2013年09月30日

◆ 原発を国有化せよ

 日本中の原発すべてを、国が管理した方がいい。東電などの民間会社には任せておけないからだ。 ──

 福島原発の汚染水の原因は、東電に任せたことだった。利益優先の民間会社に任せた結果、必要な安全コストを惜しんで、汚染水を漏洩させることになった。
  → 福島原発の汚染水の本質

 これは JR北海道と同様だ。必要な安全コストを惜しんで、あとで事故を起こすこととなった。(東電の場合、その事故が「汚染水の漏洩」となったわけだ。)

 こういう問題を抜本的に解決するには、どうすればいいか? JR北海道や JR四国ならば、「路線廃止」という方針で済んだが、原発だと、「廃止」で済むとも思えない。なぜか?
 原発停止によるコスト増加は、年間4〜5兆円とも言われる。( → 出典 ) とすれば、4年間で 16〜20兆円。これは地震全体の復興費用 16兆円を上回る。それほどにも巨額だ。
 逆に言えば、原発停止によって、日本は4年ごとに大地震の被害を受けているようなものだ。途轍もない被害額である。その意味では、地震被害よりも、はるかに大きな被害を「原発停止」から受けていると言える。
 とすれば、原発停止をいつまでも続けているわけには行かない。現状では、電気代の値上げは避けられているが、本当ならば、今すぐにも電気代を2割程度上げるべきだ。その値上げを避けているから、原発停止による損害が露見しないでいる。一種のゴマ化しだ。

 ──

 とはいえ、原発を再稼働するにしても、今のまま再稼働するのは、危険が高すぎる。東電などの電力会社は、あまりにも利益体質に染まっており、安全無視が過ぎるからだ。
 次の (1)(2)(3) という安全無視がある。

 (1) 東電は福島原発事故のとき、電源停止のあとで、「海水注入」を拒んだ。「海水注入をしたら、巨額の原発設備が無駄になってしまうからもったいない」という理屈だ。実は、福島第一原発は、ほぼ償却が終わっており、いつ廃止にしても、たいして損害にはならなかった。なのに、「耐用年数が過ぎても長期間稼働させればボロ儲けができる」というふうに欲の皮が突っ張っていた。そのせいで、廃炉の決断ができなかった。あげく、ドッカーン。水素爆発が起こり、炉心溶融も起こった。そして多大な放射能が流出した。大被害。

 (2) 中電は今になっても浜岡で防潮堤なんかを構築している。「浜岡原発がもったいないから」という理屈。しかし、防潮堤なんかを構築しても、無意味だ。地震が来たら、津波が来るかどうかに関係なく、細管が破断する。細管が破断したら、もはやその原発は使い物にならない。細管を修理して使うというようなことは考えられない。あちこちが傷ついている危険があるのだから、「大地震が起こったら、浜岡は即時廃棄」が妥当である。その場合には、「大地震が起こったら炉心に海水注入」が必要となる。とすれば、「防潮堤を構築する」というのは、方針が正反対だ。むしろ逆に、「津波の水を炉心に入れて、原子炉を廃炉にする」というのが正しい。なのに、そんなこともわからないで、「地震が来たあとも、損傷した原子炉を使えるようにしたい。そのために防潮堤を1千億円で構築する」という馬鹿丸出しのことをやっている。

 (3) 原発を維持するなら、何よりも大切なのは、「緊急時の停止」である。それも、機械的に停止するだけでなく、水によって水没させることが必要だ。つまり、「水棺」の設備が必要だ。( → 別項一覧 ) にもかかわらず原発会社は、水棺の設備を構築しない。いつまでたっても、やるべきことをやっていない。「現状のままの再稼働」ばかりをめざしている。いわば「ブレーキの壊れた自動車を、そのままの状態で発進させようとしている」というありさまだ。

 ──

 以上の (1)(2)(3) のような問題がある。これは利益優先かつ安全無視である民間会社には解決できない問題だ。
 とすれば、対策は、ただ一つしかない。
 「すべての原発の国有化」

