鳥インフルエンザ(H7N9)の感染者が出たことが話題になっている。そこで、注目するべき話があった。
抗ウイルス薬タミフルの投与を受けていたが、多くは発症から約6日後だった。タミフルは6日以降は効果が期待できないとされる。チームは「もっと早く診断し、抗ウイルス薬を投与すれば、重症化する患者を減らせる可能性がある」と指摘する。これは中国の鳥インフルエンザの場合だが、実は、インフルエンザ一般について同様のことが言える。つまり、
( → 朝日新聞 2013年4月26日 )
「抗インフルエンザ薬は、発症してから時間がたってからでは有効ではないので、発症してすぐに服用する必要がある」
ということだ。
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ところが、日本では一般に、それとは逆の方針が取られている。こうだ。
「インフルエンザの感染が疑われたら、まずは簡易検査をする。それでインフルエンザの感染が確認されたら、抗インフルエンザ薬を処方する」
しかしながら、簡易検査は、感度が低い。感染初期にはウイルスの量が少ないので、感染しても「陽性」(感染している)とは判定されない。時間がたって、ウイルスが大幅に増加したら、ようやく簡易検査で発見されるようになり、「陽性」(感染している)と判定される。
実に馬鹿げている。これは、自動車事故でたとえると、次のようなものだ。
「危険が迫ったときに、ブレーキを踏んでも、ブレーキが作動しない。いざ衝突して、自動車が停止したら、そのときになってようやくブレーキが作動する」
これと同じぐらい馬鹿げたことである。「危険の防護」という本来の目的がまるでできていない。
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では、どうすればいいか? 私としては、次のように述べた。
「簡易検査をするな。発熱などの症状だけで感染を判定せよ」
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これはどうしてかというと、次のことがあるからだ。
「簡易検査よりも、人間の症状の方が、センサーとしては鋭敏である。簡易検査で陽性となる前に、発熱などの症状が現れる。だから、この段階で感染を判定すればいい」
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以上は、すでに述べたことだ。
ただ、新たに考えると、現状の駄目な方針が取られていることの根底には、次の問題があると気づいた。
「簡易検査をしないで処方すると、感染していないのに抗インフルエンザ薬を処方するという問題が起こることがある。それは、副作用などの(小さな)問題を起こすだけでなく、医療費が無駄に使われるという(社会的な)問題も起こす」
これはこれで問題だ。小さな問題ではあるが、とにかく問題だ。では、これを解決するには、どうすればいいか?
頭をひねって考えたすえ、次の改善案を考えた。
「感染していないのに抗インフルエンザ薬を服用した場合には、『感染していない』と気づいた時点で、抗インフルエンザ薬をやめればいい」
このことを可能にするには、次の方針を取ればいい。
「感染の初期の場合には、抗インフルエンザ薬を1〜2日分だけ処方する。その後の推移を見て、抗インフルエンザ薬を継続するかどうかを決める」
ただし、次の問題もあるだろう。
「抗インフルエンザ薬を服用したおかげで改善したのか、もともとインフルエンザではなかったので症状が悪化しなかったのか、どちらとも区別しがたい」
これについては、次の指針がよさそうだ。
「病院を出たあとで、抗インフルエンザ薬を服用するまでの間に、どんどん悪化していって、抗インフルエンザ薬を服用したら急に改善していったのであれば、『インフルエンザに感染していた』と判定して、服用を続ける」
「一方、服用する前も後も、病状の変化がほとんどなかったのであれば、『インフルエンザに感染していなかった』と判定して、服用をやめる」
「『インフルエンザに感染していなかった』という判定が間違いで、実は感染していた(またぶり返した)ということになったら、あらためて抗インフルエンザ薬を服用する」
いずれにせよ、病状の変化を注意深く見る必要がある。また、医者への受診回数が増える。
医者への受診回数が増えるのは、手間の点で問題かもしれない。最初の診察で薬を5日間分もらう方が、(薬剤費はかかっても)手間がかからなくていいかもしれない。そうであれば、最初から薬を5日間分もらう方がいいとも言える。
ただ、この場合は、3日目〜5日目については、「健保から外す」という案もある。(あまり良くない案だが。)
ともあれ、大事なのは、次のことだ。
「服用するか継続するかを、病状を診て可変的にする」
これを可能にするには、次のことが必要だ。
「薬剤は一日ごとに服用する」
これが可能な薬剤は、下記。
タミフル、リレンザ
一方、次のものは不可だ。
イナビル
イナビルは、「1回の服用で5日分の効果があるので、便利だ」と言われる。しかしその長所が、逆に短所にもなっている。
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結局、私としては、次の方針をお勧めしたい。
「抗インフルエンザ薬は、インフルエンザに感染しているかどうかをはっきりと確認する前に、かなり疑わしいと判明した時点で、早めに服用するべきだ。特に、タミフル・リレンザを早めに服用するべきだ。そのためには、早めに受診して、早めに薬を処方してもらうといい。
ただ、インフルエンザではなくて、実際にはただの風邪だった場合もある。そうであるとはっきりと判明した場合には、薬の服用を途中でやめてもいい。
ただし、素人のなまくらな判断で途中でやめると、その判断が間違っていた場合もある。その場合には、あらためて服用を再開すればいい。
いずれにせよ、早め(感染初期)に受診して、抗インフルエンザ薬を処方してもらった方がいい。服用するかどうかは、すぐに決めなくてもいい」
[ 付記1 ]
なお、上記の話は、一般原則ではない。一般原則は、次のことである。
「インフルエンザに感染した場合には、特に抗インフルエンザ薬を処方してもらう必要はない。世界中のほとんどの国で、普通の人(もともと健康な人)は、インフルエンザのときにも薬は使わない。
抗インフルエンザ薬が必要なのは、虚弱者だけである。つまり、高齢者・妊婦・乳幼児・基礎疾患患者などだ。(インフルエンザによる被害の大きい体質の人を含む。)
本項で「抗インフルエンザ薬を服用せよ」と推奨している対象者は、これらの人々(虚弱者)だけである。
( ※ ただし、新しいインフルエンザ[鳥インフルエンザ?]の発生初期には、病原性が高いらしいので、抗インフルエンザ薬を服用することが好ましい。)
[ 付記2 ]
タイトルだけ読んで誤読する人がいるかもしれないので、あらためて注記しておく。本項で言いたいことは、「抗インフルエンザ薬を使うな」ということではなくて、「使うなら早めに使え」ということだ。特に具体的に言うと、「簡易検査によって遅らせては駄目だ」という点が重要だ。簡易検査は、
・ 罹患していて症状があれば、無意味
・ 罹患していなくて症状がなければ、無意味
・ 罹患していて症状がなければ、有害
なので、使うだけ無駄である。なお、
・ 罹患していなくて症状がある
という場合がある。たとえば、インフルエンザではなく、普通の風邪に罹患した場合だ。この場合には、医師の診断で、適切に処理してもらえばいい。(誤診もあるだろうが、たとえ誤診があっても、被害は少ない。というのは、もともと病気ではないからだ。せいぜい「余分な薬剤を処方される」というぐらいのことだ。問題が起こるとしても、たいした問題とはならない。)