まずはニュースから。
《 災害相互通報制度 体制整備を 》
土砂災害の防止に向けて、住民と行政が連絡を取り合う双方向の通報システムについて、15の府県の一部で、住民から通報できない状態になっていたことが会計検査院の検査で分かりました。
「土砂災害情報相互通報システム」は、大雨などの際、電話やインターネットなどを使って、
▽行政が住民に雨量や災害の情報を連絡する一方、
▽住民が行政に災害の前兆となる現象などを通報する
という双方向のシステムで、平成12年度から全国で整備が進められています。
会計検査院がこの通報システムについて調べたところ、15の府県の一部で、住民から通報できない状態になっていたことが分かりました。
具体的には、住民が通報に使う通信機器などが整備されていない、通報の窓口となる連絡先が公表されていないケースなどがあったということです。
このうち、那覇市では、住民が市に通報できる無線機器を整備しましたが、市内23か所のうち20か所で、電話を収納するボックスの鍵を市が管理しているため、緊急時に直ちに使えない状態になっていたということです。
通報システムの整備には、これまでに国からおよそ30億円の補助金が交付されていて、会計検査院は、国土交通省に対して、住民が通報できる体制を整備するよう求めることにしています。
( → NHK 2013-09-28 )
この記事だけを見ると、難点は次のことだ。
・ 住民が通報に使う通信機器などが整備されていない
・ 通報の窓口となる連絡先が公表されていない
・ 鍵を市が管理しているため、緊急時に直ちに使えない
これの理由で、「住民から通報できない状態になっていた」わけだ。
だが、「住民から通報できない状態になっていた」ことには、わけがある。たとえ「住民から通報できる状態になっていた」としても、もともと住民がそれを使うはずがないのだ。なぜなら、新しい専用システムなんて、誰も使い方がわからないからだ。
上記では「直ちには使えない」というふうに書いているが、実は、「最初から誰も使えない」のである。特に、地方のじいちゃんばあちゃんならば、なおさらだ。
──
要するに、「専用のITシステムを構築する」という発想が、根本的に狂っている。どうせ使うならば、普段から日常的に使っているようなシステムを、緊急時にも使う方がいい。
代表的なのは、電話だ。(メールでもいい。)
「地元民と担当者(たとえば健康相談員)が、日常的に電話 or メールで連絡を取っている。そういう連絡線をあらかじめ用意しておく。その連絡線を使って、いざという事態にも緊急情報を流す」
これは、「土砂」だけでなく、地震や竜巻や台風や豪雨など、さまざまな緊急情報に共用して使えるようなものだ。そしてまた、それは、専用のシステムではなくて、電話やメールというような汎用のシステムだ。
こういう「日常的」かつ「汎用」のものであることが、緊急時にも使えるシステムの前提条件だ。
ところが、政府は、「土砂専用」というITシステムを作ってしまった。それを「双方向」にすることで、「素晴らしいITシステム」と自惚れた。
しかし、「土砂専用」というふうな専用システムにしてしまった時点で、もはや使い物にはならなくなったのだ。
──
結論。
政府はやたらとITシステムを導入したがる。それによって先進的な行政を実現したつもりになっている。
しかしそこにはユーザビリティという発想が欠けている。ところが、ユーザビリティこそは、ITにおいて一番大切なものなのだ。iPhone や iPad がどうしてあれほど人気を得たかというと、ユーザビリティが優れていたからなのだ。また、日本のスマホがどうして失敗したかといえば、ユーザビリティが著しく劣っていたからなのだ。
「システムさえ導入すれば、あとのユーザビリティなどはどうでもいい」
というような発想を取る限り、ITのことを何もわかっていない、と言われても仕方ない。
ITとは、ただのハードの技術ではないのだ。ITにおいては、ハードよりもソフトの方が、圧倒的に重要なのだ。それにもかかわらず、ハードを準備して事足れり、と考える行政組織が多すぎる。そのせいで、多大な浪費が起こるのである。
( ※ 本四架橋ほどではないけどね。それにしてもあれは壮大なハードの無駄だった。呆れるばかり。)
[ 付記 ]
本項では代表的な例としてこの失敗例を紹介したが、同様の失敗例は枚挙に暇がない。「失敗した先進的IT事業」というのは、毎年のように、いくつも報道される。呆れたものだ。
たとえば、「IT講習会に補助金を毎月 10万円を出す制度をつくっ多。するとどこかの悪質な NPO が、名目上の参加者を集めて、何も講習しないまま、巨額の補助金だけをだまし取った」という事例もあった。巨額詐欺事件。先日報道されたばかり。
そう言えば、「地デジテレビの補助金」というのもあったな。あれで莫大な補助金を出したが、結局、需要を一時期に集めただけだった。メーカーは、一時期は大繁盛したが、その後は需要がなくなって、大幅な赤字を出してしまった。結局、この補助金は、メーカーを弱体化させる効果しかなかった。最悪の補助金とも言える。(地デジの時期を少し遅らせるだけで、これほどの大被害は起こらなかっただろう。そうすれば、パナソニックやシャープやソニーの大赤字も、いくらかは緩和されていたはずだ。)
を開発・整備するという発想はありませんね。
IT にせよインフラにせよ、利権が発生するから積極
的になるわけです。決して、国民のために仕事をし
ているわけではありません。
要は、いかにして税金をかすめ取ろうか、というこ
としか、政・官・メーカーは考えていない。
1)縦社会の文化: 建前上、上司は部下よりも知識・判断力があることになっている。
2)議論できない文化: 「それはxxの理由で、駄目でしょう。それより、○○の方が効果的です」と、きちんと積み上げた議論ができない。
3)権限におぼれる文化: 中国・韓国はもっと酷いが、人は、命令や指示することに快感を覚える(いじめはその反映)。平凡な能力しかない責任者が、命令や指示を乱発、反論を嫌うので、大きなプロジェクトや会社経営は、おかしくなる。
4)利害関係の網をはる文化: 既成の事柄に利益があると、網を張り巡らすので、「失敗でした。チャラにして、やり直します」とできない。バグが蓄積された社会になっていく。
もちろん例外もあり、風通しの良い自由闊達な組織のSONYは世界的な企業になった。ピラミッド型でなく文鎮型組織で「ワイガヤ」と自由に議論していたホンダはF1を制覇しビジネスジェットを作った。
VisiCalcという表計算ソフトを開発した有能なダン・ブリックリンは、毎日、試作品を仕事に使ってもらって、使用感を反映させて改良を重ねていった。
平凡な上司が命令・指示して作らせたソフトを誰も見向きもしなくなるのは自然法則です。
知識も判断力も普通の人が、命令と指示する立場になって、自分の思いつきを部下に仕様書に
まとめさせ、ソフト会社へ作らせると、自然法則に従って、確実に駄目ソフトが出来上がります。
コンセプトが粗悪なので、出来上がった長大なコードは、もはや手直し不可能な単なるゴミです。
2000万円払ったと言う駄作ソフトのコードを読んだことがあります。
定性的に言えば、コンセプトにユーザーへの愛がないですね。
会計システム更新失敗、4千万円ムダに 国際交流基金
独立行政法人・国際交流基金(本部・東京)が、会計処理システムの開発を業者に発注したが
失敗に終わり、全く利用されていなかったことが会計検査院の調査でわかった。
http://www.asahi.com/national/update/1003/TKY201310030115.html?ref=com_top6