記録的な猛暑が続いている。四万十川で史上最高の気温を更新しただけでなく、東京でも 38.3度という最高気温だった。(東京の過去最高は 2004年7月20日 39.5度。)また、東京の最低気温は 30.4度で、史上最高の値となった。
→ 「最低気温」が30.4度! 東京、ここ138年でいちばん暑かった
ただ、夏休みのおかげで電力不足になっていない。この件は、先に述べた通り。
→ 真夏の電力事情(2013)
では、今は夏休みでいいとしても、夏休みが終わったら? 8月下旬に猛暑が再来したら、電力危機は起こるのではないか? その懸念がある。
「8月下旬なんて、そのころは暑さも済んでいるさ」
と思う人も多いだろうが(私もそう思っていたが)、あにはからんや。昨年(2012年)の最大電力は、8月30日に発生した!
最大需要が発生したのは8月30日(木)の15時で、電力使用量が 5078万kWに達した。前年の最大電力よりも3%増加し、2010年と比べると15%減少した。昨年は8月30日に最大需要が発生した。そのときの気温は 35.0度だった。
8月30日の最高気温は東京電力の管内平均で 35.0度を記録した。これは最大電力を記録した日で比較すると前年の36.0度、2010年の36.2度よりも低かった。
( → itmedia )
一方、今年の最高気温は、東京では 38.3度だった。では、今年の8月30日ごろに 38.3度になったら、どうなるか? 昨年の 5078万kWを越えるのは確実だが、どのくらいになるか? 仮に、5078万kWに 300万kWを上乗せすると、5378万kWである。一方、今夏の東京電力の最大供給は 5492万kW らしい。( → 8月9日の値 ) その差は 114万kW。余裕はたったの2%しかない! これはやや危機的である。ギリギリセーフという感じだ。
──
さて。上の 300万kW というのは、いい加減な値だった。ヤマカンである。もう少し数字を精査してみよう。
まず、2011年の値を見る。
→ 東電の電力状況(2011年)
ここから、次のグラフを得る。(たくさん)
→ 東電2011 (データ集)
ここから、次のことがわかる。
・ 8月10日前後は、夏休み前だが、最大電力は 5000万kW 程度。(4950〜5000)
・ 8月12日は、一部が夏休み入りで、最大電力は 600万kW 程度。
・ 8月13〜15日は、週末とお盆休みで、最大電力は 4000万kW 程度。
ここから、次のように推定できる。
・ 8月10日前後は、夏休み前で、最大電力は 基準値(ゼロ水準)
・ 8月12日は、一部が夏休み入りで、最大電力は 600万kW 減。
・ 8月13〜15日は、週末やお盆休みで、最大電力は 1000万kW 減。
ここで、気温について考慮して補正を要するので、気温を見る。
→ 東京 2012年8月
最高気温は、13日が 34.5度、16日が 34.5度、15日は 33.4度。他は 30度台で、あまり暑くない。12日は30.9度。
10日と11日は、31.2度と 31.6度だから、普通である。それでいて 5000万kW という大きな電力を消費した。
13日と 15日はかなり暑いので、電力は多めに使用されたはずだ。それでも 1000万kW 減だ。気温が 10日と11日 ぐらいならば、もっと減っただろう。1200万kW ぐらい。つまり、お盆による減少は、1200万kW ぐらいだと見込める。
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以上のことを、今年の値に当てはめる。
まず、今年の気温は、こうだ。
→ 気象庁 2013年8月
どうも気温が高すぎて、基準値を取りにくい。とりあえず8月6日を基準値とすると、最高気温が 32.0度で、最大電力は 4547万kW。8月9日は、最高気温が 34.5度で、5093万kW。(今夏の最大記録。)つまり、気温が 32.0度から 34.5度に上がると、消費電力は 4547万kW から 5093万kW に上がるようだ。546万kWの増加。気温が 34.5度から 38.3度に上がると、消費電力はさらに増えそうだが、どっちみちフル稼働しているエアコンが多いから、比例的には増えないだろう。
昨年の最大値は8月30日の 5078万kWだが、今年はすでに8月9日に 5093万kWを達成している。このときの気温は 34.5 だから、昨年よりもかなり高い。今年は昨年よりも節電が進んでいるようだ。
