福島原発の汚染水は、どうしてこんなに問題になったのか?
まず、次の記事がある。
《 汚染水漏れ:「タンク、金かけず作った」協力会社会長証言 》
廃炉作業に参加している東電協力会社(福島県いわき市)の会長は毎日新聞の取材に「タンクは工期が短く、金もなるべくかけずに作った。長期間耐えられる構造ではない」と証言した。
同社は事故前から原発プラントの設計・保守などを東電から請け負い、同原発事故の復旧作業では汚染水を浄化して放射性物質を取り除く業務に携わっている。このため汚染水を貯留しているタンクを設置したゼネコンともやり取りがあり、内部事情に詳しい。
会長が東電幹部やゼネコン関係者から聞いた話では、今回水漏れを起こしたタンクは、設置工事の期間が短かった上、東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた。
( → 毎日新聞 2013年08月25日 )
金をかけずに、安上がりに摘ませた、という証言がある。つまりは、「金を惜しんで、安全の手抜き」である。
これが事実だ。
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この事実は、すでに広く知られているが、今になって見直すと、JR西日本 や JR北海道の「安全の手抜き」と、同様の事情にあったと気づく。
→ JR西日本と JR北海道(安全対策)
まったくひどいものだ。呆れるしかない。
しかし、呆れてばかりいるのでは、思考停止だ。その先を考える必要がある。
こういう「安全の手抜き」は、どうして起こったのか? つまり、事件の本質は、何か?
これについて、参考となる記事がある。
→ 東京電力株が続伸、汚染水対策を国が負担へ
東電の社長は、「自社では安全対策の金がまかないきれないから、国費負担してくれ」と言っている。( → 読売・朝刊 2013-09-29 )
その要望通り、国は国費負担を決めた。すると、上の記事のように、東電の株が上昇した。
つまり、実質破綻状態の東電に、国が金を投入する(費用を肩代わりする)ことを決めたから、株主はほくほくした、というわけだ。これはつまり、「国の金を株主にプレゼントする」ということに相当する。
しかし、そんなことはあってはならないのだ。なぜならば、実質破綻状態の東電は、会社整理してから、国有化するべきだったからだ。私が事故直後に述べた通り。
→ 東京電力をどう処理するか
なのに、そうしなかった。だから、今回の汚染水のような問題が起こったのだ。この問題は、起こるべくして起こったのだ。
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以上のことをまとめれば、こう言える。
「東電は実質的に破綻している。ならば倒産させて、会社整理してから、国有化するべきだった。なのに、政府は国有化をいやがって、いつまでも東電に任せきりにしておいた。そのせいで、東電は何とかして倒産を避けようとして、必要な安全コストの投入を惜しんだ。そのあげく、安全無視のデタラメ状態となり、汚染水の事故が起こった」
つまり、「金を惜しんで安全無視して、その結果としての事故」である。そして、その根源は、「東電の破綻処理をしなかったこと」なのである。ここに本質がある。
私は事故直後に、「東電を倒産させよ。火力部門は民営化して、原子力部門は国有化しろ」という趣旨のことを述べた。( → 該当ページ ) もしその通りにしていれば、「安全対策を手抜きする」ということはなかったろうし、十分な国費投入によって十分な安全対対策が取られただろう。しかし、私の提案は無視された。それゆえ、安全無視の結果としての事故が起こったのだ。
[ 付記1 ]
これに対して、政府は何をしたか? 安倍首相はオリンピックの誘致の演説で、こう述べた。( → 出典 )
「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」。
「汚染水は福島第一原発の 0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」
つまり、嘘をついただけだった。よくもまあ、これほど堂々と嘘をつけるものだ。その厚顔無恥に感心する。これほどの嘘つきは、歴代首相で最高だろう。
日本史上で最高の嘘つき首相に認定して差し上げます。
[ 付記2 ]
では、どうすればいいか?
今からでも遅くはないから、私の提案を実行すればいい。さっさと東電を会社整理して、国の支配下に置けばいい。
一番駄目なのは、国が金だけを出して、後は東電に任せることだ。それで喜ぶのは、株主だけだ。
「国から莫大な金をもらったよ。これで大儲け! うひひ」
汚染水事故で大儲けする連中。ひどいね。……こいつらを喜ばせるためにあるのが、自民党だ。
「消費税を増税して、そのうちの一部を東電の株主に贈りします。だから皆さん、その金をまかなうために、消費税増税を受け入れてね」