感謝するしかないですね。
バカンスは、行った先で真剣に感じる、生きるという要素が本質なのかもしれません。