2013年08月24日

◆ MRJ の開発延期

 MRJ の開発計画がまたしても延期された。これで3度目。もうそろそろ開発計画を中止した方がいいだろう。 ──

 MRJ の開発計画がまたしても延期された。
 三菱重工業 傘下の三菱航空機は22日、国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)の初号機の顧客への納入を2017年4−6月に延期すると発表した。また、初試験飛行の時期も15年4−6月に延ばした。開発計画の延期はこれで3回目となる。
 これまでは、初号機の納入は15年9月から16年3月末まで、初飛行は13年内としていた。
( → Bloomberg

 第1号機の引き渡し時期の変更はこれが3回目で、5年前の会社設立当時の計画と比べると4年遅れる形となります。
 また、引き渡し前の試験飛行のための初フライトについても、現在の計画より1年余り遅らせて、平成 27年4月以降に延期することを決めました。
 延期の理由については、三菱航空機側がエンジンなどの部品の安全性を証明する方法を誤って認識していたため、正しい方法でやり直すのに時間がかかるためだ、などとしています。
( → NHKニュース

 部品の安全性を証明する作業に対して、スケジュールの読みが甘かった。開発期間の延期は3回目となる。飛行機で用いる部品は、設計・製造のプロセスを明文化し、それに則った作業が行われれば正しいものができあがるか証明する必要がある。その過程で想定以上に時間がとられ、部品メーカーの生産が遅れた。
( → Reuters
 これで三度も延期したわけだ。つまり、嘘をついてきたことになる。これだけ嘘をついてきたとなると、今回の予定もとうてい信じられない。さらに四度目、五度目、の延期があるだろう。ただでさえ4年も遅れているのに、5年、6年、というふうに遅れそうだ。
 それでいて、「量産化を急いで、量産化の時期を早める」とのことだ。しかし、そんな拙速の態勢でやれば、製造ミスによる故障が発生しやすくなる。かえって危険だろう。「あわてる乞食はもらいが少ない」という言葉通りで、「あわてる飛行機生産は事故の元」である。やばいね。


mrj02.jpg


 私は前に次のように述べた。
 後部は、尻上がりであってはならない。(尻上がりだと、空気が機体後部で、上向きに流れてしまうので。
 それとは正反対のことをやっているのが、三菱の MRJ だ。こいつは、空気抵抗を下げるかわりに、空気抵抗を上げるようなデザインをしている。

 機首の上半分(乗員席の風防ガラスの部分)は、風を上に流すよりも、風を左右に分ける形 …… MRJ は、そういう形をしていない。風を左右に分けるというよりは、風を上に流す形をしている。新幹線のように。
 実際、MRJ というのは、一見したところ、飛行機のデザインというよりは、新幹線のデザイン ですね。機体全体を空気のダウンフォースによって下方に押し下げるようなデザイン。
 なるほど、新幹線ならば、機体を下方に押し下げるようなデザインが好ましい。で、飛行機で、そういうデザインをしたら? ……まったく、何考えているんだか。

( → エクリプスECJ
 つまり、MRJ の空力デザインは悪い。次の二点で。
  ・ 尻上がりなので、空気を上に持ち上げる。
   そのせいで、揚力とは逆に、ダウンフォースがかかる。
  ・ 機首は、鼻下がりなので、空気を上に持ち上げる。
   そのせいで、揚力とは逆に、ダウンフォースがかかる。


 いずれにしても、空力的にダウンフォースがかかる。その分、主翼で大きめの揚力を稼がなくてはならない。その分、空気抵抗となる。したがって燃費が悪くなる。

 このようなデザインをしているという点で、最初から空力デザインが悪い。それゆえ、空力デザインを全面変更するべきだ。
 つまり、MRJ という機種については、開発を中止するべきだ。かわりに、MRJ 2 という機種を新規に開発するといい。それは機首の鼻下がりと、後部の尻上がりを、なくしたデザインだ。単純に言えば、ミサイルか流線型みたいなデザインだ。
 たとえば、B787 (の尾部)みたいな。


b787.jpg


 あるいは、エアバス A340 (の機首)みたいな。


Airbus_A346.jpg


 こういうデザインならば、ダウンフォースがないので、空気抵抗が減る。そういうふうにデザインを全面変更するべきだ。つまり、現機種を開発中止にして、新機種に移行するべきだ。

 MRJ はすでに三度も開発を延期している。二度あることは三度ある。三度あることは四度も五度もある。いたずらに開発が遅延されるばかりで、実際に生産されるころには時代遅れになっているだろう。(すでに四年も遅れた。)
 だったら新時代に即して、設計そのものを変更するべきなのだ。私はそう提案する。

 ──

 ついでに言えば、全日空などは、すでに入れた予約をキャンセルする方がいい。もう三度で4年も遅れたのだ。このあとさらに待ち続けるのは馬鹿げている。しかも、新規の受注も来ないから、現状のような少数の受注だけでは、とても採算に乗りそうにない。いっそのこと、開発中止に追い込むように、全日空はすべての予約をキャンセルするべきだ。そうすれば、三菱も腹を据えて、開発中止を決断するだろう。(その後に、新規に MRJ 2 を開発すればいい。まったく違うデザインで。)

