2013年09月01日

◆ 関東大震災の教訓と大阪市

 関東大震災の人的被害の大部分は、火災によるものだった。火災対策には人家の延焼を避けることが大切だが、大阪市が遅れている。 ──

 関東大震災の人的被害の大部分は、火災によるものだった。(以下の記事はいずれも一部抜粋です。)
 日本の地震災害で最多の犠牲者を出した1923年(大正12年)の関東大震災。90年後の今も未曽有の災害から学ぶべきことは多い。10万5千人余の犠牲者の9割近くの原因となった火災は、ちょうど日本海側にいた台風による強風で拡大し、逃げ場を奪った。
 大震災が起きたとき、台風が新潟県付近にいた。台風に吹き込む形で、関東地方には強い南風が吹いていた。今の大手町では秒速10メートルを超えた。さらに、深夜には20メートル以上の風が観測された。炎が起こす風が加わったとみられる。台風の移動とともに風向は変わり、延焼につながった。全体の犠牲者10万5385人のうち、火災が9万1781人を占めた。
 学ぶべき教訓も多い。
 当時の東京市での134件の火災のうち、初期に消し止められたのは57件。都心部の大地震では消防力を超える火災が起きる恐れがあり、延焼の危険が大きい木造住宅の密集地域の対策が急がれる。
 当時の東京市では134カ所から出火、市域の4割の34.7平方キロが焼け、16万6千棟余が焼失、約6万6千人が犠牲に。
 横浜市では289件の出火があり、市街地の宅地面積の8割、13平方キロが焼けた。2万5千棟が焼失、犠牲者は2万4千人余。
( → 朝日新聞 2013-09-01
 被服廠跡の体験談もある。
 隅田川の近くの陸軍被服廠跡の空き地には、約4万人の避難者が集まり、家財道具も持ち込まれた。そこに火災が起き、家財道具に引火。炎の竜巻とも呼ばれる火災旋風も起き、人々は逃げ場を失った。関東大震災の犠牲者の3分の1を超える約3万8千人、周辺も含めると約4万4千人が命を落とした。
( → 朝日新聞 2013-09-01

 (彼女が)両親に連れられ、祖母、幼い弟妹3人とともに家族7人で避難したのが、被服廠跡の空き地だった。約6万6千平方メートルの空き地は避難者でいっぱい。七輪や畳を持ち込む人もいた。
 午後4時ごろ。近くの交差点から竜巻のようなものが大きくなりながら迫ってきた。延焼火災による上昇気流がつくる「火災旋風」だった。次の瞬間、市川さんは巻かれて飛ばされた。
 火災旋風は、人も、馬も、自転車も巻き上げ、地面にたたきつけた。日本髪に火が燃え移った若い女性は、走り出すとそのまま倒れ込んだ。日差しが煙で遮られた暗がりを、炎が照らす。熱さでのどが渇いた。
 「目も開けられないし、火を消してあげる人もいない。水くれ、水くれという声ばかりがきこえました」
( → 朝日新聞 2013-09-01
 東日本大震災のあと、政府は「津波対策」ばかり気にしているが、実は、大切なのは、火災対策なのだ。
 その火災対策だが、どうなっているかというと、東京では「防火建築」が半義務化されており、単純な木造住宅は建築できない。最低でもモルタルによる防火構造が必要だ。防火地域ではさらに厳しい条件が課せられる。
  → 防火・準防火地域・新防火区域|品川区

 また、住宅が密集していて消防車が通れないような地域もあるが、これも対策が進んでいるので、(危険である)該当地域は大幅に縮小した。墨田区の例を示そう。
 墨田区はかつて、「木密(もくみつ)」(木造住宅密集地域)の代名詞のように言われてきたが、最低限の安全性が確保できていない地域は10年前の179ヘクタールから22ヘクタールに大きく減った。
 区は、狭い道路を拡幅して延焼危険を減らすと同時に、密集する木造の戸建てなどを耐火集合住宅に建て替えて、公園などの空間を増やす施策を進めた。コミュニティ住宅は区内に計17棟建てた。
 「切り札」は、2003年に改正され、全国初の規定が盛り込まれた都条例だった。火災の危険性が高い区域を指定すれば、非耐火建物の新築や増改築が禁止できる。墨田区は東京23区ではじめて区北部に適用。強い措置を取った。

