2013年08月23日

◆ 国の南海トラフ巨大地震対策

 国土交通省の南海トラフ巨大地震対策が公表された。そこでは人命を救うことは考慮外である。 ──
 
 国土交通省の南海トラフ巨大地震対策が公表された。(2013-08-23 朝刊で報道された)
 一読して、呆れた。狙いは、建物などの国土被害を減らすことだけだ。人間の命を救うことは考慮されていないのだ。

 まず、ニュースはあちこちにあるが、内容は少ない。ネットではこのくらいか。
  → 国交省、南海トラフ地震対策案 - MSN産経ニュース

 そこで国交省のサイトに行くと、該当の資料が見つかる。
  → 報道発表資料 (リンク一覧)

 ここから、次の資料を見るといい。
  → 国土交通省南海トラフ巨大地震対策計画中間とりまとめ(PDF形式)
  → 【資料3】[別紙1]国土交通省の総力を挙げて対応すべき7つの重要テーマと10の重点対策箇所(PDF形式)

 後者は、最初に「応急活動計画」と書いてある通りで、「いざ地震が発生したあとでどういう活動をするか」ということが書いてあるだけだ。当然だが、津波で溺死者が大量に発生したあとでは、ほとんど意味をなさない。壊れた建物や道路の復旧については考慮されているが、「すでに死んでしまった人間」については何も書いてない。(ま、死者には手遅れだから、当然だが。)……要するに、「応急活動計画」というもの自体が、ほとんど意味をなさない。23万人が津波で死んだあとで何をしようが、ほとんど無駄である。

 とすれば、肝心の対策は、「津波が来る以前」のことだ。「津波が来る以前に退避する(移転する)」ということが大切だ。これによって溺死者を減らせるからだ。(前項で述べた通り。)
 では、その話は、前者の PDF に書いてあるか? いや、書いてない。該当の箇所を抜粋すると、こうだ。
 取り組むべき対策は、応急活動
 計画と戦略的に推進する対策の2本立てとする。
 @南海トラフ巨大地震発生時における応急活動計画
 地震発生からの時間軸を念頭に置き、東日本大震災の教訓や実際の対応も参考にしつつ、巨大地震発生直後から概ね7日〜10日目までの間を中心に、国土交通省として緊急的に実施すべき主要な応急活動並びに当該活動を円滑に進めるためにあらかじめ平時から準備しておくべき事項に焦点を絞って記載している。また、数年規模を要する復興については、応急活動計画の対象としていない。
 
 A南海トラフ巨大地震の発生に備え戦略的に推進する対策
  ・ 巨大地震による揺れ
  ・ 津波
  ・ 土砂災害
  ・ 地盤沈下
  ・ 液状化
  ・ 火災等による甚大な人的
  ・ 物的被害を軽減するため、国土交通省として取り組むべき予防的な対策を、中長期的な視点も踏まえつつ記載している。

 ○ 南海トラフ巨大地震においては、津波が短時間で広範囲にわたり襲来するため、住民などの迅速な避難行動が極めて重要となる。そのため、国土交通省は、関係機関と連携しつつ、住民等の津波からの一刻も早い避難を支援する。

 地方公共団体による避難路
  ・ 避難場所の整備や津波ハザードマップの作成や周知を引き続き支援するとともに、避難路、避難場所や津波浸水高さ等を道路や河川堤防上等に表示する等、住民等への事前の情報周知を支援する。
  ・ 津波が堤防を乗り越えるまでの時間の想定も含め、避難に使うことができる時間の長短を十分念頭に置いた実践的な避難計画に対して重点的に対策を促進する等、地域ニーズに応じた技術的な支援等を行う。

 南海トラフ巨大地震では、襲来する巨大な津波により、最大で約22.4万人が死亡すると想定されている。そのため、こうした深刻な被害から国民を守るため、深刻な被害を受ける施設や地域においては、対策完了時期を明示するなど進捗管理を徹底しつつ、戦略的に対策を推進する。
  ・ 地方公共団体による避難路や避難場所となる施設の事前の選定
  ・ 整備について、必要となる施設規模、重要度、確保の優先順位等を踏まえ支援する。

 (2)津波防災地域づくりの推進
 ○ 津波防災地域づくりに関する法律に基づき、地域の実情を踏まえた津波防災地域づくりを推進するため、都道府県、市町村等が実施する次の取組に対して支援する。

