【 注記 】 28日に新聞記事がネット公開されたので、全面的に書き直しました。 ──
政府は、救急医療の体制を抜本的に改善するらしい。全国各地の救急センターに多額の資金を投入して、医者の人件費を負担するそうだ。
《 「急患たらい回し」削減へ 》
厚生労働省は、急病や事故による救急患者の受け入れを断らない病院を全国に約100カ所、整備する方針を決めた。救急患者の「たらい回し」を防ぐのがねらいで、条件を満たせば、どんな状態でもいったん受け入れて対応することを目指す。来年度予算の概算要求に約20億円を盛り込み、スタッフやベッドの確保に必要な経費を補助する。
対象となるのは、入院や手術を必要とする患者を受け入れる二次救急の施設。地域ごとに受け入れ条件として「30分以上待った」や「5カ所から断られた」などのルールを決め、対象の救急患者を受け入れ、入院させたり、手当てをした後に他の施設に転院させたりする。
救急車を呼んでも、受け入れ病院が見つからず車内で待たされたり、救急隊がいくつもの病院に電話をしても断られたりするケースの減少につなげる。
( → 朝日新聞・夕刊 2013年08月27日 )
上記は無料記事の転載だが、有料分には「人件費などを国と都道府県が3分の1ずつ補助する」という記述もある。
計算すると、国の予算は 20億円だから、その3倍の 60億円の規模となる。100箇所だから、1箇所 6000万円だ。
これで、救急医療の医者をかなり集めることができるだろう。
とにかく、私が前から主張していたことが、とうとう実現するようだ。喜ばしいことである。
[ 付記1 ]
冒頭の 20億円という数字を見て、「それっぽっちじゃ焼け石に水だ」という批判が、はてなブックマークにあふれた。だが、それは有料記事を見ない勘違いだ。
正しくは、20億円でなく 60億円だ。(上記)
さらにこれに加えて、診療報酬がある。普通の報酬に加えるべき加算分が、1箇所あたり 6000万円である。勘違いしないように。
しかも、これは初年度である。このことの効果が大きければ、財務省に予算請求して、どんどん増額することも可能だろう。国民が「もっと金を出せ」と声を上げれば、財務省も考慮するだろう。
( ※ ただ、はてなブックマーク民みたいな声が増えると、せっかくの善政もつぶされかねないが。)
[ 付記2 ]
救急医の年収を調べた。
→ http://www.senmon-i.net/senmoni/list_16.html
見ると:
・ 若手 600万円
・ 十年目 1200万円
・ 熟練 2000万円
ぐらいらしい。ここに一人あたり平均で 600万円(加算分)をつぎこめば、6000万円で 10人を雇用できる。(加算分でない正規の年収は診療報酬から。)
たとえば十年目が 1200万円から 1800万円になる。これだったら「勤めよう」と思う医者も出てくるだろう。
[ 付記3 ]
ただ、私としては、もっとうまい方法をお勧めする。
「給料は従来水準を維持して、加算分は特にない。そのかわり、短時間勤務の医者を多数雇用する。その事務費に該当費用を充てる」
たとえば、昼間の診療は、産休で引退した女医を短時間勤務でたくさん招く。1日4時間の午前または午後の勤務。これで昼間と夕方をまかなう。
病院本体の正規の職員は、夜勤と休日出勤に回す。こうして、
・ 平日の昼間は、新規の女医で
・ 夜間・休日は、正規の職員で
という形で、夜間・休日の診療を大幅に拡充できる。
[ 付記4 ]
さらに言うと、「夜間・休日の診療報酬を多額にする」という制度改革を伴えば、病院の収入はすごく増えるだろう。
今回の 6000万円は、その起爆剤にすぎない。最大のポイントは、「夜間・休日の診療報酬を多額にする」という制度改革だろう。
( ※ 特に、くだらない軽病で夜間診療を受ける人には、多額の初診料を請求できるようにするといい。たとえば救急車でいきなりやってきた軽症者には、1〜2万円を請求する。救急車の料金よりは、初診料で請求する。……ただし、重病者に対しては、その加算は不要だ。初診料でいろいろとまかなえばいい。)
なお、現状は、下記でわかる。
→ 夜間休日救急搬送医学管理料 200点
→ 夜間・早朝等加算 50点
加算は、あるにはあるが、少額である。少なすぎるよね。
あと、国の負担が問題であれば、「3割自己負担」という原則を改めて、(夜間・休日の医療に限って)「4割の自己負担」にしてもいいだろう。その分、国の負担は減る。
患者だって、いざというときの命に関わる緊急医療なんだから、金よりも医療体制の充実を望むはずだ。こうして、「夜間・休日の診療報酬を多額にする」という制度改革があっさり可能となる。(国の財政負担が増えないから。)
( ※ 救急医療の患者負担の引き下げ[4割 → 3割]が必要ならば、消費税引き上げのときに、「救急医療の患者負担の引き下げをします」と公約すればいい。これなら、財務省も納得する。)
[ 余談 ]
別項で述べた話もある。
→ Open ブログ: 医師・看護師不足の対策が実現! (2013年08月25日)
これに引きつづき、またしても、だ。医療界の最大の問題が一挙に二つも改善したことになる。びっくり。これでもう、主要な問題はすべて(二つとも)解決しつつあることになる。
ここまでやると、残りは「産科医不足」ぐらいだが、これも引きつづき解決しそうだ。また、その次は「麻酔科医不足」だが、これも何とかなりそうだ。
