2013年05月19日

◆ アフリカ農業:コメより大豆で

 アフリカの農業でコメの生産を支援しよう、という政府の方針がある。だが、コメより大豆の方がいい。 ──

 アフリカの農業でコメの生産を支援しよう、という政府の方針がある。
 政府が来月、横浜市で開くTICAD=アフリカ開発会議で打ち出す支援策の概要が明らかになり、サハラ砂漠より南の地域のコメの生産量を倍増させる……としています。
 食糧不足の解決に向けて農家への技術指導などを強化し、5年後の2018年までに、サハラ砂漠より南の地域のコメの生産量を2800万トンに倍増させるとしています。
( → NHKニュース 2013-05-17
 ここで、「コメというと、日本ふうの水田でジャポニカ米を生産する」と思えそうだが、そうではない。アフリカに適したネリカ米という品種を生産する。
 ネリカ
 肥料を与えない場合でも、従来のアフリカイネより収量が多い(50%増)。
 米にタンパク質を多く含む。親となったアフリカイネ・アジアイネのタンパク質含量は 8%程度、ネリカはそれよりも 2%ほどタンパク質含量が高い。
 在来のアジアイネは栽培期間が120-140日間であるのに対して、ネリカの栽培期間は90-100日間である。
( → Wikipedia
 今回の方針は、2008年の JICA(日本の国際協力機構) の提唱以降の方針だ。
 《 アフリカ稲作振興のための共同体 》
 2018年までにコメの年間生産量を現行1,400万トンから2,800万トンへ倍増させることを目標とし、……支援策は、コメの優良品種(ネリカ米)の開発、農業技術の改善、……
( → アフリカ稲作振興のための共同体 - Wikipedia
 アフリカの降水量は、稲作に適したアジアモンスーン地帯よりもずっと少ない。だが、水稲でなく陸稲を基本とした新品種(ネリカ)の開発により、アフリカでも稲作ができるようになったわけだ。しかも、タンパク質を多く含むので、イモのような「デンプンだけ」というのと違って、栄養的にも好ましい。

 ──

 話が飛ぶが、この点で不利だったのはニューギニアだ。芋を生産したが、タロイモばかりで、タンパク質がなかった。
 ただ、ニューギニアではその後、西洋からサツマイモが伝来すると、高い栄養のおかげで人口増加が起こった。
  → 銃・病原菌・鉄 の要約
 その意味では、サツマイモは、悪くない。
 サツマイモは、やせた土地でも、また手がかからず作り易い作物です。しかもエネルギー源となる糖質が多く含まれている食べ物ですから、江戸時代の蘭学者青木昆陽により飢饉や食糧難の際の「救荒作物」として全国に広まり、多くの人命を救ってきた優れた食べ物です。
 栄養の面から見ても、芋類は、米や麦などの穀類と同様に糖質を多く含むので主食としている民族がありますが、サツマイモは、ビタミンやミネラルも含まれているので、穀類+野菜から得られる栄養素を合わせもち、その栄養バランスがよいことから,準完全食品とも呼ばれています。(タンパク質や脂質は少ないですが)
( → All About
 上記サイトでは、「茎や葉も食べられ無駄なく利用できる」とか、「根だけでなく、葉柄を野菜として食べられる」とかの話もある。きわめて有望な品種だと言えるだろう。
  → サツマイモの葉っぱの写真
 というわけで、やせた土地には、サツマイモは最適なわけだ。アフリカの多くの地域(降水量の少ない地域)には、コメよりも適しているだろう。
 それでも、「タンパク質が少ない」という点は、大きな問題となる。

 ──

 そこで、解決策として浮かぶのが、「大豆」だ。大豆には好ましい点がたくさんある。
  ・ タンパク質が多い。 ( → Wikipedia
  ・ 長期保存が可能 (乾燥させれば)
  ・ 加工すると食べやすい

 いずれも重要な特質だ。
 タンパク質の重要性は、すでに述べた。
 長期保存については、コメなどと同等で、イモよりも有利だ。
 加工という点については、こうだ。
 「豆腐にすると、さまざまな料理に使える。さらに、味噌や醤油の原料となる」

