日本のバリアフリーはあまり進んでいない、という意見があった。「電車に渡す板がない」と。
するとそれに対して、反論がわんさと押し寄せた。「ちゃんとあるぞ」と。
→ 海外在住者の twitter と反応
一方、車イスで戸惑っている人がいれば、みんなでわっしょいと担いでいく、というのは外国では普通に見られる情景だ、という声が複数寄せられた。
これだけを読むと、日本のバリアフリー度は劣っているように見える。一方、乙武氏の釈明では、次の見解があった。
自分で店を予約する際、あまりバリアフリー状況を下調べしたことがない。さらに、店舗に対して、こちらが車いすであることを伝えたことも記憶にない。それは、とくにポリシーがあってそうしているわけではなく、これまで困ったことがなかったのだ。これを読むと、「これまで困ったことがなかった」というのだから、日本のバリアフリー度は劣っていない(問題ない)ことになる。
( → 乙武のページ )
では、事実はどうなのか?
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これについて私がいろいろ考えたすえに出した結論は、こうだ。(推定)
「日本では、新築のビルが多いので、エレベーターの設置率が高い。一方、外国では、何十年も前の古いビルが多いので、エレベーターの設置率が低い。また、日本では土地の値段が高いので、傾斜の緩やかな階段を設置するだけのスペースを取れない。かわりに、エレベーターを設置して、階段のスペースを減らす」
この推定を補強する事実を示す。今回の銀座のビルでは、階段はとても急な傾斜の階段だった。下記の写真の通り。


出典
このような急な傾斜の階段を、人を背負って運ぶというのは、とても危険なことだ。とてもお勧めできない。やるとすれば、数人がかりで、いろいろと安全対策をしながら運ぶことになるだろう。
そもそも、このような急な傾斜の階段は、今日の建築基準では考えられない。法的には違法でない(出典)ようだが、こんな急な傾斜の階段のビルに店子が入るとは思えないから、実質的にありえない。それなのにこのビルがあるということは、よほど古いビルなのだろう。(実際、入口の敷石もひどく汚れているのがわかる。また、エレベーターは2階に止まらないというひどさ。)
というわけで、日本でも、古いビルでは、こういうふうに「バリアフリー」の度合いが低いビルがある。とはいえ、それは、古いビルだけだ。このくらい古いビルは、日本にはそう多くはない。
( → 参考情報:数寄屋ビル。 施行は 1962年3月 。築 51年ですね。)
( ※ ちなみに、東急文化会館は、 1956年 に開業し、2008年に解体された。52年間の寿命。)
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一方、外国では、築 50年どころか、築 100年以上のビルがいっぱいある。ストリートビューでローマやイギリスやフランスを見ても、古いビルがたくさんある。(ドイツは連合軍の空襲を受けて、ビルがいっぱい破壊されたから、同列には論じられない。)
このような古いビルでは、エレベーターの設置が不十分である場合も多いだろう。また、段差があることもあるだろう。そして、エレベーターの設置が不十分であったり、段差があったりすれば、人力で車イスを運ぶことになる。
だから、欧州では「人力で車イスを運ぶことが多い」ということは、「欧州の人々は善意が豊かである」ということを意味せず、「欧州ではバリアフリーがあまり進んでいない」ということを意味する。その理由は、「古い建物が多い」ということだ。
実を言えば、日本でも欧州でも、大規模店舗はたいていバリアフリーに適応している。しかし、小さいビルでは、そうではない。そして、小さい古いビルというのは、日本ではあまりないのだが、欧州にはたくさんある。(日本にも小さい新しいビルは多いが、小さい古いビルは多くない。)
このことゆえに、欧州ではバリアフリーがあまり進んでいると言いがたい。そこを補うために、人力による運搬が普及しているのだろう。
私としては、以上のように推定する。
( ※ 各国の市街地のストリートビューを見ることをお勧めする。)
【 関連サイト 】
現実にはどうか、という点では、世界各国の状況を報告しているページがある。
→ 世界のバリアフリー事情
具体例が乏しい簡単な情報ではあるが、おおまかな傾向は各国ごとにわかる。
たとえば、これ。
→ イギリスの事情
一般的に言って、日本に比べると、鉄道の状況は劣っているようだが、自動車(バスやタクシーなど)の状況は優れているようだ。
逆に言えば、日本はバスやタクシーのバリアフリー化があまり進んでいない。ニューヨークでは NV200 が採用されて、車イス仕様車もあるという。ロンドンでは、例のロンドンタクシーがすべて車イス対応だ( → 出典 )。
