2013年06月16日

◆ 日本版 NIH とバイオクラスター

 日本版の NIH を設置しよう、という政策がある。これに実効性をもたせるには、バイオクラスターを構築するといい。そのための場所もある。 ──

 日本版の NIH を設置しよう、という政策がある。
 《 日本版NIH、革新的な医療研究支援−縦割り行政の解消狙う 》
 政府は革新的な医薬品や医療機器の創出に向けた研究開発の司令塔として設置する新組織「日本版NIH」について、厚生労働省が所管する独立行政法人、医薬基盤研究所を内閣府へ移管し改組する格好で創設する方向で調整に入った。
 政府組織の肥大化を防ぐため既存の独法を活用。さらに首相直属の機関である内閣府の所管とすることで、関係各省による縦割り行政の解消を狙う。製薬企業など民間からも研究開発資金を集めて一体で運用する官民ファンドの機能を持たせる構想。2014年度の創設を目指す。
 日本版NIHは医療・生命科学分野の予算配分権を持つ米国国立衛生研究所(NIH)をモデルに創設する。厚労省や文部科学省、経済産業省から同分野の研究開発予算を「調整費」の名目で受け取り国家戦略上、重要な研究開発プロジェクトに重点配分する。難治性のがんなど治療法の確立が遅れている疾患領域、iPS細胞を用いる再生医療の研究開発を後押しする。
( → 日刊工業新聞
 これに対して、日本の医学関係の学界は、「基礎研究費が削られる恐れがある」という警告の声明を出した。
  → 日本版NIH:54学会が緊急声明「悪影響を懸念」
 言っていることはわかるが、あまりにも消極的すぎる。物事の短所ばかりを見ており、長所を見ようとしない。「新しいことをすると、問題が起こりそうだから、新しいことはやめておこう」というのは、あまりにも年寄りじみた発想だ。

 で、どうするか? 何かした方がいい、とは思っているようだが、どうすればいいかわからないでいるようだ。たとえば、下記。
  → 大隅典子の仙台通信
 ここでは「日本版 NIH を作ったからといって、それで済むことにはならない」というふうに指摘しているが、これもまた批評家じみた揚げ足取りにすぎない。何ら建設的な意見がない。

 ──

 ここで、次の記事がある。
 「米国のバイオクラスター」(読売新聞・朝刊 2013-06-16 )
 ネットにはなく、紙の新聞だけなので、以下で簡単に紹介しておく。
  米国のボストンのそばのケンブリッジ地区には、MIT がある。(そばにはハーバード大医学部もある。)そこではバイオ関係の研究所が密集している。「自動車で近距離」なのではなく、「歩いて行ける距離」に、多くの研究所が集まっている。これがバイオクラスターだ。ここで産学交流などがなされて、バイオ関係の研究がおおいに進展している。

 こういう趣旨の話がある。(cf. 参考情報(PDF) )
 そこで、「これを日本でも真似ればいい」という発想が生じる。

 ──

 先の「日本版 NIH 」という構想と合わせると、次のように提案できる。
  ・ 日本版 NIH を構築する。
  ・ その研究所を1箇所に集積するべきだ。
  ・ つまり、組織図だけの統合でなく、立地を含めた統合だ。
  ・ そのことで、研究者の交流を高める。
  ・ さらに、民間の研究機関や大学も集積する。


 このうち、最後の1点が重要だ。これによってバイオクラスターを日本でも構築できる。

 ──

 問題は、立地だ。それに適した広大な立地場所は、日本にあるか? ざっと見たところ、23区内には、広大な土地はもはや残っていない。湾岸地域にすら、残っていない。
 なお、理研のバイオ研究所は、鶴見の湾岸地域にあるが、ごく狭いものだ。可哀想なほど狭い。(横浜市立大と場所を分けあっている、という情けなさ。)
  → Google マップ

 しかし、これで諦めては、根性なしだ。湾岸部で駄目なら、内陸部にありそうだ。そう思って、あちこち探したら、うまい場所が見つかった。相模原駅前の広大な空地だ。
  → Google マップ

 ここは、米軍の相模総合補給廠だ。
  → Wikipedia
  → 相模原市の解説 (面積 214.4 ha だとわかる。)

