2013年08月20日

◆ ネアンデルタール人の顔

 古人類の化石から顔を復元する、という試みがある。その書籍を紹介する。 ──
 
 これは次の書籍だ。
 

和書           洋書
      
人類の進化 大図鑑  Evolution: The Human Story


 価格は和書の方がずっと高額だ。大事なのは、本文よりも図の方だから、普通の英語力があるなら、洋書を買った方がいいだろう。しかしまあ、そこはお好みで。
( ※ 和書の方は、昨秋に発売して直後に、売り切れた。その後も売り切れの時期が長らく続いた。私がいつ見ても、売り切れ・絶版の状態。ただし本日 2013-08-20 見たら、売っていた。)

 内容については、次の書評がある。
 本図鑑の魅力は緻密な復元模型にある。筋骨の解剖学や遺伝学の研究成果のみならず、考古学や文化人類学などの調査データが加味され、まさに動きださんばかりのリアリティーを持って再現される。
( → 書評 : 本よみうり堂
 つまり、学術的な研究に基づいて、復元模型がすばらしい。特に顔だ。具体的には、出版社のページで画像を見るといいだろう。
  → 河出書房の公式サイト
 ( ※ ここにある図をクリックすると、拡大できる。)

 いちいち何度もクリックするのが面倒なら、次のページで一覧できる。(あまり大きな画像ではないが。)
  → もの凄く高いけど人類の進化大図鑑を購入した (読者書評)

 ついでだが、米国 Amazon のページもある。かなり証左な書籍情報が得られる。(立ち読みふう)
  → 米国 Amazon (プレビュー)

 というわけで、書籍を紹介した。ここで、紹介はおしまい。
 もっと詳しい情報は、上記のページの書評などを読めばわかる。
( ※ 評判のいい良書なので、お金がある人は購入するといいだろう。割とお勧めの本です。)

 ──

 さて。以下は、私の見解だ。
 私としては、ここでは書評めいたことはしない。かわりに、一つ、気になった点を指摘する。次のことだ。
 「この本では、ハイデルベルグ人 や ネアンデルタール人の顔貌を、現代人(ホモ・サピエンス)にかなり似た顔貌として描いている。だが、それはおかしい」


 どうもこの本では、「古人類と現代人とは、あまり大きな差はなかった」という立場のもとで、すべてが構成されているようだ。
( ※ おそらく「ネアンデルタール人と現代人は混血した」という仮説に、影響されすぎたのだろう。たしかに、混血したのだとすれば、差は小さいはずだ。しかし、混血そのものがなかった、というのが私の立場だ。)


 しかし、これまでの化石的事実は、ネアンデルタール人と現代人に、大きな差があったことを示している。
 特に大きな違いは、次のことだ。
 「現代人は前頭部がかなり前に出ているが、ネアンデルタール人は前頭部が後退している。一方、ネアンデルタール人の後頭部は後ろに突き出ている。」



ネアンデルタール人(復元図)

neanman.jpg 
画像の出典


 この復元図を見ればわかるように、ネアンデルタール人は前頭部が後退している。このことは、次のようなイラストでも表現される。
  → 頭蓋のイラスト

 なのに、冒頭の大図鑑では、そうなっていない。では、どうしてか? 現代人にあえて似た顔に見せるために、頭蓋の全体を少し回転させて、前頭部が前に突き出るように配置させているからである。
( ※ 上の頭蓋のイラストで言うと、ネアンデルタール人の頭蓋を 20度ぐらい左回転させている[= 反時計回りに回転させている]。)
 すると、どうなるか? 次のようになる。
  ・ 顔面は、現代人と同様に、ほぼ垂直(鉛直)になる。
  ・ 目の上の隆起(眼窩上隆起)が、前に突き出ている。


 もともとは顔面が後退しているので、目のあたりの骨は(横から見て)  Γ  みたいな形だった。なのに、頭蓋を 20度ぐらい左回転させたせいで、この部分が    のような出っ張りになってしまうのだ。
 しかし、これはおかしい。そんなことをすれば、目は原則として下向きになる。(足元ばかりを見るようになる。)それでは困る。
 正しくは? 目は前を向いているべきである。そのためには、ここの部分の骨は  Γ  みたいな形であるべきだ。そうすれば、目は

        ←  Γ

 のような感じで、正面(上図の左方)を見ることができる。
 逆に、     みたいな形であれば、目は下向きになるので、上図の左下の方を向いてしまうことになる。それは、ありえない。
( ※ この件は、前にも述べた。→ 別項 の項目末。)