 阪神大震災(95年)でも、消防の対応能力を上回る約300件の火災が起き、7千棟以上が全焼した。
 室崎益輝・神戸大名誉教授は、阪神大震災の被災地で不燃領域率と延焼の関係を現地調査した。燃えた建物の割合が5割以上に上ったのは、不燃領域率が40%以上では14地区中2地区だったのに対し、40%未満では60地区中24地区。9割以上が焼失した地区も七つあった。「阪神大震災でも不燃領域率40%が分かれ目だと実証された」
( → 朝日新聞 2013-08-31
 話の前段は、墨田区の例で、こちらは成功している。
 話の後段は、阪神大震災の例で、こちらは「不燃領域率40%が分かれ目だ」というデータが出ている。
 では、その状況が悪いのは、どこか? 大阪市だ、と判明している。
 国が「最低限の安全性」が確保できていないと判断した市街地は原則として、1ヘクタールに80戸以上が密集し、燃えにくさを示す指標の「不燃領域率」が40%未満の地域。道路や公園などの開放空間、耐火建物が占める面積を元に計算するこの指標が、30%だと市街地の8割余が焼失し、逆に40%以上だと2割以下の焼失に抑えられるという。
 国の都市再生本部は01年にこうした地域約8千ヘクタールを10年間でゼロにする計画を決定。03年には国土交通省が35都道府県、122市区町で計7971ヘクタールに上ると公表した。その後、進展を明らかにしていなかったため、朝日新聞社が同省の内部資料を基に調べた。
 35市区町のうち、最大は大阪市の1333ヘクタール。03年からほとんど解消されていない。一方、東京都は23区内に計682ヘクタールを抱えるが、10年前の約3割に減った。
( → 朝日新聞 2013-08-31
 数字の一覧があるが、列挙された数字を見ると、変化のない都市は他にもある。たとえば横浜市は 660(ヘクタール)で、10年間に変化がない。とはいえ、横浜市の人口は圧倒的に多いし、人家も多い。ひるがえって、大阪市は横浜市よりもかなり人口が少ないのだが、数字は 1333(ヘクタール)とすごく多い。危険度は際立っている。
 
 では、実際には、どんなところか? それを知るには、Google のストリートビューに頼るといい。ストリートビューの自動車は、細い道にもどんどん入り込むが、あまりにも狭い道には入れないので、そこでは「調査済み」の「青線」が地図に表示されない。そういう領域を探すと、いくつか該当箇所が見つかる。たとえば、下記だ。



大きな地図で見る


 これを見ると、次のことがわかる。
  ・ 非常に密集している。道は狭く、隣家との隙間は少ない。
  ・ 単純な木造は少なく、モルタルや防火タイルの家が多い。

 これを評価すると、次のようになる。
 「一応、防火建築なので、関東大震災のときほど、ひどいことにはならないだろう。とはいえ、隣家と並んでいるので、モルタルや防火タイルぐらいでは延焼は避けがたい。 阪神大震災の例から推論すれば、これらの領域はほぼ全焼するだろう。ゆえに、これらの地域を再開発する必要がある」


 墨田区の例からしても、上のことが結論できる。モルタルや防火タイルは、あくまで応急措置にすぎない。きちんとした対策をするには、再開発が必要だ。そして、それが必要なのは、全国でも大阪市が筆頭なのだ。

