WindowsXP の更新について前々項で述べた。そこでは、こう述べた。
「 OS の更新には1台 40万円以上をかけることがあるが、馬鹿げている」
これに対して、次の反論が出た。
「自治体には情報システム担当者がいないことが多い。そういう場合には、企業に丸投げする。だから高額になる」
しかし、企業に丸投げしても、企業はそれをさらに丸投げしそうだ。つまり、企業は下請けに丸投げして、下請けはさらに二次下請けに丸投げして、……というふうにして、最終的には三次下請けぐらいが担当しそうだ。
その間に、資金は「中抜き」ばかりをされるし、一方では、現場と担当者との間に余計な経路が挟まるせいで、連絡がおかしくなりがちだ。こんな感じ。

出典(PDF)
こういうのは、まったく非効率だ。どうせなら、自治体にまともな情報システム担当者を置いた方がいい。そうすれば、日常的にシステムのメンテナンスができるし、暇なときには事務を助けてもらうこともできる。効率がいい。
とはいっても、公務員試験に合格した人にパソコンのメンテナンスをやらせるというのは、無理筋だ。ここはどうしても、パソコンの専門家にやらせるしかない。しかしながら、そのための方法がない。中途採用するにしても、わざわざそのための試験を新たに創設して……なんてやるのでは、非効率すぎる。しかも、どうやったら適当な経験者を採用できるか、そのノウハウさえもない。どう考えても無理。
しかも、である。同様のことは、政府にも当てはまるのだ。さすがに中央省庁ならば、それほどひどくはないだろうが、地方の出先などでは、自治体と同様のひどい状態になっていそうだ。国レベルで、真っ暗な状況だ。(ITに関しては。)
──
そこで本項で新たに提案しよう。こうだ。
「自治体や国のパソコンのメンテナンスをやる情報システム担当者を、国家レベルで統合する」
この統合された組織を「システム省」と仮称することにしよう。システム省は、次のことをやる。
・ 自治体は、メンテナンスを、システム省に丸投げする。
・ システム省は、情報システム担当者を大量に雇用して、
それらの情報システム担当者を、自治体に派遣する。
・ その各人は、派遣労働者として、自治体に雇用される。
・ その各人は、暇なときには、自治体職員として働く。
・ その各人は、システム省に在籍して、雇用保障される。
・ システム省は、各人に対して、統合的に情報を与える。
(自治体内部で各人が自助努力するのではない。)
・ システム省の指示で、全国的なクラウドを構成する。
・ 自治体レベルのソフトは、全国的に統合される。
・ たいていのソフトのメンテは、クラウド上でメンテする。
こうやって国家レベルで最高水準のメンテを実現するわけだ。現状は、「各自治体がバラバラに、低レベルのメンテを業者に丸投げする」というふうになっているが、そんな旧時代の方式を改めるわけだ。
これによって、安全性は格段に向上し、かつ、コストは大幅に下がるだろう。
民間のソフト業者は? たぶん、商売あがったりだ。そのかわり、新設のシステム省に雇用してもらう、という手もある。……ただし、優秀な人に限られるが。
これをやったら、ソフト業界は不況の嵐になりそうだが、その一方で、自治体レベルのIT部門は大幅に効率が向上することになる。
※ 以下は細かな話。読まなくてもいい。
[ 付記1 ]
この提案は、あくまで「メンテ」が主眼だ。IT産業一般の政策立案には関与しない。その意味で、「IT省」を構築するのではない。
たとえば、現在ある IPA などは、今回の提案には関係しない。ついでに言えば、高木浩光氏のいる産総研(などの研究所や独立行政法人)も関係しない。話はあくまで、パソコンのメンテだけだ。
[ 付記2 ]
この「システム省」というのは、国家の一部門となる。大事なのは、「独立行政法人ではない」ということだ。
「それはなぜ? 独立行政法人の方が良さそうだが?」
という疑問が出そうだ。たしかに、雇用の点では、その通り。ただ、独立行政法人だと、「守秘義務がない」という問題がある。
→ 守秘義務 - Wikipedia
独立行政法人だと、職員は守秘義務がない。とすると、自治体に派遣された職員が、自治体の情報を外部に漏らしても、何ら処罰されないことになる。
そいつはまずい。何としても、公務員法で縛る必要がある。そのためには、公務員の身分を与えなくてはならない。
ま、形は派遣社員(派遣公務員)だとしても、普通の派遣社員みたいに「簡単にクビになる」「給料も低い」というような状況とは違う。立派な公務員として扱われる。「派遣」というのは、あくまで形式だけのことだ。その意味で、公務員として扱われる方がいい。
ただ、私見を言うと、政府と自治体の双方から給料が出る方がいいですね。実際、企業でもそういうことはある。「親会社の職員の身分のまま、子会社に派遣されて、親会社と子会社の双方から給料が出る」ということが。……それと同様にするといいだろう。あくまで一案だが。
※ 「派遣」じゃなくて「出向」だ、という指摘がコメント欄にあった。
たしかにそうですね。用語の問題だけど。
独立行政法人通則法 第54条
第1項 「特定独立行政法人の役員(以下この条から第五十六条までにおいて単に「役員」という。)は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」と定めている。違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。非特定行政法人の場合も個別法で守秘義務が課せられている場合が多い。
という規定がありますよ。みなし公務員になりますので。
実務担当者は役員じゃないので適用外。
という件について、
「個別法で守秘義務を課すことができる(できている場合がすでにある)」
という指摘があった。
まあ、それはそうですね。
とすれば、「ない」と強く否定するよりは、「あるとは言えない」というぐらいに弱く否定する方が妥当であるだろう。
また、個別法で守秘義務を課せば、独法でもいいだろう。立法措置が面倒だけど。
ま、このあたりは手続き論なので、非本質的だし、どうでもいい。
ただ、独法だと、派遣先の自治体で、職員が軽く見られそうだ。「一段下の派遣職員」というふうに。それよりは「国家公務員」としての肩書きを与えて、「上から派遣されてきたお目付役」みたいな感じにした方が、本人もプライドを持って仕事ができるだろう。