福島原発事故の原因は津波だ、と見なされている。詳しくは、「津波のせいで電源が水没してしまったので、冷却ができなくなり、原子炉が(熱)暴走した」というふうに。
津波が発電所を襲い、地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機が海水に浸かって故障した。電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリーなど多数の設備が損傷し、または流出で失ったため、全交流電源喪失状態に陥った。このためポンプを稼働できなくなり、原子炉内部や、核燃料プールへの送水が不可能となり冷却することができなくなり、核燃料の溶融が発生した。
( → Wikipedia )
一方、次の見解もある。
「津波が原発を襲う前に、原発はすでに破壊されていた」と。
原発は津波にやられた、津波対策さえすればもう大丈夫、という見方がある。この3人はそれに疑いを持っている。津波の前、地震で原子炉は壊れていたのではないか、と。
東電は原子炉が地震に耐えたと主張している。その論拠は十分なのだろうか。地震に耐えたと証明する責任は、そう主張する東電側にある。東電の論拠が完璧でなければ、地震で壊れたことを否定はできない。
格納容器の底の水が増えたとしたら、水はどこからきたのか。
圧力容器から出る数十本の小配管の一つが切れたと木村は推理した。圧力容器内では核燃料が燃え、高温・高圧の中を冷却水が循環する。地震で小配管が切れ、そこから冷却水が抜け始めていたのでは……。
「たとえばジェットポンプの計装配管です。これは細くて長くて。東電時代、地震のときに大丈夫かってみんなで話していたんですよ」
計装配管の直径は1センチほど。細い管であっても、破断すれば冷却水が噴出する。圧力容器は格納容器の中に納まっているから、出た水は格納容器の底にたまる。
( → 朝日新聞「プロメテウスの罠」 2013-09-11 [有料])
小配管(細管)の破断で水が抜けたので、炉心冷却ができなくなった、というわけだ。「電源喪失」の前に「水漏れ」が起こっていた、というわけだ。
これは十分に考えられる。実は、その可能性があるので、次の地震への対策では「津波対策だけじゃ駄目だぞ」というふうに、私は何度も指摘してきた。
→ サイト内検索
特に、どのくらいの震度で危険になるかということは、次のように記述した。
そこで私が客観的なデータを示す。
→ Wikipedia
つまり、浜岡原発の現在の耐震性は 1000ガルだ。
一方、現実の地震ではどうか?
→ ガルと震度の対応表1
→ ガルと震度の対応表2
これらによれば、1000ガルは、震度6か7だ。浜岡で想定されるマグニチュード8の直下型地震には対応できない。
さらに、次の例もある。
→ 4000ガルを越えた岩手宮城内陸地震
記事によれば、震度7でさえ 2000ガルを越えた地点がたくさんあったそうだ。
( → 浜岡原発は停止へ(菅直人) )
ここで、先の震災の ガル を調べると、次のデータがある。
→ 東日本大震災 2933ガル 栗原
つまり、東日本大震災では、最大値ではほぼ 3000ガルという値が計測されたわけだ。(場所は宮城県栗原市)
一方、そもそも設計で見込まれた耐震性能は 1200ガルだった。
→ 福島原発 1200ガル
両方を比較して、
約3000ガル > 1200ガル
このように、現実の揺れは、設計で見込まれた揺れを、はるかに上回った。当然、どこかが破損していて当然だ。
一方、池田信夫は次のように書く。
《 浜岡原発の「停止要請」は非科学的だ 》
浜岡が危険だといわれたのは、東海地震の震源の真上にあって、原子炉が地震で破壊される(あるいは制御できなくなって暴走する)のではないかということだったが、これについては東海地震で想定されているよりはるかに大きな今回の地震で、福島第一の原子炉は無事に止まった。浜岡も国の安全審査では、東海地震に耐えられる(これは首相も問題にしていない)。
( → 池田信夫ブログ )
彼は「無事に止まった」と書くが、そうではない。たしかに燃料棒を抜くという形でブレーキをかけることには成功した。しかし同時に、小配管は破壊されていたのである。つまり、「無事に止まった」のではなく、「壊れながら止まった」のである。「止まったから無事だった」ということは成立しない。
たとえば、次の写真がある。
→ スバル インプレッサ トンネル - Google 検索
笹子トンネルの事故で、天井が崩落して、自動車が押しつぶれそうになったが、それでもトンネル脱出に成功した。乗員は無事だった。
とはいえ、「うまく脱出できたから、すべて無事だった」ということは成立しない。乗員は無事だったが、自動車はなかばぺしゃんこになりかけていたのである。スバルのインプレッサだからつぶれずに済んだが、他の自動車に乗っていた人たちはつぶされてしまったのだ。
原発も同様だろう。たしかに燃料棒を抜いて、原子炉を止めることには成功した。しかし同時に小配管は破損されてしまったのである。(推定)……ここでは、「止まったから無事だった」ということは成立しないのだ。
──
