原発テロ対策の訓練が実施された。どんなものかと思ったら、子供のお遊びみたいなレベルだ。これで「原発テロ対策をしています」と言っているのだから、呆れるしかない。
陸上でテロリストグループが原発施設を襲撃したとの想定でスタートした。これは「テロ対策ができています」という宣伝をするための、お遊びにすぎない。
原発の正門にテロリスト3人を乗せた車が猛スピードで接近。完全武装で待ち構える銃器対策部隊に手投げ弾を投げ込むなど強行突入を試みて銃撃戦に。
応援の指示を受けた千葉県警のSATを乗せたヘリが到着。隊員がロープを伝ってテロリストの背後に素早く降下し、テロリスト2人を銃撃戦の末に取り押さえた。残る1人は抵抗をあきらめ、SAT隊員に組み敷かれた。
( → 産経新聞 2013-05-11 )
「原発の正門にテロリスト3人を乗せた車が猛スピードで接近。完全武装で待ち構える銃器対策部隊に手投げ弾を投げ込むなど」
これは現実にはありえない。
第1に、テロリストが3人だけということはありえない。たったの3人で襲撃するなんて、「失敗することを目的としています」というようなレベルだ。最低でも 20人。できれば 50人を必要とする。そのくらいの人数がそろわないのだったら、最初からやるべきではない。
また、テロリストの武器も、もっと重装備だと想定するべきだ。大量のサブマシンガンとフルメタルジャケット弾 や アーマーピアシング を想定するべきだ。当然、防衛側は、防衛が困難となる。(普通の防弾チョッキは貫通される。)
第2に、「完全武装で待ち構える」なんて、ありえない。もしそんな用意があれば、3人が飛び込んでも、飛んで火に入る夏の虫でしょう。(そのありえない想定が、今回の訓練。)
現実には、たとえば次のような方法を取るはずだ。
・ 陽動部隊が正門以外を爆破して、防備隊を移動させる。
・ 最初に突っ込むのは、大型ダンプ。ガソリンを大量に搭載。
特に後者が重要だ。入口ではたぶんダンプを止めることができない。もし止めることができても、そのときはダンプが炎上して、大爆破する。あたりにいる防備隊は火傷して無力化する。場合によっては爆弾で皆殺しということもある。
ダンプは無線操作してもいい。これなら、攻撃側の人的損失はゼロで、防備隊には大量の人的損失が出る。
以上についてには、反論が出るかもしれない。
「原発に到達する前に、検問を用意しておけば、ダンプなどの接近を阻止できる」
ま、常識的には、そうだ。原発は人里離れたところにおくべきだし、原発の近辺には検問を用意しておくべきだ。
ところが日本の方針はそうではない。こうだ。
「原発の近辺は都市化する。大勢の人々を通行させる」
これは狂気的だが、このような方針を取っている。「原発は安全だから、近くを都市化します」という方針。その結果、原発のすぐそばを国道が通る、というありさまだ。
実例を示す。浜岡原発のすぐそばを国道が通っている。(というか、広義の敷地[原発の所有地]の一部を国道が通っている。)
→ Google ストリートビュー
この場所は、浜岡原発の入口から 200メートルの箇所だ。国道の一部であり、自動車(スポーツカー)が通っている。タンクローリーも通っている。赤信号の向こうが、浜岡原発だ。この道を 200メートル進むと、浜岡原発の入口だ。
しかも、画像を見ればわかるように、この信号の場所には検問はない。何のチェックもされず、どんどん先へ進める。とすれば、原発の入口に到達するのは、ごく簡単だ。そして、到達したあとは、上記の第1・第2の方法で、入口を突破できる。
入口はもう一つあって、こっちもある。
→ Google ストリートビュー
ここにも検問はないから、ここからも侵入は可能だ。こちらの方が手薄らしいから、先の国道の方を陽動部隊が襲撃して、そのあとで、この裏口の方から本隊が突入すればいいだろう。
と思ったが、実は、こちらも陽動部隊にした方がいい。本隊は? 次の二方面から侵入するといいだろう。
・ 国道と原発との中間の緑地帯を横断する
・ 海側から防潮堤を越えて侵入する
いずれにしても、せいぜいフェンスぐらいしか邪魔物はないから、簡単に爆破して突破できる。穴が一つあけば、そこからいくらでも侵入できる。わざわざ車道を通る必要はない。
ま、防備隊がまともならば、巨大門扉とか、落とし穴とか、さまざまなトラップを用意できるだろうが、そういう用意はないようだ。簡単に突破できるだろう。
結局、現状の想定は、あまりにも甘すぎる。「テロリストは子供みたいな攻撃しかしない」という想定だ。それでもって、「テロリストを組み伏せて逮捕する」というような発想となる。
その結果、どうしようもない、貧弱な対策となる。
──
では、どうすればいいか?