 これはとても重要なことだ。前に次のように述べた。
 人はパンのみにて生きるにあらず。同様に、人は米のみにて生きるにあらず。おかずや調味料も必要だ。
( → ネリカ米だけで足りるか?
 さらに、大豆から作る醤油と味噌は、次の点でも重要だ。
 「タンパク質の不足を補うには、昆虫を食べるのが有効だが、昆虫を食べるときの味付けに、醤油と味噌を使うといい」


 昆虫を食べることについては、下記に記事がある。
  → 国連機関が昆虫食のススメ、「栄養があって美味」
  → 国連が昆虫食を推奨、人気の8種とは?
  → 中国で食べられている昆虫

 アフリカでは、塩とコショウとハーブぐらいしか味付けはできていないようだが、ここに醤油と味噌が加わると、ぐっと料理の幅が広がりそうだ。
 オマケで言うと、(大豆の加工食品である)納豆もいいだろう。納豆のすばらしさは、日本人の多くが知っている。特に、健康のためにいい。(私も毎朝食べている。)
 抗菌作用もあるので、衛生状態の良くないアフリカには最適だ。
 納豆には殺菌作用が認められ、O157を抗菌することがわかっている。抗生物質のない昔は、赤痢、チフスなどの伝染病に対し、納豆が一種の薬として使われていた。病原性大腸菌あるいはサルモネラ菌に対する抗菌作用も立証されている。
( → 納豆 - Wikipedia
 さらにオマケで言うと、(豆腐をさらに加工した)油揚げもある。これで いなり寿司を作ると、とてもおいしい。甘酸っぱさとダシのせいで、箸がどんどん進む。先日も作って食べたばかりだが、実においしい。これがコメと大豆だけでできるとは信じられないおいしさだ。

 ──

 結論。

 アフリカの農業支援のために、政府はやたらとコメの援助ばかりをしたがるが、そういう「コメ偏重」は、農業の官僚の一面的な発想であるにすぎない。
 それよりは、現地に適した発想を取り入れる方がいい。どうせ援助をやるのなら、援助する側のためにやるのではなく、援助される側のためにやればいい。自分が押しつけたいものを与えるのでなく、相手が望んでいるものを与えればいい。
 ネリカ米は、それはそれで有効だ。ただし、「ネリカ米を与えればそれで十分だ」という発想では、アフリカ人をほとんど家畜扱いしているようなものだ。相手は人間であると理解しよう。そして、そう理解すれば、「カロリーを与えればいい」という発想にはならず、「タンパク質や、各種栄養素や、味付けが必要だ」とわかる。そのとき、大豆の重要性に気づくはずだ。



 【 関連項目 】

 → ネリカ米だけで足りるか?
  ※ コメだけでなく、おかずも必要だ。

 → 食糧危機とイモ
  ※ 降水量の少ない地域では、イモがいい。

 → アフリカの未来
  ※ 食料生産が進むと、かえって人口爆発。
 


 【 関連サイト 】
 
 (1) アフリカの大豆生産
  → 大豆生産はアフリカに広がる (2011年)

 (2) ブラジルの成功例
 ブラジルの中央高原に位置する約2億ヘクタール(日本の5.5倍)もの面積を持つ広大な熱帯サバンナ地帯……は、40年前まで、地平線の先まで広がる「不毛の地」として知られていました。しかし、20年以上にわたり、日本がブラジル政府と共に取り組んできた「日伯セラード農業開発協力事業」により、この不毛の地は、世界有数の一大農業生産地へと変ぼうしました。
《 変貌の Before / After の 画像あり。 》
( → JICA
 ブラジルのセラード開発は日本政府がODA開発援助として1980年代初頭からスタートさせたものである。「何も育たない不毛の地」と言われるほどのやせた土地である。強酸性の土壌で、高さ3mほどの樹木がまばらに生えている。草もまばら。そんな感じの土地である。しかし、開発され、そこに鶏糞や石灰分が大量に施されるとこの土地は見違えるほどに変わる。
 コメは陸稲が開墾直後に植え付けられる。背丈の高い稲は開墾直後の土地にはもってこいである。……稲が酸性土壌に強いというのも利点の一つ。こうして1-2年間の陸稲生産の後にダイズや綿、コーンなど、種々の作物が作付けされる。
 特にダイズはセラード地域の基幹作物で、この地域での生産拡大のために今やブラジルはアメリカに次ぐ世界第2位のダイズ生産国となった。
( → ブラジルの広大な潜在地、セラード開発
 コメならば日本に輸入することは困難だが、大豆ならば日本に輸入することも可能だ。重要な換金作物となる。今のアフリカは、人口爆発の状態なのだから、食べるための食糧が不足しているのではない。換金作物が不足しているのだ。
 