 ここは将来的に返還される見込みなので、ここにバイオクラスターを構築するといい。
 
 ──

 利点は、いくつかある。
  ・ 東京近辺に残された、稀な広大な土地である。
  ・ 駅前に立地している。
  ・ リニア新駅(橋本駅)の隣である。
  ・ 現状でも、相模原駅から東京駅まで 1時間11分で済む。( → 路線
  ・ 通勤圏の東京西部や横浜市は、居住に適している。( → 地図


 ──

 まとめ。

 次の四つの問題を、まとめて解決できる。
  ・ 日本版 NIH をどうするかというプラン。
  ・ バイオクラスターによるバイオ産業育成。
  ・ 米軍基地の跡地利用。
  ・ リニア新駅の開設にともなう地域振興。

 それが、本項のプランだ。



 [ 付記 ]
 政府が何か提案したとき、そのプランの粗探しをして、難癖を付けても、つまらない。それよりは、その提案を上回る、圧倒的に素晴らしいプランを呈示すればいい。
 政府のバイオ研究機関は、全国各地に分散しており、研究者間の交流も少ない。これでは研究の進展も望めない。
 そこで、日本の優れた研究者を一箇所に集めて、さらに民間の会社の研究所も招いて、大きな研究集積地(バイオクラスター)を構築するべきだ。

 なお、各種の研究所をここに集めれば、各種の研究所の跡地ができる。その跡地は、別の研究機関に与えてもいい。あるいは、場所が狭ければ、民間に売却してもいい。そうれば、土地代によって、このプランの推進費用を(少し)まかなうことができるだろう。

 ともあれ、次から次へと波及する形で、日本の研究を大幅に前進させることができる。ちょっとした「わらしべ長者」みたいな効果が生じる。
posted by 管理人 at 20:00| Comment(9) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>日本の優れた研究者を一箇所に集めて、さらに民間の会社の研究所も招いて、大きな研究集積地(バイオクラスター)を構築するべきだ。

 大筋でそうだと思います。
 独創研究が活発な研究機関の運営方法も取り入れれば、鬼に金棒です。

 古賀茂明氏は、官僚組織の悪弊を摘発されたそうです。「産総研」に出向中、「裏金づくり」を摘発したと。商社の元社員がタレこんで発覚。その元社員は「書類のコピーもあります」とメールを送りつけてきた。古賀氏は徹底的に調べたら、年度内予算の余った分をプールするために、商社の協力を得て架空の伝票を出してもらっていた。 その金を着服していたのかというと、全然。予算がついていない研究を進めるために使っていた。悪質性はないので、懲戒処分や訓告で収拾させたと。古賀氏は、官僚は放っておくと、とんでもない違法行為に走るものだと、その話を結んでいる。

 研究の価値は「無から有を生み出す」創造にあるが、研究が成功するかどうかは不確実で、浮かんだ着想を試してみる段階が不可欠。大体は失敗する。それは支払うべき対価です。試行錯誤をやっているうちに勘が磨かれ、見通しや意外な発見をする。逆にいえば、そのような模索を、ある程度は自由にできるようでなければ、画期的な研究は生まれてこなくなります。それが研究開発というものの本質です。

 評価主義のやり過ぎもそうですが、研究者たちの箸の上げ下ろしまで管理したがるほど、画期的な成果は生まれなくなります。研究がやりづらくなる細則で縛り上げ、それを破ったら犯罪者扱いするのは馬鹿げています。
 古賀氏は、ルールを遵守すべしという正義感のみで、「産総研」の独創的な研究が生まれてくる源流を潰したかのように見えます。多分、パワーは落ちるでしょう。彼は正直な人なので、悪気はなかったとは思いますが。
Posted by 思いやり at 2013年06月16日 22:33
どっかで聞いたのですが、大学の教授の研究室の一階部分に、コーヒーが飲める雑談部屋を作ったら、教授同士が意見のやり取りが、盛んになって、いいアイデアが、出やすいそうです。

そんな感じかな〜
Posted by だい at 2013年06月17日 09:22
政府による、設立の趣旨。 (PDF)
  → http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai7/siryou06.pdf
Posted by 管理人 at 2013年06月17日 11:36
研究の発展段階に応じた研究開発資金制度の構築
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu11/siryo/05030101/008/all.pdf
などは、よく整理されています。
>基礎研究への政府の研究開発資金には、以下のように、研究者の自由な発想に基づく研究を支援するものと、特定の政策目的に基づく基礎研究を支援するものがあり、それぞれの意義を踏まえ、推進することが必要。

