2013年09月29日

◆ 介護詐欺(有料老人ホーム)

 有料老人ホームは、2000万円以上の金を取って終身介護を約束するが、実際は5年で追い出す。大金を得て、ボロ儲け。これは詐欺だ。 ──
 
 有料老人ホームは、2000万円以上の金を取って終身介護を約束する。例はいくらでも見つかる。
  → 「老人ホーム 終身」 - Google 検索
 具体的な例は、これだ。
  → 神奈川の例

 ところが、終身を約束しても、実際には5年で追い出すことが多いそうだ。
 ホーム経営の裏側を、あるファンドのマネジャーが明かしてくれた。
 入居の際に家賃を一括して預かる「一時金」を、施設側は入居から一般的には5年間、毎年分割して取り崩し(償却)、「家賃収入」として懐に入れる。6年目からはそれがなくなるので、償却期間を過ぎても入居が続く老人からは、介護費などしか徴収できない――。「長生きすればするほど施設側は収益が出にくくなる。なるべく『償却切れ老人』を減らし、家賃収入が計算できる新しい入居者に入れ替えて収益力を上げ、早めに売ろうとする」
 いくつかの介護施設で働いてきたある施設長は「風評がたつと致命的だからおおっぴらにはやらないが、けがや病気をきっかけに、『償却切れ老人』を、『医療が必要になったのでうちではもうお世話できる力がない』などと体よく追い出す施設が増えている」という。
( → 朝日新聞 2013-09-29

 たとえば 2000万円を徴収して、「終身介護」を約束する。最初の5年間は2000万円を取り崩せるので、せっせと取り崩して、ホームの懐に入れる。5年たったら、2000万円がなくなってしまう。しかし「終身介護」という契約だけは残る。これでは儲からない。そこで「医療が必要になったのでうちではもうお世話できる力がない」などと言って、体よく追い出す。
 その後は、また「終身介護」を謳って、新たなカモを招く。そしてそのカモも、5年後には体よく追い出す。こうして5年ごとに 2000万円を懐に入れる。「終身介護」を約束して、5年間しか介護しないのだから、儲かって当然だ。

 あまりにも儲かるので、参入者が続々出ているという。老人ホームが市場に出れば、「買いたい」という企業がわんさと殺到する。外資も参入している。
 ウチヤマの山本武博・経営企画室長は「売れたのは開設後1〜2年の施設。どこもまだ半分は空室があるのに、早く成約したいという感じで、まるで青田買いのようだ」という。5施設を計約 45億円で売り、ウチヤマには十数億円の売却益がころがりこんだ。
 パークウェイ(シンガポール企業)は、リートでは日本国内で最大の介護施設のオーナーになっている。これまで総額800億円で計44件の介護施設や病院を買収してきたが、このうち日本国内の施設が40件を占める。
( → 朝日新聞 2013-09-29

 ボロ儲けの市場を狙って、ハイエナみたいにガメツイ連中がこれほどにもやってくる。まるでバブル期の不動産取引だ。

 それでも、きちんと介護を実行してくれればいいのだが、実際には徹底して手抜きをしているようだ。しかも、発覚しないように、記録(帳簿)をゴマ化す。
 介護事業会社「ワタミの介護」(東京)が経営する神奈川県内の老人ホームで昨春、前夜の入居者の状況を引き継ぐ会議でのことだった。夜勤責任者のケアワーカーが、ある男性入居者について「ベッドから落ちたが、けがはないので様子見した」と報告書を読み上げると、ホーム長がすぐさま書き直しを命じた。
 この施設では夕方6時以降、看護師が常駐せず、翌朝8時までケアワーカー3人で約60人の入居者をみる。夜間に転落などの「事故」が起きた時は、自宅待機の看護師に連絡し、処置を仰ぐことになっていた。
 ルール違反の発覚をおそれて、ホーム長は「様子見した」という報告書を、「自宅待機の看護師に報告した」と書き直させた。
 「手抜き対応を隠すための明らかな改ざん。でもこんなことは日常茶飯事だった。人手が最小限におさえられているから、やるべきことも十分にできない状態だった」と看護師はいう。
( → 同上:朝日新聞 2013-09-29
 ──

 以上をまとめて言えば、こうだ。
 「老人ホームの事業は、参入者が殺到している。その理由は、ボロ儲けできるから。なぜボロ儲けできるかというと、次の二点。
  ・ 終身介護を約束するが、5年で追い出す。
  ・ ていねいな介護を約束するが、手抜き。
 そして、こういうゴマ化しが発覚しないように、帳簿の改ざんまでしている」


