2013年08月18日

◆ 鳥の羽の進化

 鳥の羽はいかに獲得されたか? その進化的な歴史はどうか? ──

 この問題は、進化論の謎とされている。そこで、この話題を扱った書籍がある。下記だ。



羽―進化が生みだした自然の奇跡


 その書評を、一部抜粋しよう。
 鳥がどのようにして羽と翼を獲得したかという問いに答えが出せたら、進化史最大の謎のひとつは解ける。だが、こちらはまだ模索中なのである。
 最大の問題は、軸が中空になっている鳥の羽が平たい恐竜の鱗(うろこ)から進化した理由が説明できない点にある。
 この問題を巡っては、地上派と樹上派が目下激闘を繰り広げている。地上派は、地面を二足で走り回りジャンプすることから飛行の進化は始まった、と主張する。
 いっぽう樹上派は木や崖の上から落下し滑空する体験から始まったと反論するのだが、地上派は飛べない鳥が坂を駆け上がる際に翼をはばたいて登る事実を発見、二足歩行していた鳥の祖先が高速で坂を駆け上がるとき、斜面にしっかり足を押しつけられるよう翼を使ったと考えついた。F1の車に水平翼が付いているのと同じ理由だ。
( → 朝日新聞・書評欄
 このうちの最後の箇所がおかしい。次の部分だ。
 地上派は飛べない鳥が坂を駆け上がる際に翼をはばたいて登る事実を発見、二足歩行していた鳥の祖先が高速で坂を駆け上がるとき、斜面にしっかり足を押しつけられるよう翼を使ったと考えついた。F1の車に水平翼が付いているのと同じ理由だ。
 こんなことはありえない。
 F1の車に水平翼が付いているのは、スポイラーによって下向きの圧力を掛けるためだ。しかし鳥類が走るときに下向きの圧力を掛ける必要など、あるはずがない。重力だけで十分に接地できるからだ。(浮き上がったりしない。)
 だいたい、重たい走鳥類に、小さな翼があって、少しばかり作用したところで、たいした効果があるはずがない。




翼を振りながら走るレア


 さらに言えば、走鳥類の羽は、下向きの圧力を掛けるためにあるんじゃない。(それじゃ方向が反対だ。) どちらかと言えば、走るときに体のバランスを取るために翼を使っているようだ。(人間が二足歩行するときに手を動かすようなものだ。)
 
 つまり、上記の説は、まったく間違っている。
 では、正しくは?

 ──

 これについては、以前、次のように論じた。(リンク先参照)

 (1) 鳥型生物の2系統
 「鳥類は、二つの系統がある。一つは古鳥類の系統で、始祖鳥などを含み、恐竜絶滅とともに絶滅した。もう一つは、新鳥類の系統で、恐鳥類から走鳥類を経て現代の鳥類に進化した」


 (2) 樹上性/地上性(飛ぶ前)
 「前者は、樹上性だった。後者は、地上性だった。その他、飛べないけれども翼を持つ恐竜もいた」


 このことを踏まえて、次のように言える。
 「古鳥類は、樹上性だった。樹上にいて、滑空するものだった。その羽ばたく力は弱かった。(だから滑空だけ)」
 「新鳥類は、地上性だった。最初は翼がなくて地上を走るだけの走鳥類だったが、のちに少しずつ翼を発達させて、ジャンプできるようになり、さらには飛翔できるようになった。飛翔するに際しては、体の小型化も必要だった」


 ──
 
 では、これで問題は解決しただろうか? 

 (i) 地上性
 地上性については、問題は解決したと言える。
   走鳥類 → キジ類 → 他の鳥類

 という順序で、飛翔能力を発達させてきた。
 このとき、
  ・ 体の小型化
  ・ 翼の大型化
  ・ 翼(前肢)の筋肉の拡大
  ・ 竜骨突起の発達
  ・ 羽毛の発達

 これらが同時に起こることで、飛ぶ鳥としての進化をなしていった。特に羽毛について言えば、次のように発達経路がわかっている。


feather.png

  《 羽毛の発達史 》( Wikipedia から。)



 この件は、下記で詳しく論じた。そちらを参照。
  → 鳥の翼と羽毛
 
 特に最初のあたりは、下記を参照。
  → 走鳥類の羽毛と足
 ここでは、ダチョウの羽毛の画像が二つ、リンクで示されている。それを見ればわかるように、ダチョウの羽毛はあまり発達していない。

 (ii) 樹上性
 樹上性については、問題は解決したとは言えない。古鳥類が滑空するのはいいが、いきなり滑空する能力を持つというのは不自然だ。いったいどうやって滑空する能力を獲得したのか? これは謎だ。