なぜ? たぶん厚労省には 切れ者が就任したのだろう。それまでは、製薬会社の利権とか、医師会の利権とか、そんなことを狙ってばかりいたのが役人だが、どういうわけか、「国民の厚生」という本来の仕事をやる人物が就任したのだろう。
これは実に画期的なことだ。「当たり前のことをやる」というのは、日本の官僚においては、空前の出来事だからだ。(そんなことをやった人がいるだろうか? いや、いない。たぶん。)
できれば新聞社は、この切れ者が誰であるか、突き止めてほしいものだ。そして、擁護してほしいものだ。……さもないと、誰かに足を引っ張られて、失脚しかねない。省庁というものはそういうものなのである。「省庁の利益が一番であり、国民の利益はどうでもいい」……この基本原則に反するような役人は、早晩、失脚するだろう。だからこそ、新聞社による擁護が必要だ。
( ※ 足を引っ張るのは、省庁だけでなく、はてなブックマーク民もいる。こういうふうに、善い行ないに対しては 足を引っ張る人が確実にいるのだ。……ま、はてなブックマークというのは、そういうひねくれ者が多いところではあるが。)
( ※ ただ、有益な批判が出ることもある。「ベッド数不足の指摘」ということだ。なるほど。これは私も失念していた。以前、この項目 で話題にしたこともあるのだが。……というわけで、医療には、まだ「ベッド数の不足」という問題もある。これの解決も望もう。解決策は、上記項目に記してある。)
【 関連項目 】
→ 「救急医療を充実させよ」という私の持論 (Openブログ)
→ 「救急医療を充実させよ」という私の持論 (泉の波立ち)
ER 緊急救命室 I 〈ファースト・シーズン〉 セット1
上の DVD がお勧めです。内容は定評ある傑作。しかも、DVD 4枚 で、13話、643 分。激安ですね! こんなにお買い得の DVD は、めったにない。
→ 作品情報
ユーザー評価は最高の ★★★★★ です。英語と日本語の字幕・音声付き。製作総指揮: マイケル・クライトン。主演:ジョージ・クルーニー。
この豪華仕様で 1000円は安すぎ。
※ なお、これで英語学習するといい、とも言われている。
英語教材にまでなるなんて。
ともかくも、骨抜きにならず実現することを願うのみです。
考えてみれば当然です。救急が必要になる事態なんて、一生の間に数回あるいは一度もない人が大半ですから。
だから、一般人の医療満足度を上げたいなら、救急を改善するんじゃなくて、夜間休日診療所を作るべきだと思われます。
一般論から言えば、嘘あるいは誤報だと断定できます。「救急の受け入れを断らない」ためには、あらゆる急性疾患の治療ができなくてはならない。
脳神経外科、循環器内科、胸部外科、消化器外科、産婦人科、整形外科といった科がすべて存在し、いつでも、動けるように、三交代で待機している必要がある。
そんな病院、県に1つでもあったら、ましな方です。とても、100個も作れない。
「完璧な医療ができなければ、救急車のなかで死なせる方がいい」
というのが、医師の立場なのかな? ま、それなら、自分の責任は問われないが。
専門施設で実際に治療できるかどうかは、わからない。しかし、非専門施設に運べば、確実に、治療のチャンスを逃してしまう。
たらい回しが社会問題になってますが、そもそもたらい回しする必要すらなかったのが、昔の医療でした。どこに運んでも治療できないなら、どこでも大差ない。急性期に専門施設に運ぶと治療できる可能性ができた分だけ、進歩してるんです。
それは、最適配分の問題でしょ。そういう患者は、専門施設に最初に問い合わせるべきです。
今話題になっているのは、第一候補にも第二候補にも断られるような場合(総量の不足が問題になっている場合)に、総量を増やそう、という努力です。
記事の見出しを見て、「たらい回しをやめる」というのを目的にしているように見えますが、違います。「医師不足によるたらい回しがなくなるように、医師の総量を増やす」というのが目的です。
それに反対するなら、「総量を減らせ」と主張するべきです。
一方、最適配分の問題は、情報処理などで済ませる話題であって、本項とは関係ありません。
A その問題は、もうさんざん論議されたことなので、別の箇所を見てください。
簡単に言えば、3次救急から2次救急へ、2次救急から1次救急へと、治った患者の転院を推進すればいいんです。常に一定数のベッドをあけるようにする。
ベッド数の不足は、本項とは別の話題です。本項はあくまで医師数の不足を解決するもの。ベッド数の不足は、それそれとして、別項で扱えばいい。
「ベッド数の不足の問題があるから、医師数の増加なんかやっても無駄だ」なんて思うのは、論理が狂っている。その理屈が成立するなら、「現状はベッド数が不足しているから、救急医療の医者を減らせ」となる。
本末転倒とは、このことだ。
なお、ベッド数不足という問題の、根源と解決策は、下記で論じた。
→ http://openblog.meblog.biz/article/7899485.html
>さらに、患者の受け入れ先を探す司令塔となる専任の医師を地域の消防本部に置く補助事業も展開する。
これは意味があると思いました。現在は、受け入れを決定した人が、予後にまで責任を取るので、専門施設でないと受け入れない。
消防本部が受け入れ決定の責任を取ってくれるなら、非専門施設でも受け入れますよ。産科医のいない病院に、子宮外妊娠疑いを受け入れて、結果が悪くても、責任問われないんだったら。