 現状のままでは、三菱も全日空も、共倒れになるだけだ。時代遅れになった古い機種の生産にこだわっても仕方ない。「駄目なものは駄目」と、さっさと損切りをした方がいい。今のままだと、とんでもない泥沼に落ち込みそうだ。たとえると……キヤノンの SED みたいな。
  


 [ 付記 ]
 底なしの泥沼にこだわると身を滅ぼす……というのを暗示する動画がある。



解説

 


 【 関連項目 】

 → 飛行機はなぜ飛ぶのか?
 → 三菱の小型ジェット機 MRJ
 → エクリプスECJ
posted by 管理人 at 23:49 | Comment(10) | 一般(雑学)2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
対照的な事例として、ホンダジェットが思い浮びます。

 本田宗一郎氏は、子供の頃、光明村から20km程離れた浜松練兵場で、カーチス式複葉機の飛行ショーが
開催された。それを見たさに、家の金を拝借して、大人用自転車を三角乗りして浜松まで行った。入場料に
足りなくて、近くの松の木によじ登って食い入るように見た。父親は叱らなかったという。
 航空機を作って飛ばす夢は、本田宗一郎にとって生涯の夢であったはず。

 その夢は、藤野道格氏等が、ホンダのDNAを受け継いで、画期的なビジネスジェットを創造した。
藤野道格氏の言葉は味わい深い。「単に他の人がやった仕事を知識として知っていて、それを説明してるのは
エンジニアの仕事なんだろうかと疑問がわいて、一回今まで学んだものを捨ててしまわなければいけないん
じゃないかと気分転換になりました。それでアイディアが浮かびました。」
http://response.jp/article/2011/08/19/161061.html

 2013年前半に年間80機のフル生産体制に入り、デリバリー開始予定。

 アメリカ人のツイッターが泣かせますね。
ホンダはいつだってイノベーションカンパニーだ。
残念なことに宗一郎がこれを見る事は無いけど、
彼の一生の夢が叶ったんだな。
Posted by 思いやり at 2013年08月25日 01:18
この話、そんなに深刻なんですか?
ボーイング787やエアバス350XWB、A400、F35とかも快調に遅れてるし、最近の航空機開発って普通に数年遅れるのは当たり前ではないでしょうか。
4年遅れたから「中止してしまえ」はいささか早計というものでは?

引用されている「ロイター」や「NHK」の記事を読めば、「部品の安全性が確保の問題」とあるんだけど、
空力の事はよくわからないけど、記事だけ読めば普通に部品の安全性確保で手間取っているんじゃないのかな。
Posted by sabatora at 2013年09月02日 18:57
ボーイング787 はユアサの蓄電池のせいですから、ボーイングそのものとはあまり関係ない。ユアサの従業員がボロクソだったのが理由らしいが、ブラック企業ふうなのかな。で、この蓄電池以外は順調です。すでに飛んでいるし。

 350XWB は、もう完成していて、もうすぐ出るんだから、「中止」はありえない。

 A400は マイナーな軍用機だから、どうでもいい。

 というわけで、以上の三つは、関係ない。

 F35は「遅れるから、やめてしまえ」というのが私の持論です。「開発を」じゃなくて「購入を」だけど。

> 普通に部品の安全性確保で手間取っている

 そうじゃないでしょ。旅客機開発の手順がわかっていないので(これが初めてという初心者なので)勝手がわからず右往左往しているありさま。本田みたいに慎重に何年間もかけて少しずつやればいいの、一挙に大量受注をめざして短期決戦でやるから、あちこちでトラブルが生じているありさま。
 enchantMOON と同様です。旅客機版の enchantMOON が MRJ です。
Posted by 管理人 at 2013年09月02日 19:15
>ボーイング787 はユアサの蓄電池のせいですから、ボーイングそのものとはあまり関係ない。

これは違うでしょう。蓄電池うんぬんは運行後のトラブルの事。そうではなく普通に機体の開発が4年近く遅れてます。

>350XWB は、もう完成していて、もうすぐ出るんだから、「中止」はありえない。

これも、スケジュール通りに開発できてない。納品が予定通りいかなかったという例であげさせていただきました。

>A400は マイナーな軍用機だから、どうでもいい。

マイナーな軍用機だからといってスケジュールを無視してよいとは…まったく説明にはなってません。
新型航空機の開発がスケジュール通りいかないという査証でしょうに。


というわけで上記3つは関係ないということにはならないでしょう。MRJが遅れるのも普通の事件じゃないのかな?


>旅客機開発の手順がわかっていないので(これが初めてという初心者なので)勝手がわからず右往左往しているありさま。

「空力が悪い」って話じゃなかったのですか?言ってることが本文と違うように思います。
Posted by Sabatora at 2013年09月02日 22:57
4年遅れぐらいなら我慢できるでしょう。
 MRJ はすでに4年遅れていて、この先さらに遅れそうなこと。現時点で完成の見通しがきちんと立っていないこと。ここが問題。F35みたいにものすごく遅れると、開発費も大変だし、それでいて、できたときには時代遅れになりかねない。

> 「空力が悪い」って話じゃなかったのですか?