一方、日本のタクシーの旧型クラウンでは、とても対応できない。ごく例外的な「車イス対応の専用タクシー」を探すハメになる。ちっとも優しくないね。
ただ、最も優しいロンドンは、逆に電車がひどい。「ロンドンの地下鉄は古いので階段ばかりです。バリアフリーとは無縁です」( → 出典 )とのことだ。
ロンドンでは、古い建物が多いせいか、エレベーターがないビルも多いので、注意しよう。「ホテルに泊まったら、エレベーターがなくて困った」という例も報告されている。
→ 「ロンドン エレベーターがない」- Google 検索
一般的には、スウェーデンなどの北欧諸国が進んでいるようだ。これらの国を視察したりして、状況を調べるといいだろう。
ところが、日本の政府と来たら、東北では必要もない防潮堤を建設するために数千億円を無駄遣いする( 別項1 ,別項2 )くせに、バリアフリーのためには金を惜しみっぱなしだ。「被災地から引っ越ししたくない」と駄々をこねる人のためには、莫大な金を補償金として渡すくせに、真の弱者である身障者のためには、わずかな金を惜しみっぱなしだ。
これは、民主党も自民党も、同罪だ。国民の金を、自分たちの主義主張のために、膨大に浪費している。その金は、臨時増税という形で、国民にツケ回しする。まったく、泣くに泣けないありさまだ。
日本の将来を考えると、若干の関連法規を追加してもらいたいですね。
1)大手が受注し、下請け、その下請け等が採算ギリギリの工事をする。配慮に欠けたものができるのも無理はない。公共事業の理念から改善策を検討をする。
2)設計・仕様の部分で、応用社会心理学会に意見を聴くことを義務付ける(一定の報酬は払う)。
バリアフリーだけでなく、道路標識(不親切)、首都高の設計(無茶苦茶)、地下街の脱出口の設計(殺す気ですか?)など、全ての改善に通じる。
最近は、都市高温化とエアロゾル(大気中の微細なゴミ)の増加で、首都圏豪雨が増え、半地下住宅、地下街で水死する人が増えている。
理由としては、
1)避難経路が激流が浸水してくる流路と脱出口が一緒なので、水圧に負けて死ぬ。
2)地上が豪雨でも、地下では把握しにくい。大雨らしいからといって、従業員は勝手に職場放棄できない。
3)電源設備機能が停止すると暗闇となり、困難は倍加する。
解決策のひとつは、例えば、
1)高い位置でガードされた、別途の脱出口を作ることを義務づける。
2)脱出口への充電式LEDのガイド表示を設けておく。
(1) 転んだ老人は助けるな?!「南京の彭宇事件」で失われた中国のモラル
→ http://news.livedoor.com/article/detail/4555378/
転んだ人を助けたら、助けた方が裁判に訴えられて有罪になった、という中国の事例を報告する。
(2) 中国「道徳崩壊」の象徴、彭宇事件の意外な「真相」
→ http://kinbricksnow.com/archives/51768499.html
上の (1) について「中国はひどい」とネトウヨが騒いだが、実は、(2)は虚報だった。ぶつかって転ばせた側が、「助けてあげただけなのに」と嘘をついて自己弁護していたのが真相、という話。
http://www.minkan-safety-net.jp/
一方、商業ビルを新築する際には規模に応じて(バリアフリーのトイレ設置や、階段手すり設置など)対応が義務付けられます。しかし、既存物件については上記の様な制度が無いため、配慮されないまま残っていると思います。
例のビルについては、障害者が来訪した際の対応をあらかじめ検討していなかったのがマズイです。しつこいですが、エレベーターを2Fに止めるだけでほぼ解決する話です。ビルの家主が、不動産の経営者として不勉強だったとしか思えません。
→ http://hamusoku.com/archives/7892610.html
→ http://tabetainjya.com/archives/cat_3/post_2850/
念のため、該当のホールのページに行ってみた。
→ http://www.hatsukaichi-csa.net/sakurapia/
→ http://www.hatsukaichi-csa.net/faq.html
バリアフリーに関しては何も記述していない。困ったことだ。「車イス」というごといっしょに検索しても、「車イス席は4席」という情報しか見つからない。
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それにしても、きちんと謝っておかないせいで、次から次へとボロが出るなあ。
だからあれほど「謝っておけ」といったのに。