12日は、最高気温が 35.8度で、最大電力は 4694万kW だった。去年の例からして、日程による効果が 600万kW 。本来ならば 4400万kW になっていいはずだが、300万kWも多い。これは、気温による効果だろう。前年より4度も高い 35.8度なので、300万kWも増えたわけだ。
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いろいろ考えると、次のような感じで予想できる。
・ 34.5度 → 5093万kW (8月9日の現実)
・ 38.3度 → 5393万kW (8月下旬の予想)
予想の方は、かなりおおざっぱな値で、100万kW ぐらいの誤差はあるだろう。悪くすると、5493万kW ぐらいにはなりそうだ。
一方、最大供給は 5492万kW らしい。(前出)
その差はたったの 1万kW である。ゼロ同然。
つまり、今夏の予想を見ると、「最大需要と最大供給がぴったり一致する」というふうになる可能性は、十分にある。もし8月下旬にふたたび 38.3度の猛暑が訪れれば。
そして、そういう可能性は、十分に起こり得るのである。その場合への対策が必要だ。
過去において、「原発事故なんか起こるはずがないさ」と思って対策を怠ってきた結果、ひどい原発事故の災害が起こった。事前の対策が不足していたのである。
今夏の電力不足に対しても、あらかじめ十分な準備が必要だろう。
[ 付記1 ]
その準備は、あるか? 一応、ある。それは「需給調整契約」である。
では、どのくらいの値か? たぶん 300万kW 以上あるはずだ。そう思って、確認してみたら、次の情報を得た。
2013年度夏季・東京電力の計画調整契約電力:202万kW、随時調整契約電力:174万kW、合計376万kWです。それに対して東京電力管内の2013年度夏季の需要見通しは、5450万kWなので、2013年度夏季最大電力需要の7%弱まで、DRでカバーできる計算です。300万kW どころか 376万kW もある。これがそっくりそのまま、「万一の場合への予防措置」となる。
( → FERCのDR評価レポートを踏まえて−日本のDRの現状把握 )
要するに、スマートメーターなんかよりも、「需給調整契約」の方がはるかに有効なのだ。そもそも、真夏の猛暑のときには、スマートメーターががっても、家庭ではクーラーを消すはずがない。というか、消してはならない。(電器の節約のために熱中症になって死んでしまうのでは、本末転倒だ。スマートメーターというのは、殺人機械なのだ。全部取り外してしまうのが正しい。特に、お年寄りの家庭では。)
→ スマートメーターの普及強行をやめよ
[ 付記2 ]
最も好ましいのは、「需給調整契約」という臨時措置なしで、あらかじめ電力を抑制することだ。特に、家庭でなく企業で。
これは要するに、「夏休み(バカンス)を増やす」ということだ。そうすれば、お盆休みや週末みたいに、電力が一挙に 1000万kW 以上も激減する。このような効果は、スマートメーターによる節電ではとうてい不可能だ。
結局、夏の電力不足に対する最大の対処策は、「夏休み(バカンス)の普及」である。政府はこの方針で制度をとと述べるべきだろう。たとえば、「夏休み(バカンス)を2週間以上取る企業には減税」というふうな。
この場合、減税は、「国民の間で富の配分を変える」というがあるだけだ。(「実施していない人々 → 実施している人々」というふうに金が移動する。) だから、たとえ 1000億円をかけても、その金は国全体では1円も無駄にはならない。コストはゼロである。
一方、スマートメーターの場合には、機器の製造費用がかかる。これは莫大なコストになる。1000億円のコストをかければ、まるまるコストとなり、国民の負担(つまり損失)となる。
ただ、官僚と業者だけは、その 1000億円を食い物にして、1000億円の売上げと、数十億円の利益を得る。……しかし、これはあまりにも非効率だ。「1000億円をかけて 数十億円の利益」というのはね。
それでも、「1000億円の損があっても、それはオレの損じゃない。他人の損だ。それよりは、おれが数百万円の利益を得ることが大切だ」と思うエゴイストが多い。そのせいで、スマートメーターは普及しつつある。
で、その利権構造のために、朝日新聞が利用される。朝日新聞は「エコです」と告げると、とたんにルンルンと浮かれて提灯記事を書く。で、朝日に「スマートメーターはエコですよ」という記事を書かせて、「国民の 1000億円を無駄にして、かわりに自分の財布を豊かにする」という利権構造が、実現するのである。
かくてスマートメーターばかりが焼け太る。
→ スマートメーターの普及強行をやめよ
( ※ 私が「止めろ」と言っても止まらない。人々は原発を止めることばかりに、やたらと熱中している。)