 である。
 この場合には、次の新たな方針が立てられる。
  ・ 経営は、国家(国庫)によってなされる。
  ・ 安全は、専門の安全機関に委ねられる。(新設の機構)
  ・ 原発の運営は、経営機関ではなく、安全機関がになう。


 このうち、最後の点が重要だ。
 東電の場合には、経営者が最終判断をした。経営者はあくまで経営上の判断で原発をどうするかを決めた。その結果が、原発の暴走事故だ。
 新たな方針では、国有化されたあとで、専門の安全機関が運営をになう。損得によって判断するのではなく、安全性・危険性によって判断する。こうして安全な運営が実行される。

 要するに、原発というのは、危険性があまりにも高いがゆえに、民間企業の経営判断に委ねることはできないのだ。
 普通の民間企業ならば、経営判断が間違っても、その企業がつぶれるだけだ。しかし原発の場合には、民間企業の経営判断が間違ったら、その企業がつぶれるかわりに、日本がつぶれかけてしまうのだ。(東電はつぶれていいはずなのに、逆につぶれることを免除されているありさまだ。特別に優遇されている。)

 これほどにも危険性が高いのだから、原発の運営を民間企業に委ねることはできない。国が直接、運営するべきだ。
 また、そのことで、原発の運営が一元化されるというメリットがある。現状のように、いくつもの電力会社がそれぞれ独自に原発を運営するのでは、技術も分散されるし、安全性は低くなる。やはり、統一された一つの大機関が運営するべきだろう。そこでは高度な技術が集約されるべきだ。



 [ 付記 ]
 参考のため、フランスの状況がどうであるかを示す。(引用)
 《 フランスの原子力開発体制 》
 フランスは米国に次ぐ世界第2位の原子力発電大国として、政府主導の強力な原子力発電開発体制を図ってきた。関連機関・企業はほとんど国有企業あるいはその子会社で、原子力庁(CEA)が研究開発を主導し、原子炉プラントの製造をフラマトム社が、原子炉燃料製造をコジェマ社(COGEMA)が担当してきた。フラマトム社はフランス電力公社(EDF)から国内原子炉プラントの発注を独占してきたが、1990年代以降の原子力開発計画需要の鈍化に伴い、合理化や多角化に努めるとともに、2001年3月にはドイツ・シーメンス社との合併など事業再編が行われた。
 2000年に入って本格化した世界規模の原子力再編の動きを背景に、フランスは国際戦略を視野にいれた原子炉メーカー、核燃料サイクル、さらに原子力部門以外のIT関連企業を含んだ大規模な原子力産業再編を計画し、持ち株会社アレバ社(AREVA)が誕生した。原子炉製造部門をアレバNP社が、原子燃料サイクル部門をアレバNC社が担当している。これに伴い研究開発部門(CEA)の体制の見直しや安全規制部門の分離・強化が図られ、2006年11月には大統領直属の原子力安全規制当局(ASN)が誕生した。

( → 高度情報科学技術研究機構

 リンク先には、もっと詳しい情報もある。



   ※ 以下は読まなくてもいい。直接の関係はない。

 
 [ 余談 ]
 既存の原発の再稼働でなく、原発の新設ならば、どうだろうか?
 原発の新規建設は、たぶんないと思うが、もしあるとしたら、唯一の適地は福島第一の跡地だろう。あの周辺には、人が住むべきではない。そして、そういう広大な空白地帯ができたのならば、その土地は、原発建設に適している。
 浜岡原発を停止したことで、原発が足りなくなってしまった……というような事態が起こったならば、福島第一の跡地は、有望な適地だ。

( ※ 地球温暖化が大騒ぎになると、現実的な対策は原発しかなさそうだ。太陽光は? 夜間発電量がゼロなので代替にはならない。夕方の発電量低下も痛すぎる。風力は、有望だが、日本の風力資源の送料は、あまり大きくない。日本は領土が小さいという点が致命的だ。将来的には、どうしても原子力が必要となる時期が来るかもしれない。)
( ※ ただし、「太陽光発電で水素をつくって運搬する」という方法で、南洋の太陽光発電を利用する、という可能性もある。……実現するかどうかは不明だが。)