 一言でいえば、「詐欺」である。これが有料老人ホームという事業の実態だ。

 ──

 ここから結論を下せば、次の二点だ。
 (1) このような詐欺をはっきりと「詐欺」と指摘して、指弾せよ。(朝日の報道は甘すぎる。ワタミの犯罪などを放置している。)
 (2) このような詐欺がのさばらないように、法制度を改正するべきだ。具体的には、詐欺が不可避である「先払いの終身介護」という制度を廃止して、毎月払うタイプだけを認めるべきだ。


 それにしても、世の中には、悪いやつがいるもんですねえ。ブラックな企業の名前には驚かなかったが。



 [ 付記1 ]
 上記の (1) (2) では物足りないかもしれない。「終身介護の保証がほしい」という人もいるかもしれない。そういう人のためには、「居住権」の優先設定を保証する法制度を整備すればいいだろう。(賃貸制度の居住権みたいなもの。むやみに追い出されない保証。)
 ただ、あまりにも強力すぎると、参入企業がなくなるから、公正な第三者としての審判機関も用意すると良さそうだ。裁判所がその役割をになってもいいが。
 
 [ 付記2 ]
 どうしても「先払いの終身介護」という制度を残すのであれば、資金の運営と、介護業務とを、別の会社に分離するべきだ。途中で追い出された場合には、残り期間を別の老人ホームで過ごせるようにするべきだ。
( ※ つまり、「5年で資金償却」という制度を廃止する。考えてみると、ここに制度の根本的な欠陥があるな。)

 [ 付記3 ]
 朝日の記者の反応。
 ブログで取り上げていただき、ありがとうございます。老人ホームの入居が賃借権にもとづくものではなく「利用権」に基づくものであることがポイントになりますね。ゴルフの会員権のようなもののようです。
( →  松浦新 (@newsmatsuura) Sep 29, 2013

 それは、「ポイント」じゃなくて、ただの「現状」にすぎないと思うんですけど。
 ポイントは、「詐欺」であり、対策は「詐欺の取り締まり」です。一方、それに付随する補完制度が「利用権の保証」ですが、これはオマケみたいなもの。話のついでにすぎない。
 ポイントは「詐欺」という犯罪なので、そこを指摘することが大事です。もともと「5年」と謳っているのであれば問題ないが、「終身」と謳って「5年」なら、明らかに詐欺でしょう。法的には合法なのかもしれないが、そうだとしたら法の欠陥のせいで、実質「詐欺」が見逃されていることになる。

 【 追記 】
 あとで気づいたが、現状の「終身」という制度には、決定的な難点がある。次のことだ。
 「入居者が5年以下で死亡すると、ホーム側の負担がなくなるので、残額(たとえば 2000万円のうちの 1000万円)を、サービス提供なしに取得できる。このことで、入居者を死亡させる動機が働く」
 つまり、入居者を早死にさせると、ホーム側はガッポガッポと儲かるわけだ。それはつまり、入居者の健康を悪化させる措置を取ればいい、ということだ。たとえば冬季にはインフルエンザを蔓延させたりして、半数ぐらいを死なせてしまえば、ボロ儲けである。
 結局、現状は、
 「人を死なせて大儲け」
 というのを推奨する制度だ。まさしく悪魔の制度である。これを日本政府が容認している。狂気の沙汰ですね。



 【 関連サイト 】

 → ワタミ「老人ホーム契約詐欺」を地主が告発(1)仮契約書には図面もなく
posted by 管理人 at 22:18 | Comment(5) | 一般(雑学)2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2013年09月30日 07:07
詐欺が跋扈している現状で、法制度整備を待てない場合、個人はどのように詐欺を回避すればよいのでしょうか。
Posted by pf at 2013年09月30日 07:56
> 個人はどのように詐欺を回避すればよいのでしょうか。

 Openブログを読んで情強になるといい。特に本項。
Posted by 管理人 at 2013年09月30日 11:24
入局後の平均余命が正規分布するなら、費用はそこから算出出来そうで、平均値を上回るかどうかの賭事になりますね。生命保険の原理だった様な。
保険会社と事業会社が別であれば病院のように事業会社は顧客で部屋か埋まるか否かだけを考えればよく、サービスが悪いとか早く亡くなるという噂が立たない様にすると思われ、保険会社は平均超過に伴う損失は運用でカバーするだろうから、平均未満を作ろうとする動機付けもなくなるような…

リタイアで放出される郊外の不動産を換金して終身ホームへの資金にする例が増えそうですが、リバースモーゲージも含めて制度をしっかりと立てないと悪魔に食い尽くされそうです。
Posted by 京都の人 at 2013年09月30日 19:05
最後のあたりに <STRONG>[ 付記2 ]</STRONG> を加筆しました。(以後は番号をずらしました。)

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Posted by 管理人 at 2013年10月02日 20:41
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