 自由な発想により、従来なかった新機軸を生み出す段階を区別して扱う必要があります。 山中伸哉氏のような科学者が、目立たない場所で、研究の自由を得ることで、欧米が文句なく画期的で超重要な研究だと認めた、iPS細胞が生み出されました。

 山仲伸哉氏のプレゼンを聞いて、岸本忠三氏のような眼力のある大御所が科学研究費助成科研費配分を審査すると、「iPS細胞はできるわけがないと思ったが」「百に一つも当たればいい。こういう人から何かでてくるかも知れん。よし応援したれ」と活きた。岸本氏の理解は非常に大きかった。海のものとも山のものともつかない研究を支援する仕組みが重要です。

 山仲伸哉氏のような、「できることを無難にやる」人ではなく「再生医療は、やらねばならない」など、人生の使命感を研究に投入するような人が重要です。そのような成熟した人を大手の大学が引き抜き、彼がやりやすいような研究機関を作る。つまり、真の人材に合わせた組織作りの余裕を残しておくことも大切です。萌芽研究段階は、確率論の世界で、誰がブレークスルーをするか分からないので、米国は、少なめの予算を広く配分しています。

 つまり、逆に考えて、山仲氏を特定プロジェクトに配属して、山中氏が指示通り働いているかチェック管理するシステムでは、iPS細胞は絶対生まれないでしょう。
Posted by 思いやり at 2013年06月17日 21:59
研究開発予算は無尽蔵ではない。厳しいが、査定する側が納得する予算を査定される研究者が引っ張ってくる能力(説得力)は必要。
剰余予算をプールして隠れた研究予算にするというのはだめだ。着服してもわからない。文官はそれが有意義かお遊びかを判断できない。なら、越年で繰り越せる仕組みにすればいいのでは?

予算を年度で考えると余ったり足らなくなったりする。
一方で思ったよりも研究が進んでしまったため予算不足になり、方や行き詰まって結果の出ていない、当年度予算を消化できていない部門もある。
行き詰まったところの当年度予算は余る。その剰余金はその研究者ではなく、予算不足の研究者へ廻す方が効率的だろう。
結局は単に越年会計を単年度予算にどう繰り込むかという問題にもなりそう。
Posted by 京都の人 at 2013年06月17日 23:38
医療研究を一本化するのならわかりますが、今回の計画の最大の問題点は、生物の基礎研究まで削って医療研究に付け替えることです。目先の功を焦る研究が良い研究として評価されます。これを些細なことと考えますか?
Posted by みむ at 2013年06月18日 10:09
> 生物の基礎研究まで削って

 その件は運用の問題なので、本項の話題とは別の話題です。
 多くの学会が反対しているようなので、最終的には解決するでしょう。特に心配する必要はなさそうです。
Posted by 管理人 at 2013年06月18日 12:06
>越年で繰り越せる仕組みにすればいいのでは?

 有効な方法です。善用すれば研究は進みます。
悪用を恐れて、不合理な「使いきり方式」を続けるのは、そろそろ終わりにしましょう。
 ある程度の繰り越しを認め、模索的な自由研究も部分的に認めると、独創研究は進みます。
独創研究には、無駄に見える試行錯誤が必要ということを認知することです。
 大きな成果が出れば、それなりの高い処遇をすればいいでしょう。ニンジンも必要です。

 研究にも「表と裏」があります。文系の査定者用の「受けの良さそうな研究」を表に出さざるを得ない。
本音の「価値のありそうなドブロク研究」は、やや密かにでも、並行してやれることが重要だった。
 民間企業でもそうだった。創業者が元気だった頃の3Mやソニーは、それを認めていた。

 独創的な研究が国家の命運を左右する時代です。文科省も理解を相当に深めつつあります。
制度改革を期待したいですね。
Posted by 思いやり at 2013年06月19日 00:28
> 文科省も理解を相当に深めつつあります。

それが本当ならいいことですが、文科省と付き合いがある人の話を聞く限り
・頭が固くて話にならない
・あいつらが日本を駄目にしてるんだよなぁ
など、あまりいい話を聞かないです。
まぁそもそも「国のため」ではなく「省益のため」は行動原理になっているのは文科省に限った話じゃないですが、文科省は特に酷いという話です。
厚生省と比べてどちらが酷いかは、(厚生省につながりが無いので)ちょっと判断付かないですけど。
Posted by T.M. at 2013年06月19日 14:38
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