「集団的自衛権が必要だ」と唱える人々がいる。特に読売新聞が熱心だ。
→ 2013年5月2日 読売新聞
ここでは、特に次の二つのタイプが話題になっている。
・ 朝鮮半島有事の場合。( → 別項 )
・ 北朝鮮の対米ミサイルを日本が撃墜 ( → 別項 )
いずれも別項で論じたが、本項では特に後者(対米ミサイル)の方を論じる。
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後者(北朝鮮の対米ミサイルを日本が撃墜)というのは、次のような記事でも紹介されている。
→ 北海道新聞
簡単に言えば、次のような経路を取るミサイルを、日本上空で撃墜する、というものだ。

だが、このような認識は正しくない。メルカトル図法の地図を見ながら、頭のなかで勝手に想像しているのだろうが、現実のミサイルは、上のような経路を取らない。
では、正しくは? 次の経路だ。(2本の赤線の間)

平射図法
これに対して、日本の迎撃ミサイルは、次の二つ。
・ 日本本土にある地上基地の PAC3
・ 日本海上のイージス艦の SM-3 (図の ● )
前者は、近距離用だから、射程が短くて、とうてい届かない。
後者は、中距離用だから、やはり射程が足りなくて、とうてい届かない。
( ※ 以上については、別項でも論じた。)
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本項では、さらに次の2点を指摘しよう。
(1) SM-3 では、射程が足りないだけでなく、速度が全然足りない。北朝鮮が米国に向けて発射するとしたら、大陸弾道弾(ICBM)であるから、ものすごく高速だ。それには SM-3 はとうてい追いつけない。
仮に SM-3 の改良型( SM-3x )で高速化して、ICBM に追いつくようにしたら、どうか? その場合、 SM-3x は、大陸弾道弾と同程度(または速度では上回る)規模になるので、それはもはやロケットと同レベルである。つまり、GXロケット (80億円)みたいなものだ。さらに、追尾装置などの複雑な機構を搭載するから、100億円を突破することになりそうだ。そんなものを開発してたくさん配備したら、それだけで1兆円ぐらいになり、他のミサイル防衛網の全額に匹敵する。
米国本土を守るための費用を、日本国土を守るための迎撃ミサイルの費用と同程度とするなんて、あまりにも馬鹿げている。日本人は米国を守るために税金を払っているんじゃない。
というか、米国を守るために1兆円を出して、その分、自国の軍備を削るなんて、狂気の沙汰だ。
( ※ ついでに言っておくと、SM-3x は,日本を守るためには何の役にも立たない。図からわかるように、SM-3x は、北朝鮮のミサイルが発射されたあとで、それを追いかけて、北極上空で衝突するものである。後ろから追いついて衝突するタイプだ。正面から迎え撃つタイプの迎撃ミサイル[日本用]とは、まったくタイプが異なる。)
( ※ 同様に、日本用の迎撃ミサイル SM-3 を、米国防衛用に転用することはできない。この件は前述した通り。 → 別項 )
(2) どうせなら米国が自国を守るために、米国が自力で迎撃ミサイルを用意した方がいい。それは、日本海から追いかけるタイプではなくて、アラスカや北極海のあたりで待ち受けるものだ。この場合は、発射から十分に時間の余裕があるので、比較的容易に待ち受けることができる。うまく衝突させることができるかどうかは技術的な問題があるが、いずれにせよ、「後ろから追いかける」なんていう方式に比べれば、はるかにマシだ。(追いかけたって、追いつくころには、もはや米国領に到達しているだろう。また、たとえ追いついても、後ろからぶつかるのでは、衝撃力が弱くて、敵ミサイルを破壊することはできそうにない。)
というわけで、米国が北朝鮮のミサイルを迎撃しようとしたら、自力で北極海かアラスカに設置するはずだ。一方、「日本海にあるミサイルが後ろから後ろから追っかける」なんていう方式を、取るはずがない。日本が「そうします」と言ったら、「できっこないのに」と思いながら、「勝手にすれば?」と冷笑するだけだろう。
軍事的には、「日本海にあるミサイルが追っかける」なんていう方式は、成立しない。したがって、米国がそれを日本に要請したことはない。米国が要請したこともないような幼稚な珍案を、「米国のために」と称して、あえてサービスしようとするのは、米国の軍隊からは笑いものになっているはずだ。
そろそろ馬鹿げた道化役は、やめた方がいい。物笑いのタネになるだけだ。「集団的自衛権で米国を守る」なんて言っている読売は、自分の頭のレベルを自覚した方がいい。そのために、まずは地図を見て、地図の見方を覚えるといい。
【 関連項目 】
→ 北朝鮮の弾道ミサイルは迎撃不能
自衛隊のイージス艦+SM3が対応する必要があるのはそちらのケースで、その場合の軌跡は下記のサイトにあります。
http://obiekt.seesaa.net/article/354712832.html
これを迎撃しようとすると、やはり集団的自衛権の問題はクリアしておかなくてはです。
また、長射程のムスダンは日本上空を飛び越えるだけなので大丈夫という説も怪しいみたいですが、その場合でもSM3で対応可能というのは別記事に書かれています。
http://obiekt.seesaa.net/article/356618241.html
やけくそ…。どうせ滅ぶのなら巻き添えは多いほど歴史に名を残す!!自爆テロみたいです。
あって数発しかないものをグワムやハワイで無駄使いするわけがないですよ
第1に、北朝鮮から、あまりにも遠い。
第2に、拡大すればわかるように、グアムの大部分は緑地です。基地の建物や弾薬庫などはごく一部です。ここを撃破するには、巡航ミサイルのような精度が必要です。
弾道弾で北朝鮮から狙っても、99%以上は目的からはずれます。大部分は海に落ちます。結果的に、発射したミサイルのコストが、撃破する対象のコストよりも、高くなります。ゆえに、グアムを狙うことは、ありえません。
どうせなら、沖縄の基地を狙うでしょう。基地の建物も集積しているし、はずれたとしても人家に落ちます。また、距離もはるかに近い。
ただ、どうせ狙うなら、東京でしょう。ここの被害が最も大きくなる。
東京への防衛を目的とするなら、まだわからなくもないが、グアムへの防衛を目的とするなんて、軍事的にはアホの発想でしかないですね。こんなことを考える連中は、北朝鮮の軍よりも、はるかに阿呆であることは確実。
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というか、そもそも、「売られたわけでもない喧嘩をあえて買えば、日本ミサイルが降ってくる」ということに気づくべきだ。
北朝鮮が米国に向けて発射したミサイルを迎撃するということは、自動的に日本が参戦して、東京にミサイルが降ってくることを結果する。わざわざ「日本にミサイルを発射してくれ」と頼むのも同然だ。
たぶん自民党はこう思っているのだろう。
「集団的自衛権を行使して、米軍を守って、日本が参戦しても、日本は攻撃を受けない」
こんなことを思っている気違いに、日本の軍隊を任せていて、いいんだろうか?