 【 追記 】
 大豆を生産すればそれで万事OKかというと、そうでもない。大豆だけを作っていると、連作障害などが起こり、また、土壌の流出なども起こる。環境破壊の懸念がある。
  → http://afriqclass.exblog.jp/16942534/

 だが、連作の問題については、古くから対策が知られている。「輪作」だ。つまり、複数の作物を交替で栽培する。
  → 大豆 輪作 (Google 検索)

( ※ なお、ついでに言うと、本項は「コメよりは大豆」であって、あくまでコメ生産との比較である。ここでは「森林を開墾して農地にする」というようなことは、含まれていない。)
( ※ また、荒れ地については、イモの方をお勧めしている。イモは葉っぱも大きくて、保湿量がかなりあるので、環境面からもお勧めだ。荒れ地が緑で覆われるようになれば、環境面では好ましい。)
posted by 管理人 at 19:52| Comment(7) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昆虫食の話について。
昆虫に寄生している寄生虫は、非常に丈夫なものもいます。
カマキリを殺虫剤で瞬殺した後で、中から出てきた寄生虫に幾ら殺虫剤をかけても殺せなかったという経験を私は2度しています。少々トラウマ。
「昆虫食で痩せる=寄生虫で痩せる」だと思っています。

アフリカ人だからと軽い気持ちで推奨していたら、新たな寄生虫やら病気が世界的に広がるかも知れません。
根拠は無いのですが、ほ乳類より新参の類を食べるというのも、なんとなく気持ち悪いです...
せめて加工して粉にして、家畜の餌にする位にして欲しい。
農業支援成功で、昆虫食が減るのを願っています。
Posted by MSどす at 2013年05月20日 09:10
管理人さまのおっしゃる通り、食料支援として大豆利用は効果的だと思います。
支援先で大豆が育てばですが。

MSどすさんのおっしゃる『ほ乳類より新参』の意味は分かりかねますが、ヒトの利用できないセルロースなども間接的に摂取できるという点では昆虫食は有望だと思います。
もっとも、見た目があれなので、粉末状にして調味料的な使い方の方が普及しそうな気がします。
Posted by モリモズ at 2013年05月20日 13:50
大豆栽培の支援をするなら日本の醤油メーカーなどと絡めて支援すれば日本企業にも利益になるのでは
Posted by bb at 2013年05月20日 15:10
そう言えば、醤油メーカーの話は前に書いていました。
  → http://openblog.meblog.biz/article/7907323.html

> アフリカの飢餓の問題を解決する方法がある。それは、醤油をプレゼントすることだ。
> シャケやイクラがたくさんあるのに、食わずに捨ててしまうそうだ。日本人が「食え。虫よりマシだろ」と言うと、「こんなものは食いたくない」と拒む。無理に食わせると、「何でこんなひどいものを食わされるのか」と涙交じりになるそうだ。

 アフリカ人には、虫はごちそうでも、シャケやイクラはゲテモノなんです。
 なぜ? 醤油がないから。
Posted by 管理人 at 2013年05月20日 16:28
寄生虫対策は生で食らわない事だ。
Posted by 京都の人 at 2013年05月20日 19:09
参考記事。
 「アフリカで大豆を作れ!」
 → http://www.j-cast.com/tv/2013/06/01176334.html?p=all

 日付は 2013/06/01
Posted by 管理人 at 2013年06月03日 12:13
参考記事。
 「アフリカの成長をとりこめ “チームジャパン”の新戦略」(アフリカで大豆生産)
 → http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3356/1.html

 日付は 2013年5月30日(木)放送

 ──

 すぐ上のコメントを見てもわかるように、私が記事を書いてから 10日程度で、続けて、有力な記事が二つも出た。内容はいずれも本項と同趣旨みたいなもの。(本項を真似したわけじゃなさそうだが。)

 ただ、この二ホンのあとでは、類似記事は出ていないようだ。2016/08/15 現在、「アフリカ 大豆」でググっても、上記の二つの記事がトップに来るだけで、続報は見つかりにくい。

 検索の期間指定で「この1年間」を指定しても、あまり有力な記事は見つからない。

Posted by 管理人 at 2016年08月15日 16:24
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