はっきり言おう。原発を襲撃するというのは、ただのテロではない。それは軍事行動である。当然、軍(自衛隊)が最初から対応するべきだ。これは軍の対応領域なのである。
したがって、「テロリストの逮捕」などは、最初から目的とならない。「テロリストの殲滅」が目的となる。基本としては、「全員殺害」を原則とする。たまたま生き残って捕虜にされた敵は、そのまま生き残らせていいが、目的はあくまで「全員殺害」であるべきだ。
そしてまた、「全員殺害」が原則であることを、あらかじめ公言しておくべきだ。そうしてこそ、前もってテロを予防できる。
「殺されちゃうのか。じゃ、やめておこう」
と思うのが普通だからだ。
逆に、「殺されない」とわかっていれば、遊び半分みたいな気楽なつもりで、襲撃する人も出てきそうだ。しかし、そうであってはいけないのだ。
( ※ ゆえに、警察ではなく、軍の出番となる。人を殺すのは、軍の仕事だ。なお、人を殺すのをためらうような人は、軍人としては無意味だ。そんな軍人はさっさと追放するべきだろう。)
──
福島原発の教訓は、「万一に備えて対策を取れ」ということだった。なのに、「どうせ大津波は押し寄せてこない」という想定のもとで、ごく甘い対策しかやらなかった。そのあとで、想定外の大津波が来て、すべては破壊された。
原発への対策も、また同様である。情けないものだ。
[ 付記1 ]
自衛隊の活動は、現行法では無理であるそうだ。
→ 自衛隊、現行法では蚊帳の外 - MSN産経ニュース
政府は法改正を考えているようだが、さっさと実行するべきだろう。憲法改正なんかを狙っているときじゃない。
「集団的自衛権」という名目で、米国を守ることばかりに熱中して、自分自身を守ることがまるでお留守になっている。
忠犬というのは、まったく哀れなものだ。
[ 付記2 ]
ついでだが、市街地に隣接する浜岡原発は、そもそも全廃するべきだろう。まるで「駄目条件のデパート」みたいに、許容できない条件がすべてそろっている。それなのに無理やり稼働させようとするのは、「減価償却が終わっていないから」という金銭が理由だ。
中電のケチ根性のせいで、日本全体が危機にさらされる。日本政府は、日本国民を守っているんだか、中電の経営者を守っているんだか、はっきりしてもらいたいものだ。
[ 余談 ]
実は、どっちを守っているのかは、はっきりしている。中電の経営者を守っているだけだ。
で、彼らから袖の下をもらってホクホクしているのが、自民党。……国民の敵であるテロリストは、実は自民党総裁である首相であった、という意外な真相。このアイデアで、三文小説が書けるかも。 (^^);
[ 教訓 ]
そもそも、訓練というものは、やがて来る惨事に対して対処することを目的とするものだ。たとえば、地震の避難訓練とか、火事の避難訓練とか。
ところが政府のやる「テロ対策訓練」というのは、惨事に対して対処することを目的としているのではなく、「惨事があっても大丈夫ですよ」と国民に宣伝することを目的とする。当然、実際に起こる惨事よりも、大甘の想定で訓練する。
これは、比喩で言えば、「地震訓練の対策として、震度4を想定して、それでも大丈夫ですと宣伝する」ようなものだ。これでは、まったく訓練になっていない。
で、今回のテロ対策訓練も、同様だ。現実には震度7ぐらいになるとしても、あくまで震度4レベルで訓練する。
これがつまり、冒頭で「馬鹿げている」と述べたことの理由だ。
まさかツインタワーに突っ込んだテロリストが「これやったら殺される危険性があるならやらなかった」なんて思ってたとでも?
じゃあどうして警察は「組み伏せて逮捕する」つまり「殺さずに生かして捕らえる」という訓練をしているんですか?
> ツインタワー
あれはアメリカ。しかも自爆テロでしょ。全然別の話題を持ち出されてもね。
本項で話題にしているのは、日本の原発テロ対策の話です。ちゃんと本文を読みましょう。少なくともタイトルぐらいは読んでください。
笑っちゃいました
どこかの軍事専門家みたいな人が、現状の原発テロ対策が手ぬるい、と批判していた。
だから、本項は、私の独創というわけではありません。本項について文句を言いたければ、その軍事専門家に文句を言えば?
( ※ Wikipedia のどういう項目だったかは、失念した。自分で調べれば、すぐに見つかるはず。)
核テロリストに「全員殺害」を警告しても無効だ、というのは、その通り。
ではなぜ「全員殺害」を警告するべきかというと、相手が核テロリストではないからだ。では何かというと、「核テロリストごっこをする素人」である。
現行の警戒態勢は、核テロリストを想定したものではなく、「核テロリストごっこをする素人」を想定している。だから「殺害せずに逮捕」なんていう甘ったれたことをやろうとして、しかも、それがうまく成功することになっている。(「原発は絶対安全」というのと同様の想定。)
で、そういうふうに「素人」を想定している現行に合わせて、「素人のいたずら騒ぎを阻止するために「全員殺害」を警告せよ、というのが、本項の趣旨だ。
要するに、本物の核テロリストに「全員殺害」を警告しても無効だ、というのは、当り前だ。いちいち当たり前のことを書く必要はない。それよりは、頭を働かせればいい。三段論法を使えばわかる。
1.核テロリストに「全員殺害」を警告しても無効だ
2.しかし「全員殺害」を警告するべきだ
3.ならば対象は核テロリストではない。(偽物だ)
これが論理というものだ。(広義の三段論法)
──
なお、相手が本物の核テロリストであれば、テロは成功する。核テロリストが全員殺害されるのではなく、警察官が(ほぼ)全員殺害される。それが現状だ。
だから、その現状を何とかしろ、というのが、本項の趣旨。
その裏をかかれるので、記事にある訓練は素人向けで、
本物の核テロリスト向けの関連は、非公開でやっているのでは?
…と思いたい。