 阪神大震災では、早朝で就寝時間中の時間帯であるにもかかわらず、多くの火災が発生した。
 特に神戸市の長田区においては、木造住宅が密集していた地域を中心に火災の被害が甚大で、地震直後に発生した火災に伴う「火災旋風」が確認されている。この地震で発生した火災により、全体で7,000棟近い建物が焼失している。
 消防庁の資料によると、地震後に計285件の火災が発生している。うち7割は地震発生当日の火災だが、午前6時までの出火件数が87件と、地震発生から一定時間が経過した後の発生が相当数ある。
( → Wikipedia
 神戸でこういうことがあったのだから、大阪でも同じようなことがあってもおかしくない。「大阪は全国でも最も危険な(火事で被害が起こりやすい)場所だ」と理解しておく方がいい。大阪では火災対策が緊急の課題なのだ。
 で、その大阪市の市長は何をやっているかというと……大阪市のことはほったらかして、国旗掲揚とか、慰安婦とか、人命とは関係のない問題に熱中している。
 やることを間違えているんじゃないの? 市長の責務というものをわきまえてもらいたい。緊急の仕事は、大阪市民の生命を守ることだ。そのために、再開発をすることだ。さもないと、地震が来たとき、大量の死者が出かねない。



 [ 付記 ]
 ついでに横浜市も調べてみたが、ストリートビューの車があまり来ないような狭い路地(しかも古くからの市街地)でも、大阪ほどひどくはないようだ。全般的に建物が新しく、隣家との間隔も開いている。「下町の長屋」という感じは、全然しない。これは、横浜市が比較的新しく発展してきた都会であるからだろう。歴史のある大阪市とは全然違うようだ。
 一方、東京の方は、歴史があるが、先にも述べたように、再開発はかなり進んでいて、どんどん状況は好転している。駄目なのは大阪市だけだ。
  


 【 追記 】
 「隣家と並んでいるので、モルタルや防火タイルぐらいでは延焼は避けがたい」
 と先に述べた。その根拠は、下記にある。(防火タイルメーカーのページ)
ensho.jpg
 この窯業系タイルベースは表側が約800℃の高熱に20分さらされても、内壁側は手でさわれる程度の温度にしかならず、隣家火災による炎から住まいをガードします。
( → メーカーページ
 図からもわかるように、延焼を避けるには、
  ・ 防火タイルを使う
  ・ 3メートル以上はなれる

 という二点を満たす必要がある。ところが、大阪市の例では、「隣家と並んでいる」(1メートルぐらいしか離れていない)という状況にあるので、1200度の高温にさらされる。しかも、片側だけでなく前後左右からも火が襲うので、もっと温度は高くなる。これでは、たとえ防火タイルがあっても、木造建築はひとたまりもないだろう。
 というわけで、大阪市の例のように、人家の密集している土地では、大地震のときには大被害が発生しやすいのである。

( ※ ここでは「隣家との距離が大事だ」という点に注意。人々はその意味を理解しがたいのだが。)
posted by 管理人 at 10:38 | Comment(2) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に【 追記 】を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2013年09月01日 14:13
本質的なご指摘です。
 米国のノースリッジ地震の調査を行ったUCLAの教授の講演を聴いたことがあります。
管理人さんの指摘された道路幅や家屋の間隔で、阪神・淡路と対照的です。それでも、教授は興味深い話をしました。
調査していると、地震からかなり時間が経過しているにもかかわらず燃えている家がある。近づくと家主がおり、
「火をつけたんじゃない」と睨みつけながら言った。「何も言っていないのにね」と。
 日本の場合、木造家屋密集地帯で、火災保険の関係から「全焼を望む」人が一定割合いれば、火災被害は倍増する。
日本の人口が8000万人くらいの適正人口へ近づけば、道路幅や家屋の間隔等を考慮した、災害に強い、環境都市へと
総合的に作り直していくと良いですね。

 地震時における同時多発火災の問題と消防に期待される役割(関沢愛)
http://www.isad.or.jp/cgi-bin/hp/index.cgi?ac1=IB17&ac2=79winter&ac3=3572&Page=hpd_view

 17年前に発生したアメリカ・ノースリッジ地震(現地不動産エージェント・清田晴美氏に聞く)
http://www.re-port.net/topics.php?ReportNumber=26998
Posted by 思いやり at 2013年09月01日 15:18
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