以上は、福島原発事故への推定だ。
一方、現在の原発対策は、いずれも津波対策ばかりであり、小配管(細管)の破断への配慮が抜けている。つまり、次の地震への対策は、まったくできていない。……この件は、他の項目で何度も述べた通りだ。
→ サイト内検索
(上述のリンクを再掲する。)
※ 特にやばいのは浜岡だ。
→ サイト内検索(細管 浜岡)
安倍首相は「福島の汚染水は閉じ込められています」なんて言っているが、いざ東海沖地震が起こったら、浜岡の細管が破断して、東京に大量の放射性物質が襲いかかるかもしれないのだ。そして、それは、 2020年のオリンピックのさなかかもしれない。 (^^);
福島の放射線についてギャーギャー騒ぐ人を「放射脳だ」と批判する人は多い。それはそれでいい。しかしながら、やがて来る東海沖地震では、福島ではなく東京がやられてしまうかもしれないのだ。それについて楽観しすぎるべきではあるまい。
特に、中電と来たら、「津波対策をきちんとやっていますから、浜岡を再稼働させます」なんて言っている。そこには「細管破断」という発想はまったく欠けている。そのせいで 2020年には、東京に放射性物質が襲いかかるかもしれないのだ。

「浜岡がやられたようだな」
「ククク……奴は関東近辺の原発のなかでも最弱……」
「これで東京も放射性物質で汚れるよ」
キョウアーク「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」
レツアーク「人間ごときに負けるとは魔族の面汚しよ…」
↑
元ネタがこんななのにまーたそういう皮肉と受け取り辛い改変を(´・ω・`)
東京に住んでそうなのに東京は南堂さんの運命共同体ではないので?
いざとなったら、さっさと逃げ出します。東京と心中するつもりはさらさらない。
朝日新聞の「プロメテウスの罠」から、民間技術者の証言。
→ http://digital.asahi.com/articles/TKY201309140577.html
以下、引用。
──
まず出すべきだと考えるのが過渡現象記録装置のデータだ。会見で木村は何度もその名を出した。
プラントの挙動を把握するにはこの装置が記録した原子炉の出力、圧力、水位、温度、炉心流量・再循環系データ、給水系データ、主蒸気系データ、格納容器圧力を同一の時間軸状に並べる必要がある――。
ところが原発事故のあと、そのデータが断片的にしか出ない。
ことしの5月10日になって東電は唐突に過渡現象記録装置の1分刻みデータを公表した。
「新しいデータがありました、1分周期のデータが見つかりました、と突然に公開しました。データは最初からあるんです。過渡現象記録装置のデータは一つのハードディスクに入ってるんですから」
しかし出たのは一部だけ。
「1分周期だろうが、100分の1秒周期であろうが、すべてのデータはある。データをさらけ出して並べるのが正しい事故評価です」
──
つまり、東電はデータを出し惜しみしている(隠している)わけだ。なぜ? 「福島原発は津波が来る前に破壊されていた」という真実を隠すためだ。では、なぜ隠すのか?
津波が原因ならば、津波対策をするだけで他の原発を動かせる。しかし地震の揺れが原因ならば、「震度6〜7で原発は破壊されます」となるので、国内のすべての原発は動かせなくなる。それでは困るからだ。だから真実を隠そうとする。
福島原発が「津波に弱い」と判明したときには、「津波に弱い」という真実を隠そうとした。一方、日本中の原発が「地震の揺れに弱い」と判明したときには、「地震の揺れに弱い」という真実を隠そうとする。── これが東電の体質だ。何も反省していない。
運転手が助かったのは、天井版の崩落が始まったタイミングと車の位置の関係がまずあって、次に運転手が崩落だと認識ができて、それから逃げるという判断ができたことが生存につながったと言えます。
天井版が直撃していたら、インプレッサでも潰されて運転手は助からなかったでしょうね(天井版の重みに耐えられるだけの頑丈さの車が存在するのでしょうか)
原発の丈夫さという観点で自分が疑問に思うのは、東日本大震災の前に新潟で大きな地震が二度ありましたが、その時の揺れってどの程度だったのでしょうか。東日本大震災で言うなら、福島第二と女川の揺れって、どの程度だったのでしょうか。
それらの原発と福島第一との違いに現在の事態を引き起こした原因があると思っています。
そりゃそうでしょ。
ただ、インプレッサは、半分つぶれていますよ。写真を見ればわかるとおり。
それほどの重みなら、軽自動車ならぺしゃんこでしょう。インプレッサと軽自動車の車体剛性はものすごく違います。
> 福島第二と女川の揺れって、どの程度だったのでしょうか。
> それらの原発と福島第一との違いに現在の事態を引き起こした原因があると思っています。
違いはもちろん津波などによる電源停止の有無です。電源停止がなければ、炉心冷却はうまく行きます。
ただ、ご指摘はいいポイントを突いている。ご指摘に従えば、福島第二と女川では細管破断が起きていた可能性が十分にある。現状ではストップしたままだが、福島第二と女川で細管破断の有無を検証すると良さそうだ。
これは大事だ!