2013年06月14日

◆ 眼は一つか二つか

 動物の眼は、二つある。これはどうしてか? もともと同じものが二つできるようにして、二つが同時に誕生したのか? ──
  
 動物の眼は、二つある。ごく初期の動物であるピカイアやナメクジウオの仲間は、まだ眼をもたなかった。その後、初期の魚類(無顎類)が誕生すると、一挙に二つの眼をもつようになった。しかも、このころの眼は、すでに発達したものであったらしい。

 では、眼は、いかにして形成されたか? 遺伝子のシミュレーションをすると、「原始的な眼」から、「発達した眼」まで進化するには、特別に大きな進化は必要ではなかったようだ。
 パーカーの『眼の誕生』には40万世代で眼点がカメラ眼に進化するという計算結果が紹介されている。1年1世代とすれば50万年もしないうちにカメラ眼が進化するという計算になる。
( → 眼の進化 : 図あり )
 というわけで、眼というものは比較的複雑な構造に見えるが、遺伝子的にはさして特別な進化は必要ではなかったようだ。
( ※ 容易というほど簡単ではなかったが、見かけほどには複雑な進化ではなかった、ということ。)

 以上のほか、Wikipedia にも情報がある。次の項目を参照。
  → 眼の進化 - Wikipedia

 ──

 ただ、以上を見ても、「簡単なものから複雑なものへ」という構造の変化の過程はわかるが、が二つになった過程はわからない。
  ・ いきなり二つの眼ができた。
  ・ 初めは一つだったのが、二つになった。

 そのどちらだろうか? 
 前者は、ちょっとご都合主義であり、科学的・論理的に納得しがたい。(同じものが二つ同じにできるというのは、確率的にありえそうにない。)
 後者は、科学的・論理的には納得しやすいが、「一つだったのが、二つになった」という過程が不明確だ。そんなことが実際に起こるというのを実証しないと、納得できない。 ……(

 ──

 さて。ここで、新たな事実が発見された。単眼のサメだ。
  → 偶然の発見、メキシコで単眼のサメ
  → 原因は不明、メキシコで単眼のサメ
  → 珍しいアルビノ、メキシコで単眼のサメ

 2011年の記事なので、ちょっと古いが、それでも比較的新しい記事だ。ここでわかるように、「眼が一つだけのサメ」というものが出現したことになる。(奇形ではあるが。)

 ここから、次のことがわかる。
 「サメはもともと二つの眼をもつが、遺伝子の異常によって、一つの眼をもつことも起こりうる」

 このことから、逆の過程が起こったと推定できる。こうだ。
 「もともと一つ眼の動物から、遺伝子の異常によって、二つ眼の個体が発生することが起こりうる」

 このようなことは、先の () のところでは「起こりそうにない」と思えたのだが、上記のサメの例を見ると、「比較的容易に起こりそうだ」とわかる。
 つまり、「一つ眼の遺伝子セットから、遺伝子セット全体を再構築して、二つ眼の遺伝子セットを作り直す」というような手間は、必要ない。
 かわりに、「一つ眼の遺伝子セットから、特定の主遺伝子が少し異常を起こすだけで、一つ眼の遺伝子セットを利用しながら、二つ眼の遺伝子セットを作り出す」というふうになるわけだ。それゆえ、二つの眼はどちらもそっくりな構造をもつことになる。(眼は二つでも、同一の遺伝子から作られるからだ。)

 ──

 結論。

 単眼のサメが発見された。このことから、次のことが推定される。
 「初期の動物は一つ眼であった。その後、突然変異によって、二つ眼をもつ動物が誕生した」
 「この突然変異は、遺伝子全体を作り直すような、大規模な突然変異ではなかった。主遺伝子の一部が変異しただけだった。そのせいで、一つ眼を形成する遺伝子をそっくりそのまま利用して、二つ眼を形成することとなった」