参考記事:
→ http://openblog.meblog.biz/article/15642990.html
→ http://openblog.meblog.biz/article/15925013.html
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obiekt はどうか?
このサイトは、まあ、日本を戦争に巻き込むことを目的としているみたいだから、ドンパチやれば、大喜びなんでしょう。
サイト主はともかく、コメント欄を見ると、戦争大好きな連中が集まっている。集団的自衛権という名目で、彼らは何とかして参戦したいのだろう。特に韓国が戦争をしたら、「僕も、僕も」というふうに、是が非でも戦争に参加したいのだろう。
読売もそうらしいですね。自民党もそうみたい。だから憲法を改正したいんだろう。そのうち徴兵制も実現するかな。
>軍事的にはアホの発想でしかないですね。こんなことを考える連中は、
>北朝鮮の軍よりも、はるかに阿呆であることは確実。
米軍はグアム防衛のために迎撃ミサイルを配備してますから、
ブログ主の理論に従うなら、米軍は北朝鮮よりはるかのアホですね。
ムスダンの射程距離は4000Kmと言われていて、グアムに辛うじて届く距離です。
ワシントンにはどう足掻いても届きません。
その上で「アメリカに弾道弾を打ち込む」と宣言されたら、
グアムコースを注意するのは当たり前だと思うのですが、
ぜひ皆さんのご意見頂きたいです。
国家の富をごく一部のものだけに集める独裁国家には無理がある。常に転覆や暗殺を
恐れなければならない。強気を見せ、外部に敵や目標を作り外へ目を向けさせないと、
自分へ敵意が向くことを恐れる。いつか割れる氷上の楼閣のごとし。気が休まらない。
北朝鮮の金さんは、案外、うなる資産を持ってハワイなどへ亡命できればいいなと
考えている? 北朝鮮脱出を薦めるのが平和的な解決かも。
富を一極へ集めるユニクロは、経済システムの金さん? 中国・北朝鮮型の経済学
一本やりでは無理がある。絆の経済学という補完的な安全層も必要な時代かな。
日本語が読めないのかもしれませんが、私が述べた「アホ」は、北朝鮮じゃなくて、日本です。グアムを守ることばかり考えて、東京の防衛をほっぽり出すことを、「アホ」と述べている。北朝鮮は関係ありません。
米軍? 米軍は自分を守るでしょう。自分(米軍)を守らずに東京を守る方が、アホに近い。誰だって自分を守るのが当然。米軍が自分を守ることを「アホ」と呼んでいる人はいません。
あと、米軍が迎撃ミサイルを配備する場所は、グアムです。ここでなら命中率が高まるから、そう悪くはない。日本海から迎撃ミサイルを発射するのとは雲泥の差だ。
あと、米軍は、軍事費が日本の十倍だ。
→ http://blog-imgs-60.fc2.com/m/i/x/mix2ch/0807281.jpg (各国の軍事費)
米軍は、グアムを守っても、本土がお留守になるわけじゃない。グアムを守って本土を捨てようとする日本とは違う。
私が言っていること、わかりませんか? 日本語を読めるようにしましょう。
(なお、米軍は命中率1%以下のグアム向けミサイルに対応しても、まだまだ余裕がある。一方、日本は命中率1%以下のグアム向けミサイルに対応したら、命中率が50%ぐらいある東京向けミサイルに対応できなくなる。弾切れ。)
> 「アメリカに弾道弾を打ち込む」と宣言されたら、 グアムコースを注意するのは当たり前だと思う
そう思うんだったら、最初から「米国を守るため」と言わずに、「グアムの米軍基地を守るため」と言えばいいでしょう。「グアムの米軍基地を守るために東京を犠牲にしましょう」とね。
なのに、わざわざ錯覚させるような言葉を使うとしたら、ペテンですね。「目的外流用」みたいなインチキ。