2013年09月05日

◆ イプシロンの泥縄ふう対策

 イプシロン・ロケットの失敗を受けて、JAXA が対策を発表した。しかしそれはあまりにも泥縄ふうだ。 ──
 
 イプシロン・ロケットの失敗を受けて、JAXA が対策を発表した。
 本事象への対策として、搭載計算機と地上装置の時間のずれを考慮した監視時間に変更する方向で検討を行う。
 併せて、今回の事象を踏まえ、次回の打上げに向けて万全を期すために、信頼性統括を長とする独立点検チームを結成し、打上げ準備状況の徹底的な再点検を行っている。
( → イプシロンロケット試験機打上げ中止の原因究明状況について (pdf)
 つまり、「穴ができたから、穴をふさぎます」というわけ。これはあまりにも泥縄ふうだ。
 では、正しい対策は? こうだ。
 「なぜ穴が見逃されたかという体制の不備を自覚して、体制そのものを抜本的に変更する」


 このことは、前出項目の読者コメントからもわかる。
イプシロンも同じで本来正しく設計すべきゼネラルフローの段階でミスを生じている。
意外にセンサー系を使う者は時間感覚に疎い。私は2度ほど大手のセンサーメーカーにクレームを言ったことがある。
「電気の世界に 瞬間 はない。パルスの立ち上がりなのか立ち下がりなのか、どれを基準に信号を得ているのか
このカタログからは読み取れないではないか、タイムチャートがなければ設計もできない 採用不可」
( → イプシロンとenchantMOON
 こういうふうに事前に指摘できるような人材を配置することが大切だ。それができなかったから、失敗は生じた。そして、失敗を避けるには、こういう人材を配置する必要がある。
 既存の人材がいくら努力しても駄目だ。既存の人材は、サボったりミスしたりしたのではなくて、能力が根本的に欠けていたことが理由だからだ。能力のない人材に向かって、「ミスがないように再点検をしろ」と言ったって、それは魚に向かって「空を飛べ」と言うようなもので、無理筋である。
 繰り返す。正しい対策は、能力のある人材を配置することだ。つまり、体制を一新することだ。それなしに、既存の人材のまま、「再点検を念入りにやれ」と言ったって、いつかまた同じような不具合が発生するかもしれない。
 失敗したとき、「失敗した箇所だけ直せばいい」と考えるか、「なぜ失敗したか」を見つけた上で「失敗した原因を改める」と考えるか。物事の表面だけを見るか、物事の全体を見るか。……そこに違いが出る。残念ながら、JAXA はそれに正しく対処する能力が欠けているようだ。
posted by 管理人 at 19:44| Comment(5) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>正しい対策は、能力のある人材を配置することだ。
ぶっちゃけ、「エンジニアがいない」ということですね。
前タイプのロケットの時は、機械溶接で消しきれなかった微細な溶接キズを、
高技能の溶接技術者に復帰してもらい、手作業で見事キズのない溶接を実現
して打ち上げにこぎつけた、という話を聞いたことがありますが、まさかコ
ストダウンでその手の高技能者(職能者)をリストラしてしまったなんて
本末転倒なことが行われていたりしないでしょうね(東電みたいに)?
Posted by 行き違い at 2013年09月06日 08:18
前回のコメが引用され謝謝。昨今の傾向として木を見て森が見えない技術屋が多くなっている。
技術が細分化した結果、隣の技術が分からなくなりつつある。そして専門バカも増えている。
専門家だから彼の言説が正しいと思うのは危険だ。専門家ゆえ自身が気づかない呪縛に陥ることが散見される。

私の経験だが、生ゴミ処理機の制御ソフトの再構築を依頼されたとき、前任の「自称プロ」のトリッキーな回路にあきれたことがあった。
無駄を廃し、スッキリとしたコード(ソフトの意)に変え、人間工学、認知心理を盛り込み、シンプル化と使いやすさで感謝されたことがある。

専門家ゆえに思考の迷宮に入っていることに気づいてない。複雑化が累乗的にシステムの脆弱を招くことに無頓着になる。

打ち上げ延期の理由の0.07秒の同期ずれ云々は枝葉であり、本質の問題は他にあるのは前に書いたが、当事者もそれは知っている。
それを言おうものなら、そんな余裕のない設計を放置したのかと別な責任の発生を恐れ、差し障りのない末端の事象を原因に発表した。

フライバイワイヤという遠隔電気制御技術がある。航空機や自動車にも使われ結構枯れた技術でもある。(メカニカルなリンクを電気に置き換えた物)
結線不良、断線、素子の不良、回路異常を別な系から監視し、フェイルセーフを実現させている。彼らからみたら打ち上げ直前になって
同期ズレがどうこうのは枝葉末節と思っているはずだ。もっと上位のレベルで解決できていなければならない問題だ。