 [ 付記 ]
 本項の意義は、何か? 次のことだ。
 「生物の進化では、最初の動物において、二つの眼をもつ原始的な魚類が誕生したというのが、謎に思えていた。それ以前のピカイアやナメクジウオの仲間に比べて、原始的な魚類といのは、すでに二つの眼を備えており、あまりにも大きな進化的な跳躍をしていると思えたからだ」
 「しかし、その疑問には、うまく答えられる。
 第1に、眼の構造の進化は、比較的小さな遺伝子変異で済む、とわかっている。(上記。Wikipedia など。)
 第2に、眼のが二つであることについては、先の「結論」の箇所で示した」。
 「こうして、二つの眼をもつ原始的な魚類が誕生したというのは、謎ではない、とわかった。二つの眼をもつ原始的な魚類というのは、構造的には大きな進化をなしているように見えるが、遺伝子的にはあまり大きな跳躍を必要としていないのである。そのことが本項によって説明された」



 [ 補足 ]
 サメというのは、普通の硬骨魚類と違って、軟骨魚類に属する。つまり、魚類のなかでも、原始的な魚である。そのことゆえ、単眼のサメというのも出現し得たのだろう。一方、単眼の単眼の哺乳類など、ありえないだろう。……という気もしたのだが、この推定は誤りであった。
 実は、単眼の哺乳類というのは、ときどき出現する。人間では死産になるのが普通だが、まれに生きたまま産まれることもある。さらには、豚などでも、単眼の哺乳類が生まれることがあるそうだ。
 「単眼の哺乳類」で検索すると、いくつかの画像が見つかるが、グロなので、お勧めしません。見ない方がいいです。
( ※ グロな生物の画像を見慣れている生物系の人ならば大丈夫だろうけど、アニメオタクで可愛い女の子の画像ばかりを見ている人は、やめた方がいいでしょう。見たら、げげげ、と吐くかも。)

 ただ、以上の画像のいずれでも、単眼は顔の中央にある。このことから、次のことが推定される。
 「原始的な魚類で二つ眼が出現する直前の生物では、一つ眼があったわけだが、その一つ眼は頭部(顔)の中央にあった」
 ここで、「顔の中央」というのは、ピカイアやナメクジウオにおいては、「体の先端」に相当する。それも、「口よりは少し上」の位置だ。
 そこに初期の一つ眼があったはずだ……と推定できるわけだ。

( ※ けっこうおもしろいですね。いろいろと推定が可能となる。それも、かなり高い確度を持って推定できる。ほとんど断言できるレベルだ。)
posted by 管理人 at 23:51| Comment(5) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
単眼から二つの眼より多くの眼へと進化しなかったのは(蜘蛛の眼,あるいは昆虫の複眼などはありますが),
多眼が主流に成らなかった(二眼で止まった)のは何故なのでしょう,,,っと,素朴な疑問が。。。
Posted by magickei at 2013年06月15日 06:52
> 二眼で止まった)のは何故なのでしょう

 魚を見ればわかるように、二つあればほぼ全方向が見えます。一つだけあると、反対側が見えません。一つに対して二つは圧倒的に有利。
 一方、三つあったとしても、あまり意味はない。あるとしたら、後ろが見えることだが、後ろが見えるような位置に目を付けることはできない。まさか魚のシッポのあたりに眼ができるわけじゃないし。
 頭部に眼がある限り、二つでも三つでも差はほとんどありません。メリットは何もない。むしろ、視野の重なりができる分、混乱が生じて、デメリットとなる。
Posted by 管理人 at 2013年06月15日 09:22
体が左右対称にできあがるようになって、その仕組みに乗っかっただけ、という気もします。
これが点対称で五角形だったら五つあったかも知れません。ただ、無意味なので退化して減る可能性も考えられますが。
体全体がそうなっていることの理由についてはまた別の話でしょうが、結果的にはそれで合理的な構造になっていますし。
Posted by M.S. at 2013年06月15日 10:22
遺伝子レベルで器官の発生を論じる形で、眼の形成を研究した成果もある。
 → http://openblog.meblog.biz/article/22196494.html
Posted by 管理人 at 2014年05月10日 14:40
 眼でなくて耳の話だが、鳥の耳はこうなっている、という話がある。
  → http://karapaia.com/archives/52258411.html
Posted by 管理人 at 2018年04月22日 20:04
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