 そこで、本項では新たに次の説を提出する。
 「樹上性の鳥類(古鳥類)は、最初は、滑空する能力を持たず、翼も持たなかった。単に小型化して、樹上を動くだけだった。最初は足でピョンピョンと跳ねるだけだった。その後、変形した前肢と発達した羽毛(つまり翼もどき)を持つ個体が現れた。翼もどきを持つ個体は、樹上でピョンピョン跳ねるときに有利だった。特に、枝から枝へと移るときに有利だった。それゆえ、このの個体の子孫は、翼を発達させながら、進化していった」

 ここでは、「滑空」の前に、「枝から枝への移動」という動きがあった。このとき、「翼もどき」が有利だったのである。
 そして、「翼もどき」が発達するにつれて、「枝から枝への移動」の距離が伸びて、「滑空」に至ったわけだ。

 なお、遺伝子的には、次のように言える。
 「翼は、形状は巨大だが、遺伝子的には前肢の遺伝子と同様である。翼の骨格が進化する際には、前肢の遺伝子が少し変化するだけで足りた。つまり、わずかな遺伝子の変異によって、翼という巨大なものが発達した」


 ──

 この説に当てはまる具体的な鳥類としては、次のものが考えられる。
  ・ アウロルニス
 これは最近になって発見された、初期の古鳥類の化石だ。かつて最古とされたアンキオルニスよりも古いようだ。画像は下記。


aurornis1.jpg
出典:CNN


 ──

 最後に、冒頭の質問に答えておこう。(下記の [ 付記 ] を論拠としているので、そちらも参照。)

Q 鳥の羽はいかに獲得されたか? その進化的な歴史はどうか?

A 鳥の羽は、最初は共通祖先である恐竜の段階で獲得された。
 その後、翼を持たない恐竜もいた。こちらは、羽毛を持つが、鳥類にはならなかった。
 他に、古鳥類があった。こちらは、羽毛を持ちながら、樹上生活をしているうちに、翼と羽毛を発達させて、滑空能力を獲得した。
 他に、新鳥類があった。こちらは、羽毛を持ちながら、恐鳥類から走鳥類へと進化した。さらに「飛ぶ鳥」へと進化したが、その過程で、翼と羽毛を発達させた。
 羽毛の発達は、それぞれの過程で、いずれにおいても生じた。つまり、並行進化である。それというのも、羽毛の発達は、遺伝子的にはあまり大きな違いが必要とされないからだ。ケラチン質の遺伝子の多少の変化だけで、さまざまな羽毛の変化が生じた。同様の理由で、異なる系統でも、同一の遺伝子変化が生じた。かくて、異なる系統で、ほぼ同一の羽毛が発達することとなった。
  


 [ 付記 ]
 ついでに言うと、……

 翼が発達した進化は、見た目では大きな進化に見えるが、遺伝子的にはたいしたことのない(容易に起こる)進化だったのである。

 また、羽毛も同様で、もとは皮膚の角質からの進化だが、これも遺伝子的にはあまり大きな進化ではなかったようだ。というのは、材質的にはいずれも「ケラチン」というタンパク質であり、その形状が変化するだけで、さまざまな器官になるからだ。次のような。
  毛・爪・ウロコ・クチバシ・ツノ

 参考のため、Wikipedia から抜粋する。
 毛、爪等のほか、洞角、爬虫類や鳥類の鱗、嘴などといった角質組織において、上皮細胞は硬質ケラチンと呼ばれる特殊なケラチンから成る中間径繊維で満たされて死に、硬化する。
( → Wikipedia
 なお、羽毛の進化が容易になされたことの理由の一つは、次のことだろう。
 「毛・鱗・羽などは、個体形成の最後の段階でなされる。ゆえに、変異があっても致死的ではない。だから、さまざまな変異が生じても、そのまま誕生した。かくて多様な形状が生じた(多様な遺伝子変異が許容された。)」
 こういうことは、他の肉体器官ではありえなかった。多少の変異があれば、それはたいてい致死的となるがゆえに、誕生不可能となるからだ。
 一方、毛・鱗・羽などは、変異が致死的ではないがゆえに、多様な変異が可能となった。つまり、多様な「進化の実験」が可能となった。それゆえ、遺伝子に多様性が生じて、形態に多様性が生じた。
  


 【 関連項目 】

 → 《 恐竜と鳥の系統図 》
  


 【 関連書籍 】



鳥類学者 無謀にも恐竜を語る

posted by 管理人 at 20:59| Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このシリーズ楽しく読ませていただいています。思うに、翼の進化ってそんなに奇跡的なものではなく、数百万年あればどれかの種族が獲得できるものですよね。
鳥類以外にも、コウモリ、ムササビ、トビウオなんてものが程度の差はあれ飛翔能力を身につけています。しかも翼に進化した部位はそれぞれ異なっています。ただ、鳥類が空に進出したときはライバルがおらず、環境に高度に適応する時間が十分取れたのに対して、他の種族は既に鳥類がいたので、ニッチの環境でしか滑空できなかったのでしょうね。
Posted by YT at 2013年08月18日 23:09
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