 なお、このことは、次の図からもわかる。


homo_neanderthal.jpg
 
出典:Wikipedia


 この図で、左は現代人で、右はネアンデルタール人。この図では、右の頭蓋が 20度ぐらい左回転している。そのせいで、歯並びが水平でなく、20度ぐらい傾いている。

 正しくは、この図を 20度ぐらい右回転させたものだ。そうすれば、前頭部は後退し、後頭部は後ろに突き出る。同時に、目のあたりは正面を見るようになる。
 
 ──

 もう一つ、重要なことがある。
 「鼻の下の溝(人中)は、現代人にはあるが、古代人にはなかったはずだ」


 なぜか? その理由については、前に詳述した。
  → 鼻の下の溝(人中)は何のため?

 ここで述べたように、こう言える。
 「鼻の下の溝(人中)は、言葉の発音のためにある。言葉の発音がうまくできたのは、現代人(特に数万年前から)だけである」


 このことから、次のように結論できる。
 「言葉をうまく使えないネアンデルタール人以前の古人類では、発音のための人中が備わっていたはずがない」


 にもかかわらず、冒頭の書籍では、次のようにしている。
  ・ ヒゲを描くことで、鼻の下の溝の有無を隠す。
  ・ ヒゲがない場合には、鼻の下の溝を描く。


 しかし、鼻の下の溝については、「現代人よりも古い人類では、そんなものはなかった」と明示するべきなのだ。それが私の立場である。

( ※ 「それはおまえだけの理屈だろ」という批判は、通らない。なぜなら、「鼻の下の溝はなかった」とはっきりと論理的に説明しているのは、私だけだからだ。一方、「鼻の下の溝はあった」と見なす見解は、ただのヤマカンであり、論拠がない。化石的には、鼻の下の溝の有無はまったくわからないので、いい加減に推測しているだけだ。)

 ──

 ともあれ、いずれの点でも、こう言える。
 「学者たちは、古人類というものを、現代人に似せすぎる形で想像している」

 人は、自らと似た姿で、神というものを想像した。
 同様に、人は、自らと似た姿で、古人類というものを想像した。しかしそれは、何ら根拠のない、思い込みにすぎないのだ。しかもそれは、化石的事実に反することさえある。

 古人類は、現代人からはかなり懸け離れたものである。そのことをはっきりと理解するべきだ。
( ※ なのに、それができないのは、「現代人とネアンデルタール人は混血した」という例のガセネタにとらわれすぎているせいである。「現代人とネアンデルタール人の混血など、ありえない。両者は大きく懸け離れた種であり、頭蓋の構造は大きく異なる」と理解するべきだろう。)
( ※ 逆に言えば、「両者は大きく懸け離れた種であり、頭蓋の構造は大きく異なる」という化石的事実を直視すれば、「両者が混血するはずがない」という結論も、容易に得られるはずだ。)



 【 関連項目 】

 → ネアンデルタール人についての項目一覧 (サイト内検索)
posted by 管理人 at 23:59| Comment(2) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
面白い指摘ですね。確か恐竜も30年前ぐらいは同様な誤解が蔓延してましたね。どうしても、首を天空に伸ばした姿勢にこだわるために、鼻が頭頂部についた復元図があって、その理由を水棲のため、鼻が頭頂部にあるほうが、息継ぎに有利とありました。
その後、力学的な考察から恐竜の正しい姿勢は首が水平に伸びている状態だと分かり、そうなると、頭頂部にある鼻孔は普通に進行方向についていて、不自然さがまるでなくなりました。
逆に口のほうが現代人の常識よりも下向きについていますが、それも常に木の葉を食べる恐竜にとって、当たり前の構造だったというオチになりましたね。
Posted by YT at 2013年08月21日 01:38
頭骨のガッチリとした造りはネアンデンルタール人が大柄で屈強な事、後頭部の発達は大きな小脳を示し、強靭で優れた運動能力を保持していたことを示唆しますね。
現代人は貧弱だが、集団活動で劣った能力を補い、言語と道具、工具による戦闘能力向上、戦略で優位になったのでしょう。
もしかしたら、集団活動を維持するチンパンジー(ボノボ?)と、マウンテンゴリラのような違いかも知れません。
Posted by 京都の人 at 2013年08月21日 07:52
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