 <都道府県の取組>
  ・ 基礎調査の実施
  ・ 津波浸水想定の設定
  ・ 津波災害警戒区域等の指定
 <市町村等の取組>
  ・ 推進計画の作成
  ・ 津波ハザードマップの作成
  ・ 避難訓練の実施
  ・ 避難促進施設の所有者等による避難確保計画の作成
  ・ 高台等への移転(防災集団移転促進事業等)


 (3)津波浸水を軽減させる
 特に海岸部においては、津波に対して粘り強い海岸堤防の整備や防波堤と防潮堤による多重防御、海岸の浸食対策を推進する。

 38頁もある文書なのだが、肝心の「高台への移転」は、たったの1行しか書いていない。「とりあえず列挙しました」というだけ。
 つまり、人命救助のために必要な最大の事業が、「たったの1行」で片付けられているのだ。「とりあえず言及しました」というだけであり、実質的には何もやらないのに等しい。
 では 38頁も書けて、何を示したのか? その大部分は、道路・建物・防潮堤の建設である。つまり「昔の国土省の仕事を増やすこと」だけである。そうやって仕事を増やして、ポストを増やして、役人の肩書きを上げよう、という魂胆なのだろう。
 「しめしめ。防潮堤の予算が3兆円も付いたぞ。これで防潮堤課長という役職が新たにできるから、そこに誰かが就任することが可能になるぞ。その分、係長のポストも空くから、そこにも誰かが就任できるぞ。メシウマ」
 という役人の魂胆だ。仕事はそれがすべてだ。「国民の命を救うこと」なんて、まったく念頭になっていない。
 「高台への移転? それじゃ、利権があまり発生しないし、ポストも増えないな。どうせ地元の役人が喜ぶだけだろ。国交省には関係ない。そんなの放っておけ」
 こういう考えで、「国民の命など放っておけ」という結論となる。(国交省は。)

 ──

 で、結果的に、どうなる? もちろん、「最大で 23万人の死者が発生する」というふうになる。
 もちろん政府はそれがわかっている。ただし、それを防ぐ気はない。むしろ、それを利用して、自分の利益を増やそうとする。
 「津波によって、最大で 23万人の死者が発生します! 大変です! 何とかしましょう! そこで、道路と建物と防潮堤を建設しましょう!」
 全然、理屈になっていない。津波による死者を防ぐとしたら、次のことが対策だ。
  ・ 高台への移転
  ・ 内陸堤防の建設

 この二つは、費用が比較的低い割に、効果が大きい。しかし、費用が比較的低いがゆえに、利権にならない。かわりに、役人と政治家は、利権になるものを選ぶ。
 「道路と建物と防潮堤を建設しましょう! 19兆円をかけて地震対策をしましょう!」( → 前項
 しかし、19兆円をかけるのは、南海トラフ地震の被災地ではなく、東日本大震災の被災地(東北)である。そんなところでいくら大金をかけても、西日本の津波被害を減らすことはできないのだが。また、西日本で金をかけるにしても、ぶっ壊れた道路や建物をいくら補修したところで、すでに死んだ 23万人が生き返るわけではないのだが。

 政府の対策というものは、これほどにも見当違いな方向を向いているのである。



 【 関連資料 】

 国交省のサイトで示されている「応急的対策」と概要は、次の表で示される。(転載)

nankai3.gif

出典
posted by 管理人 at 19:37 | Comment(1) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本は、無駄なことに大散財を続け国の借金を危険水域まで膨らましたので、余力はもうない
と思ったほうが良いと思います。
 J.F.Kではありませんが、「Ask not what your country can do for you; ask what you can do
for your country」かも知れません。
 そういう気持ちの人々に政治家をやってもらうこと、今のように欲に憑かれた政治家が多いと、
先行き怪しいですね。公務員組織には、もう天下りしなくて良いように「定年延長」をするので、
本業の国家の舵取りを真剣にやってもらいたいということでしょう。

 大震災の防衛には、各家庭にライフ・ジャケットと非常時に膨らませるミニゴムボートを常備
することが現実的です。水死する確率は大幅に減ります。
Posted by 思いやり at 2013年08月23日 21:00
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