大地震への対策として、「高台への移転」というものがある。津波被害を避けるためだ。防潮堤なんかをつくっても、あっさり破壊されるだけだが、高台への移転ならば、最も有効だと見なされる。
実際、東北では、大震災のあとで、「高台への移転」がどんどん進んでいる。「農地転用」もどんどん許可されている。
津波で沿岸部が壊滅的被害を受けた宮城県南三陸町では2011年度の農地転用許可が前年度と比べ約5倍に達している。
（ → 全国農業新聞 ）
東日本大震災で津波被害を受けた沿岸12市町村で、農地を宅地などにする農地転用の許可件数が、3月の震災発生後、6月までに150件に上ることが分かった。前年同期59件（一部記録流失）から約2.5倍の大幅増。
（ → 岩手日報 2011.7.31 ）
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城、岩手両県の沿岸地域で、農地転用の申請が増え、許可件数が昨年同期の約2.5倍に急増していることがわかった。このように「高台への移転」が進んでいる。これ自体は好ましいことだが、これはいかにも、「馬が逃げたあとで扉を閉める」という諺がぴったりだ。津波対策というものは、事後にやっても意味がなく、事前にやるのでなくては。今回の「高台への移転」は、100年後か 1000年後の津波には役立つかもしれないが、私たちが生きている年代では何の効果もない。
宮城県によると、沿岸部の15市町では、今年4月〜10月にかけて、農地から宅地への転用許可が昨年同期の約2.5倍に当たる計518件あった。中でも気仙沼市では257件と6.5倍に急増。岩手県沿岸部の12市町村でも、すでに昨年同期の2倍以上となる計358件で許可された。
（ → 2011年11月6日 読売新聞 ）
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問題は、東北ではなくて、南海トラフ地震への対策だ。ここでこそ、「高台への移転」が必要となる。では、ここでは、「高台への移転」は実現しているか？ していない。なぜか？ 農地転用が不許可になるからだ。
つまり、地元が「高台への移転」を推進しようとしても、国が（農水省が）それを阻害しているのである。
《 企業移転に「農地」の壁 南海トラフ地震の対応 》というふうに、問題があるわけだ。
南海トラフ沿いの巨大地震に備え、高台に移ろうとする企業が増えている。全国で最大の被害が想定された静岡県では、市や県がまちづくりを兼ねた移転計画などを打ち出したが、思うように進まない。「農地転用」が壁になっているからだ。
海から約500メートルと近い浜松市の紙器製造会社は、移転先を探し始めている。ただ、高台に移るには約1万坪以上の土地が必要で、同社の担当者は「移転しようにも、そもそも土地がない」と嘆く。
この会社がある浜松市は、企業の高台移転を後押ししようと真っ先に動いた。内陸部の農地を工業用地に転用し、沿岸部の工場の移転先にする計画を立てた。内閣府も2011年末、「ものづくり特区」に指定し、支援を約束した。
だが、農地だったところを農業以外の目的で使えるようにする「農地転用」の壁が立ちはだかった。農林水産省が「弾力的な運用に努力するが、現時点で規制緩和は難しい」と農地転用を渋っているからだ。
の担当者は「震災前とその後で、状況は変わった。何とか農水省の理解を得たい」と話し、霞が関に出向いて農水省の担当者と話し合いを続けている。だが、一向にらちがあかず、特区に指定されて1年以上たつのに移転計画はほとんど進んでいない。
（ → 朝日新聞 2013-01-21 ）
人は痛い目にあって初めて、対策をしようとする。しかし、痛い目に遭ってからでは、手遅れなのだ。痛い目に遭う前に、対策をするべきなのだ。
しかしそれを、政府は理解できない。
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では、どうすればいいか？
私としては、次の名案を示す。
「農地転用の許可権を、農水省から剥奪して、県レベルや市レベルに移す」
つまり、権限委譲だ。これによって問題は抜本的に改善される。
東北地方ではそれができているのだから、静岡あたりでもそうするべきだろう。
もちろん、農水省はここで抵抗するだろうから、政治主導で対策をすることが必要だ。
安倍首相は、「集団的自衛権」なんていう戦争ごっこばかりで遊んでいないで、「南海トラフ地震」という最強の敵を相手に戦ってほしいものだ。本当の敵を間違えてはならない。
［ 付記 ］
本項は、ちょっと古い記事ばかりを引用していますが、状況は現在もあまり変わっていないようです。
→ Google 検索
見ればわかるように、古い情報しか見つからない。
【 関連項目 】
→ 被災地の問題
※ 被災地で高台への移転がなかなか進まない、という問題について論じている。
→ キャプチャ画像集 http://j.mp/17zXH8U http://j.mp/19d59YY
昨日からだが、ここしばらくは、震災だろう。
ネットで話題になっている。本日分は番組を見るとよさそう。