 


 【 関連項目 】

 → 東京電力をどう処理するか

 各社の原子力部門を国有化する、という案は、ここですでに述べられている。引用すると、下記。
 原発部門は、日本中の原発会社がそろって同じ部門を分離したあとで、「日本全国原子力発電(株)」というものに統合すればいい。

 ────────────
 
 本項と同趣旨の話を、別の観点から論じたものとして、次の項目もある。(以前書いた項目。)
  → 東電の決定権を奪え(新体制の構築)
 参考として、お読みください。

 あと、次の項目も、少し参考になります。
  → 原発は真犯人ではない
  → 原発の安全体制とは
  → 原発の再開の是非
  → 原発再開の条件
posted by 管理人 at 22:28 | Comment(3) |  放射線・原発 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
原発はビジネスモデルとして終ったと見るべきでは。原発施設は優良資産ではなく、不良資産
になっている。起こった事故対策費とこれから起こる事故の対策費と廃炉費用は、えらく高い
ものにつくはず。技術革新で、原発よりも安くて安全な発電技術が既に稼動している。
 福島では、水をかけ続け汚染水は増える一方。誰も抜本的な解決策を考えず(考えられない人
が命令・指示している?)、客観的に見れば無意味なことに天文学的な費用(税金と値上げする
電気料金)が消えていく。福島には大迷惑で、国民には馬鹿らしい話。
 もし、原発を全部国が引き受けてくれるなら、電力会社にとってこれほどうれしいことはない。
しかし、国は1000兆円の借金に加え、原発後始末という未知の天文学的な借金を背負うこと
になる。国家破産が現実味を帯びてくるように思えます。
 国が立ち行くための打開策は、安く安全に原発の後始末をする方策を必死に考えることだろう。
フランスは、高レベル放射性廃棄物をコンテナに詰めて、旧ソ連のどこかに運び置かせてもらう
方策をとっている(賢い)。日本もシベリアの人跡未踏の場所へ置かしてもらうのも方法である。
1000年も経てば、大部分の放射能は無害レベルになる(テロリスト対策として、持ち去って
も無駄な工夫は必要)。
 使用済み燃料を運び去った原発を解体しないで立ち入り禁止区域にすれば、原発後始末に起因
する財政破綻のリスクはなくなる。電力会社も暗雲が晴れ、最新技術を導入して再出発できる。
 兵器に転用するために原発が必要という人もいる。賛否は分かれる。仮に護身目的とするなら、
実験用が2基もあれば済むのでは。
Posted by 思いやり at 2013年10月01日 23:43
まあ、原発の新設はなさそうですが、既存の原発を稼働停止にしたって、廃炉費用が浮くわけじゃない。
 現状のままでの稼働は危険だが、きちんと対策して稼働させれば、莫大な費用が浮く。一方、稼働を停止させたままでは、4年ごとに大震災が来るのと同じ程度の損害となる。
 4年ごとに大震災って、受け入れられますか?

 安全とコストの最適点を見出すべきだ、というのが私の考えです。
 現状のままでの再稼働には反対ですけど。きちんと対策すれば、それほど危険だとは言えない。福島原発には、フェールセーフの思想がなかったが、私としてはフェールセーフの思想があれば稼働は可能だと思えます。
 ただ、民間経営のままでは、フェールセーフは無理でしょう。
Posted by 管理人 at 2013年10月02日 00:12
管理人さんの「きちんと対策して」原発を活用し、浮いた費用を廃炉、核燃料処理、次世代発電の研究開発に廻す方が良いと思う。
一気に廃止というハードランディングではなく、徐々に廃止するまで有効活用というソフトランディング。
そのためには温泉や地熱の活用とか色々ありそうです。
Posted by 京都の人 at 2013年10月02日 01:28
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