 私の言う「MRJを中止せよ」は、「断念せよ」じゃなくて、「新型機に切り替えよ」(10年ぐらい遅れるのだったら設計変更せよ:空力デザインも変えよ)ということ。だから首尾一貫しています。
Posted by 管理人 at 2013年09月02日 23:08
つまり4年なら我慢ができるが、それ以上は我慢ならん。…ですか?

「我慢できない人」が誰を指しているのかわかりませんが、仮に三菱であれば我慢ならなくなった時点で何かアクションがあるでしょ。

先にも書いた通り、(最先端の)航空機開発は数年遅れる事はちっとも珍しくない(とうか普通)。
まして、経験値の少ない「三菱」が、5〜6年遅れても不思議はない。

>(10年ぐらい遅れるのだったら設計変更せよ:空力デザインも変えよ)

4年遅れたからといって、10年も遅れますかね?少々根拠に乏しいです。

まあ、何年遅れるかは置いといて、遅れたから「新型機に切り替えて」出直せというのは冷静でも合理的でもないです。
新型機を再設計しても、また遅れる可能性は高いし、そしたらまた新型機に切り替えなくてはいけなくなります。この理屈だと。

顧客の信用も失いますし、それこそ『開発費が大変』です。
Posted by Sabatora at 2013年09月04日 12:58
ゼロから新開発するのと、部分変更するのとでは、全然違うでしょう。
 空力デザインや採用エンジンを変えたとしても、たいていの部品は持ち越しなので、それほど大がかりにはなりません。逆に言えば、大がかりにならない範囲でのみ、変更する。
 そんなの、当り前でしょ? 技術者にとっては、言わずもがな。
Posted by 管理人 at 2013年09月04日 13:06
-----------------------------------
(記事)⇒新時代に即して、設計そのものを変更するべきなのだ。

(レス)⇒大がかりにならない範囲でのみ、変更する。
-----------------------------------
ずいぶんなトーンダウンです(笑)私は、元記事に対して意見しているだけです。
反論のための反論をしているようにしか見えません。

こんなことなら、記事そのものを訂正した方がよいと思います。
「大掛かりにならない範囲でのみ」なんて元記事のどこを読んでも見受けられない。


また、なぜ三菱だけが数年遅れただけで再設計しなきゃいけないのか答えてくださいよ。
4年遅れが5年6年、10年遅れに発展する根拠も示せていない。

あなたの引用した記事によれば、いくら再設計したって「部品の安全性」が確保できなきゃ完成しないです。
Posted by Sabatora at 2013年09月04日 23:55
トーンダウンじゃないですよ。私は最初からそのつもりで書いていました。当たり前のことじゃない。


> 「大掛かりにならない範囲でのみ」なんて元記事のどこを読んでも見受けられない。

 これも当たり前のことでしょ。ゼロからやり直したら、意味ないでしょうが。こんなこと、いちいち説明されないとわからないのかな?
 記事から引用すると、
 「新時代に即して、設計そのものを変更するべきなのだ。」
 です。「変更する」であって、「ゼロからやり直す」じゃありません。 

> なぜ三菱だけが数年遅れただけで再設計しなきゃいけないのか答えてくださいよ。

 すでに書いたでしょ? 本田と比較した箇所。
 なお、再設計というより、(一部の)変更です。再設計という言葉は、あなたの発言中にしか現れません。

> 4年遅れが5年6年、10年遅れに発展する根拠

 すでに4年たったのに、5年6年遅れるのは当然でしょう。3年や2年になるとでもいうんですか? 三菱の発表でも読めば? 
 10年になるかどうかは不明です。「なりかねない」というふうに書いているだけ。

> いくら再設計したって「部品の安全性」が確保できなきゃ完成しないです。

 同一部品を使って同一の方針を取る限り、たいして遅れはありません。
 たとえば、現状で2015年完成になると仮定したら、機首と尾部のデザイン全面変更を加えても、2017年完成ぐらいで済むでしょう。デザインがまったく異なる飛行機なので、同一機種ではなく、新機種となりますが、部品のほとんどは MRJ の持ち越しです。 MSJ とでも名付ければいい。

 p.s.
 どうもあなたは、理系の知識もないし、日本語読解力もないようなので、ただのクレーマーであり、本サイトには不適合です。書き込み禁止にします。
Posted by 管理人 at 2013年09月05日 06:37
参考記事
  → 「MRJ」計画遅延の本当の理由
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130909/253177/

 趣旨:
  ・ 社内で撤退論も出ている。
  ・ 遅れの原因は、経験不足など。
  ・ 今回の失敗の経験を糧として、将来は兄弟機で頑張れ。
Posted by 管理人 at 2013年09月12日 07:20
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