
超音速機の衝撃波は、翼から下向きに延びて、地上に達する。そして地上に大きな被害をもたらす。(右上図)
ここで、翼を平面状でなく、(正面から見て) U 字形の曲面状にすれば、衝撃波は広く拡散する。そうすれば、直下の地上では、衝撃波の被害が弱まるだろう。(右下図)
──
これには次の反論も来そうだ。
「密度が下がっても、面積が広がるのでは、差し引きして、被害の総計は同じでは?」
だが、そんなことはない。
(i)ピーク値が大きく下がることで、被害の規模を下げることができる。(ピーク値が半分になれば、その場所の被害は4分の1になる。あくまで概算だが。)
(ii)地上に達さずに空中に逃げていく分がかなりある。そのエネルギーの総量は、右上図よりは右下図の方が大きい。逃げていく分が大きいのだから、地上に達する総量は少ない。
というわけで、かなりの効果が見込める。
──
さらには、次の案もある。
「機首では、空気を上下に分けるのではなく、左右に分ける。そのことで、衝撃波を左右に飛ばして、(下方の)地上には達しないようにする」
具体的には、戦艦の船首のような形だ。

この戦艦の船首にぶつかった水は、左右に分かれて流れる。
それと同じように、飛行機の機首にぶつかった空気が、左右に分かれて流れるようにする。そのことで、衝撃波が左右に向かうので、下方の地上には向かわなくなる。
──
以上で、二つの案を示した。これらは、衝撃の総量を減らす案ではなくて、衝撃波が地上に向かわなくなるようにする案である。つまり、地上の被害を減らす案である。
一応、ここで提案しておく。
[ 付記 ]
実際にどれだけ効果があるかは、わからない。というのは、次の懸念があるからだ。
「空気を下に向けることで揚力を得ているのだから、空気を下に向けないと、揚力を得られなくなる」
ただ、揚力は、機体と翼の全体で得られる。一方、衝撃波は、特に先端で発生する。だから、先端における空気の流れを左右にずらして、揚力は先端以外で得れば、この矛盾は解決する。
また、次の懸念もある。
「翼を曲面状にすると、空気が横に漏れるように流れるので、揚力を十分に得られなくなる。そのせいで燃費が悪化する」
それはその通り。だから、一般の飛行機では、本項の案はお進めできない。ただ、超音速機の場合は、燃費が少しぐらい悪くなっても、衝撃波を下げることの方が優先する。
( ※ そもそも、燃費が重要なら、燃費がすごく悪い超音速機なんか使う意味がない。)
ともあれ、いろいろと問題は生じる可能性がある。それゆえ、事前にいろいろとシミュレーションして、どうなるかを確認する必要があるだろう。
本項はあるまで、アイデアの一つとして提案しておくにとどめる。実現性は、シミュレーションによって十分に吟味しないと、わからないだろう。
【 関連項目 】
→ 超音速機の衝撃波の解消は翼で (前項)
→ 超音速機の衝撃波の解消は、針で