この遠因は「仕様書絶対主義」にある。個々の技術を全うすれば他とのリンクはあまり気にしない。セクショナリズムと言い換えてもいい。
個別の労働負荷を検知し真のボトルネックを知り、鳥瞰できるプロジェクトリーダーが減っている。個々の最適化は全体の最適化に非ず。
Posted by 検証家 at 2013年09月06日 23:37
「ニュートリノは光より速い」とはしゃいだ物理学者たちがいた。結果は測定器の接続が緩かった。
 先だって放映された「鳥人間コンテスト」を見ていて気になったのは、発想が1次元的なところ。 
「主翼を大きくすれば有利」--> 主翼が撓んで海面をこすり、アウト。
「推力を挙げると有利」--> 強化されたペットボトルロケット6基装着。噴射が始まると、機体が推力に
耐えられず、ぐしゃっと壊れて、アウト。
「機体は大きく長いと有利」--> 発射台の端に、尾翼部が触れてバランスを崩しアウト。3連覇ならず。

 ペーパーテストだけ上手な、豊穣なバックグラウンドのない人間ばかりをエンジニアにすると、自然等
から豊かな知恵を学んでないので、危なっかしいものを作るのは当然の成り行き。日本は衰亡する。
 昔の中国は、科挙で優秀人間を採用するシステムをやっていたら、国がおかしくなったことがある。

 ボーズ・スピーカー理論と製品化で有名なアマー・G・ボーズ博士は、子供の頃、ラジオ製作・修理で
家計を支えた。少年時代からバイオリンを演奏した(バックグラウンド)。
 MITで通信理論の研究中、BGM用にオーディオを購入した。カタログ性能では最も原音に忠実のはず。
ところが「こんな音ではない」と、スペック性能と実際人間が聴いた時の感じ方との関連を解明する方向
へ没頭し始めた。
 指導教官は「ボーズ君が研究せずに変なことにのめり込んでいます」と心配になり、工学部長に相談。
工学部長が行ってみると、部屋はいろいろな機材で足の踏み場もない。「何をやっているのかね?」。
ボーズが説明すると「面白い! それをMITの主要研究テーマにしよう」と即決(太っ腹)。以後、会社を
大学内で設立するところまで大学側はバックアップしてくれた。
 多様で深いバックグラウンドを持つ人間は、勝手に珠玉のテーマを見つけて走り出す。
Posted by 思いやり at 2013年09月10日 23:08
イプシロンの打ち上げが成功した。

 関連記事。:
 「今回、イプシロンの再点検に関わった特別点検チームは、8月30日に設置。JAXA内部から、ロケット、電気系、ソフトウェア、地上系などの経験者25名を集めて、独自の視点で懸念事項を洗い出し、打上管制隊とともに、対策を検討してきた。武内チーム長は「我々が出した提言はすべて対応してもらった。やるべきことはやった」と活動を総括する。」
 → http://news.nicovideo.jp/watch/nw763867

 他に、詳細発表もある。
 → http://ima.hatenablog.jp/entry/2013/09/11/140000
Posted by 管理人 at 2013年09月14日 17:00
>鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所の発射場に据え付けられたイプシロンは、14日午後2時、1段目の燃料に点火され、順調に上昇を続け、打ち上げから1時間余りあとの午後3時すぎ、高度1151キロ付近で、搭載した衛星を切り離し、打ち上げは成功。 イプシロンは、日本の主力ロケットH2Aの補助ロケットを1段目にそのまま使用したり、点検作業の一部をコンピューターに任せて自動化することで、打ち上げコストはH2Aのおよそ3分の1の38億円程度に抑えられた。

 まずは、成功おめでとうございます。
 精神と技術のルーツは、独創人間「糸川英夫」氏とのこと。日本の固有技術に立脚して発展させたところがいいですね。
JAXA・森田泰弘「イプシロンの名前は……実は、飲みながら決めました(笑)」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130827-00000420-playboyz-sci

 「モバイル管制」など一連の革新に一番反対したのはJAXA内部で、特に打ち上げ作業の人数を減らすことに対しては、「オレたちの仕事はどうするんだ?」と言われたらしい。
 そこを押し切ったのは、JAXAがSONYと違うところ。結構、上層部に野生児的なスピリットがあるところが頼もしい。SONYは、内部摩擦でウォークマンの革新もできない体質になり、アップルのiPodなどに席巻され衰退したが、デジタルカメラ部門は、別組織的風土があり活気がある。
Posted by 思いやり at 2013年09月15日 14:57
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